foreign media coverege

外国紙に報道された日本の刑事司法制度


今年5月28日付インディペンデント紙に「イギリス人受刑者が奴隷労働に使われた」という見出しで、外国人受刑者が日本の刑務所でどのような状況に置かれているのかという問題について、東京特派員の報告が掲載された。
その内容によると、アメリカ人やイギリス人の受刑者達が府中刑務所等において低賃金で大丸や三越のショッピングバッグやゲーム機メーカーのセガのコンピューター部品を作ることを強要された。その作業を拒否した者に対しては懲罰が科されることによって矯正の一環ではなく、実質的に強制労働であるとしている。あるイギリス人元受刑者が府中刑務所の工場において、服役期間中、房の中で同一姿勢のまま、ずっとデパートのショッピングバッグを作る仕事をさせられていたと語った。記者は、これをILO法第5条の規定違反であると書いている。
また、5月14日付ニューヨーク・タイムズ国際面には、「日本は犯罪にノーと言う;厳しい対応と家族のプレッシャー、しかしその代償は大きい」という見出しで大きな記事が掲載された。日本と諸外国との人口10万人当たりの犯罪比や受刑者数の差異を取りあげて、日本では犯罪が少なく、安全であるといわれるがその主な理由を以下の通り挙げている。日本では家族社会を中心とした社会の心理的・道徳的プレッシャーが強い。そうした社会的プレッシャーが原因となり、規範から外れてしまったとき、日本人が自殺する比率はアメリカよりも45%も多いと説明がなされる。こうした社会のプレッシャーが、同時に日本の低い犯罪率の理由ともなっていると述べている。
また、同紙は、広範な権力を持つ警察と過酷な監獄を取り上げ、ヒューマン・ライツ・ウォッチからの報告も引用している。日本の刑務所では甚大なる人権侵害があり、また、日本の受刑者は私設の受刑者団体を持つことが出来ないので、刑務所側からの権力が直接受刑者に不利益を与えてしまうとしている。記事の中で慶応義塾大学教授の宮澤浩一氏は「日本は安全な社会を維持するためには、余りにも大きな犠牲を強いていると思う」と述べている。
他に、イギリスのタイムズ5月17日付東京特派員電は、「拷問と奴隷労働の上に成り立つとされる拘禁施設」との見出しで、記事を掲載した。
これら外国紙からの日本の刑事施設に関する報道に対し、タイムズ5月30日付に法務省矯正局長松田昇氏の反論として「日本の監獄」というタイトルで「外国人に対する人権侵害事例については事実に反する。裁判も東京地裁で国側の勝訴に終わった。刑務作業は懲役受刑者にとって刑罰の根幹である。民間企業による強制労働との指摘は根拠がない。日本は刑事司法の国際諸条約・諸基準をすべてみたしている」などとする投稿をした。これらの経過は、読売新聞6月5日付に、「刑務所で強制労働 英米から非難ー法務省局長が反論 英紙に異例の投稿」という記事で簡単に紹介されている。