5月17日(土)、第3回総会・国連拷問禁止委員会委員ベント・ソレンセン氏を迎え記念講演会を開催

「拷問禁止条約批准を求めて−世界の拷問と国際機関による拘禁施設訪問調査制度の役割−」

                  海 渡 雄 一


1、拷問禁止条約批准の必要性
最近、日本の拘置所・刑務所や入国管理施設で外国人被拘禁者や日本人に対して、暴力が加えられたとして裁判が提起される事例が相次いでいます。些細な規則違反が厳しい懲罰の理由とされたり、長期間に及ぶ独居拘禁の理由とされている例も少なくありません。

 このような実態については、ヒューマン・ライツ・ウォッチによるレポートやニューヨークタイムスやタイム、NBC、BBCなどのメディアにも取り上げられ、国際的な注目を浴びるに至っています。
 こうした人権侵害状況を改善するため、大きな力となりうる国際条約に拷問禁止条約があります。この条約は1984年に起草、1987年に発効し、1996年11月の時点で世界の99カ国によって批准されました。拷問禁止条約の批准は国連規約人権委員会(自由権)の日本政府に対する1993年の勧告にも明記されているにもかかわらず、日本政府はまだこれを批准していません。
 拷問禁止条約は、国際人権法上の「拷問、その他の非人道的もしくは品位を傷つける処遇」などの予防・禁止のための条約です。拷問禁止条約が批准されれば、国別報告書の審査において拘置所・刑務所・入国管理施設などの拘禁施設の実態が国際人権基準に照らして詳細に検討され、改善の勧告が行われたり、また、人権侵害を受けた個人による拷問禁止委員会(CAT)への通報も可能となります。
 また、ヨーロッパにはヨーロッパ拷問防止条約に基づいて設立された、ヨーロッパ拷問防止委員会(CPT)が活動しています。この委員会の特徴は各国別の調査を書面上で行うのではなく、実際にその国を訪問し、委員会の選んだ施設を対象に綿密な調査を行って、国別の報告書を作成していることです。この調査では、施設内のあらゆる場所への立入り、被拘禁者との立会いなしの会話、施設の記録に対する閲覧などが委員会の権限として保障されています。
 現在、国連の拷問禁止条約の選択議定書の起草作業が行われており、国連の拷問禁止委員会にヨーロッパ拷問防止委員会に類似した機能を与えることが検討されています。

2、拷問禁止委員会委員の来日予定
 さて、現在アムネスティ・インターナショナル日本支部(予定)と監獄人権センターの共催、拷問等禁止条約を批准する会と入管問題調査会の協賛で、今年5月14日から20日までの日程で国連拷問禁止委員会のメンバーであるベント・ソレンセン氏を日本に招待し、
1) CPR第3回総会記念講演等の講演活動
2) 外務省・国会議員・マスメディアなど日本政府の 拷問禁止条約批准への働きかけ
3) 未決・既決の刑事拘禁施設、入国管理施設の訪問 調査等の活動
を行う計画を立てています。
3、監獄訪問のエキスパート、ベント・ソレンセン氏
 今回御招待するのはベント・ソレンセン氏です。同氏はデンマークの医師であり、大学教授です。
 現在国連の拷問禁止委員会とヨーロッパ評議会に設置されたヨーロッパ拷問禁止委員会のメンバーを兼任されており、拷問被害者のリハビリのためのセンター(RCT/IRCT)の前代表でもあります。「監獄訪問のガイドライン」というパンフレットも著わされています。国際的に活動している2つの拷問禁止委員会の活動実態に通じ、監獄訪問のエキスパートとして拷問禁止条約の批准を日本政府に働きかけるための適任者です。
4、第3回CPR総会と記念講演会への参加のお願い
 そこで、1997年5月17日(土)の午後1時からCPR第3回総会、午後2時から5時の予定で、ソレンセン氏による記念講演会「拷問禁止条約批准を求めて−世界の拷問と国際機関による拘禁施設訪問調査制度の役割−」を開催いたします。場所は東京・お茶の水の明治大学父母センターを予定しております。
 講演の内容は、世界の拷問の実態、拘禁施設における拷問や非人道的な処遇の防止・改善のために国際機関による拘禁施設訪問調査制度の果たしてきた役割、日本における拷問禁止条約の批准の持つ意義などに及ぶ予定です。
こうした拷問禁止条約を日本政府が批准する意義を国内的・国際的な観点から多面的に理解するため、プレ企画として、来る4月5日(土)午後2時より、東京・お茶の水の明治大学大学院会議室(予定;変更の場合はご連絡します。)において、宇都宮大学の今井直さんをお迎えして第5回監獄人権セミナー「拷問禁止条約の意義、その運用の実際、ヨーロッパ拷問禁止条約との異同」を開催します。

プレ企画、総会・記念講演会へ、ぜひ多くのみなさまのご参加をお願いいたします。