BRIEF NEWS



国連人権高等弁務官、国際人権条約の批准を要請

 国連の人権分野の最高ポストにあるメアリー・ロビンソン国連人権高等弁務官(前アイルランド大統領)が来日し、1月26日、外務省で日本の外相としては初めて小渕恵三外相と会談。日本政府に対し未批准の死刑廃止条約、拷問禁止条約や、外国人労働者を対象とした移住労働者権利条約などの早期批准を要請した。今年は世界人権宣言50周年にあたり、ロビンソン氏は人権関連条約の批准を各国政府に強く求めている。小渕外相は「指摘を踏まえて国内での検討を続けていきたい」と述べた。批准を見送っている理由として、外務省は「拷問禁止条約は、実効性のある対応がとれるかどうか不明。個人通報議定書は、司法権の独立が侵される恐れがある」と説明している、という。1月28日に行われた人権NGOとのミーティングには、CPR事務局長も参加。日本の人権状況についての意見交換を行った。

無実の赤堀さんが年金受給権の確認求める

 「島田事件」で、再審が認められ無罪となった赤堀政夫さんが、死刑囚として収容中に年金制度の説明を受けなかったために現在も年金が受けられない状態が続いているとして、2月2日、名古屋弁護士会に人権救済を申し立てるとともに、愛知県に対し受給権の確認を求める申し入れをした。
 赤堀さんは1960年12月に上告が棄却され死刑確定囚となった。年金制度は61年4月に導入されたが、当時宮城刑務所に在監中の赤堀さんには年金加入や免除申請手続きについての説明が一切行われず、加入手続きを取らないまま、89年に再審で無罪が確定し、受給資格に達する60歳を迎えた。
 赤堀さんは申立書の中で「たとえ獄中者や死刑囚でも、年金制度導入後は被保険有資格者であることを知る権利があり、厚生省と法務省は周知させる義務を怠った」と指摘。その上で赤堀さんが現在年金受給資格者であるかどうかを検討し、人権救済措置を取るよう求めている。受給権の確認を求められた愛知県の民生部年金指導課は「極めてまれで気の毒なケースだが、加入手続きを取っていないため現在の法律で対応できない状況にある。われわれでもどうしようもなく、厚生省や社会保険庁に相談したい」と話しているという。
 年金制度については、被拘禁者が無資力者の保険料納付免除制度などを知らずに受給資格を喪失する例も多く、被拘禁者共通の問題であり、早急な改善措置を求める。

自民党が日弁連の拘禁二法反対運動を批判

 2月27日、法務省や日弁連も参加して、自民党司法制度特別調査会第2分科会(第3回)が開かれた。議題の「弁護士自治」に関連して、杉浦正健議員から「日弁連の活動の中には、弁護士法の枠を逸脱したものもあるのではないか。一例は環境問題であり、一方に偏った意見をまとめるのはいかがなものか。拘禁二法案についてのかつての日弁連の対応にも問題があった」等と発言、日弁連からは「拘禁二法問題については事実認識を異にしている」との反論がなされた。拘禁二法案制定の動きだけでなく、日弁連に対する圧力も見過ごせない問題であり、今後も監視を続けていきたい。

国連人権委員会、死刑廃止・執行停止決議を再度採択!!

 ジュネーブの国連の人権委員会は4月3日、イタリアが起草し、ヨーロッパ、ロシア、中南米諸国など61カ国が共同提案した死刑制度の廃止などを求める決議案を賛成26、反対13、棄権12の賛成多数で採択した。決議案は、死刑制度の廃止は人権の向上に貢献するとした上、89年12月に国連総会で採択された死刑廃止国際条約をすべての国が署名・批准すること、死刑を対象とする犯罪を抑制するよう努力すること、死刑廃止を視野に入れ死刑執行の猶予期間を設けること、死刑に関する情報を公開することなどを求めている。
 国連人権委員会で死刑廃止の決議が採択されるのは、去年に次いで2回目。人権委員会を構成する53カ国のうち、反対したのはアメリカ合衆国、日本、中国、韓国、スーダン、パキスタン、マレーシア、インドネシアなど13カ国。26カ国が賛成、12カ国が棄権し、2カ国は欠席した。
 ロビンソン・国連人権高等弁務官は採択後、「多くの国が死刑廃止の重要性を理解した事を示した。感謝している」と高く評価。「最近、日本やアメリカを訪問した際も死刑廃止を訴えた。人権委員会が満場一致で死刑廃止を採択する日が来ることを望む」と話した。
 決議について下稲葉耕吉法相は4月7日、閣議後の会見で、「まだどういう内容か詳細は分かっていないが、それぞれの国を拘束する決定ではなかろう。それぞれの国のいろいろな立場、事情、判断がある。よく拝見してみたい」と述べた。
 日本政府がこの決議を遵守することを強く求める。

領置品規制問題の続報

 前号でも報告しました全国17施設の61人による「被収容者の領置物の管理に関する規則の見直しを求める人権救済申立」は、予備審査を経て、人権擁護委員会第3部会(刑事被拘禁者の人権担当)で調査されるはこびとなりました(審査開始にともない新たな申立への参加は打ち切りました)。同部会からは、「1申立人らの各収容施設所長において、1)衣類臥具について、一人当たりの領置にかかる種類及び種類ごとの個数はどのように定められているか。2)衣類臥具以外のものについて、一人当たりの保管量をそれぞれどのように定められているか。/2申立各人の衣類臥具及び衣類臥具以外のものの各領置種類、総量はどのようになっているか。/3訴訟用記録についての領置総量はどの程度か。」との照会が届いており、現在、回答を準備中。
 領置品規制とは別に、東京拘置所では房内所持規制が強化されている。房内で所持できる公判書類は2メートルまで、パンフ類は1メートルまで(但し公判書類を含むことも可)と制限するもので、刑事被告人の防御権を侵害するもの。
 CPRではこれらの問題について、多くの人に関心を持っていただき、適切な見直しを法務省に求めるため、6月頃をめどに署名運動を開始する予定。御協力をお願いします。

子供面会国賠で上告棄却判決

 東京拘置所の益永利明さんが、「『14歳未満ノ者ニハ在監者ト接見ヲナスコトヲ許サス』とした監獄法施行規則120条(91年8月に削除)によって、養母の孫との面会を21回不許可にされ、権利を侵害された」として、国を相手に105万円の損害賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁第二小法廷(大西勝也裁判長)は4月24日、「最後に面会を不許可とされた時に、原告は国の不法行為により損害を受けたと認識していた。訴えを起こしたのはそれから3年以上が経過しており、時効により損害賠償請求権は消滅している」として請求を退けた二審の東京高裁判決を支持し、原告の上告を棄却する判決を言い渡した。
 一審の東京地裁は、若年者との接見禁止規定を含まない刑事施設法案が、益永さんの面会不許可よりも前の82年に国会に提出された事実をあげて、「法務大臣は遅くともこの時点で違法性に気付きえた」として違法な規則を放置した法務大臣の過失を認定していた。

見沢知廉著『囚人狂時代』が文庫に

 最新の作品『調律の帝国』(新潮社、税別1300円)でも刑務所を題材にとりあげた、見沢知廉さんの『囚人狂時代』が、3月26日に新潮文庫から出版された(税別438円)。日本の刑務所の実態がこれほど赤裸々に描かれたものが、文庫になったこと自体、画期的なことです。