CPR大阪活動近況報告

世話人会 弁護士 金井塚康弘


1 9/26 アメリカ監獄事情学習会

 97年7月から8月にかけて渡米され見学してこられた、アメリカの監獄事情について、9月26日、ブリトン民代さんに報告していただき学習会をしました。
 監獄内での矯正プログラムについて州法務省挙げて積極的に取り組んでおられるニュージャージー州内の重警備の刑務所、中警備の刑務所、軽警備の刑務所等、数種類の刑務所などについて、ブリトンさんが、訪問された各施設でのスナップ写真の回覧も織り交ぜながら、話が進められました。獄中者や出獄者の自立と成長、変容を支援しているNGOであるAVP(暴力に対するもう一つの選択Alternatives to Violence Project)が実施しているプログラムの目的等の簡単な説明、実際のプログラムの体験談、各施設の見学談、施設職員あるいは収容者との懇談、監獄当局が実施している施設内でのストレス・コントロールの講座の体験談などの内容で、日本の監獄のあり方とアメリカの監獄のあり方との共通点と根本的に違う点等が分かり、興味深いものでした。私は、アメリカの施設職員が、収容者の自発的な変容と成長を助けることを旨として処遇にあたり、さまざまな矯正プログラムを実施しているが、職員自身内心は過度の期待をしているわけではなくむしろ矯正効果に絶望さえしているが、しかし、本当に笑顔をもって親しみを込めて収容者たちと接しておられるという話しが、とても印象的でした。
 学習会の参加者は、15名でしたが、実際にAVPのプログラムを体験してみたいという声が多く、ブリトンさんにAVPと連絡を取ってもらうことになりました。

2 12/16 ペルーの平和と人権についての講演会

 1997年度の多田謡子反権力人権賞を受賞されたペルーの人権団体であるCNDDHH(人権問題全国調整委員会)の代表としてイバン=バサン=チャコン弁護士が東京での授賞式のため来日された後、来阪され、12月16日、CPR大阪も歓迎実行委員会に参加して、「ペルーの平和と人権」と題する講演をしていただきました。
 CNDDHH(人権問題全国調整委員会)は、フジモリ軍事政権下さまざまな人権侵害の続いているペルーにおいて、1985年1月に国内の諸人権団体の調整期間として結成され、政府側のものと反政府側のものとを問わずに、あらゆる暴力を非難すること、死刑に反対すること、民主主義と平和を希求すること、国家や政党から独立していることを加盟個人、団体の基本原則とする人権団体です。基本原則や諸活動は、非常にCPRと近いものがあります。現在43の人権団体が加盟し、諸人権団体の調整活動のみならず、いくつかの作業グループを形成して、実質的活動もしているということで、法律作業グループは、加盟弁護士、ボランティア弁護士で構成され、研究、提言を行ったり、司法省との折衝にあたったりしているとのことです。トゥパクアマル革命運動ゲリラによる大使公邸占拠闘争事件から1年が経ちましたが、テロリズムは許されないとしても、彼らの行動の背景にはペルーの監獄の殺人的と言える人権状況があることが明らかになりました。監獄の人権状況の改善のために今後とも交流ができればと考えています。
 なお、バサン=チャコン弁護士は、講演会に先立ち大阪弁護士会でも副会長、人権擁護委員会委員長や刑事手続や監獄内での人権に関心を寄せる弁護士らと懇談・意見交換会を持ち、フジモリ軍事政権下での恩赦法や覆面裁判所による人権抑圧状況、人権擁護に奮闘するNGOや学者、弁護士、良心的裁判官等への弾圧についても詳しく具体的に説明をされていました。

3 服役施設不明事例ほか

 滞日中のペルーの日系人(24)が、当時同居していた女性を殺害したとして、1996年10月、富山地方裁判所で懲役4年の実刑判決を宣告され、服役中ですが、服役施設が近親者である実刑(在大阪)にも分からない状態になっています。
 兄や外国人労働者支援後が当局等に問い合わせても、教えてもらえず、富山刑務所や外国人の収容が多い府中刑務所宛に手紙を出しても返送されてくるので、近親者でさえ中でどのような状態になっているのかも分からないという著しい人権侵害が続いているという訴えが、CPR大阪宛に寄せられました。
 矯正当局は、「近親者といえども服役先を教える制度はない」との回答を繰り返しているとのことですが、日本人であれ外国人であれ、収容者が外部の人、特に近親者や弁護士と連絡、交通できる権利、それらの機会を与えられる権利、相応の便宜が与えられる権利は収容者の基本的権利であり(保護原則15、19、処遇最低基準37条、38条等)、服役先を教えないというような状態での収容自体が国際人権法に反する違法な身柄の拘束といえます。現在、事務局で対応中です。
 編集者が体調を崩したりして機関紙『監獄新聞 第5号』の発行が遅れています。すみません。