Dead Man Walking

映画『デッドマン・ウォーキング』
上映とトークの夕べ

死刑廃止条約の批准を求めるフォーラム90実行委


鍵のジャラジャラいう音。重い金属の扉が開閉される音。金属探知器によるボディ・チェック。そして面会が始まるまで続く、自分の意志で来ているにもかかわらず妙に居心地の悪い緊張感…。
 死刑について何も知らないカトリックのシスターが初めて刑務所を訪れる映画の冒頭のシーン。実際に面会する時のような息苦しさがスクリーンから伝わってくる。

アメリカ・ルイジアナ州ニューオリンズ。カトリックのシスター、ヘレン・プレジョーン(スーザン・サランドン)は死刑囚マシュー・ポンスレット(ショーン・ペン)から手紙を受け取る。幾度かの手紙のやり取りの後、シスターはスピリチュアル・アドヴァイザー(日本の教誨師よりは民間ボランティアに近い)になり、刑務所をおとずれ面会を求める。そして…。

物語はシスター・ヘレン・プレイジョーンの実話に基づいている(日本語版は徳間文庫から出版予定)。彼女は言う。「不正や貧困との闘いは神が与えられた試練であると認識しています。…イエス・キリストは、憎しみには憎しみを暴力には暴力をもって対処してはならないと説いておられます。私もそのように言える強さがほしいと祈っています。」「州が人を“殺す”のは許せないが、遺族の悲しみや痛みを思うとやりきれない。…加害者への哀れみは、被害者への裏切りになるのだろうか?」と。

監督・脚本は、あのティム・ロビンス。『ショーシャンクの空に』で冤罪を訴えながら希望を捨てずに創造的に生きる長期受刑者の姿を演じたティム・ロビンス。私事であるが、よく国際人権法などで「人間の尊厳の尊重」という言葉を目にしても、はたして拘禁施設と「人間の尊厳」が両立できるのだろうかと、どことなくピンとこなかった、『ショーシャンク…』を見るまでは。彼は、今回、死刑囚とそれを取り巻く人々の姿を、映画監督として描いた。彼自身「原作は僕にとって死刑をめぐる様々な議論やそれに関わる人のいる世界に導く扉となった。死刑囚と同様に被害者の遺族の側にも触れ人間的な尊厳を問う原作、そこに 描かれたことのどれをも否定したくなかった。」と語るように、不幸にして対峙してしまう二つの側を非常に丁寧に公正に描き、結論を観客に委ねている。また、スーザンサランドンはこの演技で第68回アカデミー主演女優賞を受賞した。

映画のサウンド・トラックは「もしソングライターたちがシスター・ヘレンと同様の経験をしたら、そこからどんなインスピレーションを得るだろうか」と考えたティム・ロビンスが依頼し、テーマに共感したブルース・スプリングスティーン、ジョニー・キャッシュ、ヌスラット・ファテ・アリ・ハーン、トム・ウェイツ、スザンヌ・ヴェガ、パティ・スミスなどなど、様々なアーティストにより“映画『デッド・マン・ウォーキング』からとそれに触発された音楽”として作られた。アルバムの収益金の一部はアメリカの殺人の被害にあった家族に対する賠償金と、教育プログラム、食物を生産することによって暴力の芽を摘んでいくことを目的とする民間ボランティアに寄付されるという。(ソニー・ミュージックエンタテインメントから発売中)。

さて。その『デッドマン・ウォーキング』を見て死刑について考えるイベントが、来る7月6日(土)、午後5時30分開場、午後6時開演、東京・有楽町マリオンの朝日ホール(03ー3284ー0131:JR・地下鉄「有楽町」「銀座」下車)で開催されます。主催は死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90、アムネスティ・インターナショナル日本支部、協力、日本ヘラルド映画。入場料は1500円です。
 トークのゲストはピーター・バラカンさん(ブロードキャスター)、山田洋次さん(映画監督)、竹下景子さん(女優)。運が良ければ、監督・脚本のティム・ロビンス、主演のスーザン・サランドンのあいさつもあるかも。

本当に、お世辞抜きで、多くの人に見てもらいたい映画です。東京近郊の方はイベントに。そうでない方は映画館で。ぜひご覧ください。

チケットお求め・お問い合わせ先:
死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90
電話 03-3585-2331
アムネスティ・インターナショナル日本支部
電話 03-3203-1050