ニュース第60号 00年9月号より

山仕事仲間の会スタート〜愛知県より 

      山仕事仲間の会  高橋 啓

 

■山仕事仲間の会を紹介します

 山仕事仲間の会は、愛知県の林業従事者を中心に、今年6月1日に結成されました。会の活動は、「山師のおっさん交流会(仮称)」という、シンポジウムの開催準備です。

 現在、会員は7名、私を除いて、皆、森林組合の若手の現場作業者です。県内の4つの森林組合から参加しています。

■愛知県内の林業従事者の状況

 山仕事仲間の会ができた経緯は、財団法人 愛知県林業振興基金が県内林業従事者の労務対策のために行った聞き取り/アンケート調査がきっかけでした。

 現在、全国的な林業現場にたがわず、愛知県でも、現場の高齢化と後継者の減少が問題となっています。愛知県内で林業に携わる人々の約70%以上が60才以上です。林業への新規参入者は、平均して各森林組合2〜3年に1人の割合で採用されていますが、定着率はあまり良くないようです。

 最近、愛知県林業就業の窓口となっている財団法人 愛知県林業振興基金には、昨年度にも100件を越す新規参入の問い合わせがあったそうです。実際、現場では、他の地域から移り住み林業に携わる者が増えつつあります。県内林業従事者のうち40歳以下の人々の約60%が、既にそのような人々で占められています。

 しかし、現状はそれ程明るいモノではありません。毎年、2、30代の知った顔がぽつぽつと森林組合を去っていきます。

 林業の仕事は、「いわゆる普通」の仕事ではありません。ケガと隣り合わせの仕事であることは当然として、雇用関係が不安定であったりと、都会で選択できる就職とはかなり異なります。

 調査では、各個人の抱える問題が数多く集められました。そして、その結果を、調査に参加した人々に見てもらったところ、「自分だけがこのような問題を抱えているのではない」、さらに「もっと林業に携わる人間と意見交換がしたい」という話がでました。

 というのは、今まで、新しく林業を始めた者は3〜5人の班に入り仕事をするのですが、同じ森林組合のいくつかある班同士の交流も少なく、まして他の森林組合の人々との交流を持つ機会など皆無である状況だったからです。

 そこで、例の調査に参加した若手の現場作業者が中心となって、県内の林業に携わる人々の交流の機会を作ろうとシンポジウムを企画し、山仕事仲間の会を結成した訳です。

■「山師のおっさん交流会(仮称)」について

 このシンポジウムは、今年の冬、11月19日(日)、愛知県民の森で開催されます。主催は財団法人 愛知県林業振興基金、運営は山仕事仲間の会です。テーマは、「林業技術」です。内容は、以下の通り。

 午前中は、現場における「下刈り研修」をワークショップ形式で行います。午後は、下刈り技術を切り口とした「討論会」と、その後の一杯会です。

 「下刈り研修」は、一般的に行われる座学の教科書的なモノではなく、色々な現場(植栽地、地拵え前、間伐前等)を想定して、地域、年齢、経験をこえて、どの様な道具を使い、刃の付け方の方法、複数の人間で行うときの人員配置と後で問題の起きない作業の進め方等の意見交換を行います。

 午後は、昼食をはさんで「リラックス」のち討論会を行います。まずは、午前中の下刈り技術について、現場で十分話し合いができなかった点について議論を行う。できればこの結果を元に「真、下刈り技術」の冊子などが作成できればと思っています。さらに、技術継承の問題点・課題、教育方法、習得技術評価を議論する中で、あるべき組織のあり方や林業作業のあり方について話し合っていきたいと思っています。

 最後に、待望の交歓会(一杯会)を行い、参加者の親睦を深めたいと思っています。

■最後に

 森林に関心の目が集まっています。森とは直接関わっていなかった人々が森づくりに参加する機会が増えています。しかし、未だ、森林で働いている人々は、社会的に透明人間の扱いであるのが現状です。

 林業の現状は厳しく、収益に対する労働のコストの比率が、林業事業体の経営を圧迫している。しかし、そのために現状の現場労働者の置かれている状況を作り出す問題を明確せずに、単純に労働力をボランティアに求めることは、更に矛盾を作り出すことに繋がるような気がします。また、全国の整備が必要な森林管理の手段には、プロの手がどうしても必要です。

 現状の問題を改善し、多くの林業従事者が生きていける状況を作り出すこと、さらにあるべき森林管理のあり方を探る糸口として、このシンポジウムを実りの多いモノにしていきたいと考えています。

 なお、シンポの詳細は、FAX:05363-3-0778、

 または、E-mail:akira@aqua.ocn.ne.jp までお問い合わせ下さい。

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