oNEWS in BRIEF



大阪弁護士会が大阪刑務所に適切な医療を求め勧告

大阪刑務所在監中の男性は、96年初頃から、右目の視野周辺が黒くなり、視力が著しく低下したため、「失明の危険があり、適切な治療を受けたい」と申出たが、大阪医療刑務所支所の眼科医は同年3月と7月の診察の際、「症状は進行性ではなく、白内障の後遺症」として点眼しか行わなかった。男性は「小児性白内障の既往歴があるが、後遺症の症状とは全く違う。失明の危険があり適切な治療を受けたい」と人権救済を申し立てた。  大阪弁護士会は97年6月19日、「本人の自覚症状を全く考慮せず、医療を受ける権利を侵害している」として、高度な施設を備えた病院で診療を受けさせるよう刑務所長に勧告した。
脱走援助未遂事件で刑事施設の管理強化

 7月16日、福岡地裁で福岡拘置所元看守に対する死刑囚逃走援助未遂事件の判決があった(本文14ページ参照)。福岡矯正管区の畠山晃朗第一部長は再発防止策として、@看守と収容者の私語禁止の徹底、A所内規則の順守、B研修での倫理観念の徹底などを挙げている。元看守の事件への関与、所長の自殺は、いずれも城野医療刑務所受刑者暴行死事件と同様、当局発表ではなく、職員のマスコミへの通報で遅れて明るみに出された。Sさんの関与を認めたのは事件発生から2ヶ月半後。その後、官舎の職員全員に電話の通話明細を提出させるなど厳しい調査が進められ、「マスコミに漏らした職員捜しが目的ではないか」と噂されている。この間、「福岡拘置所では、従来複数で作業していた死刑確定者の花壇づくりや運動が個別にされた」「関東のある拘置所では職員全員の持ち物が検査された」との報告も。一連の管理強化は、看守と被拘禁者間の信頼関係をより一層困難にし、刑務官・被拘禁者のストレスをより高め、不測の事態を生みかねないなど、事件の再発防止にも逆効果である。根本的な見直しを求めたい。
法総研が「受刑者意識調査」を記者発表

 法務省法務総合研究所が、8月3日、受刑者を対象に実施した刑務所に関する意識調査の結果を記者発表した。調査は全国の70施設から満期釈放や仮釈放で出所した受刑者821人(外国人含む)を対象に出所直前に無記名で実施、うち761人から回答を得た。刑務作業については、77.5%が「ある方がよい」と回答。理由として「時間が早く過ぎる」「体を動かせ健康によい」「社会復帰のためになる」など。また「刑務所内で守るのがつらかった規則はあったか」との問いに、75.2%が「なかった」と回答。守るのがつらかった規則としては雑談やわき見の禁止、トイレの制限などが上位を占めた。また「規則を緩めるとどうなると思うか」との問いに、「好き勝手する者が多くなる」「弱い者いじめをする」「作業中の危険が増える」。職員への評価は64.4%が「公正な職員もいるが不公正な職員もいる」と回答した、と発表した。法総研は「受刑者の多くが安全な受刑生活のためには規則は必要と考えている」と述べている。
一部のみの発表であり、調査対象、具体的な問いの設定等、不明な点が多く、CPRでは原文を検討して反論したい。しかし、これがこの間の日本の拘禁施設に対する批判への法務省の姿勢を示すものだとすれば、残念だと言わざるを得ない。批判を謙虚に受け止め、施設処遇の改善を行うよう法務省に求める。
城野医療刑務所受刑者暴行死亡事件で弁護士会が警告

 北九州・城野医療刑務所で、受刑者が、92年8月28日午前、診察中に「暴言を吐いた」として看護士長らから暴行され、翌朝急死。代行検視を命じられた所長は司法解剖もせず、福岡地検小倉支部に「病死」と報告後、翌日、遺体を火葬した(News Letter4号参照)。
 人権救済申立に対し、福岡県弁護士会は8月6日、「死因は暴行による疑いが極めて強く、看護士長と看守部長には、特別公務員暴行致死罪が成立する可能性も強い」「病死と装い、事件を隠ぺいした疑いが極めて強い」として、「再発防止と刑務所の体制の根本的見直し」を求め、刑務所と暴行した看守部長に警告した。また、福岡地検小倉支部に対しても「暴行を隠す恐れのある刑務所長に代行検視を命じたのは不相当で、不合理な報告書をうのみにし、司法解剖もしなかった」と批判、「死因は暴行と疑われる事件なのに、看護士長は暴行罪に問われただけ。看守部長については、捜査した形跡もない」として、適正な捜査を求め勧告を発した。
東京拘置所閲読不許可国賠控訴審で棄却の不当判決

 東京拘置所の死刑確定者Sさんは、自費購読していた新聞の95年11月の死刑執行記事や、96年2月のイラン人脱走事件の記事が検閲で抹消されたことで精神的損害を被ったとして、「閲読の自由は憲法で保障されている」と主張し、国家賠償請求訴訟を提起。一審で敗訴後、控訴していた。9月4日、東京高裁の矢崎秀一裁判長は「死刑確定者の心情の安定や、拘置所の秩序維持を考慮して不許可にしたのは合理的」として、「不許可処分に違憲、違法な点はなかった」とした一審東京地裁判決を支持、控訴を棄却する不当判決を言い渡した。
イラン人が府中刑務所で暴行され、国賠を提訴

 府中刑務所で服役していたイラン人男性が、看守の「イラン人はみんなうそつきばかり」という差別発言に一言反論したことをきっかけに、3度にわたる暴行、皮手錠、保護房収容、懲罰を受けた。これらを国連人権委員会に通報しようとしたが拒否され、ハンストをしたが、3日目に強制栄養補給をされた。その後、虚偽の理由から約9ヶ月間、連日連夜壁に頭をぶつけたり壁を蹴ったり、ひとり言をしゃべり続ける精神障害者と隣り合わせの特殊な区画に独房拘禁した。これに対し、8月29日に東京地裁に国家賠償請求訴訟を提起した。
法務省に外国人受刑者の処遇問題で申し入れ

 9月19日、CPRの海渡雄一事務局長は、法務省矯正局総務課法規室に対し、外国人受刑者の処遇問題について申し入れをした。法規室からは法規係長の松田治さんが対応。「以下について、@調査し結果を公表すること、A調査にCPRの立ち会いを認めること、B改善策を図るためCPRとの懇談を持つこと。1. 府中刑務所でもっとも多い不服は最近食事の量が減らされているというもの。2. 冬が寒いため、霜焼けがひどく、湯たんぽが取り上げられたことなどへの不服が次に多い。3. HIVに感染している受刑者がエイズを発症していなくても独房に収容され、他の受刑者等と交流ができないことへの不満が聞かれた。4. 刑終了後の退去強制の際、帰国費用が払えないため、入管施設に長い間居なくてはならない。作業賞与金がもう少し高ければ帰国費用ぐらいは出せる、作業賞与金の増額を望む。5. 本(母国語の)の差し入れで通訳費用を出せと言われたことがある(そうでないこともある)。市販本なので、翻訳は不要ではないか。6. 面会通信の際の使用可能な言語を増やしてほしい(増えてきてはいるが、英語、韓国語、中国語くらい)。7. 工場での脇見、私語まで取り締まるのは行き過ぎ。」
東京拘置所で領置品の量を制限する動き!?

東京拘置所で、9月1日、概略以下のような「告知放送」が行われた、という。「10月1日より、訴訟書類を含む領置品を一人、30×33×49cm:約48gの箱2.5個までに制限する。現在の領置品については6ヶ月の猶予期間内に宅下げなどして始末すること。制限を超える場合、差し入れ・自弁購入を禁止する」。拘置所建替え問題との関連は現在のところ不明。「領置」とは、監獄が在監者の携有物を強制的に保管すること(監獄法51条)。詳しい事実は現在調査中だが、生活一般の問題であるばかりか、刑事被告人(死刑に直面する者)としての防御権にも関わる問題であり、今後、白紙撤回を求めていきたい。