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被告の名1字ちがいで送金受け取りを拒否

 奈良少年刑務所拘置区に2000年7月に勾留中だった在監者から相談を受けた弁護士が、7月27日にこの被告に現金書留で19万円を返金したところ、あて名の「ア」の字が「崎」になっていたという理由で翌日に刑務所側に受け取りを拒否され、29日に弁護士に返送された。
 期日に現金が届かなかったことをめぐり被告と弁護士との間でトラブルに発展、弁護士が郵便局に照会して「刑務所から『該当者がいない』として受け取りを拒否された」という回答を受け、誤解が解けた。
 峯崎進・奈良少年刑務所総務課長は「どんなに難しい漢字の氏名でも、1字違えば同一人物とはみなせない。『不親切』との指摘があることは所長に報告する」とコメント。弁護士、被告とも刑務所に強く抗議している。

東拘・永田さんの医療訴訟控訴を棄却

 84年6月まで投薬治療しか施されず病状が悪化し、同7月、慶応大病院での診察で脳しゅようと分かり手術した東京拘置所在監の死刑確定者、永田洋子さんが「適切な治療が受けられず病状が悪化した」として、国などに損害賠償と外部の病院への移送を求めた訴訟で、東京高裁は2000年10月31日、請求を退けた一審判決(2000年5月12日)を支持し、控訴を棄却した。
 鬼頭季郎裁判長は「担当医師の治療法に誤りはなかった。症状は安定しており格別、治療の必要は認められない」と述べた。

東京拘置所看守が所内で後輩に暴行

 11月11日、東京拘置所では「東拘祭」と呼ばれる職員や家族ら対象の演芸などの慰労行事があったが、模擬店を担当していた看守部長(28)と看守(28)が行事途中の午後3時ごろ無断で抜け出して外出したため、午後7時ごろ、拘置所敷地内の路上で、30代前半の主任看守2人が、戻ってきた2人の顔を数回平手で殴ったり、振り回して転ばせるなどして暴行を加えた。殴られた看守は全治10日間。被害者の看守1名は事件後、勤務につかないまま12月18日付で依願退職した。
 拘置所には警察官と同じ捜査権限を持った刑務官が配置されており、事件直後から捜査し、看守2人を傷害と暴行容疑で東京地検に書類送検した。事件は12月27日に判明。同拘置所の有光秀晴調査官は「暴力事件を起こし申し訳ない。2人は反省しているが処分は厳正に対処したい」とコメントした。

「矯正保護審議会」が監獄法の改正を提言

 法相の諮問機関「矯正保護審議会」(会長、稲田克巳・元福岡高検検事長)は2000年11月28日、保岡興治法相(当時)に、受刑者の権利・義務を明確にする監獄法の改正と、少年院法についても収容者が院内での処遇に異議申し立てができる権利を明記するなどを求めた「21世紀における矯正運営及び更生保護の在り方」を提言した。
 全文は下記URLで読むことができる。審議会は今年1月6日付で廃止された。 http://www.moj.go.jp/SHINGI/001128-3-1.htm

三重刑務所・看守部長の暴行事件で有罪判決

 三重刑務所(山口昭夫所長)洋裁工場で99年8月20日から2000年3月7日までの間、縫製作業中の受刑者計7人の態度が反抗的だとして、頭を手で殴ったり足をけるなどの暴行を加えた特別公務員暴行陵虐罪に問われた看守部長(停職1ヶ月後、休職中)の判決公判が12月15日、津地裁であった。
 柴田裁判官は「刑務所という更正施設で受刑者に暴行した行為は許されるものではなく、法令を順守すべき立場にある刑務官による悪質な犯行で、市民の信頼を損ねた。しかし、いじめによる犯行でなく、示談をまとめるなど、反省の姿勢を示した」と述べ、懲役10月、執行猶予3年(求刑懲役1年)を言い渡した。

東京拘置所・不当懲罰訴訟で判決

 98年5月、東京拘置所の死刑確定者・S氏が他の収容者と口論したことを理由に軽屏禁5日間などの懲罰処分を受けたが、「口論の原因は相手方にあり、処分は不当」として、国に5万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は12月18日、請求棄却の不当判決を下した。判決理由で市村陽典裁判長は「懲罰の必要性があり、懲罰の内容も著しく妥当性を欠くとまで認めることはできない」と述べた。

名古屋刑・名簿流出事件で新通達

 法務省矯正局は、名古屋刑務所で受刑者リストの流出が発覚した2000年8月以降、全国300の全矯正施設を対象に、個人情報が記載された文書の作成や取り扱い、保管状況などを一斉調査した。刑の執行に関する文書や受刑者が病気になった際のカルテなど約2,100万件が作成され、法令などの規定がないため、作成や保管の責任者が定められておらず、管理が徹底されていない文書が約11,000件(刑務所約8,200件、少年院約1,900件、少年鑑別所約1,000件)あることが分かった。
 こうした文書は、施設内で日常的に行われる作業や教育、医療などを効率的に行うため、各施設の裁量で、便宜的に作成されたものがほとんどで、たとえば作業に対して給付される賞与金の計算表にも個人情報が盛り込まれているが、管理規則はなかった。
 法務省は全施設に通達を出し、
  1. 不必要な文書を作成しない
  2. 文書管理責任者を定め、新たに文書を作成する場合は管理責任者の許可を得たうえで、作成責任者を定める
  3. 保存の必要のなくなった文書は確実かつ速やかに廃棄する、
など管理体制の強化を定めた内規を作るよう命じた。

過剰収容、高齢受刑者の増加が深刻化

 2000年発行の1999年矯正統計年報によると、99年に全国の刑務所に新たに収監された受刑者(新受刑者)は、24,496人(男23,289人、女1,207人)。前年より1,395人(6.0%)増えた。
 99年末現在、刑務所(少年刑務所及び刑務支所)に収監されていた受刑者は45,322人(男43,079人、女2,243人)、2000年8月末の速報値で48,789人に上る。全収容定員は48,281人で、収容率は平均で101.1%、全施設の66%に当たる48庁が過剰収容状態で、施設の収容分類級別にみると、B級系統(犯罪傾向が進んだ者を収容)で99.7%、A級系統(犯罪傾向の進んでいない者)で104.3%、W級(女子)施設では120.1%となり、女子刑務所で過剰収容が深刻化している。
 92年以降、高齢受刑者は増加傾向にあり、新受刑者中、60歳以上は1,850人(7.6%)、全受刑者中4,154人(9.2%)。新受刑者中の割合は、90年を100とすると、207と2倍以上に増加している。犯罪傾向が進んだ26歳以上の男性で刑期8年未満(日本人受刑者の平均服役期間は約2年6カ月)を収監する府中刑務所(B級施設)でも、60歳以上の受刑者が10年前よりも5.7ポイントも増えて14.3%に上り、うち80%は病気で身元引受人もいない。刑務所へ戻るために事件を起こすケースも多く、6回以上服役している受刑者がうち70%を超える。
 同刑務所の調べでは、99年末の日本人受刑者1,759人のうち、60歳以上は253人(14.3%)で、70歳以上も55人(3.1%)。60歳以上で、何らかの病気を患うか、障害を持っているのは、60歳未満の2倍以上の82%。通常の刑務作業ができず、紙細工などの軽作業をしている受刑者が半数近くいるという。若いころから非行や犯罪を繰り返し、親族と疎遠な受刑者が多く、出所後に妻や親類の元に帰るのは19%にとどまる。帰住先や引受人が確保できないまま、刑期を満了して出所し、再び事件を起こして刑務所に戻ってくるケースが多く、服役回数は10回以上40%、6〜9回31%、5回6%などとなっている。
 法相の諮問機関「矯正保護審議会」も最後の提言で、高齢受刑者に生きがいを持たせる教育、健康管理の面から一カ所に集めて服役させることの是非や社会復帰後の福祉制度の中での「受け皿」開拓などの高齢受刑者対策の検討を求めている。しかし、法務省矯正局の幹部は「高齢者に限らず、受刑者は年々増え続けている。定員いっぱいの施設もある。行政改革で刑務所職員が削減されている中で、高齢受刑者対策は難しい課題だ」と話している、という。

被害者に作業賞与金を送金、63件

 受刑者が事件の被害者や遺族に対し、「作業賞与金」(月平均約4000円。2000年版犯罪白書)を、賠償金や慰謝料として送金したケースが99年に63件(総額約119万円)、被害者側への賠償金などに充てるとして、受刑者の家族に送金されたケースも109件(総額約211万円)あった。
 作業賞与金の支給は原則として出所時だが、受刑者が家族の援助や被害者への賠償などに充てる場合は在監中でも可能という。1月23日、保坂展人衆院議員(社民)の質問主意書に対する政府答弁書で分かった。