日本で、グローバルコンパクト説明会開催(2002年5月21日)

 グローバル化時代の新しい企業のあり方を提唱する、国際連合の「グローバル・コンパクト」の説明会が5月21日に東京・大手町の経団連会館で開かれました。「グローバル・コンパクト」は、世界の有力企業に、国際的に認められている人権、労働、環境の9つの原則を遵守していただき、より良き地球市民を目指していただこうというプログラムで、1999年1月、スイスのダボスで開催された世界経済フォーラムでアナン事務総長が呼びかけたものです。

 このプログラムは世界各国で大きな反響を呼び、すでに40カ国以上で500社余りの企業が参加しています。日本では、キッコーマン株式会社(2001年1月参加)とリコー株式会社(2002年5月参加)がメンバーになっていますが、更に多くの日本企業に入っていただくため、東京の国連広報センターが、経団連傘下の社団法人・海外事業関連協議会のご協力を得て説明会を催したものです。
 各企業にとっては多忙な時期だったにもかかわらず、73社から100人余の方々が参加され、会場は熱気に包まれました。説明会では、まず当センターの高島肇久所長が「グローバル・コンパクトの『コンパクト』は化粧品や自動車ではなく、『口約束』と『契約』との間ぐらいの緩やかな状態を指す言葉です。国連がなぜ今このようなプログラムを始めたのか、担当者から直接お聞きください」と挨拶しました。
 続いて東ティモールの独立記念式典から駆けつけたゼフリン・ディアブレ国連開発計画(UNDP)副総裁が次のように述べました。「グローバル・コンパクトは、各企業が人権、労働、環境の諸原則を守ることによって、グローバル市場をより人間的なものにし、グローバル化がもたらす機会と恩恵を地球上の全ての人々が等しく手に入れられるようにしようというものです。参加企業は企業活動の様々な分野でグローバル・コンパクトの精神を実行に移すことが求められますが、それと同時に、貧困、社会不安、環境破壊といった社会的な問題に対して自分たちは何ができるかを考え、実践していただくことが期待されています。つまりグローバル・コンパクトは、各企業が『責任ある企業市民』へと変貌し、社会的責任を果たしたり、社会的投資を行ったりする上でより優れた、効果的な行動をとれるようにする重要なツールとなるものです。言い換えれば、グローバル・コンパクトへの参加は重要な企業戦略そのものであり、他社への優位性確保の道なのです」。
 一方、日本から最初にグローバル・コンパクトに参加したキッコーマン株式会社の茂木友三郎社長は「他にも沢山の日本企業がいるものと思って参加したところ、第一号だったのでビックリしました。わが社は『地球社会にとって存在意義のある会社に』を経営方針としていますが、特に地球環境との共生を最重要課題としており、グローバル・コンパクトへの報告もこの点を中心に行っています」と自らの体験を報告されました。
 ニューヨークの国連本部グローバル・コンパクト事務局から参加したフレデリック・ドゥビー次席は、グローバル・コンパクトに参加した各国の企業が9原則を守り、その活動内容を国連に報告するという約束を果たすだけでなく、様々な形で貧困、疫病の撲滅や持続可能な開発の面で積極的な貢献をしている実例をいくつか紹介しました。その1つに、スウェーデンに本社を置く飲料用容器メーカーが中国で行っている合弁事業は、契約農家に無料で乳牛を提供するかわりに決められた量の牛乳を生産してもらい、これを保存用の容器に入れて地域の住民に安く売ることによって、住民の栄養状態を改善して病気を予防し、農家には1頭あたり日本円で年5万円程度の収入を保証して生活水準を上げるという一石何鳥もの効果を上げているそうです。
 国際労働機関(ILO)から参加したハンス・ホフメイヤー雇用総局主任は、グローバル・コンパクトの労働関係の原則をより広く理解していただくため、ILOは企業の経営者や管理者のための解説書を作成中だと説明し、日経連がグローバル・コンパクトをアジア各国に広めて行く上でILOを支援していることに謝意を表明しました。
 学界から参加された麗澤大学国際経済学部の高巌教授は「グローバル化とは企業が規制のない場所に出て行くことを意味しますが、自分自身をコントロールする仕組みがなければ暴走を防ぐことはできません。グローバル・コンパクトは企業が社会的責任を果たすことを担保するものであり、グローバル化時代の新たな競争力を生む道です」と述べてグローバル・コンパクト参加の意義を強調されました。
 最後に発言された株式会社・資生堂の福原義春名誉会長は21世紀の企業のあり方について次のような持論を展開されました。「企業が社会の人的資源や空間など人類の共有財産(コモンズ)を利用しながら活動する限り、これによって得た利益は、投資家に還元するだけでなく社会全体に還元すべきです。企業が、工場進出した途上国の社会全体のレベルアップを図るなど、地球全体を見て行動することが信頼を得る道であり、今やこうしたことが急速に必要となってきています。これこそが新しいビジネスのあり方です」。
 説明会の後、国連広報センターには出席された各企業からグローバル・コンパクトへの参加方法などについての問い合わせが相次いでおり、関心の高さを物語っています。

お問い合わせは
  グローバル・コンパクト
  事務局ホームページ(国連本部)
  http://www.unglobalcompact.org
  国連広報センター(東京)
  E-mail: globalcompact@untokyo.jp
  までどうぞ。


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