船の救世主
ロドリゴ・レイローサ/著
杉山晃/訳
2000年10月刊行
定価1600円+税
4-6上製・144頁
ISBN978-4-7738-0011-1 C0097
耳を澄まし、目を凝らして、ファナティックな人間と組織が陥りやすい狂気の世界を描くレイローサ。ラテンアメリカ文学に新しい風を呼ぶ作品。
【著者紹介】ロドリゴ・レイローサ(ロドリゴ・レイローサ)
1958年、グアテマラに生まれる。学業を終えてのち、
「内戦状態が続いて、落ち着いて文学に打ち込める環
境ではなかった」グアテマラを離れ、ニューヨークに
向かう。そこで映画の勉強をしてから、1982年、モロ
ッコに長いこと住む米国の作家、ポール・ボウルズ
(1910〜1999)が講師をつとめるワークショップに参
加するためにタンジールを訪れる。
20代前半の若者の文学的才能を認めたポール・ボウル
ズは、レイローサの短篇を自ら英訳して米英で出版、
タイムズ紙文芸付録の書評子が「土着的な題材を夢幻
の領域に取り込んだこれらの掌編は驚異的なまでにみ
ごとだ」と書くなど、高い評価をうけた。
タンジールに十数年留まり、『乞食のナイフ』(1985)
『静かな湖水』(89)『樹林の牢獄』(92)『船の救世
主』(92)『セバスティアンの夢』(94)『片足の善人』
(96)『その時は殺され……』(97)『聖域なし』(98)な
どの作品を次々と発表してきた。その作品世界は、現
実と幻想、土着的なものと都会的なもの、さまざまな
人種や文化が微妙に絡み合う点などで、他に代えがた
い魅力を醸し出しており、ラテンアメリカに生れなが
らそこをも超えてゆく新しい可能性を秘めた作家とし
て注目される。