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(翻訳:山崎公士・新潟大学法学部教授・人権フォーラム21企画運営委員)

 

キャンディ行動計画:国内人権機関とNGOの協力

 

アジア太平洋国内人権機関フォーラム

 

国内人権機関とNGOに関するワークショップ:提携による活動

 

199972628 スリランカのキャンディにて

                                                                             

1 序文

 

1.1 アジア太平洋国内人権機関フォーラム(以下、「フォーラム」という)を構成する国内人権機関と人権NGOは、この地域における人権の促進と保護における両者の協力を進めるため、国際連合諸機関、各国政府および国際的NGOからのオブザーバーの出席を得て、キャンディで会合した。このワークショップは、国内人権機関の強化とNGOの活動が日増しに活発化しつつあるなかで開催された。こうした活動としては、フォーラム自身の設置、アジア太平洋地域における地域的取極に関する国際連合主催による一連のワークショップ、そして合意された技術協力プロジェクトの実施を目的とする種々の会合が列挙される。この地域の各国政府は、このワークショップを国際連合人権高等弁務官の後援による技術援助プログラムの一部と位置づけている。このことは人権の促進と保護のための種々の当事者間の協力の重要性を反映している。

 

1.2 ワークショップに参加した諸機関は、この会合を招請し、我々を厚遇したスリランカ人権委員会に対し感謝の意を表明する。ワークショップは、フォーラムおよびアジア太平洋NGO人権促進チーム(以下、「FT」という)とワークショップを共催した国際連合人権高等弁務官事務所にも感謝を表明する。ワークショップに財政援助を提供した人権高等弁務官事務所、ならびにニュージーランド政府およびオーストラリア政府にも感謝を表明する。

 

1.3 ワークショップに参加した諸機関は、発言者、司会者、報告者の貢献に感謝する。

 

1.4 ワークショップに参加した諸機関は、国内人権機関とNGOに十分な意見表明の機会が与えられ、協力的な態勢でワークショップが組織されたことに満足の意を表明する。

ワークショップに参加した諸機関は、この協力精神が国内レベルおよび国際レベルでの国内人権機関とNGOの働きにも反映するように切望する。

 

1.5 ワークショップは国内人権機関とNGO間の協力が非常に重要であることを確信し、

世界人権宣言、国際人権文書およびウィーン宣言に表明された、人権の普遍性と不可分性への共通のコミットメントを基礎として国内人権機関とNGOが共に活動する必要性を確認する。さらに、国内人権機関とNGOは、人権の促進と保護において違った役割を担っており、したがって市民社会、NGOおよび国内人権機関の独立性と自律性が尊重され、支持されるべきであることを確認する。

 

1.6 国内人権機関とNGOは、その性質や構成上多様であるが、人権の保護と促進を共通目的としているので、人権に関するプロジェクトや教育において、相互の意見交換と協力が必要であることに合意する。

 

1.7 ワークショップに参加した諸機関からの参加者は、自らが実施を約束する以下の行動戦略が適切であることに合意する。

 

 

2 協力の構造としくみ

 

2.1 国内人権機関とNGO間のよりよい意見交換プロセスの重要性を認め、これを実施する。このプロセスは定期的で、透明性を保ち、包括的かつ本質的なものでなければならない。NGOがその環境や自国の国内人権機関との関係で、どのようなプロセスとしくみがもっとも適しているかを決めるよう奨励する。NGOとの関係を促進するため、焦点を定めるよう国内人権機関に奨励する。

 

2.2 共同でトレーニング・プログラムを実施する。

 

2.3 国内人権機関とNGOの間のメンバーの一時的人事交流を検討する。

 

2.4 政府や他の国家機関に勧告を行う場合に、できれば協力する。

 

2.5 国内人権行動計画の発展の奨励について、人権高等弁務官事務所と協力し、その助言を求める。

 

2.6 相互に関心ある特定の問題、とくに参加と組織についてバランスのとれたアプローチを確保することに焦点をあてたるワークショップを開催する。

 

2.7 国内人権機関とNGOが、それぞれの活動、人権問題の監視から生ずる問題点、ならびに関連する勧告について、互いに情報を提供しあうため、情報技術の利用の可能性を最大化する目的で、両者間の討議のためのしくみをつくる。

 

 

3 教育

 

3.1 実効的な人権教育はその国の人権状況の分析と世界人権宣言その他の国際人権文書にもとづくものでなければならないことを認める。

 

3.2 すべての人びとの人権が認められ、尊重され、個々人は人権をもち、その人権を確保するしくみを利用できることを個人と社会が最大限認識できる環境づくりを人権教育の目標とする。

 

3.3 国内レベルおよび地域レベルでの既存のプログラムを検討する。

 

3.4 教育計画の立案のための道具、たとえば、人権教育のための国際連合10年の枠組で準備された人権分野における国内行動計画に関する指針を活用する。

 

3.5 人権教育の計画立案やその実施を容易にし、政府に人権教育を提供する義務を遂行するよう促し、特定のプログラムを実施するのにもっとも相応しい機関を定め、重複を避け、資金調達を調整し、プログラムの実効性を監視するため、人権教育に関し協議する。国内人権機関とNGOにとって潜在的に実り多い協力分野は、両者の人権教育活動の展開を容易にするため、資料や活動資源の交換であろう。

 

3.6 初等、中等または高等教育という主流をなす教育制度のためのカリキュラムの発展について協議する。

 

3.7 教師ならびに軍隊、警察、および矯正施設職員を含む公務員のトレーニング・プログラムを協力して展開し、これへの共同参加を促す。

 

3.8 教師や両親を含む人権教育を行う者のトレーニング・プログラムを協力して展開し、これへの共同参加を促す。

 

3.9 司法府の構成員のトレーニング・プログラムについて、司法当局と協力する。

 

3.10 政府職員へのトレーニングの提供を促進するため、政府機関との合意文書を締結する。 

 

3.11 人権教育を実施できるNGOと国内人権機関の人材集団を確保する。

 

3.12 パリ原則や人権擁護者に関する宣言などの国際的・国内的人権文書に関する情報の普及のため協力する。

 

3.13 適切な場合には、個別または共同で行われるパブリックキャンペーンやメディアキャンペーンによって、人権教育をすすめる。

 

3.14 人権問題に関する報道を促すため、メディア(とくに国営メディア)との関係を発展させる。

 

3.15 公的会合、会議やメディアの行事への共同参加をすすめる。

 

3.16 インターネットのウェブサイトへの相互リンクを確立する。

 

3.17 人権教育プログラムに関する提案について、国際連合人権高等弁務官事務所や国際連合開発計画(UNDP)といった、技術援助や資金援助機関への共同または個別のアプローチをすすめる。

 

3.18 国内人権機関、NGO、国際連合の人権機構および条約実施機関の報告を、民衆の意識を高め、特定問題のを追求する手段として協力しつつ利用する。

 

 

4 苦情申立てと調査

 

4.1 国内人権機関は独自の独立した調査能力を持つべきことの重要性が合意された。

 

4.2 NGOと国内人権機関が、それぞれの苦情申立てと調査システムの傾向について議論し、しくみを改善し、国際的資料を考慮に入れ、また重複を避けるため、それぞれのシステムについて互いに知らせあう情報会議を準備する。

 

4.3 国内人権機関の苦情申立てシステムと調査システムの民衆への周知をすすめる。マニュアルや非識字者用の文字で書かれていない資料のような、関連資料の準備がこれに含まれる。不利な立場にある人びとに特別の注意を払わなければならない。

 

4.4 国内人権機関の調査権限が狭すぎるか満足のいくものではない場合には、その国内人権機関の調査権限の改善を促す共同行動を検討する。

 

4.5 NGOと国内人権機関の間での、適当と思われる特定の事例に関する情報交換をすすめる。

 

4.6 特定の事例を調査する場合、地方レベルでのNGOと国内人権機関の協力をすすめる。

 

4.7 NGOが調査プロセスに関与できるよう、透明で包括的なしくみを発展させる。

 

4.8 特定の事例に関する情報交換を促す情報技術の利用法を模索する。

 

4.9 苦情申立て、調査および報告システムの実効性を強化する目的で、共同トレーニング・コースを準備する。

 

 

5 公開調査

 

5.1 公開調査の概念、目的、しくみとありうる主題を周知する目的で共同ワークショップを開催する。最善の慣行が実行されるよう、国内人権機関およびNGOと協議する。

 

5.2 公開調査の実施が考慮される場合には、その調査の権限と戦略の立案の展開について協議する。

 

5.3 国内人権機関が公開調査を実施する場合には、とくに情報交換と現地での活動について協議する。

 

5.4 立法府は国内人権機関の報告を一定時間内に審議しなければならず、この審議が不当に遅れた場合には、国内人権機関はその報告を公表する権限をもつことを確実にするため、立法府に働きかける。 

 

5.5 メディアによる公開調査の報道を促すよう協力し、公開調査の報告を関連する国際連合機構に通知するよう協力する。

 

5.6 公開調査による勧告の実施を促すよう協力する。

 

5.7 参加した組織は、フォーラムがそのテーマ別年次ワークショップ・プログラムの一部として、公開調査に関する地域ワークショップを組織すべきことも勧告する。

                                              

 

6 立法府との関係

 

6.1 人権の促進と保護をめざし、立法府と立法者との建設的な関係および共同会合をすすめるため協力する。

 

6.2 人権問題に関する立法府による特定の行動を促す目的のキャンペーンなど、立法府への実効的な働きかけをするため、国内人権機関とNGO職員の能力強化を目的としたワークショップの開催を検討する。

 

6.3 人権や国内人権機関とNGOの役割・機能について立法者により多くの情報を与える目的のワークショップへの共同参加を検討する。

 

6.4 立法府に人権委員会の設置を奨励する。適切な場合には、議会が人権をより強調するよう奨励するため、列国議会同盟(IPU)に働きかける。

 

6.5 政党の政策綱領の中に人権の保護と促進を盛り込むよう共に活動する。

 

 

7 立法

 

7.1 関連する国際人権法上の基準を含む人権法との整合性を確保するため、法律の効力をもつ現行の立法その他の文書を体系的に見直す。そのさい、人権の不可分性の原則に合致するよう(自由権と社会権を)一体としてとらえ、これらの原則に合致するよう適切な法改正の勧告を行うことを念頭に置く。

 

7.2 法律の効力をもつ立法その他の提案が人権やこれに関連する諸原則に合致するよう確保するため、これら諸原則に合致するよう適切な法改正の勧告を行うことを念頭に置きつつ、これらの提案について広く協議し、討議するためのしくみを発展させる。

 

7.3 新しい立法、現行法の見直し、および人権条約の交渉において、政府機関がNGOや国内人権機関に意見を求めるしくみを発展させるよう政府を奨励するにあたり協力する。

 

7.4 国内人権機関が政府に立法に関する勧告をするさい、NGOに意見を求めるしくみを確立する。

 

7.5 国際人権規範に合致する国内立法を発展させるため協力する。

 

7.6 国際人権諸条約などの批准および履行、ならびにこれら諸条約に付した宣言、効力停止措置、および留保の撤回のための努力を調整する。

 

7.7 適切な場合には、立法の人権的側面を専門的に見直す広範な構成員からなる会議体の設置を奨励する。

 

 

8 新しい国内人権機関の設立

 

8.1 フォーラムはNGOと協議して、2000年の年次会合までに、パリ原則に従ったこの地域における新たな国内人権機関の設立に向けたしくみとプロセスに関する最低基準を採択するよう勧告する。そのガイドラインは、新たな機関はその職務につき独立性を有し、NGOとのパートナーシップで(設置の)プロセスとしくみを協力して発展させ、国内人権機関に関する立法提案を公聴会や公衆による検討に付し、ならびに国内人権機関の構成員の任命における透明性を確保する必要性にとくに注意を払わなければならない。かかる国内人権機関は提言、教育および調査機能を持つものでなければならない。

 

8.2 国内人権機関とNGOは、国際連合人権高等弁務官と協力して、パリ原則に従った国内人権機関の設立モデルに関し、他国の政府やNGOの要望に応じて、情報や助言を提供することに合意する。

 

 

9 アジア太平洋国内人権機関フォーラム

 

9.1 フォーラム事務局に対し、NGOと協力して、この行動計画を各国政府、国内人権機関、NGO、国際連合ならびに他の国際的・地域的機構に広く普及することを要請する。

 

9.2 フォーラム事務局に対し、地域の国内人権機関やNGOと協力し、この行動計画で提案された活動に実効性を与えるため技術協力プログラムを通じて、資金を結集するよう要請する。

 

9.3 国内人権機関とNGOは、この行動計画に実効性を与えるためとった措置について、フォーラムに簡単な年次報告を提供することに合意する。

 

9.4 19989月にジャカルタで開催された第三回フォーラム年次会合におけるNGOの参加に関する取り決めに留意し、NGOの参加によってこれからのフォーラムの会合が引き続きより良いものとなるよう、フォーラムが試みることを要請する。

 

 

10 国際活動

 

10.1 国際人権条約上の義務および条約実施機関による勧告、見解または意見の実施を監視し、政府に奨励するうえで協力する。条約実施機関への報告、ならびに実施機関の報告、勧告、見解および意見の普及について協力する。

 

10.2 国際連合の後援で開催される国際的・地域的な人権会合において、国内人権機関とNGOの参加援助に関し協議し、協力する。国際連合の機構強化に向けて、適切な場合には、政府と議会への働きかけを調整するなど協力する。

 

10.3 国際連合の人権保護メカニズムに関する情報会合を共同で開催する。人権侵害の申立てが適切な国際連合その他の政府間国際機構に提出されるようにするため、協力して活動する。

                                           (翻訳:山崎公士)

 

 

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