現代企画室

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アントニオ・ガモネダ詩集(アンソロジー)

アントニオ・ガモネダ/著
稲本 健二/訳
2013年4月刊行
定価2800円+税
4-6上製・216頁
ISBN978-4-7738-1306-7 C0098

ここに愛があった

恋した血の不純な開花があった

しかし一番絶望した血は

君の深みを燃やすべき火を持っていない
(『初期詩篇』より)

―16 歳のとき、こう書いた詩人は、フランコ独裁下の長い間、発表のあてどもないままに、詩を書き続けた。苦悩の代償のように、空白が多く、しかもそれが長く続く詩を。彼の詩が人びとに受け入れられたのは、第一詩集刊行から46年、フランコの死から31 年を経て、詩人が75 歳の時だった。

〈セルバンテス賞コレクション〉

スペイン文化省は1976年に、スペイン語圏で刊行される文学作品を対象とした文学賞を設置した。名称は、『ドン・キホーテ』の作家に因んで、セルバンテス賞と名づけられた。以後、イベリア半島とラテンアメリカの優れた表現者に対して、この賞が授与されている。このシリーズは、セルバンテス賞受賞作家による、スペイン語圏の傑作文学を紹介するものである。

【著者紹介】アントニオ・ガモネダ(ガモネダ、A.)

スペインの詩人。内戦終結後のフランコ独裁体制下で恐怖と極貧の生活を強いられ、まともな教育を受けることもできず、独学で自らの詩の世界を構築した。処女詩集『不動の反逆』(1960)ではまだ抑えられていた表現が、フランコ将軍の死をもって開花する。理不尽な暴力と恐怖に対して抱いた強烈な憤りと怒りを詩にぶつけていった彼の世界は、しかしながら一般市民には受け入れられず、評価されるにはそれ相当の歳月を要した。自発的に文壇から距離を置き、地方都市レオンで詩を書き続け、『嘘の記述』(1977)、『カスティーリャ・ブルー
ス』(1982)、『墓石』(1986)を発表するが、反響はなく無名に近い存在だった。カテドラ社のイスパニア作家叢書に入ったアンソロジー『時代』(1987)が版を重ねる辺りから再評価され始め、その後も『寒冷の書』(1992)、『毒薬の書』(1995)、『消失が燃える』(2003)、『セシリア』(2004)と続いた詩集も注目を浴び、2006 年に遂にスペイン語圏で最高の文学賞であるセルバンテス賞に輝いた。画家・彫刻家・写真家とのコラボ作品も多く、レオン大学からは名誉博士号を授与されている。スペイン内戦とフランコ独裁時代の傷跡を見つけ続けることでスペイン人にとっての現代の意義を問う希有な詩人である。

【著者紹介】稲本 健二(イナモト ケンジ)

1955年生まれ。大阪外国語大学(現大阪大学外国語学部)大学院修士課程修了。同志社大学グローバル地域文化学部教授。スペイン文学専攻。マドリード・コンプルテンセ大学およびアルカラ・デ・エナーレス大学で在外研究。文献学、書誌学、古文書学を駆使して、セルバンテスやロペ・デ・ベガの作品論を展開。国際セルバンテス研究者協会理事。さまざまな国際学会で研究発表をこなし、論文のほとんどはスペイン語で執筆。元NHKラジオ・スペイン語講座(応用編)およびテレビ・スペイン語会話担当講師。日本イスパニヤ学会理事および学会誌『HISPANICA』の編集委員長も務めた。1990年から2001年まで文芸雑誌『ユリイカ』(青土社)のコラム「ワールド・カルチュア・マップ」でスペイン現代文学の紹介に努める。訳書には牛島信明他共訳『スペイン黄金世紀演劇集』(名古屋大学出版会、2003年)、フアン・マルセー『ロリータ・クラブでラヴソング』(現代企画室、2012年)など。