CPR大阪総会開催

福島至龍谷大学教授 講演会
『受刑者に弁護権の保障を
獄中に憲法、国際人権法の光を!!』

CPR大阪事務局


1 1996年度活動報告

 6月6日午後6時30分から行われたCPR大阪の総会では、1996年度の活動報告からなされた。

<1> 処遇改善等を訴える通報は、大阪拘置所、神戸刑務所等3件あり(前年度からの継続案件を含む)、大阪拘置所の事例について、医療処遇の不当性(より精度の高いMR・CTの検査をしない等)、暴行等を訴え、処遇の改善を求める対当局要請行動を、不十分ながら行った。しかし、要請の趣旨は十分容れられなかった。
 神戸地区での協力弁護士のネットワークづくりと要請を聞き置くだけという当局の姿勢をいかに変えさせるかが課題である。

<2> 学習会等は、3回(6/7、8/30、2/14)行うことができた。監獄労働についての学習会は、企画段階にとどまった。
 広報の方法を検討すべきであるが、会員等のより広い参加を求めて、学習会等の開催をより多数回実施することを検討すべきであるし、学習会の内容を大阪拘置所建替え問題や「不服申立マニュアル」(仮称)の作成等に結びつけていくことが課題である。

<3> 死刑廃止への取組としては、死刑廃止フォーラムin大阪主催の講演会等への協力と死刑廃止ビデオ作成への協力、および、1996年7月11日なされた死刑執行への抗議声明の発表等を行った。

<4> 機関誌である『監獄新聞』は、年度のうちにようやく1号(通巻4号)が作成できた。この間、葉書によるインフォメーションは行ったが、編集体制の見直しが課題である。

2 1997年度活動方針

 1997年度の活動方針については、概ね次のとおりの方向で活動して行くことが提案され、了承された。

 A 重点活動について

<1> 不服申立マニュアル(仮称)の作成

<2> 大阪拘置所建替え問題に対する取組。特に大阪弁護士会が取り組むアンケート調査等への協力と積極的提言。

<3> 処遇実態調査。特に長期に収容されている無期囚、死刑囚の処遇実態をできる限り明らかにする。

 B 組織、財政活動について

<1> 協力弁護士のリストづくり。特に、若手および神戸地区の協力弁護士の確保。将来的には、当番弁護士制度とのリンクを模索する。

<2> 連絡体制、会費徴収体制の整備。

<3> 世話人会の再構築。

<4> 刑事法研究者との連携の強化。

 C 調査、研究活動テーマについて

<1> 獄中者の弁護権の保障。獄中に憲法、国際人権法の光を!

<2> 獄中医療の問題点とその保障の確保。

<3> 獄中労働の性質とその問題点。

<4> 獄中者、刑務官等のストレス・コントロールの方法についての研究。獄中者等のソーシャル・スキル、ヒューマン・スキルの促進、強化方法の研究。

3 福島至教授講演会

 最後にCPR大阪の総会を記念して、龍谷大学の福島教授から、「公判後の弁護権について(確定後刑事弁護のススメ)−死刑囚・受刑者と刑事弁護−」と題する講演があった。
 弁護人の援助なく放置され、恣意的に死刑執行されていく日本の死刑囚と執行間際まで弁護人の活発な人身保護請求等の活動が繰り広げられ弁護権が保障されているアメリカの死刑囚との対比から講演は始められた。そして、確定後の死刑囚や受刑者の問題は、「処遇」の問題にとどまらず、「適正手続保障」の問題ではないかと新しい問題提起をされた。
 刑事訴訟法第7編「裁判の執行」の部分は、ほとんどの裁判官、弁護士、刑事訴訟法研究者の関心対象外になっている。再審問題を別にすれば、確定後の受刑者の刑の執行についての手続き保障は、議論すらされてこなかった。しかし、裁判内容の実現であるのだから、裁判官、弁護人らがもっと関心を持つべきものであろうし、刑事訴訟法1条の目的規定に、「刑罰法令を適正且つ迅速に適用実現すること。」と規定されていることに鑑みれば、刑罰権の実現過程、刑の執行過程における適正手続の保障も、刑事訴訟法学の課題とされるべきであると意見も述べられた。刑の執行に対する司法審査の拡充の必要性を述べられ、弁護人の援助を受ける権利(弁護権)を刑の確定後にも保障すべきことの研究を今後の新たな課題とされた。
 参加者との質疑応答の後、CPR大阪の今後の活動においても、刑事法学者、弁護士会(特に当番弁護制度)等との連携の必要性が確認された。
4 総会反省会

 7月10日、総会反省会がもたれ、世話人会の体制等が刷新された。また、夏の間に合衆国ニュージャージー州の法務省が実践している受刑者等のストレス・コントロールのプログラム等を見学しに行く支援者がおられるので、帰国後の9月26日(金)午後6時30分から、報告会を開催することになった。