海 渡 雄 一
このような実態については、ヒューマン・ライツ・ウォッチによるレポートやニューヨークタイムスやタイム、NBC、BBCなどのメディアにも取り上げられ、国際的な注目を浴びるに至っています。
こうした人権侵害状況を改善するため、大きな力となりうる国際条約に拷問禁止条約があります。この条約は1984年に起草、1987年に発効し、1996年11月の時点で世界の99カ国によって批准されました。拷問禁止条約の批准は国連規約人権委員会(自由権)の日本政府に対する1993年の勧告にも明記されているにもかかわらず、日本政府はまだこれを批准していません。
拷問禁止条約は、国際人権法上の「拷問、その他の非人道的もしくは品位を傷つける処遇」などの予防・禁止のための条約です。拷問禁止条約が批准されれば、国別報告書の審査において拘置所・刑務所・入国管理施設などの拘禁施設の実態が国際人権基準に照らして詳細に検討され、改善の勧告が行われたり、また、人権侵害を受けた個人による拷問禁止委員会(CAT)への通報も可能となります。
また、ヨーロッパにはヨーロッパ拷問防止条約に基づいて設立された、ヨーロッパ拷問防止委員会(CPT)が活動しています。この委員会の特徴は各国別の調査を書面上で行うのではなく、実際にその国を訪問し、委員会の選んだ施設を対象に綿密な調査を行って、国別の報告書を作成していることです。この調査では、施設内のあらゆる場所への立入り、被拘禁者との立会いなしの会話、施設の記録に対する閲覧などが委員会の権限として保障されています。
現在、国連の拷問禁止条約の選択議定書の起草作業が行われており、国連の拷問禁止委員会にヨーロッパ拷問防止委員会に類似した機能を与えることが検討されています。
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