人権フォーラム21 1998年の活動報告/役員一覧

 私ども人権フォーラム21では、1997年11月の結成以来、人権が完全に尊重される社会を築くことをめざす市民のネットワークとしてさまざまな活動を進め、はや1年が経過いたしました。以下に1997年11月10日から1998年12月までの主な活動について報告します。

1 日本の人権政策の現状と今後の課題を明らかにするため、調査研究に取り組み、『当事者からみた日本の人権白書』刊行などを実現してきました。
(1) 人権フォーラム21では、97年11月以来、合同部会を定期的に開催しながら、当事者から見た差別の現状と人権政策の課題を研究討議してまいりました。これまで、被差別部落、アイヌ民族、在日韓国・朝鮮人、障害者、女性、ライ患者、高齢者、HIV感染者、同性愛者、子ども、在日外国人をテーマに報告と討議をおこない、その結果を、『当事者からみた日本の人権白書』にとりまとめ、人権擁護推進審議会に提出するとともに、9月に単行本として刊行しました。
(2) また分野別の人権政策の課題についても調査研究に取り組みを開始しました。教育分野については、教育・啓発部会を開催して研究・討議し、雇用の分野における人権政策の課題については、6月に開かれた第6回合同部会で研究・討議を深めました。さらには、インターネットと人権政策の課題についても、10月から「インターネットと人権政策研究会」を開催し、規制救済部会の作業部会としての位置つけのもと研究討議を開始しました。
(3) 次に、教育・啓発部会は、98年5月から活動をはじめ、人権擁護推進審議会の審議動向に会わせて吟後の教育・啓発の在り方」についての人権フォーラム21としての考えを集約するための草案づくりに取り組みました。のべ3回にわたり教育・啓発部会を開催して草案を作成し、会員からの意見集約を経て10月中旬に第二次提言「差別撤廃にむけたこれからの人権教育・啓発のあり方に関する基本的方向性について」としてとりまとめました。第二次提言は、こらからの人権教育・啓発の発展にむけた諸課題として「5つの原則と7つの提言」を提示し、「人権学習推進基本法(仮称)」の制定などを呼びかけました。
 この第二次提言は、各方面に配布して討議を呼びかけるとともに、人権擁護推進審議会にも提出しました。
(4) 98年3月より、未来のための教育推進協議会(ef:エフ)関係者の協力を得て「人権教育教材」の収集活動を進め、「人権教育教材事例集(ダイレクトリ)」づくりにむけ取組み中です。この「人権教育教材事例集(ダイレクトリ)」では、「平和〆環境!「開発」「反差別」「ジェンダー」の5つのテーマで、新しい観点に立った教材約500点を紹介する予定です。編集作業が若干遅れていますが、99年2月をメドに編集作業中です。
(5) 98年4月から、東京人企連らの助成を受けて、国内人権システム国際比較プロヅェクト(NMP)が山崎公士・香川大教授を責任者に若手研究者10名でスタート♂国内大権システム整備に関する国連「パリ原則」をふまえた各国の取り組み状況を調査研究し、日本の人権システム整備の課題をさぐる目的で、7月から9月にかけて海外調査研究活動を展開しました。10月からは、ほぼ月1回定期的に研究会を開催し、99年3月をメドに中間報告を提出の予定です。
 なお、さる11月6日、国連B規約(自由権)人権委員会が日本政府報告に対して『総括所見』を採択したが、その中にも政府から独立した国内人権機関の整備が掲げられており、NMPの調査研究の成果が今後、期待されています。

2 人権擁護推進審議会に対して、継続的な働きかけをおこない、二度にわたる提言を提出しました。また各方面への働きかけも引き続きおこなってきました。
(1) 人権フォーラム21では、人権擁護推進審議会の動向を点検する取り組みを進めるJK(人権政策の確立を求める共同行動;事務局DPI)との連携をすすめ、人権擁護推進審議会への継続的な働きかけをおこない、審議の公開と透明性の拡大および活性化を求めてきました。そして7月と10月の二度にわたり、人権フォーラム21の「提言」と屡請書」を提出しました。
(2) 人権擁護推進審議会への政治の関心を高めるため、各政党や国会議員に対する働きかけを1月、7月、10月に継続しておこないました。また各党の政策勉強会にも役員を中心に講師として参加してきました(民主党、社民党)。
 一方、人権フォーラム21や部落解放同盟中央本部などの働きかけに応えて、各政党の有志で「21世紀人権政策勉強会」が9月から活動を開始し、人権政策確立にむけた政治的な動きが実現しました。呼びかけ人は、岸本光造(自民)、仙谷由人(民主)、中西績介(社民)、東順治(平和改革)、松浪健四郎(自由)の5名です。

3 国内の人権諸団体との連携を強め、日本の人権政策確立にむけた共同行動を前進させました。
(1)人権フォーラム21では、人権擁護推進審議会の動向を点検する取り組みを進めるJK(人権政策の確立を求める共同行動;事務局DPI)との連携をすすめ、各政党や国会議員に対する働きかけを98年1月に共同で実施しました。その後も、政局の節目ごとに協議を進めています。
(2) さる11月12日に、人権擁護推進審議会に委員を送り出している日弁連(人権擁護施策問題委員会)との懇談会を開催し、日本の人権政策確立にむけた有意義な意見交換をおこないました。日弁連はさる11月6日に国連B規約(自由権)人権委員会が日本政府報告に対して『総括所見』を採択したことで「会長声明」を出したが、その中にも政府から独立した国内人権機関の整備を求めていくることが掲げられており、今後とも連携を深める必要があります。
(3) その他に、9月の部落解放研究全国集会(9/25-27金沢)、11月の護憲大会(11/6神奈川)、
部落解放共闘総会・全国交流会(10/16別府)などに講師を派遣し、連携・交流を深めました。

4 海外の人権諸団体との連携を進めるため「第3回アジア太平洋地域人権機関フォーラム」へ参加し、各国の人権NGOとのネットワークを拡大しました。
(1) 国内人権システム国際比較プロシ砂ト(NMP)の若手研究者らが、'98年7月から9月にかけて欧州、北米、アシア地域に海外調査研究活動を展開し、国内人権システム整備に関する国連「パリ原則」をふまえた各国の取り組み状況を調査研究するとともに、各国の人権NGOとのネットワークを拡大しました。
(2) さる98年9月7日から9日まで、インドネシアのジャカルタで開催された国連主催の「第3回アジア太平洋地域人権機関フォーラム」に江橋崇事務局長とともにNMPメンバーの川村暁雄、石川えりを派遣しました。国内人権機関整備にむけた国際的動向を直接感じるとともに、国連関係者や各国の人権委員会メンバー、人権NGO関係者とのネットワークを拡大しました。

5 機関紙「人権フォーラム21NEWSLETTER」を発行し、人権フォーラム21の諸活動を広めるとともに、会員拡大に取り組みました。
(1) 機関紙「人権フォーラム21NEWSLETTER」第1号を97年12月に創刊し、人権フォーラム21の諸活動の広報につとめてきました。その後、第2号は98年2月に、第3号は98年10月に、第4号は98年12月に刊行されました。
(2) その他の出版活動としては、9月に『当事者からみた人権白書』(解放出版社)を刊行しました。第二次提言をわかりやすく解説するブックレット『これからの人権教育一人権フォーラム21からの提言』(仮称)の刊行も準備中です。
(3) その他に、江橋崇事務局長を中心に山崎公士さん、高野真澄さんらが『法学セミナー』98年7月号で「特集:知ってほしい人権行政」に原稿を執筆し、大きな反響を呼びました。
 11月30日現在、人権フォーラム21の会員は、個人会員177名、団体会員16団体です。


活動日誌(97年11/10-98年12/3)
11月10日 人権フォーラム21結成総会

11月22日 第1回合同部会(大阪)
  人権擁護施策推進法の意義について(高野真澄)/部落差別の現状と解放運動の課題(組坂繁之)
12月19日 第1回企画運営委員会凍京)

<1998年>
1月22日 第2回合同部会(東京)
  アイヌ民族の現状と人権政策の課題(笹村二朗)/在日韓国・朝鮮人差別の現状と人権政策の課題(金東勲)/「女性差別の現状と人権政策の課題(津和慶子)
1月29日 主要政党へ人権フォーラム21と「共同行動」が要請行動(自民党、民主党、社民党、公明、自由党、さきがけ、民政党、民主改革連合)
2月26日 第3回合同部会(福岡)
  人種差別撤廃条約加入の意義と人権政策の課題(友永健三)/障害者差別の現状と人権政策の課題(李幸宏)/ライ(ハンセン病)患者への差別の現状と人権政策の課題(林力)
3月1日 第2回企画運営委員会(東京)
3月19日 第4回合同部会(東京)
  HIV感染者の現状と人権政策の課題(家西悟)/同性愛者差別の現状と人権政策の課題(南定四郎)/高齢者の現状と人権政策の課題(藤井博)
4月16日 第5回合同部会(東京)
  子どもの現状と人権政策の課題(福島瑞穂)/子どもの`荒れ'と学校教育の課題(小西清則)/在日外国人の現状と人権政策の課題(高橋徹)
4月18-19日 第1回NMP(国内人権システム国際比較プロジェクト)研究会
5月14日  NMP(国内人権システム国際比較プロジェクト)自主ゼミ
5月25日 第3回企画運営委員会
5月26日 第1回教育・啓発部会
5月31日 第2回NMP(国内人権システム国際比較プロジェクト)研究会
6月1日 NMP(国内人権システム国際比較プロシ」クト)自主ゼミ
6月12日 第6回合同部会(東京)
  テーマ:「今、働くことを考える一労働における自己実現と人権政策の課題」
  雇用形態の多様化と労働者の人権、職場の差別」(小畑精武〉/「働く障害者の現状と人権政策の課題」(加藤真規子)/「ワーカズなど新しい雇用形態と人権政策の課題」(一色節子)
6月23日 第2回教育・啓発部会
7月5日 NMP研究会・自主ゼミ
7月9日 事例集ダイレクトリ」編集委員会)
7月23日 第3回教育・啓発部会
7月30日 人権フォーラム21からの提言第1集『当事者から見た日本の人権白書』を審議会事務局に提出。塩野会長宛の要請書を提出。
8月18日 法務省人権擁護局総務課へ要請行動。中間まとめの早期公表とともに、人権フォーラム21との対話の機会を設けるよう要請。
9月1日 民主党男女共同参画プロジェ外で江橋崇事務局長が意見表明(東京)
9月79日 国連主催「アジア太平洋地域人権機関フォーラム」に江橋事務局長らが参加(ジャカルタ)
9月13日 教育・啓発部会起草委員会
9月22日 第4回教育・啓発部会
9月24日 第4回企画運営委員会
9月26日 部落解放第47回全国研究集会で特別報告(金沢)。2日目の分科会でも提言草案を配布。
10月1日 教育啓発部会起草委員会
10月18-19日 NMP(国内人権システム国際比較プロジェクト)研究会
10月23日 提言「これからの人権教育・啓発のあり方」を人権擁護推進審議会事務局の法務省人権擁護局総務課に提出。
10月29日 第1回インターネットと人権政策研究会
11月2日 人権フォーラム21記者会見
11月4日 社民党部落解放推進委員会勉強会で笹川孝一企画運営委員が報告。
11月15-16日 NMP(国内人権システム国際比較プロジェクト)研究会
11月19日 第5回企画運営委員会
11月26日 第2回インターネットと人権政策研究会
12月3日 人権フォーラム21第2回総会


1998年 人権フォーラム21役員体制(1997.11-1998.12)

代表武者小路公秀(反差別国際運動日本委員会理事長)

副代表イーデス・ハンソン(アムネスティー・インターナショナル日本支部支部長)
上田卓三(部落解放同盟中央執行委員長)
金東勲(龍谷大学教授)
久保田真苗(世界人権宣言中央実行委員会実行委員長)
小西清則(全国同和教育研究協議会委員長)
笹村二朗(北海道ウタリ協会理事長)
徐 正禺(在日コリアン人権協会会長)
樋口恵子(東京家政大学教授)
山田昭義(障害者インターナショナル日本会議議長)
山田匡男(『同和問題』にとりくむ宗教教団連帯会議議長)
鷲尾悦也(日本労働組合総連合会会長)

事務局長江橋 崇(法政大学教授)

事務局次長津和慶子(日本婦人会議中央本部事務局長)
金 政玉(障害者インターナショナル日本会議)
組坂繁之(部落解放同盟中央書記長)
友永健三(部落解放研究所所長)

教育啓発部会長元木健(川村女子学園大学教授)
教育啓発副部会長神本恵美子(日本教職員組合中央執行委員)
規制救済部会長高野真澄(福山平成大学教授)
規制救済副部会長福島瑞穂(弁護士)


人権フォーラム21Top5年間の活動の歩み現在位置
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