監獄人権センター大阪(CPR大阪)
第2回「総会」報告

世話人会 弁護士 金井塚康弘


1 CPR大阪「総会」開かれる

 さる6月7日、監獄人権センター大阪(CPR大阪)の第2回「総会」と石塚伸一北九州大学教授の記念講演会が、大阪弁護士会館で行われた。「総会」とかぎ括弧が付いているのは、CPR大阪は、組織的にはネットワーク的連絡体であるので、規約上は総会という機関はいまだないことによる。年に一度程度、多くの会員の意見を聞いて一年の総括と方針を検討する場を設けることは、当然(?)という趣旨であるが、広報不足か、参加者が、20名足らずであったことは、問題を残した。

2 石塚伸一北九州大学教授による記念講演会

 まず、石塚伸一北九州大学教授の「監獄建替問題に取り組む視点」と題する記念講演会が行われた。
 非常に実践的、体験的かつ理論的なお話しで、質疑・応答も活発になされ、大阪拘置所建て替え問題への取り組みに対する様々な教示や示唆を受けた。

3 活動報告と活動方針

 質疑・応答の中の報告という形でなし崩し的に(?)行われた「総会」では、昨年度一年間の活動報告がなされた。@獄中訴訟ないし人権救済申立事件の支援、処遇改善(医療面)のための対施設交渉、電話相談等に対する助言等。A学習会等:1995年4月28日、元刑務官の坂本敏夫さんを招いての設立記念講演会、1996年2月8日、元受刑者則松邦安さんの体験的「監獄とつき合う方法、けんかする方法」をうかがう第1回学習会(テーマ:獄中者の一日)、同第2回学習会(3月22日、テーマ:懲罰)。B死刑廃止フォーラムin大阪主催の講演会への協力と参加、関西CPR主催のビビアン・スターンさん(PRI事務局長)らの講演会への参加。C抗議声明等:日本政府の死刑執行に対する抗議声明(2回)および西日本入国管理センター(茨木法務総合庁舎)の開所にあたり、RINK等6団体と共にセンター内処遇について申入書を提出。D機関紙発行:『監獄新聞』1ないし3号の発行等である。
 1996年度の活動方針としては、@組織・運営上は、処遇改善を支援、協力してくれる弁護士を多数募り、リストを作成して、支援体制の充実をはかること。A支援、調査、研究、出版活動上は、次の5点が具体的活動方針として提案され、承認された。

(1)大阪拘置所建て替え問題に関連し、収容施設が満たすべき国際的、人道的基準を調査研究し、提言にまとめる。拘置所建て替え問題については、CPRや日弁連等の全国的取り組みに協力する。できる限り多くの収容者の改築、改善への意見をアンケート等で集約し、行政交渉を行う。
(2)獄中医療、獄中労働等の処遇についての、国際的、 人道的基準を調査研究し、処遇の改善を支援する。
(3)長期収容者、特に仮釈放されない無期囚の非人間 的実態を調査し、処遇の改善を支援する。
(4)より簡便、迅速に収容者や家族が処遇改善を要求できるように、不服申立を平易に解説したマニュアル(『処遇改善のための不服申立マニュアル(仮称)』)にまとめ、広く配布できるようにする。
(5)死刑廃止に向けた諸活動。  質疑・応答の中のその他の報告では、特にRINKの古屋哲事務局長から、西日本入国管理センターの実情、対当局交渉の経過と実情等の報告を受け、今後とも共同して交渉等にあたることも確認された。

4 民事訴訟法改悪案に対する緊急アピール

 さらに、衆議院議長土井たか子氏、参議院議長斎藤十朗氏ら宛ての「民事訴訟法改悪案に対する緊急アピール」が、緊急動議として出され、参加者の全員一致で採択された。
 監獄等の収容施設の処遇の人道化、適正化を求める立場から、民事訴訟法改正案の中の特に文書提出命令における公務秘密文書の除外の拡大を規定している条項について、このままでは、獄中訴訟等での獄中情報隠しの横行が非常に懸念されたので、@行政が提出を拒絶できる文書は、その提出によって「公共の重大な利益が害される具体的危険性がある場合」に限定する。A提出拒絶理由の有無につき、裁判所が審査できるようにすることの2点にわたり修正するように申し入れた。

5 「総会」続報と繰り返される死刑執行

 7月3日、「総会」後の世話人会で、「総会」の反省とともに8月31日(予定)に則松邦安さんの体験的「監獄とつき合う方法、けんかする方法」をうかがう第3回学習会(テーマ:獄中医療、場所:アピオ大阪)を行うこと、9月6日(予定)獄中訴訟ケース研究(徳島刑務所接見妨害国賠事件、講師:金子武嗣弁護士)を行い、若手弁護士に参加をはたらきかける等の具体的日程等が話し合われた。
 そんな折、7月11日、1993年以来強行されている「いのちの処分」の日常化が、六たび行われてしまった。CPR大阪では、翌日、アムネスティ死刑廃止ネットワークセンター(大阪)ら7団体と共に抗議声明を出したが、「いのちの処分」の日常化に対して、有効な反撃を組織できていないことに苛立ちを感じる。8月3日、死刑廃止フォーラムin大阪等の主催で、映画『デッドマン・ウォーキング』のロードショウ先行上映、講演会が行われるのではあるが。