年末 死刑執行の阻止の声が世界中から寄せられた


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アムネスティ・インターナショナル国際事務局の声明(12/11/1997)

アムネスティ・インターナショナル発表(国際事務局:ロンドン)

        AI INDEX: ASA22/13/97
1997年12月11日(木)発表

アムネスティ・インターナショナル、
日本における死刑執行の可能性に強い懸念を表明。
橋本龍太郎首相宛に書簡を提出(12月5日)

12月末の死刑執行への不安、執行の阻止を要求。
日本政府による死刑制度の存廃議論への圧力を憂慮。
恣意的かつ秘密理に行われる死刑の実態を強く批判。

○ 高まる12月末の死刑執行への不安  〜執行の停止を強く求める〜

 国際的な人権擁護団体アムネスティ・インターナショナル(国際事務局:ロンドン、以下「アムネスティ」と略)は、日本政府が、死刑制度をめぐる世論や国会での反響を最小限に抑えるべく、年末の連休や国会の休会時を利用して近く死刑を執行しようとしていると考え、死刑の執行を止めるべきであると訴えている。過去3年間、毎年12月に死刑の執行が慣例的に行われてきた。死刑廃止の活動を行ってきている各団体は、法務大臣が次の執行を1997年末に予定していると確信している。

 ある報告によれば、執行は12月18日、19日頃に行われると言われている。また、どの死刑囚が執行されるのかについても事前に公表されず、かつ恣意的に選択される。法務省が、死刑制度に対する反対意見を最小限に抑えるために事前に公表せずに執行を行っている事は明らかである。

○ 近く死刑が執行されるとする根拠

 アムネスティは、日本政府が、死刑執行に対する世論の関心を最小限に抑えようとしていると考えているが、それらは主に以下の点によってより強く裏付けられている。

・ 過去3年間、毎年12月に死刑の執行が慣例的に行われてきたという事実。
・ マスメディアや世論の注意をそらすために、執行が国民の祝日近くにおこわなれるというこれまでの傾向(今年は、12月20〜23日の期間が連休になる)。
・ 国会において死刑に関する議論が行われることを防ぐために、国会の会期中に執行を避ける傾向。国会の会期切れとなる12月12日が過ぎると、多くの議員が東京を離れ、死刑廃止を主張する議員は少数になる。

○ 12月5日付けで首相に書簡を提出 〜執行の阻止と死刑廃止への支持表明を要求〜

 アムネスティは、12月5日付けで橋本龍太郎首相宛に書簡を提出した。書簡においてアムネスティは、これまでに表明してきた日本の死刑制度に対する意見に加え、今回の確実な執行の阻止と共に、首相が死刑廃止への支持を表明するよう強く求めている。

 死刑制度が犯罪解決策になりうるという論拠はない。日本において死刑執行は、恣意的に秘密理に行われる。死刑囚は、死刑判決確定後、いつ執行されるのかを知らされず何年も過ごしている。今回に関しても、これまで同様、死刑囚本人、その弁護人、死刑囚の家族には、執行が秘密理に行われるとアムネスティは考えている。

○ 背景情報

 日本においては、1989年から1993年の3年間、死刑の執行は停止されていた。その執行停止期間には、元大臣や多くの議員が死刑廃止の意見を表明していた。また、この停止期間に犯罪は増えていないことがわかっており、これは、死刑執行がなかったことの効用と捉えられる。実際、この期間、犯罪率は一般的に減っていたことが分かっている。

 最近の執行は、日本のマスメディアに議論を巻き起こしている。1997年8月には、多くのマスメディアは、作家でもあった永山則夫への死刑執行を非難した。彼は、19歳の9歳のときに殺人の罪を問われ逮捕され、東京拘置所において28年間を過ごした。彼は、作家として有名であった。永山則夫のケースはいかに重大な犯罪者でも改善しうることを端的に示している。死刑、無期懲役、そして再び死刑と紆余曲折を辿った判決過程は、やり直しのきかない死刑判決の場合における司法制度の恣意的な状況を浮き立たせた。

 法務省は、世論は、死刑制度の存廃について、大部分が死刑支持の回答をすると述べている。しかし、多くの国の事例を見れば、死刑が効果的な犯罪防止策として考えられているかどうか、あるいは、死刑制度は公正に適用されているか、司法の誤りの危険性はあるか否かを尋ねられると、死刑支持の回答は減少する。また、1989年〜89年〜1993年の間の事実上の執行停止について顕著な世論の批判はなかった。

 また、殺人被害者の親族が、自ら死刑制度の維持を求めて積極的に運動したり、あるいは意図的に犯罪者の執行を求めるという明らかな事実はない。アムネスティは、日本における死刑事件に関する情報を長年にわたり収集してきているが、刑事手続は何年もかかるにもかかわらず、被害者の親族あるいは他の人々から、執行を行うために、手続きを迅速にしてほしいという要求は非常に少ない。
以上

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死刑廃止議員連盟が、下稲葉法相に会見

1997/12/15

於:参議院法務政府委員室(16:10〜16:25)
参加者:下稲葉法相、原田刑事局長、他1名
参加議員:中島武敏衆議院議員(共産)、生方幸夫衆議院議員(民主)、保坂展人衆議 院議員(社民)

要望書と議員による署名入り要請文を手渡す。

  生方:日弁連の要望書も提出され、議論ができない国会の休会中に死刑の執行をしないように要請します。

法相:承りました。

保坂:最高裁の大野補足意見もあり、世界の趨勢は死刑廃止に向かっている。ともかく、執行を停止して、制度について議論をすべきである。

生方:世論調査のデータを詳細に分析すると、死刑廃止と存置は拮抗している。世論が圧倒的に死刑を支持しているとは決して言えない。無期懲役を厳格な形にすれば世論もかわると思う。

中島:家族でも話すが、釈放のない無期懲役ならば、凶悪な犯罪者について死刑ではなくてもいいのではないかと思う。

法相:以前、毎日新聞で竹村泰子議員と死刑について議論をしたことがある。大変重い問題だと思う。今日はこの辺で・・・。

保坂:日本でも、3年4カ月にわたって死刑が執行されなかった。8月の永山さんの執行も国会の休会中だった。会期中なら当然議論がなされたはずだ。日弁連の要請も出たことだし、制度について議論をしてほしい。

生方:死刑について、情報を公開しないのもおかしい。

法相:仮に執行したときに、公表した方がいいか法務省内でも議論がある。執行された人々の周辺の人の人権があり、それに法務省がコミットするのはどうかと思う。 ともかく、考えさせていただきます。

保坂:会期中に「死刑の執行などに関する質問趣意書」を出している。できるだけ早く回答してほしい。

法相:今日の所はこのへんで。承ります。こういう陳情が一番つらいです。

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フォーラム90/死刑廃止議員連盟の記者会見

「日常化」する死刑執行から人道的な刑事政策への転換を 1997年12月15日

 1993年3月に執行が再開されて以来、この数年で年2回の執行が「日常化」「定例化」している。そして、過去、94年12月1日、95年12月21日、96年12月20日と執行されてきていることから、私たちは今週12月19日(金)に執行されるのではないかと危惧している。
 死刑廃止フォーラム90は下稲葉法相に「死刑廃止の早期実現と人道的な刑事政策立案の要望」を9月26日付けで要請した。また、日本弁護士連合会は11月19日付で橋本首相と下稲葉法相に要望書を提出し、死刑に直面する者の権利保障のための対策をすみやかに講じることと、それまでの間は死刑確定者が国際人権(自由権)規約および国連決議に違反している状態に置かれていることにかんがみ、死刑の執行は差し控えるよう申し入れをしている。本日は、死刑廃止議員連盟も下稲葉法相に執行の停止を申し入れしている。
 加害者に対する憎悪を増幅するのではなく、本当に助けを必要としている被害者への物心両面での十分な救済制度を確立すること、刑務作業を通じた加害者の被害者への損害賠償を制度的に可能にすること、そして国民が納得する死刑廃止後の代替刑などは、今すぐに検討は可能である。
 日本弁護士連合会の要望書にあるように、国際人権規約および国連決議に違反した状態で死刑執行を強行することは、国際法違反である。国際法違反の死刑執行は許されない。このような状況の中で、法務大臣は執行に急ぐのではなく、未来をみすえて、より人道的な刑事政策を検討する責務がある。「日常化」する死刑執行から人道的な刑事政策への転換を、強く求めるものである。

死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90
死刑廃止を推進する議員連盟

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アムネスティ・インターナショナル世界大会の声明

以下は、現在南アフリカで開催中のアムネスティ・インターナショナル世界大会が、大会名で、再度日本政府に執行を取りやめるように勧告した声明です。
原文の再投稿は、ヘッダ、フッタを含めて一切の改竄や省略なしに転載する場合は許可されています。
原文の前に、簡単な要約をつけました。転載する場合は、原文とともに、またこの要約は公式のものではないことを明記した上でお願いします。

【要約】 ケープタウンで行われているアムネスティ・インターナショナル世界大会の代議員500名は、日本政府に対して、18日前後に予想される死刑執行を停止するように本日、呼びかけた。
いくつかの拘置所で、絞首刑の準備が進んでいると見られる。処刑される死刑囚の名前は分かっていない。日本政府は秘密主義を固持しているからである。

世界大会首席のPaul Hoffmanは以下のように述べた。

世界中の100万のアムネスティ会員にかわって、日本政府に死刑は近代社会において存続の余地がないこと、ことにこうした秘密主義とシニシズムのやり方は許されないことを伝える。
日本政府は1994年以降、毎年12月に死刑を執行している。年末休暇と国会の休会の時期をねらって執行することで、抗議や論議を押さえ込もうと意図している。
死刑囚は、ある日突然、刑場に引き出され、事前には家族にも弁護士にも知らされず、執行の後で遺体が戻されるだけである。
アムネスティ・インターナショナルは、死刑は犯罪抑止力とはなりえず、しばしば不公正に適用され、無実の人の処刑を不可避的に引き起こしうると考える。
1998年は日本も加盟している国連人権宣言の50周年にあたる。この年を、死刑の廃止と死刑囚の減刑によって迎えるように勧告する。

---------------- Original message follows ----------------

From: Amnesty International
To: amnesty-l@oil.ca
Date: Wed, 17 Dec 1997 11:32:36 -0500
Subject: Japan: Amnesty International world conference calls on government--

* News Release Issued by the International Secretariat of Amnesty International *
17 DECEMBER 1997
AI INDEX: ASA 22/15/97

Japan: Amnesty International world conference calls on government to halt imminent executions

CAPE TOWN -- 500 delegates attending Amnesty International's world conference in South Africa today called on the Japanese government to halt all executions in the face of strong indications that several prisoners will be hanged on or around 18 December 1997.

According to the human rights organization, detention centre officials in various cities are believed to be making preparations for the hangings.
The names of prisoners are not known, as the government maintains a policy of strict secrecy on executions.

"The 500 delegates attending Amnesty International's International Council Meeting in Capetown strongly urge the Japanese government not to proceed with these executions, and express our outrage that once again December in Japan appears to be the killing season," said Paul Hoffman,
Chair of the Meeting.

"Speaking on behalf of Amnesty International's one million members worldwide, from Algeria to Zimbabwe, we want to send the strongest possible message to the government that the death penalty has no place in the modern world -- particularly when it is being carried out with such secrecy and cynicism."

Executions have occurred in Japan every December since 1994. The authorities often time these to coincide with public holiday periods and parliamentary recess, in order to minimize public and parliamentary criticism and debate through lack of awareness.

Inmates waking up on death row in Japan never know whether that day will be their last. The authorities always take them to be executed without warning, and without informing either their relatives or their legal teams. Their the ashes of their cremated bodies are simply returned to the family after the execution has been carried out.

Amnesty International believes that the death penalty does not act as a deterrent, it is often applied unfairly and its irreversibility means that the innocent may be executed.

"1998 will see the 50th anniversary of the United Nations Universal Declaration of Human Rights (to which Japan is a party). We call on the Japanese government to mark this anniversary by abolishing the death penalty for all crimes, and granting clemency to all prisoners on death row," Mr Hoffman said.

.../ENDS

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12月19日早朝、各地の拘置所で死刑執行停止の要請行動

●朝の行動のレポート

今朝、早朝からの東拘前での抗議行動に参加したみなさん、お疲れさまでした。
朝8時に小菅駅に集合し、東拘前について、死刑執行をしないようにという要望書を手渡す行動を行いました。参加人員は約20名くらい。
周辺にはすでに私服公安が十数人配置されていて、われわれが門前に着くと、すぐに東拘の警備隊が排除にかかりました。最初、現場責任者らしき男が「文書は受け取る」と言ったのに、排除して鉄柵をおいてから、「おだやかにすれば受け取ると言ったのだ。こんな状態では受け取れない」などと前言を翻し、排除の一手でした。それでも8時半過ぎまで門前で押し問答しながら、要望書をマイクで読み上げ、死刑執行をするなという垂れ幕やプラカードを掲げて即席の門前抗議集会を行いました。
お昼のニュースまでの段階では、まだ処刑があったとは報じていません。

●その後のレポート

 昨夜9時半に事務所から速報を入れたとおり、18/19日に予定されていたであろう死刑執行は何とか阻止できたもようです。多くのマスコミは午後8時前までには執行がなかったことを確認したようで、最後まで追っかけていた某新聞社も10時半頃には情報収集を諦めたようです。事務所で夜明かし覚悟だった私たちも12時に撤収しました。  

 今回は多くの皆さんが「執行するな」の声を直接・間接に法務省と政府に突きつけていただいた、共同の成果だと感じています。ありがとうございました。そしてこれからも、死刑の廃止までともに闘って下さい。
   朝の東京拘置所前での行動は報告されている通りですが、東拘のほか名古屋拘置所・福岡拘置所でも、仲間たちの手により同様の行動が展開されたとの報告を受けています。
 また、今回はアムネスティインターナショナル連なる人々をはじめとする、世界中の人の声を感じることが出来ました。南アでのアムネスティ世界大会での宣言・日本領事館への要請行動の様子は私たちを勇気づけるものでした。またイギリスBBCは日本大使館に、12月死刑執行について取材「密行主義を厳しく問うた」との報告もありました。

 まだまだ予断を許しませんが、一部のマスコミでは年内の執行はないであろうと判断しています。私たちもそうあってほしいと思っています。

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