現代企画室

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価値ある痛み

フアン・ヘルマン/著
寺尾 隆吉/訳
2010年7月刊行
定価2000円+税
4-6上製・132頁
ISBN978-4-7738-1011-0 C0098

詩が何の役に立つのか?

詩人は本当に無用なのか? いくつもの問いを胸に

それでも詩人は書き続ける——

なぜなら、言葉は祖国だから。

詩は宇宙へと漕ぎ出すための舵だから。

詩は地平線を広げる営みであり、黒く塗られた鏡の祖国だから。



チェ・ゲバラの『ボリビア日記』に登場するフアン・へルマン—————

「1967年3月21日 (……)私はサルトルとバートランド・ラッセルに手紙を書いてボリビア解放運動を支援する国際基金を設立するよう頼まなければならない。(……)ペラオは、もちろん、私の指令に従うつもりでいた。そこで、差し当たっては、ホサミ、ヘルマン、スタンポニらの各グループと接触するに留め、訓練を開始するために五人の隊員を私のもとへ送ってくる一種の調整役を担ってくれないか、と提案した」

ヘルマンに前後して挙げられている人名は、いずれもアルゼンチン人である。ヘルマン37歳のころのエピソードである。

【著者紹介】フアン・ヘルマン(ヘルマン,J.(フアン))

1930年ウクライナ系ユダヤ移民の息子としてブエノス・アイレスに生まれる。1948年から大学で化学を専攻するものの、ジャーナリズムや政治・文学活動のために退学。1955年共産党の詩人たちと『固いパン』を結成し、以降本格的に詩作に取り組む。1967年に共産党を離党するが、左翼系の作家たちとともに創作・出版活動を続ける。1975年アルゼンチンを出国した直後にクーデターが発生、翌年の軍事政権成立とともに息子マルセロ・アリエルと妊娠中だったその妻クラウディアが行方不明になる。悲痛な思いを詩に綴りながら息子夫婦の消息を追い続けた結果、1990年ドラム缶にコンクリート詰めにされた息子の遺体を確認、さらに、2000年には獄中でクラウディアが生み落した孫娘と劇的な対面を果たす。現代ラテンアメリカを代表する詩人として、現在まで『ゴタン』(1969)、『見知らぬ雨のもとで』(1980)、『価値ある痛み』(2001)、『過去の国、未来の国』(2004)など20以上の詩集を残している。2007年セルバンテス賞受賞。