CPRは死刑執行を続ける
法務省に対し強く抗議します

CPR事務局


7月11日(木)、東京拘置所で1名、福岡拘置所で2名の被拘禁者に対して、死刑執行が行われました。監獄人権センター事務局は、死刑執行を繰り返し強行している日本政府・法務省に対して強く抗議します。また、政府・法務省に対し今後このような暴挙を繰り返さぬよう要請するとともに、死刑執行停止・死刑廃止へ向けて取り組みを続けることをここにアピールします。
 死刑を執行されたのは東京拘置所のIさん(48才)、福岡拘置所のSさん(49才)とYさん(43才)です。
東京拘置所のIさんは、1981年7月6日にいわゆる神田ビル放火殺人事件(強盗殺人・現住建造物等放火)により、1982年12月7日東京地裁において死刑判決、1984年3月15日東京高裁で控訴棄却、1988年7月1日最高裁において判決確定。事件の起訴から控訴審判決まで1年半というスピード判決であり、審理の過程に疑問が持たれていました。  また、福岡拘置所のSさんとYさんは共犯関係にあり、1979年11月4日にいわゆる福岡病院長殺人事件(強盗・殺人・死体遺棄)により、1982年3月16日福岡地裁小倉支部において死刑判決、1984年3月14日福岡高裁で控訴棄却、1988年4月15日最高裁において判決確定。Sさんは代理人なしで再審請求していたが結果は不明(却下されたものと思われる)、Yさんも再審請求を準備中ということだったがおそらく請求することなく執行されたものと思われます。このケースでは被害者が1名であるにもかかわらず2名に対して死刑判決が下され、不当に厳しい量刑について強く批判がなされていました。
 監獄人権センターではこれまで、死刑が執行されるたびに、執行に抗議し、死刑執行停止・死刑廃止に向けて日本政府・法務省が努力するよう求める声明を公表してきました。それらに述べてきたように、「凶悪事件」に対する人々の応報感情の高まりを利用して繰り返される死刑執行は、不合理かつ恣意的政策的な、死刑制度を存置すること自体を正当化しようとするものであり、憲法や国際人権法の理念にも反する暴挙としか言えません。また死刑制度は「矯正不能者」、つまり処遇が困難な被拘禁者はどう扱っても―生命を抹殺することさえ―かまわないという論理にもとづくものです。これは明らかに矯正の責任放棄であり、程度の差はあれ、社会性を欠いていた故に犯罪に関わってしまった被拘禁者の、人間としての尊厳を保障し社会復帰を実現するような想像力を圧殺するものです。死刑制度を維持すること自体を目的にするような検察庁および法務省刑事局による現状の死刑執行の運用については、おそらく矯正局や矯正の現場にいる刑務官たちも大きな疑問を抱いていることと思います。それだけに一日も早い死刑執行停止・死刑廃止が求められているのです。
 今年は国際人権規約(B規約)に基づいて、国内の人権状況について日本政府が規約人権委員会にレポートを提出し、委員会の審査を受ける年です。前回93年11月5日に、同委員会から「死刑廃止に向けた諸措置をとること」を勧告された日本政府が、これに対して「死刑制度そのものの存続はB規約も認めているところであって、各国がそれぞれの国内事情等を考慮して制度の存廃を決すべき事項であることから、委員会が死刑制度の廃止そのものを勧告することは越権ではないか」(当時の法務省担当課長、三谷絋氏の『刑政』掲載論文より)という愚痴とも批判ともつかない言葉と、21日後の11月26日の4名の被拘禁者の大量死刑執行という暴挙によって答えたことは、きたる委員会でも一つの大きな論点となるでしょう。今回を含め、この間繰り返されてきた死刑執行について、カウンターレポートの提出など、監獄人権センターとしても積極的に発言していこうと思います。
死刑執行停止・死刑廃止に向けて、ともに、今以上に、取り組みを続けていきましょう。
(抗議先は:〒100 東京都千代田区霞ヶ関1ー1ー1 法務省 FAX03ー3592ー7011 法務大臣 長尾 立子 様
または 〒115 東京都北区赤羽台4ー17ー18ー409 )