「南京大虐殺60年東京国際シンポジウム」

1997年12月13日・14日


南京大虐殺から60年。 その60年目の昨年の12月13日、14日の二日間にわたり、 東京で「南京大虐殺60年東京国際シンポジウム」が行われました。

日本では未だというか、今だからというべきか、「南京大虐殺はなかった」、 「30万人の犠牲者はあり得ない」 といった言論がまかり通っている現実があります。 この60年目の年だからこそ、 東京で国際シンポジウムをやろうという声が上がりました。 私たちノーモア南京の会をはじめとして9団体が実行委員会を結成し、 準備をすすめていきました。

13日には、中国から章開元さん、孫宅巍さん、胡菊蓉さんの三人の研究者、 被害者である伍正禧さん、そしてドイツからは「ラーベの日記」 のヨーン=ラーベのお孫さんであるウルズラ=ラインハルトさんをお招きして、 新宿・新大久保のR'sアートコートで証言と追悼を中心とした シンポジウムを行いました。 主催者挨拶に続き中国からの招待者の招請にご尽力いただいた田英夫参議院議員の挨拶、 そして章開元さん、藤原彰さんの基調報告が行われました。 その後に伍さんの被害証言がありましたが、 日本軍に祖父、兄、従兄二人、叔父の五人を殺され、 さらに従姉妹が強姦された伍さんの怒りと悲しみに満ちた証言に 会場の人々も真剣に聞き入り、また目頭を押さえている人もいました。 次に加害者の証言として、 南京戦に参加した元日本兵の東史郎さんが壇上に上がりました。 実行委員会ではもう一人、 中国帰還者連絡会の永富さんにもお願いしていたのですが、 直前に倒れられ療養中とのことです。 60年の歳月の重さを感じずにはいられません。 東さんは加害者として証言したことにより(『我が南京プラトーン』として出版) 「まぼろし派」から訴えられ、現在裁判で闘っている人です。 つらい体験を話してくださった伍さん、 誠実なそして勇気ある証言をしてくださった東さんのお二人に 改めて感謝したいと思います。

パネルディスカッションは我が会の代表である田中宏さんの司会で、 吉田裕さん(一橋大学)、劉彩品さん(元南京・紫金山天文台)、 梶村太一郎さん(在ドイツ・ジャーナリスト)の方々によりおこなわれました。 「南京大虐殺」を日本から、中国から、海外からどう見ているかといったことで、 また劉さんには女性の視点からも同時に提起、議論していただきました。 とても内容の濃いディスカッションになったと思います。 この他にも中国人留学生の人たちによる歌「松花江上」 や鹿島花岡裁判の原告からのアピールなど中味のぎしっしり詰まった、 そして何より参加された人にとっても充実した一日になったと思います。 シンポジュウム終了後、南京製のちょうちんを持って会場から新宿西口まで 約150名で犠牲者の追悼デモを行いました。 日本人だけでなく中国人、在日韓国・朝鮮人などの人々が参加してくれました。

翌14日は日比谷・星陵会館で日中の研究者による研究交流がおこなわれ、 今日までの成果の確認と、今後の研究協力が約束されました。 この日の内容もとても意義のあるものでした。

東京ではこのようにシンポジウムがおこなわれましたが、 他にも仙台・いわき・名古屋・金沢・京都・大阪・神戸・岡山・広島・熊本と 全国各地で同様の催しが行われました。 最後にラインハルトさんが日本でこのような催しに参加できて とても感激していたこと、 そして中国の研究者が東京で追悼デモに参加できてとてもよかったと いっていたことを報告しておきます。


報告集が出来ました。
第1日:

シンポジウム実行委員会 編:「南京大虐殺60周年東京国際シンポジウム報告書」 1998年。
          1997年12月13日南京大虐殺60周年国際シンポジウム(市民集会)の記録。
          挨拶(田中宏、田英夫、ウルズラ・ラインハルト)、基調報告=南京虐殺をどう
          みるか(章開元、藤原彰)、証言の集い(東史郎、小野賢二、伍正禧)、パネル・
          ディスカッション=南京虐殺が問う日本(田中宏、耿諄(花岡訴訟原告代表)、
          吉田裕「日本人にとって『南京大虐殺』とは」、劉彩品「中国人にとって『南京大
          虐殺』とは」、梶村太一郎「ドイツにおける歴史改竄主義と南京大虐殺」)、資料

第2日:

藤原彰 編:「南京事件をどうみるか」 青木書店、1998年。
          1997年12月14日南京大虐殺60周年国際シンポジウム(研究集会)の記録。
          序(藤原彰)、南京近郊における残虐事件(笠原十九司)、南京大虐殺を目撃した
          外国人(章開元)、第13師団山田支隊の南京大虐殺(小野賢二)、南京大残虐の
          規模を論じる(孫宅巍)、南京事件と国際法違反(斎藤豊)、南京大虐殺案件に
          対する中国軍事法廷の審判(胡菊蓉)、アメリカにおける南京大虐殺事件認識          (楊大慶)、南京大虐殺事件と歴史教科書問題(俵義文)、日本における南京虐殺
          に関する戦後補償裁判(渡辺春己)、南京の「南京大虐殺史国際シンポジウム」
          参加記(井上久士)、平和博物館の侵略・加害展示に対する攻撃(山辺昌彦)、
          プリンストン大学「南京1937年・国際シンポジウム」の記録(笠原十九司)

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