「人権教育のための国連10年」に関する国内行動計画


平成9年7月4日
人権教育のための国連10年推進本部

 平成6年(1994年)12月の国連総会において、平成7年(1995年)から平成16年(2004年)までの10年間を「人権教育のための国連10年」とすることが決議された。

 これを受けて、政府は「人権教育のための国連10年」に係る施策について、関係行政機関相互の緊密な連携・協力を確保し、総合的かつ効果的な推進を図るため、平成7年(1995年)12月15日、閣議決定により、内閣に人権教育のための国連10年推進本部を設置した。

 推進本部は平成8年(1996年)3月18日、第1回会合を開催し、政府として積極的な取組を推進していくことを確認した後、国内行動計画の策定作業を進め、平成8年(1996年)12月6日に、「人権教育のための国連10年」に関する国内行動計画(中間まとめ)を公表した。

 その後、推進本部においては、中間まとめに対して各方面から寄せられた意見等に十分配慮しつつ検討を進め、このたび「人権教育のための国連10年」に関する国内行動計画を取りまとめた。

 人権教育のための国連10年推進本部は、この国内行動計画に掲げられた諸施策の着実な実施等を通じて、人権教育の積極的推進を図り、もって、国際的視野に立って一人一人の人権が尊重される、真に豊かでゆとりのある人権国家の実現を期するものである。

(注)「人権教育」とは、「知識と技術の伝達及び態度の形成を通じ、人権という普遍的文化を構築するために行う研修、普及及び広報努力」と「人権教育のための国連10年行動計画」において定義されている。


1. 基本的考え方

(1)冷戦終了後、東西対立の崩壊とともに、世界各地で地域紛争やこれに伴う顕著な人権侵害、難民発生など、深刻な問題が表面化した。しかし、一方で東西対立の崩壊は、国際社会全体での議論を可能とする環境を創り出し、人権に取り組む気運が高まった。
 平成5年(1993年)には、世界人権宣言採択45周年を機に、これまでの人権活動の成果を検証し、現在直面している問題、今後進むべき方向を協議することを目的としてウィーンにおいて世界人権会議が開催された。この会議は全ての人権が普遍的であり、人権が正当な国際的関心事であることを確認し、人権教育の重要性を強調した点で重要な出来事であった。以後、国連としての人権に対する取組も強化され、平成6年(1994年)には人権問題を総合的に調整する役割を担う国連人権高等弁務官が創設されたほか、第49回国連総会(平成6年(1994)年12月)では「人権教育のための国連10年」を決定する決議が採択された。また、平成7年(1995年)9月に北京で開催された第4回世界女性会議においては、女性の権利は人権であることが明確に謳われるとともに、人権教育の重要性が指摘された。こうした動きは、人権に対する国際的関心が結晶化したものである。
 人権の擁護・促進のためには、そもそも人権とは何かということを各人が理解し、人権尊重の意識を高めることが重要であり、人権教育は、国際社会が協力して進めるべき基本的課題である。

(2)人権教育の推進に当たっては、このような国際的潮流とともに、平成8年(1996年)5月17日の地域改善対策協議会意見具申に述べられている次のような認識を踏まえることが重要である。
 「今世紀、人類は、二度にわたる世界大戦の惨禍を経験し、平和が如何にかけがえのないものであるかを学んだ。しかし、世界の人々の平和への願いにもかかわらず、冷戦構造の崩壊後も、依然として各地で地域紛争が多発し、多くの犠牲者を出している。紛争の背景は一概には言えないが、人種、民族間の対立や偏見、そして差別の存在が大きな原因の一つであると思われる。こうした中で、人類は、『平和のないところに人権は存在し得ない』、『人権のないところに平和は存在し得ない』という大きな教訓を得た。今や、人権の尊重が平和の基礎であるということが世界の共通認識になりつつある。このような意味において、21世紀は『人権の世紀』と呼ぶことができよう。
 我が国は、国際社会の一員として、国際人権規約をはじめとする人権に関する多くの条約に加入している。懸案となっていた『あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約』(人種差別撤廃条約)にも加入した。世界の平和を願う我が国が、世界各国との連携・協力の下に、全ての人の人権が尊重され、あらゆる差別の解消を目指す国際社会の重要な一員として、その役割を積極的に果たしていくことは、『人権の世紀』である21世紀に向けた我が国の枢要な責務というべきである。」

(3)翻って我が国社会を見ると、依然として、様々な人権問題が存在してる。また、近年、著しく国際化、ボーダーレス化が進展している状況下において、広く国民の間に多元的文化、多様性を容認する「共生の心」を醸成することが何よりも要請される。このため、各種の啓発と相まって、人権に関する教育の一層の充実を図る必要がある。さらに社会の複雑化、個々人の権利意識の高揚、価値観の多様化等に伴い、従来あまり問題視されなかった分野においても各人の人権が強く認識されるようになってきたことから、新たな視点に立った人権教育・啓発の必要性も生じてきている。このような我が国の現状に鑑みると、「人権教育のための国連10年」は、全ての人権の不可分性と相互依存性を認識し、人権尊重の意識の高揚を図り、もって「人権」という普遍的文化の創造を目指すものであって、その意義は極めて重要である。

(4)この国内行動計画は、憲法の定める基本的人権の尊重の原則及び世界人権宣言などの人権関係国際文書の趣旨に基づき、人権の概念及び価値が広く理解され、我が国において人権という普遍的文化を構築することを目的に、あらゆる場を通じて訓練・研修、広報、情報提供努力を積極的に行うことを目標とする。
 また、人権教育を進めるに当たっては、人権にかかわりの深い特定の職業に従事する者に対する取組を強化するとともに、本10年の展開において、女性、子ども、高齢者、障害者、同和問題、アイヌの人々、外国人、HIV感染者等、刑を終えて出所した人などの重要課題に積極的に取り組むこととする。

(5)さらに、我が国は人権分野でも国際社会において積極的な役割を果たして行くべきであり、特に国連を始めとする人権関係の国際的フォーラムは重要である。そのためにも、我が国の国民の生活が深く他国の国民の生活と結びついていることを認識しつつ、人権教育の推進を通じ、他国・他地域の人権状況についても関心を深め、国内外の人権意識の高揚を図っていくことが必要である。また、本10年の実施に当たっては、国内的実施措置とともに、国際社会、なかんずくアジア太平洋地域の国々と協力・協調して人権教育を促進していくとの視点が必要である。

(6)また、人権の問題は、国民一人一人が人権の意識を高め、他者の価値を尊重する意識、態度の涵養が重要である。このためには、政府の果たす役割とともに、地方公共団体、民間団体等に期待される役割も大きい。
 このため、地方公共団体、民間団体等がそれぞれの分野において、この行動計画の趣旨に沿った様々な取組を展開することを期待する。政府としては、この計画を実施するに当たっては、これらの団体等の取組、意見に配慮する。また、人権教育を広く国民各層に浸透させるため、様々な機会をとらえて「人権教育のための国連10年」の趣旨等を広める必要がある。


2. あらゆる場を通じた人権教育の推進

(1) 学校教育における人権教育の推進
学校教育においては、日本国憲法及び教育基本法並びに国際人権規約、児童の権利に関する条約等の精神にのっとり、人権教育を推進する。その際、依然として様々な人権問題が存在していることを踏まえ、初等中等教育においては、幼児児童生徒がすべての人の人権を尊重する意識を高める教育を一層充実する。また、大学教育においては、それまでの教育の成果を確実なものとし、人権意識を更に高揚させるよう配慮する。

特に、以下の諸施策を積極的に推進する。
@ 初等中等教育において、児童生徒の発達段階に即し、各教科、道徳、特別活動等の特質に応じながら、各学校の教育活動全体を通じて人権尊重の意識を高め、一人一人を大切にした教育を推進する。なお、幼児期の教育においては、幼児の発達の特性を踏まえ、人権尊重の精神の芽生えを育むことに努める。
A 研究指定校等による実践的調査研究や各種資料の作成等により、人権教育に関する指導内容・方法を充実させる。また、このような趣旨を実現するため、地方公共団体や学校による、地域や学校の実態に即した取組を一層促進する。さらに、教員等を対象とする各種研修や情報の提供等により学校における人権教育を支援する。
B 各大学における人権に関する教育・啓発活動について、一層の取組に配慮する。


(2) 社会教育における人権教育の推進
社会教育においても、日本国憲法及び教育基本法の精神にのっとり、人権尊重の意識を高める教育が推進されてきており、今後とも、人権を現代的学習課題の一つとして示した生涯学習審議会答申(平成4年(1992年)7月)等を踏まえ、生涯学習の振興のための各種の施策を通じて、人権に関する学習を一層推進していく。

特に、以下の諸施策を積極的に推進する。
@ 公民館を始めとする社会教育施設を拠点とした学級・講座の開設、ボランティア活動の推進を図るとともに、大学の公開講座の実施等により、人権に関する学習機会を充実させる。
A 人権に関する学習活動を総合的に推進するための事業を実施する。
B 非識字問題の解消を図る識字教育を充実するとともに、障害者等の学習機会を充実させる。
C 人権に関する学習活動のための指導者養成、資料の作成、学習情報提供・学習相談体制の整備・充実を図る。


(3) 企業その他一般社会における人権教育等の推進
企業その他一般社会においても、人権思想の普及・高揚のための人権教育・啓発を推進しているところであるが、人権尊重の意識のさらなる高揚を図るため、特に以下の施策を推進する。

@ 人権が侵害された場合における被害者の救済に関する施策について調査研究する。
A 一般社会における人権教育の手法等に関する調査研究、人権教育に関するプログラムの開発及び人権擁護に関するマニュアル、パンフレット、教材、資料等の作成を行い、これによる効果的な啓発活動を推進する。
B 世界人権宣言を始めとする国連人権関係文書の趣旨の普及・広報及びマスメディアの活用を図る。特に世界人権宣言採択50周年に当たる平成10年(1998年)には、記念式典を始めとする各種記念事業を実施する。
C 人権擁護委員を始めとする人権教育の指導者の育成及びボランティアの積極的活用を図る。
D 人権に関する情報の整備・充実を行い、一般市民が利用しやすい環境を整備する。
E 人権相談体制の充実により人権思想を普及・高揚させる。
F 財団法人人権教育啓発推進センターにおける、人権教育及び人権啓発を推進し、支援するための活動に対して、関係省庁はこれを積極的に支援する。
G 企業等に対して就職の機会均等を確保するための公正な採用選考システムの確立が図られるよう指導・啓発を行う。


(4) 特定の職業に従事する者に対する人権教育の推進
人権教育の推進に当たっては、人権にかかわりの深い特定の職業に従事する者に対して、人権教育に関する取組を強化する必要がある。
そこで、以下のとおり特定の職業に従事する者に対する研修等における人権教育の充実に努める。
@ 検察職員
人権を尊重した検察活動を徹底するため、検察官及び検察事務官に対する各種研修における人権教育を充実させる。
A 矯正施設・更生保護関係職員等
  ア 刑務所、拘置所、少年院及び少年鑑別所等の矯正施設における被収容者の人権の尊重を図る観点から、矯正施設の職員の各種研修における人権教育を充実させ、施設の監督職員に対する指導を行う。
 イ 保護観察対象者並びに刑務所や少年院等矯正施設に在所中の者及び引受人等関係者の人権の尊重を図る観点から、保護司研修及び更生保護関係職員に対する各種研修における人権教育を充実・徹底する。
B 入国管理関係職員
出入国審査、在留資格審査等の対象たる外国人及び入国者収容所等の収容施設における被収容者の人権の尊重を図る観点から、入国審査官、入国警備官等に対する各種研修における人権教育を充実させる。
C 教員・社会教育関係職員
学校の教員や社会教育主事などの社会教育関係職員については、各種研修、資料の作成等を通じ、人権に関する理解・認識を一層向上させる。
D 医療関係者
医師・歯科医師・薬剤師・看護婦・理学療法士・作業療法士等医療関係者を育成する学校や養成所における人権教育を拡充する。
E 福祉関係職員
ア 民生委員・児童委員に対する人権に関する研修を充実させる。
イ ホームヘルパーや福祉施設職員に対する子ども、高齢者、障害者等の人権に関する研修を充実させる。
ウ 社会福祉施設職員及び介護福祉士等の養成・研修に対し、人権意識の普及・高揚が図られるようその教育研修の内容を充実させる。
エ 保母養成施設など児童福祉関係職員養成所における子どもの人権についての教育を充実させる。
F 海上保安官
法の励行に携わる海上保安官の人権を尊重する知識の涵養を図るため、海上保安大学校等の教育機関の学生に対する人権教育、海上保安官に対する階層別研修における人権教育を充実し、質の向上に努める。
G 労働行政関係職員
労働基準監督署職員及び公共職業安定所職員については、各種研修の場を通じ、人権に関する理解・認識を一層向上させる。
H 消防職員
消防大学校において、消防職員に対し、人権教育を実施する。
I 警察職員
人権を尊重した警察活動を徹底するため、「警察職員の信条」に基づく職業倫理教養の推進、適切な市民応接活動の強化を始めとする被疑者、被留置者、被害者その他関係者の人権への配慮に重点を置いた職場及び各級警察学校における教育訓練を充実させる。
J 自衛官
防衛大学校・各自衛隊の幹部候補生学校等における各教育課程で の人権教育を推進する。
K 公務員
すべての公務員が人権問題を正しく認識し、それぞれの行政において適切な対応が行えるよう各研修における人権教育を充実させる。
L マスメディア関係者
人権問題に関してマスメディアが大きな影響力を有していることに鑑み、マスメディアに従事する関係者において人権教育のための自主的取組が行われることを促す。


3. 重要課題への対応
人権教育の推進に当たっては、女性、子ども、高齢者、障害者、同和問題、アイヌの人々、外国人、HIV感染者等、刑を終えて出所した人等の重要課題に関して、それぞれの固有の問題点についてのアプローチとともに、法の下の平等、個人の尊重という普遍的な視点からのアプローチにも留意する。

(1)女性
女性の人権に関しては、昭和54年(1979年)12月、第34回国連総会で「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(女子差別撤廃条約)」が採択され、近年の国際会議においてもその重要性が大きく取り上げられている。

平成5年(1993年)6月にウィーンで開催された世界人権会議で採択された「ウィーン宣言及び行動計画」において、男女の平等な地位及び女性の人権、特に女性に対する暴力の根絶が打ち出され、同年12月には第48回国連総会において、「女性に対する暴力の撤廃に関する宣言」が採択された。さらに、国連環境開発会議や国際人口・開発会議、社会開発サミットでも女性の人権の重要性が強調された。

平成7年(1995年)9月に北京で開催された第4回世界女性会議で採択された「北京宣言」において「女性の権利は人権である」と謳われ、「行動綱領」では、「女性と健康」、「女性に対する暴力」、「女性の人権」、「女性とメディア」、「女児」等12の重大問題領域が設定され、具体的な行動が提案された。

国内的には、平成8年(1996年)7月、男女共同参画審議会から「男女共同参画ビジョン−21世紀の新たな価値の創造−」が答申され、同年12月には、男女共同参画推進本部において、「男女共同参画2000年プラン−男女共同参画社会の形成の促進に関する平成12年(西暦2000年)度までの国内行動計画−」が策定された。

これらの動向及び「男女共同参画2000年プラン」を踏まえ、以下の取組を進める。
@ 男女共同参画推進本部を中心に、男女共同参画社会の形成に向けて政府一体となった取組の一層の推進を図る。
A 政策・方針決定過程への女性の参画を拡大するため、政府が率先垂範して取組を進めるとともに、企業、各種団体等に対し協力要請を行い、社会的気運の醸成を図る。
B 男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し、意識の改革を図るため、人権週間、婦人週間等多様な機会、多様な媒体を通じ、国民的広がりを持った啓発・広報活動を展開する。また、女性の権利に関連の深い国内法令や、女子差別撤廃条約、第4回世界女性会議「行動綱領」等の国際文書の内容の周知に努める。
C 雇用における男女の均等な機会と待遇の確保等のため、啓発等を行うとともに、働くことを中心に女性の社会参加を積極的に支援するための事業やその拠点施設の整備を実施する。
D 農山漁村の女性が農林漁業・農山漁村の発展に対し、男性とともに積極的に参画できる社会を実現するため、農林漁業や農山漁村社会でのパートナーである男性を含めた家庭及び地域社会において農山漁村の女性の地位向上・方針決定への参画促進のための啓発等を実施する。
E 性犯罪、売買春、家庭内暴力等女性に対するあらゆる暴力の根絶に向けて、厳正な取締りはもとより、被害女性の人権を守る観点から、事情聴取等を被害者の希望に応じた性別の警察官が行えるようにするなど、必要な体制を整備するとともに、事情聴取、相談等に携わる職員の教育訓練を充実する。
F 外国人女性の人権を守る観点から、入国管理等に携わる職員に対する人権教育の充実を図る。
G 性の商品化や暴力表現が女性の人権を侵害している現状を改善し、女性の人権を尊重した表現を行うよう、また、方針決定の場に女性を積極的に登用するよう、メディアの自主的取組を促す。
H 家庭、学校、地域など社会のあらゆる分野における男女平等を推進する教育・学習を充実させる。また、女性の学習・実践活動を通じた社会参加を促進する。
I 我が国のイニシアティブにより国連婦人開発基金(UNIFEM)内に設置された「女性に対する暴力撤廃のための信託基金」に対して協力する。
J 女性に対する人権侵害の発生を防止するため、人権尊重の意識の普及・高揚を図るための啓発活動を充実・強化するとともに、人権相談体制を充実させる。

(2) 子ども
基本的人権の尊重を基本理念に掲げる日本国憲法及びこれに基づく教育基本法、児童福祉法等の法令並びに国際人権規約、児童の権利に関する条約等の国際条約の趣旨に沿って、政府のみならず、地方公共団体、民間団体、学校、家庭等、社会全体が一体となって相互に連携を図りながら幼児児童生徒の人権の尊重及び保護に向けた取組を推進する。

特に、以下の諸施策を積極的に推進する。
@ 学校教育において、幼児児童生徒の人権に十分配慮し、一人一人を大切にした教育指導や学校運営が行われるよう、児童の権利に関する条約の趣旨・内容を周知する。また、社会教育においても、同条約の内容・理念が広く理解され、定着されるよう、公民館等における各種学級・講座等を開設し、学習機会を充実させる。
A いじめは、児童生徒の人権に関わる重大な問題であり、その解決のための真剣な取組を一層推進する。また、児童生徒一人一人を大切にした個性を生かす教育、教員に対する研修の充実、教育相談体制の整備、家庭・学校・地域社会の連携、学校外の様々な体験活動の促進など各種施策を推進する。
B いじめ問題、虐待の防止など児童の健全育成上重大な問題についての総合的な取組を推進するとともに、児童の権利に関する啓発活動を推進する。
C 犯罪等の被害に遭った少年に対し、カウンセリング等による支援を行うとともに、少年の福祉を害する犯罪の取締りを推進し、被害少年の救出・保護を図る。
D 児童買春、児童ポルノ、児童売買といった児童の商業的性的搾取の問題が国際社会の共通の課題となっており、我が国としても、児童の商業的性的搾取の防止等について、積極的に取り組む。
E 子どもの人権を守るための「子どもの人権専門委員」制度を充実・強化するとともに、電話相談を含めた人権相談体制を充実させる。
F 保育所保育指針における「人権を大切にする心を育てる」ため、この指針を参考として児童の心身の発達、家庭や地域の実情に応じた適切な保育を実施する。

(3) 高齢者
高齢者が安心して自立した生活を送れるよう支援するとともに、高齢者がそれぞれの経験と能力を生かし、高齢社会を支える重要な一員として各種の社会的な活動に積極的に参加できるための条件の整備を図る。

@ 学校教育においては、高齢化社会の進展を踏まえ、主に社会科や道徳、特別活動において福祉教育を推進する。
A 高齢者の学習機会の体系的整備並びに高齢者の持つ優れた知識・経験等を生かして社会参加してもらうための条件整備を促進する。
B 高齢者と他の世代との相互理解や連帯感を深めるため、世代間交流の機会を充実させる。
C「敬老の日」の行事を通じ、広く国民が高齢者の福祉について関心と理解を深める。
D 高齢化が急速に進行している農山漁村において、高齢者が精神的、身体的、経済的、社会的な面において生涯現役を目指し、安心して住み続けられるよう支援する。
E 高齢者が長年にわたり培ってきた知識、経験等を活用し、65歳まで現役として働くことができる社会を実現するため、60歳定年の完全定着、継続雇用の推進、多様な形態による雇用・就業機会の確保のための啓発活動に取り組む。
F 虐待その他高齢者に対する人権侵害の発生を防止するため、人権尊重の意識の高揚を図るための啓発を行い、人権相談体制を充実させる。

(4) 障害者
障害者のライフステージの全ての段階において全人間的復権を目指すリハビリテーションの理念と、障害者が障害のない人と同等に生活し活動する社会を目指す「ノーマライゼーション」の理念の下に、特に次のような施策の推進を図る。

@ 障害者の自立と社会参加をより一層推進し、障害者の「完全参加と平等」の目標に向けて「ノーマライゼーション」の理念を実現するための啓発・広報活動を推進する(障害者の日及び週間を中心とする啓発・広報活動等)。
A 障害のある子どもに対する理解と認識を促進するため、小・中学校等や地域における交流教育の実施及び講習会の開催、小・中学校の教員等のための指導資料の作成・配布、並びに学校教育関係者及び保護者等に対する啓発事業を推進する。
B 精神障害者に対する差別、偏見の是正のため、地域精神保健福祉対策促進事業等に基づきノーマライゼーションの理念の普及・啓発活動を推進し、精神障害者の人権擁護のため、精神保健指定医、精神保健福祉相談員等に対する研修を実施する。
C 障害者の社会参加と職業的自立を促進するため、障害者雇用促進月間を推進し、全国障害者雇用促進大会及び身体障害者技能競技大会を開催するとともに、情報誌の発行等事業主を始めとする国民全般に対する啓発活動を推進する。
D 障害者に対する差別や偏見を解消するため、人権尊重の意識の普及・高揚を図るための啓発活動を充実・強化するとともに、人権相談体制を充実させる。

(5) 同和問題
同和問題に関する差別意識の解消を図るに当たっては、地域改善対策協議会意見具申(平成8年(1996年)5月17日)を尊重し、これまでの同和教育や啓発活動の中で積み上げられてきた成果等を踏まえ、すべての人の基本的人権を尊重していくための人権教育、人権啓発として発展的に再構築し、その中で同和問題を人権問題の重要な柱として捉え、今後とも、この問題に固有の経緯等を十分に認識しつつ、国際的な潮流とその取組を踏まえて以下の施策を積極的に推進する。

@ 同和問題に関する差別意識の解消に向けた教育及び啓発に関する事業については、「同和問題の早期解決に向けた今後の方策について(平成8年(1996年)7月26日閣議決定)」に基づき、次の人権教育・人権啓発の事業に再構成して推進する。特に教育に関する事業については、学校、家庭及び地域社会が一体となって進学意欲と学力の向上を促進する内容をも含むものとして推進する。
ア 人権問題啓発推進事業
イ 小規模事業者等啓発事業
ウ 雇用主に対する指導・啓発事業
エ 教育総合推進地域事業
オ 人権教育研究指定校事業
カ 人権教育総合推進事業
キ 人権思想の普及高揚事業

A 隣保館において、地域改善対策協議会意見具申(平成8年(1996年)5月17日)に基づき、周辺地域を含めた地域社会全体の中で、福祉の向上や人権啓発の住民交流の拠点となる開かれたコミュニティーセンターとして、総合的な活動を推進する。

B 今後の教育及び啓発の中で同和関係者の自立向上という目標を重視するとともに、えせ同和行為の排除を徹底する。また、同和問題についての自由な意見交換のできる環境づくりを推進する。さらに、教育の中立性を確保する。

(6) アイヌの人々
アイヌの人々に対する取組に当たっては、国民一般が、アイヌの人々の民族としての歴史、文化、伝統及び現状についての理解と認識を深め、その人権を尊重していくことが重要であり、その観点から特に以下の施策に取り組む。

@ 平成8年(1996年)4月の「ウタリ対策のあり方に関する有識者懇談会」報告書の趣旨を尊重して、「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」に基づき、アイヌの人々の誇りの源泉であるアイヌの伝統及びアイヌ文化(以下「アイヌの伝統等」という。)が置かれている状況等に鑑み、アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する国民に対する知識の普及及び啓発を図るための施策を推進する。
A 学校教育におけるアイヌの人々の人権についての教育は、社会科等において取り上げられており、今後とも引き続き、基本的人権尊重の観点に立った教育推進のための教員の研修を充実させる。
B 各高等教育機関等におけるアイヌ語やアイヌ文化に関する教育研究について、取組に配慮する。
C 生活館において、アイヌの人々の生活の改善向上・啓発等の活動を推進する。
D アイヌの人々に対する人権侵害の発生を防止するため、人権尊重の意識の普及・高揚を図るための啓発活動を充実・強化するとともに、人権相談体制を充実させる。

(7) 外国人
今日、我が国社会は、諸外国との人的・物的交流の増大に伴い、外国人をめぐって様々な人権問題が生じている。
そこで、外国人に対する偏見・差別を除去するため、特に以下の施策を推進する。
@ .$B309q?M$KBP$9$k?M8"LdBj$N2r7h$r?^$k$?$a.(I$外国人のための人権相談体制を充実させる。
A 外国人に対する差別意識解消のための啓発活動を推進する。
B 定住外国人に対する嫌がらせや差別事象の発生を根絶するための啓発活動を推進する。

(8)HIV感染者等
@ HIV感染者
ア 世界エイズデーの開催や、エイズに関するパンフレットの配布、各種の広報活動等を通じて、エイズ患者やHIV感染者に対する偏見・差別を除去し、エイズ及びその感染者への理解を深めるための教育・啓発活動を推進する。
イ 学校教育においては、発達段階に応じて正しい知識を身に付けさせることにより、エイズ患者やHIV感染者に対する偏見や差別をなくすため、エイズ教育を推進し、教材作成及び教職員の研修を充実させる。
ウ エイズ患者やHIV感染者に対する誤解・偏見や差別意識を持つことのないよう、エイズに関する理解の促進のための学習機会を充実させる。
エ 職場におけるエイズ患者やHIV感染者に対する誤解等から生じる差別の除去等のためのエイズに関する正しい知識を普及する。
A ハンセン病
ハンセン病については、平成8年(1996年)に「らい予防法」が廃止されたところであるが、ハンセン病に対する差別や偏見の解消に向けて、ハンセン病資料館の運営、啓発資料の作成・配布等を通じて、ハンセン病に関する正しい知識の普及を推進する。

(9)刑を終えて出所した人
刑を終えて出所した人に対する偏見・差別を除去し、これらの者の社会復帰に資するための啓発活動を実施する。

(10)その他
以上のほか、人権に関するその他の課題についても引き続き、偏見・差別を除去し、人権が尊重されるための施策を推進する。


4. 国際協力の推進
我が国は人権教育の分野での国際協力においても積極的な役割を果たしていくべきであり、その推進に当たっては、必要に応じ国連人権高等弁務官、国連人権センター等とも連携していくこととする。
 @ 国連総会、国連人権委員会における「人権教育のための国連10年」に関する取組に貢献する。
 A 国連に設けられた「人権分野における諮問サービス及び技術的援助のための自発的基金」等の人権関係基金に協力し、これらの基金を用いて国連人権センター等が開発途上国に対して実施する人権教育関連のプロジェクトに寄与する。
 B 我が国からの開発途上国に対する人権教育関連の協力を引き続き推進する。
 C 我が国において国際的な人権シンポジウムを開催する。特に人権教育をテーマとすること、世界人権宣言採択50周年に当たる平成10年(1998年)には同宣言をテーマとすることを検討する。
 D 本国内行動計画については、国連人権高等弁務官に報告する。


5. 計画の推進
(1)この計画を実施するため、政府においては、人権教育のための国連10年推進本部を軸として、行政機関相互の密接な連携を図りつつ、総合的な施策を推進するとともに、各省庁の施策の実施に当たっては、本行動計画の趣旨を十分踏まえることとする。また、「人権教育のための国連10年」の趣旨等について様々な機会をとらえ周知を図る。さらに、本行動計画の施策の積極的な推進等を通じ、人権教育・啓発を総合的かつ効果的に推進するための体制の在り方について検討する。政府全体の取組における連絡調整体制の在り方についても併せて検討する。
(2)本行動計画の実施に当たっては、人権擁護施策推進法に基づき法務省に設置された、人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本的事項等を調査・審議する人権擁護推進審議会における検討結果を反映させる。
(3)様々な差別意識の解消を図り、すべての人の人権尊重の意識を高めていくためには、地方公共団体その他の公的機関、民間団体等の果たす役割が大きい。このことに鑑み、これらの団体等が、それぞれの分野において、本行動計画の趣旨に沿った自主的な取組を展開することを期待するとともに、本行動計画の実施に当たっては、これらの団体等の取組や意見に配慮する。
(4)この計画の推進状況について、定期的にフォローアップを行い、その結果を施策の推進に反映するとともに、この計画自体を必要に応じ見直す。


 

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