2007年(2006年度)ILO条約勧告適用専門家委員会報告


日本

強制労働禁止条約、1930年(29号条約)(批准:1932年)

1. 本委員会は、第二次世界大戦中に、性奴隷制(いわゆる慰安婦)および企業奴隷制の問題に関する本条約の適用に関して2005年に公表されたその最後の審査に言及する。 2005年の所見において、本委員会は二国間・多国間の国際協定の法的な効果について正式の結論を下す権限を持っておらず、したがって法的な問題について最終的な判断をすることができないし、しないと述べたことを想起する。
本委員会は以前、日本政府の過去における条約違反の被害者の高齢化と他の立派な機関や人々が公に表現したこの問題についての見解にもかかわらず日本政府がこの問題について被害者たちの期待に沿わないことに対する懸念を表明した。
本委員会は政府が将来、これらの被害者の請求に応える措置を取ることに対する希望を再び表明する。本委員会は関連する判決、立法あるいは政府の措置に関して情報を受けとることを希望する。 本委員会はこれらの問題についての労働者組織から受け取ったコミュニケーション、および更なる決定、立法あるいは政府の措置に関連して生じるいかなる変化について政府がコメントすることを要求した。

2. この最後の審査以来、本委員会は、全造船機械関東協議会の労働者組織から2005年5月24日付、8月29日付、9月9日付の報告を受け取り、それらのコピーは2005年9月16日と2005年10月14日に政府へ送られた。韓国労働組合総連盟(FKTU)と韓国民主労働組合総連盟(KCTU)から2005年8月31日報告は2005年5月1日に日本政府に送られた。また、全造船の2006年5月30日付報告は6月26日に政府に送られた。東京地評の2006年8月25日付報告は2006年9月14日に日本政府に送られた。


3. 本委員会は、労働者組織のコメント並びに2006年9月26日に受領した報告と添付文書に対する2005年8月9日、10月20日、および2006年10月31日付の政府コミュニケーションを受領したことを注記する。

4. 加えて、本委員会は全造船が送ったこの問題についての2006年8月25日付、8月27日付および28日付のコミュニケーションとそれらが2006年9月27日に日本政府に送られたことを注記する。日本政府はそれらに関してまだコメントを提供していない。 日本委員会は日本政府が次の報告書にそれらの問題に答える機会があると述べる。

企業による強制労働

5. 本委員会は、全造船と東京地評によれば中国人被害者によって提訴された企業の強制労働訴訟のほとんどは通常手続き的な理由を根拠にして、却下されており、下級裁判所の数少ない有利な判決は手続き的な根拠で覆されると述べていることに注目する。全造船はさらに 西松建設を相手取った訴訟では広島高裁が一審の判決を覆し、補償の支払いを命ずるという原告に有利な判決を下したと報告している。多くのこれらの事件は、労働者組織からこれらのコミュニケーションで具体的に言及されている。

6. 本委員会は、日本政府から2006年9月26日に届いたその報告書で、政府がこの事例に言及し、判決のコピーを提供したこと、それは労働者組織が言及した事例と一致するように見えることを注記する。本委員会は政府によって提供された情報によれば、この問題に関連して19件の訴訟があり、14件の訴訟は決着済みで、他の事例は未決であるとのことである。既決の14件の各訴訟については、西松建設会社に対して起こされた訴訟を除いて、各法廷は原告の補償要求を棄却した。西松について高等裁判所は原子爆弾の給付金に関する補償請求を認めた。

7. 加えて、日本政府は、全造船のコミュニケーションに言及されている、次の訴訟が未決であると本委員会に報告した。すなわち、2004年8月10日に宮崎地裁で三菱マテリアルと日本政府を相手取って提訴されたで宮崎県槇峰鉱山における中国人強制労働訴訟、2004年12月17日に山形地裁で日本政府と山形県酒田陸海株式会社(本社酒田市)を相手取って提訴された酒田港における中国人強制労働訴訟、2005年7月19日に金沢地裁に提訴された七尾海陸運送(本社七尾市)による石川県七尾湾における中国人強制労働訴訟。

8. さらに、本委員会は日本政府がさらに大阪高裁での事例に言及し、被告企業日本冶金との金銭和解が合意されたこと、日本政府が被告となっている関連請求は、大阪高等裁判所においてまだ未決であることを報告したことを注記する。

9. 本委員会はこれらの未決の事件の各々に関して委員会にやがてさらなる詳細な情報を提供するだろうと政府が予告したことを注記する。 日本政府はさらに日本企業に対してカリフォルニア州裁判所で行われた訴訟について報告し、訴えは棄却されたことを報告した。


性奴隷制

10. FKTUとKCTUのコミュニケーションから本委員会は世界中から20万人の署名を集め、日本政府に国連人権委員会およびILO専門家委員会の勧告に従うよう、公式謝罪と賠償を提供するよう求めた請願書がKCTUとFKTUを代表して労働者グループ委員長によって2005年3月にILO事務局長に提出されたことを注記する。
本委員会はさらにFKTU/KCTUの2006年8月25日付所見から過去11年間に軍事性奴隷制の被害者106人が、また昨年一年だけで11人が大韓民国で他界したという情報を注記する。

11. 日本政府は更に、2004年6月1日から2006年6月30日までの間に、軍事性奴隷制訴訟で6件の判決と決定が出され、それらのすべては補償を求める原告の請求を棄却したと報告した。

12. 本委員会は、中国の海南島で起こったと申し立てられた性暴力に関して2001年に日本政府を相手取って東京地裁で起こされた訴訟では、審理と法廷が2006年3月に終了したが、最終判決の日程が決まっていないという全造船からの情報を注記する。本委員会は、さらに中国の山西省で同様の行為の申し立てについての中国人被害者が提訴した別の事件に関する全造船からの情報を注記する。 同情報によれば、この事例では東京高裁は、2005年3月17日に、下級裁判所の判決を支持し、政府の責任を認めたが、補償請求については1952年の講和条約によって消滅しているとして棄却した。

13. 上記の2件に関して、本委員会は海南島裁判は東京地裁ではまだ未決であり、第2の事例では、原告たちが最高裁判所へ東京高裁の2005年3月の判決に対して上訴し、この訴訟はまだ未決であるという日本政府の報告を注記する。 日本政府は、本委員会に両方の事件の展開に関する情報をそのうちに提供すると予告した。

14. アジアの女性資金(AWF)の問題に関して、政府は特に次の報告をした。
「計画通りに、元「慰安婦」を支援するプロジェクトがすべて終了したので、AWFは2007年3月に解散することを決定した。」 日本政府は更に2006年9月26日に届いた報告の中で、政府は「被害者との一層の和解を求めて、日本政府と日本国民の真摯な気持ちを理解してもらう努力し続けるであろう。」 と述べた。


15. 本委員会は、政府が直ちに、その数が年とともに減少し続けている被害者たちの請求に応える措置をとることを希望すると断固として繰り返す。
本委員会は、日本政府が未決の事例の成り行きおよび結果に関して通知し、さらに本委員会に他の関連情報も提供し続けるように求める。


※ 「訳注」 6.の最後のパラグラフについて、西松と三菱広島との混同が原文(ILO専門家委員会側)にある。
「西松について高等裁判所は原子爆弾の給付金に関する補償請求を認めた。」のところ、正しくは「広島高等裁判所(06.1.19.)は、在外被爆者(韓国人強制労働被害者)への被爆者援護法の適用を認めた。」







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