前号のニュースでお知らせしたとおり、横浜刑務所での受刑者暴行事件に対して国賠を提訴してから約1週間後の6月28日、同刑務所において東京地方裁判所民事2部による証拠保全が行なわれました。
2.証拠保全期日
(1) 当日は、私、海渡弁護士、Y弁護士(代理人松井弁護士の復代理人)が立ち会いに行き、写真撮影の業者の方2名も同行しました。裁判所とは刑務所で落ち合い、午後3時から証拠保全が行なわれるはずのところ、我々5名は裁判官・書記官とは別室の面会所に通されたままで、いつまで経っても何の連絡もナシ。業を煮やした海渡弁護士が抗議に行くと、「今、準備していますから!」と、血相を変えて追い返しにかかる始末。ありのままを写真にとって保全するだけの手続きなのでこれは改ざんしているな、と憤慨しつつ待たされること約30分、漸く保全の場所である会議室へと通されました。
(2) まず開始にあたって、こちらから刑務所側による遅延工作に対する抗議の意志を表明し、開始時間を調書に記載するよう要求。これに対し刑務所側は、意外にも診療録等につき「これまでは提示しない扱いであったが、最近は異なる取り扱いもあるようである」旨述べて、決定主文にある「4月14日」の診療にかかる部分のみ見せる、その他の部分は表紙の一部(原告の氏名や生年月日等が記載されている)を除いて紙で覆い隠す(写真を撮らせない)と述べました。この「紙覆い」作業に手間取ったという説明だったのですが、見ると4月14日分以降のぺージにも覆いがなされており、原告が、私たちに話していた4月14日以外にも診療を受けていた事実が初めて分かりました。こんなことなら、「4月14日以降の診療…」と網を張っておけば良かった、と後悔した次第です。
なお、刑務所が任意に提示に応じた部分について注意深く観察した結果、一応改ざんはなされていないようでしたので、その点異議は留めませんでした。
(3) その後、原告本人を呼んできて、受傷部位の写真撮影。何も告げられず大勢の人のいる部屋に連れられてきた原告は戸惑った様子でしたが、周囲の視線を一身に集めた緊張のうちになんとか両手首、左腕の撮影を完了。傷跡は、変色の程度も薄くなり、やや判りづらくなっていました。
ところが、ここで又もや思いがけないことが。原告が、傍らにいる代理人に、「足は見せなくていいのか」と尋ねる。なんと、足にも傷跡があるというのです。そんな…。結局、足についてはこの場で保全を申し立てられても決定できないし、事実上写真に撮るのも駄目、というになり、事後的に報告書等でフォローせざる得なくなりました。一度の打ち合わせでは限界もありますが、これも今回の反省点のひとつです。
3 まとめ
今回の証拠保全は、刑務所側が一応提示に応ずるという異例の事態となり、その点では大きな成果を得たということができます。が、他方で前述のような出させ方のまずさもあり、又、そもそも任意に出してきたのは、診療録の記載内容が刑務所側にとって有利に解釈可能であると判断したからに他ならないのではないか、との危惧もあり、予断を許さない情勢です。第一回期日は、東京地裁第511号法廷で8月31日・午後1時30分と決まりましたが、今のうちから国によるストーリーデッチ上げを牽制すべく、積極的に書証を提出しています。皆さん、「夏休み」最後の一日、是非傍聴においでください。