これからの日本の人権保障システムの整備をめざして
―人権フォーラム21の「人権政策提言ver2」の公表にあたって―

2001年12月3日
人権フォーラム21
事務局長 山崎公士

 21世紀に入り、日本の人権保障システムをめぐって目立った動きが進行しつつある。2000年11月に成立した人権教育・啓発推進法を実施するための国の「基本計画」は2001年度中の公表に向けて法務省と文部科学省が策定中で、近々市民からパブリック・コメント手続が始まるものと思われる。
 人権擁護推進審議会は2001年5月25日にいわゆる「救済」答申を出し、人権救済機関として人権委員会を新設する方向性を示した。その後法務省人権擁護局でこの答申を踏まえた「人権救済立法」の法案化が検討されていたが、2001年12月3日に、差別や公権力による人権侵害の救済を目的とした「人権救済立法」の詳細が明らかになった。救済措置を担当する「人権委員会」を法務省の外局として新設するほか、調停や勧告などを行う「特別救済」の対象として、マスメディアによる人権侵害を明記する方針を示している。法務省は来年の通常国会に法案を提出し、2003年度中の施行を目指す方針と伝えられる(『毎日新聞』2001.12.4記事)。
 人権フォーラム21はかねてから、@新たな人権救済機関として人権委員会は必要であるが、A人権委員会は政府から完全に独立したものでないと公権力による人権侵害等に関する実効的救済は望めない、と主張してきた。しかしながら、新聞報道によれば、新設の人権委員会は、法務省の外局と位置付けられ、公正取引委員会や中央労働委員会などと同じく国家行政組織法3条2項に基づく組織(3条委員会)とされる見込みである(2001.11.8毎日新聞記事)。
 2001年9月11日のいわゆる同時多発テロとその後の欧米諸国等によるアフガニスタンへの軍事的制裁や構造不況対策など多難な内外情勢の中で、人権保障システムの確立という一見地味な課題は埋もれがちである。同じ法務省関係の司法制度改革の論議に比べても、人権救済立法関係のニュースは極端に少ない。しかし、人権保障の問題はすべての市民に関係する極めて重大な課題である。この課題に関する立法作業が、あまり注目されない状況の中で、いま静かに深く進行している。
 こうした情勢にあって、人権フォーラム21は、2000年11月10日に公表した「人権政策提言」の改訂版として、提言ver.2「これからの日本の人権救済システム」をここに公表する。静かに深く進行中の「人権救済立法」の動きに関し、いま何が問題なのか、市民のための望ましい人権システムとは何か、望ましい人権救済制度とは何かを明確に示すためである。「人権救済立法」の動きを理解し、市民の立場からこの動きを監視し、これを批判するため、「人権政策提言ver.2―これからの日本の人権救済システム」を活用頂ければ、幸いである。
 吉良ル12月6日〔木〕に予定されている人権フォーラム21第5回総会&シンポジウム「世界の差別禁止法と国内人権機関」においても、この「人権政策提言ver.2―これからの日本の人権救済システム」について、活発な論議を期待するものである。

   → 「これからの日本の人権救済システム―人権政策提言ver.2
   → 人権フォーラム21第5回総会&シンポジウム


 

人権フォーラム21Top現在位置
人権フォーラム21 Copyright 2001 Human Rights Forum 21. All Rights Reserved.