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アンドリュー・コイル、ヴィヴィアン・スターン氏
日弁連の講演・質疑から


 翌29日(木)の午後は日弁連にて講演会。アンドリュー・コイルさんは、刑務所長としてイギリスの刑務所改革の現状について、ヴィヴィアン・スターンさんは、PRIの事務局長として、世界の刑務所改革の努力についてお話しいただいた。
質疑応答の中で、PRIとアムネスティとの関係について、ヴィヴィアンさんから「両方とも本部がロンドンにあり、PRIの設立のときにもアムネスティ自身がPRIの活動を必要と認め、協力してくれている。死刑を廃止することは共通の活動内容だが、PRIは個別の良心の囚人に関して政府等に手紙を書くといった活動ではなく、すべての被拘禁者の処遇の改善に力を入れている。」
 昨日に引き続き、日本の施設を訪問しての感想に関しては、コイルさんは「東京拘置所で、ほとんどの被拘禁者が独居房の中に23時間30分にいて、誰とも人間的接触が持てない。また、府中刑務所では、工場で働いている時も人間的関係がない状態であった。日本の刑事施設は、他の諸国が抱えている過剰拘禁を初めとする困難をもっていない。しかし、この国では刑事施設が社会で最後の大きな秘密の場所となっているように感じた。この秘密の場所という感じを壊すことができれば、比較的早く違ったタイプの刑事施設制度に改革ができるのではないか。これは、法務省矯正局だけの力でできるのではなく、国会や一般の人々がどういう形の刑事施設が必要なのかを明らかな形で法務省の側に提示していかなければならない。」と述べた。
ヴィヴィアンさんからは、「東京拘置所は暖房がなく非常に寒かった。また、医療センターに展示されていたディスプレイが非常に印象的だった。被拘禁者が、とにかくそこから出たい、出て病院に連れていってほしいと考え、かなり大きな異物を飲み込んだのをとり出して展示してあった。そこの医療スタッフは、こういう異物を中から出すための手術を何回もしたと言っていた。外部の人間から見ると非常に悲しい状況だと感じた。府中刑務所では、工場で働く受刑者は、私たちが行っても顔を上げさえしない、廊下ではすれ違うと壁を向いて立たせる実務が、自由人権規約第10条と人間としての尊厳と相いれないとしか考えられない。もうひとつは、大変高齢の受刑者がおり、本来であれば老人のための施設に行くべき方が刑務所に入れられていることにも驚いた。ただ、スタッフが更生のために努力していう点はプラスの面として評価したい。」と述べた。
ヴィヴィアンさんはまた、「1997年にカナダにおいてPRI主催の大きな国際会議を開催する予定である。『刑事施設を越えてー21世紀の刑罰制度ー』というタイトルのこの会議は、犯罪を犯した人に対して刑事施設を用いないでどのように対処したら良いかを、世界各国からアイディアをもちより話し合う場としたい。日本からも強力な代表団を派遣してくれることを期待している。」と呼びかけた。