北九州矯正センター構想について


北九州矯正センター構想とは、まず
国際的原則においては、未決被拘禁者と既決被拘禁者の処遇は分離されるべきことが広く認められています(国際人権規約10条2項など)。しかし、この原則については「例外的な事情がある場合を除くほか」という例外規定が認められています。受刑者が未決施設の中で掃除、食事の用意などのために働くことは認められていることです。
未決と既決を分離するという考え方には、「未決の処遇の方が既決の処遇に比べて優遇される必要がある」という考え方が背景にある場合があります。実際、日本においても、未決は誰とでも毎日面会や手紙のやり取りが可能であり、自弁できるものの範囲も広く、私腹の着用が許され、短髪も強要されないなど一定の優遇がなされているのが現状です。その一方で、未決には作業が無く、戸外の運動も狭い運動場でしか認められず、特に独居の場合には他の被拘禁者とまったく会話の出来ない状態が続くなど既決に比べて過酷な面もあります。 欧米においては受刑者に対する処遇の改善が進み、誰とでも面会でき、私服も着用できるなど、未決との差はほとんどなくなってきています。かえって、未決の処遇のひどい面が認識され、運動時間を短くする、他の被拘禁者と談話ができる時間を作るなどの改善がすすめられています。そうすると、未決と既決の処遇の差はますます目に見えなくなってきているのが実情です。
実際イギリスなどでは、刑務所と拘置所を同一の敷地内に設けているような例もあります。残念ながら、こうした施設での処遇の内容は、日本の処遇と大きくかけ離れています。 したがって、監獄人権センターとしては、未決と既決の分離が重要な法原則となるのは、・受刑者の対する権利制限が広範囲にわたっており、・社会的に受刑者に対する偏見が強固な場合に、・未決被拘禁者を保護するための必要性が強い場合に限られるということになります。
そして、日本の実情はみなさんご存じのように、受刑者に対する権利制限が広範囲であり社会的に受刑者に対する偏見が強固である、と言いうると思います。被拘禁者の権利状況の改善は受刑者も未決被拘禁者も共にはかっていく必要があります。今回の構想では日本における劣悪な受刑者処遇が、同じ所内に収容される未決被拘禁者あるいは少年に対する処遇に大きく悪影響を及ぼす危険性が予想されます。
少年についても、未決被拘禁者以上に分離が徹底されなければなりません。このことは、国際人権規約10条3項に例外が認められていないことからも分かります。刑務所も社会に開かれるべきことはいうまでもありませんが、すくなくとも少年施設が、刑罰の執行として存在する刑務所と併設されることによって閉鎖的なものとなるという危惧は現実的なものといえるでしょう。
さらに、施設の配置図から、運動場が各施設共用とされることが予想されます。日本の拘禁施設での運動施設の貧弱さは現状においても大きな問題であるのに、これ以上運動スペースを削減することには断固として反対します。