戦争犯罪と戦後補償を考える国際市民フォーラム

分科会A 「南京大虐殺」のまとめ


昨年12月10〜12日、 東京で開催された掲題のフォーラムは4つのパネルシンポジウム(全体会)と 5つの個別テーマの分科会(A:南京大虐殺、B:従軍慰安婦、C:強制連行、 D:生物・化学兵器、E:軍票・文化財破壊)で構成されていた。 ノーモア南京の会が準備した分科会Aは証言と報告を合わせ8人の方をお招きし、 3時間にわたる密度の高い分科会となった。 以下はその簡単にまとめである(当会、倉橋による分科会報告)。

(1)陳娟さん(南京市档案館研究員)は日本軍による女性に対する性暴力、 レイプのひどさをさまざまな実例で示し、 それを契機として南京で大々的に慰安所が設置されていった実体を詳細に報告した。

(2)張連紅さん(南京師範大学)は大虐殺が南京市民に与えた恐怖や衝撃の大きさを 具体例で示し、また社会心理的な影響は当座だけでなく、その後も長く尾を引き、 鬱病で自殺するようなひどい例をたくさん紹介した。

(3)李桂英さん(仮名、当時16歳)は直接目撃した住民殺害や強姦を証言し、 また自信も強姦されそうになったが、 村民が「まだ10歳ですよ」と言ってくれたおかげで、 辛くも逃れられたという体験を語った。

(4)小池善之さん(静岡大学講師)は、 静岡の部隊は南京大虐殺には関わっていなかったといわれていたが、 実際に南京で殺害に関わっていたことを、 従軍した兵士の友人宛の軍事郵便を詳しく調査することによって明らかにした。

(5)小野賢二さん(いわき市、化学労働者)は 南京攻略戦に参加した山田支隊の元兵士200人のインタビューによる調査から、 揚子江岸における大量の捕虜虐殺の様子を詳細に報告した。 また、野田正彰氏が著書『戦争と罪責』の中で、 ほとんどの兵士は悲しむ力を失っていると述べていることに触れて、 インタビューに応じた元兵士たちの多くは悲しもうとしているのではないかと述べ、 新たな問題を提起した。

(6)当会、劉彩品さんは、南京大虐殺はなかったとか、 被害者の数の問題に解消してしまうような論調は、 中国人の心を逆撫でするセカンドレイプであり、 日本人の人間性の喪失を示すものだと語った。 またアイリス・チャン著『ザ・レイプ・オブ・ナンキン』は 殺される人の悲しみと怒りの書であるのに、それを「まぼろし派」ばかりか、 まじめな研究者までが、叩くという日本の状況を強く批判した。

(7)渡辺春巳さん(弁護士)は自身が関わってきた、 3つの戦後補償裁判の現状を紹介、 特に「南京大虐殺・731部隊・重慶爆撃裁判」の昨年9月22日の判決について、 前向きな側面と問題点とをわかりやすく解説した。

(8)当会代表田中宏さん(一橋大学教授)は今度の分科会の意義として、 南京大虐殺の否定論や、数の問題にすり替える議論がある一方で、 被害に遭った人たちの悲しみや怒りを踏まえた議論が必要だという主張が 強くなってきたこと、 そして両者の間のギャップを鮮明にすることができた点を挙げた。 そして、日本人の戦争体験として、空襲とか原爆などの被害があったとしても、 丸腰の民間人が武装した兵士に襲われたり、 レイプされたりする時の恐怖心を日本人には理解できないのではないかという 問題を指摘した。

 

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