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クレヨンハウスが主催する連続講座〈子どもの本の学校〉、10月15日の第6回は、田島征三さんの講座「生命の記憶」です。詳細はこちら
ウィークリー出版情報    2011年3月第3週号    評者:寺村摩耶子(絵本批評)
■2011年4月9日、青山ブックセンターにて田島征三トークイベント「学校はカラッポにならない」
新潟日報    2011年2月12日    pdf記事を読む
■2011年2月11日(金)-28日まで、青山ブックセンター本店にてブックフェア
読売新聞    2011年2月5日

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ウィークリー出版情報    2011年3月第3週号    評者:寺村摩耶子(絵本批評)

〈何かにみちびかれて〉

田島征三の木の実を使ったアート作品の集大成『生命の記憶』(現代企画室)が刊行された。ツクシに似たタイサンボクの無数の実が列をなし、結集しているようにみえる「集落の掟」。壁一面に何百、何千というヤマザクラの黒っぽい実がいっせいにどこかへむかって移動しているかのような「流れるいのちの河」。アートと呼ぶにはあまりにもなまなましい何か。

『ちからたろう』や『しばてん』、『ふきまんぶく』といった土俗的かつ洗練された絵本で早くから国際的に知られてきた絵本作家、田島征三の作品はつねにエロティックなまでの「土の匂い」が感じられてきた。泥絵具によるマチエールは土そのもののように豊かな表情。くろぐろとした中にうかびあがる藍や朱などの色は鉱物の原石のような妖しい光をたたえている。東京郊外・西多摩郡の日の出村で自給自足をめざす農業を三十年近くも営んできた画家は、まさに生きることと作ることがまぶしいほど一体となった芸術家でもあった。ところが、そんな画家がまさかの胃ガンを患い、術後まもなく谷川晃一と宮迫千鶴夫妻のすすめで伊豆高原に移住したのが1998年。日々の散歩のなかで出会ったのがさまざまな木の実であり、海辺の貝殻や流木といった「自然の素材」だったという。

木の実といってももちろん鳥や獣が食べる実ではなく、未成熟のまま落ちてしまったもの、形のおもしろい実や殻たち。それらを手透き和紙のキャンバスの上にニカワで貼り合わせて作るコラージュ制作がはじまった。ヤマザクラの実が散りばめられた「落下する二つの魂」。コナラのハカマやホオの実が床にひろげた巨大な和紙のキャンバスの上で不思議な文様を形づくっている「地上の星座」……。あるとき、作品を見て泣いている女性がいた。そのことを宮迫千鶴に話すと、それはきっと「生命の記憶」を持っている木の実だから、人の心を打つのではないか。そう彼女は言ったという。本書のタイトルはそこから来ている。発芽したものだけが生命なのではない。それ以外もすべて一種の生命体なのではないか。そう語りあう二人の貴重な対談も本書には収録されている。

田島を伊豆に導いた宮迫は、しかし2008年に急逝。彼女の語った「生命の循環」をはからずも本書は生きることになった。2009年には、廃校になった小学校に多くの人とともに巨大モンスターのような流木のインスタレーションを作るなど、いつのまにか個人を超えて生長しつつあるように感じられる作品も多い。

生も死も過去も未来もみんなのみこんで、うねりながら生長していくもの。おそるべき芸術家、田島征三はどんどん透明になっていく。
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読売新聞    2011年2月5日

田島征三さんの作品集
『はたけうた』『とべバッタ』などで知られる田島征三さん。自然物のアート作品を収めた『生命の記憶 田島征三作品集1990-2010』



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