獄中検閲情報 no.3

提供 統一獄中者組合--------------(1997/春)


1997春の抹消報告

 相変わらず、外国文の部分や脱獄(未遂)等刑務所内での不祥事についての記事が抹消・切抜き・閲読不許可となっています。残念ながらCPR(監獄人権センター)のニュースレターや元刑務官の坂本さんの著書も例外ではありません。

●まず、岐阜刑務所の懲役囚Uさんからの手紙を紹介します。
「CPR NEWS LETTER No14」はえらく抹消されてしまったよ。6頁の海渡さんの左側上から10行目「前日の2月5日」から全文抹消(左側、右側)。8頁の菊田さんのは右側上から25行目より最後まで全文抹消。そして、な、なんと、せっかく永井君が苦労して書いたと思われる9頁の書評は全文抹消であった。そんなにスゴイこと書いてあったのかしらん?
 いやはや、すさまじきは抹消なり。と伝うより、密行主義と伝うべきかな。

 4月に『元刑務官が語る刑務所』(坂本敏夫著)を仮下げしようとしたら、閲読不許可と告知されたので、教育総括面接をしてみたのだが、処分変更しないとの回答だった。既に知っている事実もあるのだから、その部分は許可して、あとは抹消ってことは?とも尋ねてみたが、「聞きおく」ってことだったな。聞きおくってことは、今後は、閲読不許可ではなく一部抹消という処分を出すようにするってことかしらん?
 それにしても内部告発的なものだと、かなりムキになるんだなぁ。どこでも役所というのは同じかな。自浄能力がないとより良き政策はできなくなるのだけれど。あの本は、問題点を指摘して、より良き行刑を考えてゆこうとしているものなのにな。ひっかかるのは「第二部 刑務所内の重大事件」くらいだろうと推測してたのだが…。いや困ったものだ。

●CPRニュースレター14号の海渡さんの抹消部分は横浜刑務所の現職刑務官から届いた匿名の内部告発の手紙を紹介したもの。菊田さんの抹消部分は受刑者が『検証・プリスナーの世界』の本が読めたかどうか、読めた場合は本書についての意見を知らせてほしいと呼びかけたもの。そして永井君がたしかに苦労して書いたのは坂本さんの『元刑務官が語る刑務所』の書評でした。

 東京拘置所の場合だとこれらの部分は読めていますが、坂本さんの本は26個所の抹消(内、6ページ分3枚は切り取り)があったとのことです。脱獄事件に関連したこと、物品の持ち込みの事例、獄中者間での苛めの手口などの部分のほか、巡回頻度数の部分が細かく抹消されています。

●その他新聞記事やパンフレット類(『支援連ニュース』『かすみ草』等獄中者の救援交流紙)の一部抹消の報告も受けていますがほとんどは冒頭に記した内容の部分のようです。機会があればこれらの抹消の部分を比較対照した展示会でも開きたいものです。それらのチェックぶりは「丹念な」、というべきか「杜撰な」というべきか。

●抹消や切取は通常は本人の同意を得てから行うのですが(本人が拒否すれば本やパンフ丸ごと入らないわけですが)、ちゃんと確認がなされていないケースも見受けられます。本によっては高価なものを貸してもらう場合もあるわけで、これも問題です。

●また、近頃は手紙もワープロを使う人が増えてきましたが、そうした私信がパンフレット扱いにされて交付が遅れるという問題も生じています。獄中で当たり前のように行われている「検閲」制度はさまざまな問題を派生させています。