2003年5月14日  顕著に疑わしい死亡事例総合版 第二版

NPO法人
監獄人権センター
千代田区六番町6-20
グランドメゾン六番町202
電話番号 3237-1510
(責任者  事務局長弁護士 海渡雄一)


1 本資料は衆議院の法務委員会要求によって開示された死亡帳1593件のうち、参議院法務委員会によって疑わしい死亡事例として資料要求された死亡帳関係資料238件(平成15年4月18日に開示された別紙視察表等88件、平成15年4月25日に開示された50件、平成15年5月2日に開示された100件)から特に顕著な不審死の事例64件を選び、その内容と問題点を指摘したものである(全体65件の内1件は請求と異なる記録が開示されたもの)。検討に必要な資料が未提出である場合は追加資料として必要なものを明記した。名古屋の12月事件と5月事件は本資料からは除外した。

2 今回ピックアップしたものは以下のケースであり、その種別は事件の特定の後に注記した。
 @保護房・革手錠に関連したケース
 A顕著な医療ミス
 B開示された資料からは死因が明確でないもの

3 監獄人権センターが5月6日に、全体で238件の中からこの64件のケースを選び出した後、法務省は死亡帳調査班による調査結果中間報告を5月9日に発表した。この中間報告では、1593件から継続調査案件として、15件の死亡事例を選び、調査を継続することとした。
 この15件を我々の調査と対比すると、上記の238件に含まれているケースが10件であり、そのうち、我々が疑わしい事例として選んだ事案は9件である。
残りの5件は、参議院の資料要求から漏れていたものである。今回、これらの5件についての資料が参議院法務委員会の資料要求により、5月13日に公開された。これらの5件の検討結果を冒頭にまとめて、疑わしい死亡事例の総合版の第二版として公表することとした。
 今回明らかになった5件はいずれも、きわめて深刻な人権侵害の疑いのある事案である。また、新たに著しい医療過誤の事件1件横浜1453を追加した。
 また、我々の調査で疑わしい事件として分類しなかった事件の中で、死亡帳調査班が調査を継続するとされた事例が1件だけある。東京拘置所の1590番事件がそれである。この事件は、記録を見る限り、死因は自殺であり、事件性はみられない。確かに、事前に自殺のおそれがあることが判明しており、シーツなども引き上げられ、10分おきに視察を継続していながら、自殺と死亡を防止できなかった点で、自殺防止のための処遇、自殺企図後の措置の双方に疑問がある事案である。しかし、我々の調査では、このようなレベルの事件は他に多数あり、これは疑わしい死亡事例には参入しないこととした。この判断は変える必要がないと考える。
 なお、64件の内、死亡帳調査班が調査を継続するとした9件と今回の新たに付け加えられた5件の合計14件の事件については、「法務省調査継続事件」として、網掛けで注記することとした。
 また、64件の記載内容は、原則として前回と異ならないが、徳島刑務所554番事件について、大幅に加筆した。
 以上の通りであって、名古屋の2件を含めて、過去10年間の疑わしい死亡事例は72件となった。

4 全体の事件を分類すると次の3つのケースに分類される。
 第一の類型が保護房拘禁に接着した時期に死亡しており、保護房、革手錠の使用ないしは医療の不適切な医療が原因となって死亡したと見られるケースである。これらの事件は次の通りである。
網掛けとなっているケースが法務省の調査継続事件である。
 名古屋  86、98(12月事件),110(5月事案)
 府中   133143150165201
 横須賀  214
 大阪   216
 笠松女子 288
 岡崎医療 289
 松江   309
 岡山   316
 福岡   388
 鹿児島  424
 山形   499
 京都(舞鶴拘置支所)595
 月形   544548
 徳島   554
 京都拘置所913
 大阪拘置所918919942
 栃木女子 953
 黒羽   969
 川越少年 1533
 東京拘置所1558
合計29件(この件数には名古屋の2件を含む)

第二の類型は施設内の医療措置に多大な疑問のあるケースで、医療過誤ではないかと考えられるケースである。
 府中   189
 大阪   215217235238
 笠松女子 286
鳥取   308
 山口   369373
 宮城(古川拘置支所)471
 山形   500
 福島   509
 月形   547
 徳島   568
 松山   578
 黒羽   976982987
 横浜   1453、(今回補充)
 静岡   1506
 川越少年 15391540
合計22件
 
 第三の類型は明らかにされた資料からは死因が特定できず、死因そのものに疑問が残るケースである。
 府中   205
 岡山   319
 山口   372
 福岡   401404
 長崎   412413
 大分   415418
 宮崎   419
 沖縄   429
 福岡拘置所432437441
 秋田   495
 月形   546
 徳島   555558
 高松   571
 高知   583
 滋賀   587
合計21件

5 法務委員会による追加調査を求める事案
1) 徳島553番は、請求と異なる事件の事件の資料が開示されているので、開示のやり直しを求める。

2) 新潟刑務所 死亡帳番号なし 整理番号1481

   事件違いである。開示を要求した「呼吸器感染症」の事案とは別の「出血性潰瘍(消化管)による出血性ショック死」の事案。

3)長野刑務所 11-1 整理番号1493

   これも事件違いである。開示を要求した「急性心筋梗塞」の事案とは別の「急性心機能不全」の事案。

4)千葉刑務所1022番の事件について、遺体を引き渡された遺族から監獄人権センター宛に、「遺体に外傷があり、死因に疑いがある。」との調査依頼がなされているので、この件も追加調査を求める。

<第二版で補充する法務省が新たに資料を提出した5件の疑わしい死亡例と我々の調査によって追加する1件 合計6件の事件の内容と問題点>

補充の第1 大阪刑務所 7−1 整理番号215 死亡時52歳 平成7年5月 

(1).死亡帳
 急性循環不全
 保護房、革手錠はなし
 胃にビランを認め出血性胃炎と診断、抗潰瘍剤及び粥触にて経過監察していた。しかし腹痛が持続したため精査及び食事療法を目的に病舎休養とした。

(2).視察表
 (1)視察表第50号
出血性胃炎のため休養加療の必要を認める。
 (2)視察表第  号(号数記載なし)
・昨日、午後11時40分頃の就寝時、本人が布団の上に四つん這いの状態で「腹が痛い、痛くてたまらん。どうかしてくれ」等と大声でわめき散らし、職員の制止に従わないと電話連絡
・医務部保健助手の問診で、本人は「腹が痛くて仕方がないのです。薬を下さい。」等と申し出たところ、保健助手が「出血性潰瘍であるからある程度の痛みはある。薬も飲んでるから大丈夫。先生にも報告する。」等と説示。
・午前6時37分ころ、本人が房の扉の前で四つん這いになりながら箸箱で扉等を激しく叩きながら「腹が痛い。どうにかしてくれ」等と大声でわめきちらし、制止するも従わない。
・職員が房に行き「大声を出したり大きな音を立てるなよ。医務の保健部長に診察してもらっただろ。我慢してがんばれよ」と注意し指示。本人は「腹が痛くて辛抱できません。もう駄目です、我慢できません」と大声でわめく。
・騒音を発し続けることから、本人を調室で説諭指導すべく、副看守長が室内に入って箸箱を取り上げ、立ち上がらせて歩行させたが、本人は5,6歩進むと両膝を通路床についてへたり込み歩行しようとしないため、両脇を抱えて立ち上がらせた上、連行した。
・調べ室で説諭指導につとめたところ、本人は「腹の痛みもだいぶん薄らいできました。」等と言って、落ち着きが見られたので還室させた。
 (3)視察表第51号
・午前10時42分ころ、呼吸停止状態にあり、脈拍は触知困難な状態
 (4)視察表第52号
・出血性胃炎で病舎休養中の者だが、急性循環不全により意識不明状態に陥ったため、午前10時48分重症と認める。
 (5)視察表第53号
・午前11時20分死去
 (6)視察表第56号、第57号
・行政検視、司法検視の報告(内容は下記)

(3) 資料
 (1)行政検視報告書
・出血等の流出物はなかった。
・右膝部に短径2センチメートル、長径3センチメートル大及び直径1センチメートル大の擦過傷、左膝部に軽い打撲による変色部認めた。その他外傷等の痕跡はなし。
・右膝部の擦過傷の部位にはガーゼがテープで留められていた。
 (2)司法検視の報告書
・死体の状態、全身が細く、やせていることが確認された。検察官からやせはじめた時期について質問があり、医務部長から最近2ヶ月間で10キログラムやせたとの説明がなされた。
・背部から腰部、大腿部に濃い死斑。
・擦過傷は死因につながるものではない
・死因は急性循環不全による病死と認められるので司法解剖の手続きはとらない。

(4) 所見
 カルテなし。
 重症の状態にある受刑者が痛みを訴えているのに、暴れているとしてむしろ取り調べして説諭している。病舎療養中であり、痛みを訴えているのに保健助手が我慢しろと言っただけで、医師の診察を受けさせた形跡がない。
 背部、腰部大腿部の死斑の成因にも疑問がある。
 2ヶ月で10キロ痩せたことの詳細な経緯が不明。医師の診察が行われているのかも全く不明である。刑務所の医療措置に重大な落ち度のある事件であることは明らかである。

補充の第2 大阪刑務所7−2 整理番号216番 死亡時48歳 平成7年7月
@A

1 死亡帳
死亡帳では「病名:急性心筋梗塞 病歴:…突然の意識障害と心停止をもって発症。…経過より急性心筋梗塞と診断した。」とあり、革手錠保護房使用の事実は記載がない。検視についても「検視の結果、「病死と認め、司法解剖は行わない。」と記載がある。
 
2 視察表

視察表第4号「金属手錠を緊急に使用したことについて」
平成7年7月●日午前9時21分ころ「作業中の本人が…同衆…に許可無く一方的に話しかけているのを同看守が現認」「席を立つよう指示したが、本人はこれを無視し立とうとしないので、再度、事務所に上がれと指示したところ、本人は同看守をにらみつけて急に立ち上がるや、「なんじゃい、いったろうやないか、こらっ。」と怒声を発しながら同看守に1、2歩詰め寄り、右手でつかみかかろうとする暴行の気勢を示した。同看守はとっさに本人の右腕をつかみ、助務担当看守●●に非常報知を依頼し、矯正護身術の腕がらみで制止したが、本人は「なめるなこら。」などと怒鳴りながら、上半身を激しく左右に振り回して暴れ制圧に困難を極めるも、…金属手錠を両手後に緊急使用し、…第1舎調室に連行しましたので報告します。」

第4号視察表関係書類「報告書」
1事案名「職員暴行の気勢」
3発生(発覚)日時「平成7年7月●日午前9時21分ころ」
5事実「金属手錠を緊急に両手後に使用したものです。」

第5号「戒具使用の変更及び保護房拘禁することについて」
平成7年7月●日「本人は、…金属手錠を両手後に緊急使用し、第1舎調室に連行したものでありますが、同調室において、看守長●●が「静かにしろ、暴れるな、落ち着け。」と制止するも、本人はこれを全く聞き入れず、…「仕事のことやないか、あかんのかこらっ。あの担当は誰じゃ。」などと大声を発し続け、さらに、制圧から逃れようと周囲の職員の誰かれなしに足蹴りや体当たりをするなど極度の興奮状態を示し、再度暴行に及ぶおそれが顕著に認められ、かつ、職員の制止に従わず前記同様の大声を発し続けている現状から、普通房拘禁は不適当と認められますので、下記のとおり戒具を革手錠に変更し、保護房に拘禁の上、その動静を厳重視察するよう取りはからってよろしいか。」
一戒具の種類変更
1変更日時「平成7年7月●●日午前9時25分」
3種類及び方法「革手錠右手前左手後(左手に金属併用)」
二保護房拘禁
1拘禁日時「平成7年7月●●日午前9時26分」
3その他「負傷を認めず。」

視察表第6号「戒具使用並びに保護室拘禁を緊急解除したことについて」
「本日、午前9時53分ころ、…本人の様子がおかしいとの連絡があり、直ちに同保護室へ急行したところ、本人が横臥した状態で、意識もうろうとしているのが認められたため、当職は直ちに革手錠並びに保護室拘禁の解除を指示し、当職と同事に医務部から駆けつけた医師●●の指示により医務部治療室へ担架で搬送しましたので下記のとおり報告します。
1戒具使用解除日時「平成7年7月●日午前9時54分」
2保護房拘禁解除日時「平成7年7月●日午前9時54分」
3医務部診察室担送日時「平成7年7月●日午前9時54分」

視察表第7号「重症について」
平成7年7月●日
「本人は急性心筋梗塞(疑)により意識消失状態に陥ったため、本日午前10時00分重症と認めます。平成7年7月●日 法務技官医師●●」

視察表第9号「死亡について」
平成7年7月●日
1病名 急性心筋梗塞(疑)
上記疾病により、本日午前11時05分死去しましたので報告します。平成7年7月●日 法務技官医師●●」

視察表第11号「司法検視が実施されたことについて」
平成7年7月●日
1日時 平成7年7月●日午前0時16分から同0時24分まで」
3検視者 大阪地方検察庁堺支部検察官●●
6内容 医務部長及び処遇部長が本人の死亡原因、戒具使用の上保護室に拘禁した経緯及び保護室内での動静を説明したのち、検事が遺体の安置状況、表情、身体状況、蘇生処置の内容及び出血斑(あざ)の原因の確認をした。
7検視者の所見 病死によるものと認め、司法解剖は行わない。

3 戒具使用書留簿
戒具使用書留簿
平成7年7月●日午前9時22分
戒具使用「開始(緊急)」「金属手錠 両手後」「身体等異常を認めず」

平成7年7月●日午前9時25分
戒具「変更」「革手錠 右手前左手後」「金属手錠(脱錠のおそれあるため左手首に併用)」「身体等異常を認めず」

平成7年7月●+1日午前9時54分
戒具「解除」「革手錠、金属手錠(左手首)」「意識もうろうとした状態が認められたため。」「医務部へ担架にて搬送。」

4 保護房拘禁書留簿
保護房「拘禁」
平成7年7月●日午前9時26分「再三の制止に従わず「仕事のことやないか、あかんのかこら。あの担当誰や」等と大声を発し続ける現状から普通房拘禁は不適当と認められるため。」

保護房「解除」
平成7年7月●+1日 午前9時54分「意識もうろうとした状態が認められたため」「医務部へ担架にて搬送」

5 動静視察表(主要なもののみ)
平成7年7月●日午前9時26分〜7月●+1日日午後8時30分

午前9時26分「換気扇タイマーセットスイッチを入れる。湯茶を入れる。」

午後12時04分「…開房し昼食を入れる。その際戒具を一穴ゆるめる。…気温26℃」

午後12時25分「昼食を引き上げる。主食1/5、副1/5喫食する。その際、戒具一穴しめる。」

午後4時30分「…開房し夕食を入れる。戒具一穴ゆるめる」

午後5時00分「…開房し夕食引き上げる。1/5喫食。戒具元にもどす」

午後6時59分「…開室し臥具をを入れる。27℃」

午後9時00分「「ワッパはよはずせこらー」と大声を発する」

午後9時45分「「きつうしめやがって覚えとけよ」と放言する」

午後10時00分「「早よワッパはずさんかい」等大声を発する。26℃」

午後10時30分「「ワッパはずれたら絶対いったるどー」等怒号を発する」

午後11時●●分(30分前後と思われる)「「ワッパはずせこらー」と大声を発し…」

午前零時00分「「クソー寝られへんやないか」と放言し…」

午前零時15分「「こらーワッパはずせ殺すぞー」と大声を発している」

午前零時45分「…「ワッパじゃ寝られへんやないか」と放言する」

午前1時00分「「おまえ、ワッパはずしたらおぼえとけよ」と放言する。26℃」

午前1時30分「「外せ外せ、いいかげんにせいよ」と大声で怒鳴っている。」

午前1時45分「「オイ、まだ外れんのかい。早よ、出してくれや。」と大声を発し…」

午前2時00分「…25℃」

午前3時30分「「ワッパはずさんかい」と大声を発しながら…」

午前5時00分「…温度25℃」

午前5時15分「…「ワッパはずさんかい」と大声を発している」

午前5時30分「用便中」

午前6時00分「「早よ出せーっ」と大声で怒鳴り…」

午前6時40分「…開室し、臥具を引き上げる。便所の水を流す」

午前7時00分「…開室し、朝食及び湯茶を入れる。その際、戒具一穴ゆるめる。25℃」

午前7時30分「…開室し、朝食器引き上げる。主食1/3、副食1/2喫食している。戒具元に戻す。」

午前8時15分「…「おーい早よ出してくれー」と放言する。」

午前8時30分「…コップを口にくわえ、茶を飲んでいる」

午前9時01分「小便している」

午前9時30分「…「早よ、出せ」と大声を出している。」

午前9時45分「…「おい担当、早よ出せ、覚えとけ」と大声を出す」

午前9時53分「東枕南向きに横臥し、じっとしたまままったく動きが見られないため、その旨1舎事務所の●●主任に報告する。」

午前9時54分「●●統括の指示により、戒具、保護房を解除する。」

6 所見
 革手錠使用、保護房拘禁されてから、約24時間30分後に死亡している。死亡当日の午前5時の気温が25℃であり、革手錠で強く締めつけられて睡眠もできず、かえって興奮状態が継続し大声を発するなどしたことから、脱水症状となり熱射病により死亡したものと思われる。
 本人は、当初「不正交談」容疑に対する不満を訴えていたが、保護房収容約12時間経過後の午後9時頃から本人の訴えが「革手錠を外せ」ということに集中しており、革手錠右手前左手後(左手に金属手錠併用)の状態で施錠され、横臥することも容易ではない革手錠が、本人の身体に相当の負担になっていたことが伺える。
 死亡帳では「病名:急性心筋梗塞 病歴:…突然の意識障害と心停止をもって発症。…経過より急性心筋梗塞と診断した。」とあり、革手錠保護房使用の事実は記載がない。検視についても「検視の結果、「病死と認め、司法解剖は行わない。」」と記載がある。
 本件では、(1)遺族に対して戒具保護房使用の事実について通知されていない、(2)カルテの開示がない、(3)司法解剖が実施されていない。
 このような事案については、松江刑務所浜田拘置支所受刑者死亡事件(松江地判平成14年1月30日、判決確定)などの民事訴訟において国側の法的な管理責任が認められており、同判決以降も法務省がこのような事例の再調査に着手せず、事件を隠ぺいしていたことは非常に問題である。

補充の第3 宮城刑務所古川拘置支所 整理番号471 死亡時39歳 平成11年1月 
A
(1).死亡帳
 気管支ぜん息重責発作(ぜん息による窒息死)
 保護房、革手錠はなし。

(2).視察表
(1)視察表第1号(平成11年1月)
・午後0時30分、入所時説明時に特に苦しそうな様子や異常はなし。
・午後2時15分頃、本人が報知器を出し荒い息づかいで「薬もらえないですか。」「私、喘息なんです。息苦しくて困ります。」と訴え。
・午後2時30分、看護婦が確認したところ、顔色が不良で喘息が著明であったことからベロテックを使用させる。その後使用上の留意事項を説明し、看護婦引き上げた。ベロテック使用後症状軽減。看護婦が引き上げ直後、若干ぜーぜーとした息づかいで「もう一度使わせてください」と申し出があったが、看守は「使いすぎても危ない薬だから」等指導したところ、何も言わずに引き下がる。
・午後3時から3時30分ころまでの間、5分おきくらいに報知器を出して苦しそうな息づかいで「薬が欲しい」等申し出たが、看守部長は「4時間くらい間隔おかなければ駄目だ。6時半になったらやる。それまで我慢しろ。」と指導。
・午後4時30分ころ、本人はゼーゼーと苦しそうな息づかいでようやく話をするといった状況を呈したことから、5時30分頃に看護婦がベコタイドを使用した。
・午後6時30分ころ、本人からベロテックを使いたい旨申し出。我慢するよう指導。息づかいはゼーゼーとしていない。
・午後8時30分から50分までの間、看守部長、看守が「薬やるよ」と声をかけたが、ふてくされたように背中を向けたまま全く応ぜず、動こうとしなかった。職員の動きをうかがうような動作をしていたのを確認。午後9時10分に左肩を壁によりかからせ、目を開けて安座しているのを現認。
・午後9時30分頃、廊下に背中を向ける形で前屈みの姿勢で衣類かごのへりに額をつけ安座していたため、看守部長は安座したまま寝入ったと思った。視察のみ。
・午後9時30分から10時30分までの間、視察、見続けていると動いているようにも見えた。
・午後10時30分から午前1時30分までの間、看守、看守部長が視察の都度同じ姿勢であり、多少の不審を感じたが、動きがあったように錯覚。
・午前2時15分ころ呼びかけたが反応なし。午前2時50分に支所長に電話通報。午前3時、支所長が非常登庁してゆすったが応答なし。冷たくなっているのを確認。
 (2)視察表第2号
午前3時10分非常勤医師に電話通報
 (3)視察表第3号
午前3時24分、死亡確認。死因については、喘息が原因と思われるが特定はできないとのことであった。
 (4)視察表第5号・添付の報告書
午前3時40分。仙台矯正管区への通報。
警察の引継でぜん息の薬と高血圧の薬を使用、ぜん息の発作があったのでベロテックを一回使用させている、5時30分にもう一回使用、その後我慢するように指導した、午後8時30分に薬欲しいときに申し出るよう告知した、午後9時10分ころ目を開けているのを確認、午後9時30分頃安座の状態で寝入ったような状態になったため、容態急変に気づかなかった。
 (5)視察表第8号
司法検視の実施。
検視の結果、死因が特定できないために司法解剖の鑑定請求する
 (6)視察表題9号
行政検視の実施。
遺体に打ち身・外傷等は認められなかった。

(3).カルテ
 死亡日(医師の捺印なし)
10:00 入所
    3歳頃から発症。ベコタイド、ベロテックを携有
14:30 息が苦しいとの訴え
会話もやっとの様子、ベロテック吸入。数分後顔色に赤み。
(警察署ではベロテック1日4、5回使っていた。発作ひどく静脈注射あり)
15:00 「もう一度ベロテック使わせて欲しい」
17:30 夕食前からゼーゼー始まり、ベコタイド吸入。「ベロテックはいつ使わせてもらえるか、まだか」と食器口の棚にひじをつけて大げさくらいに息づかいをしている
AM3:10 呼吸停止し、脈がないと連絡あり
3:18 診察す。座位・前屈位で動かず、嘔吐あり。
     呼吸停止、心停止、瞳孔散大
3:24 死亡確認す

(4).資料
 (1)死亡届
 ぜん息発作、気管支ぜん息
 (2)収容者死亡報告書
死因は、ぜん息がもとで気管支が詰まった窒息死。

(5).所見 
 本人の状態確認を全く怠っている。
 ぜん息の発作がひどい状態にあると窺われるのに、医師の診察が受けられていない。
 カルテによれば嘔吐ありとのこと、慎重に視察していれば気付くはず。
 放置していた疑いが濃厚。


補充の第4 京都刑務所舞鶴拘置支所 死亡帳番号なし 整理番号595番 死亡時39歳 平成5年8月
@A
1 死亡帳
直接の死因・窒息、その原因・食道静脈瘤(疑い)、その原因・肝硬変(疑い)
司法検視の結果 死因不明行政解剖の要請あり
保護房収容、革手錠使用の記載なし

2 視察表
・午前10時18分ころ、居室で「この扉の向こうにお母ちゃんがおるんや、姉ちゃんも兄ちゃんもおるんや、早う開けてくれ」「ここから出せ、家へ帰るんじゃ」「いらいらする、ここから出さんかい」と大声で叫ぶ。房扉を左右の足で交互に蹴り、タオルを巻いた右手拳で力一杯房扉を殴る→金属手錠(両手後)
・金属手錠使用後も「わしは早う帰らなあかんのじゃ、早よ出さんかい」と大声で叫びながら、制圧を逃れんと上半身を激しくゆする。→保護房収容
・保護房拘禁時にも「兄さん、わしゃ早よ帰らなあかんのじゃ、早よ出さんかい」と大声を発し続け、両足をバタつかせて制圧を振り切ろうとする。→金属手錠から革手錠(右手前左手後)に変更
・午後0時45分ころから房扉に向かって激しく右肩及び身体前面で体当たりをしたり右足及び両膝で蹴り上げる。→両足首に捕縄
・午後3時6分、大声や房扉への体当たり続いたが、足蹴りはしなくなったので、両足首の捕縄は解除
・午後6時30分ころから再び房扉に向かって激しく体当たりしたり足蹴りする。→再度、両足首及び大腿部に捕縄
・午後8時5分ころ巡回中の矯正処遇官から「本人の動静に不審がある」旨報告があり、午後8時6分保健助手を非常召集
・午後8時5分ころ舎房勤務中の矯正処遇官から「本人の動静に不審なところがある」とのインターフォン通報を受け、保護房の扉外側から数回名前を呼んだが反応がないので、緊急開扉。
ぬくもりはあったものの脈が感じられないので、捕縄を解除
・本人はぐったりし呼びかけに応じなかったので左頬を平手で数回叩くと「フーッ」と大きな息をしたものの、その後呼吸及び旨の拍動を感じなかったので、午後8時12分、革手錠及び保護房拘禁を解除
・人工呼吸、心臓マッサージ
・午後8時20分、非常勤嘱託医が登庁し診察→午後8時25分、救急車要請
・病院で蘇生術を施したが午後8時30分ころ死亡
・口腔内に多量の吐血、右腹部に打撲跡あったことから肺及び上部消化管からの出血もあったことから胸部、腹部の骨折を疑い、レントゲン撮影したが明らかな骨折は分からず死因を特定できず。医師の所見は内臓出血の疑い、食道静脈瘤破裂の疑い。
・京都府警、京都地検が居房、保護房、使用した戒具を現場検証
・大学で行政解剖、執刀医の所見は「食道静脈瘤破裂による窒息死」「保護室、革手錠使用との因果関係なし」

3 死体検案書(大学法医学教室・医師)
・直接死因・窒息、その原因・食道静脈瘤破裂(疑い)、その原因・肝硬変(疑い)、その他の身体状況・慢性すい炎

4 保護房動静視察表
平成5年8月X日 午前10時27分 金属手錠使用の上、保護房拘禁
           10時30分 革手錠右手前、左手後
           10時45分〜11時45分 大声でわめきながら室内を徘徊し革手錠から手を抜こうとしている。
           11時50分 昼食を入れる際、革手錠を一穴ゆるめる。
         午後0時40分 昼食を引き上げる際、革手錠を一穴しめる。
           0時45分 大声で意味不明な言葉を発しながら、扉に向かって体当たりした後、激しく蹴り続ける。
           0時50分 両足に捕縄を使用。
           1時00分〜1時45分 扉側をにらみながら大声でわめいている。
           2時00分〜2時45分 大声でわめきながら革手錠から手を抜こうとする。
           3時00分 扉をにらみながらお茶を飲む。
           3時06分 両足の捕縄を解除。
           4時10分 夕食を入れる際、革手錠を一穴ゆるめる。
           4時30分 夕食を引き上げる際、革手錠を一穴しめる。主食5分の1、副食4分の1程度喫食。
           4時45分〜5時45分 大声でわめいて徘徊している。
           6時00分 視察に気づき、扉に体当たり、強く蹴る。
           6時35分 両足首、大腿部に捕縄。右ひじ、右足の皮がむけている。
           6時45分〜7時15分 伏臥してひとり言。
           7時30分 ひとり言おさまり、伏臥。
           7時45分 伏臥、もぞもぞしている。
           7時55分 左ほほを下に、定期的に呼吸。眠っているよう。
           8時05分 左ほほを下に伏臥。呼吸動作が確認できないため、通報。

5 カルテ
なし

6 所見
 外部の大学法医学教室の医師が「病死」の所見を出しているが、内臓出血の原因は食道動脈瘤であることを示す資料は十分でなく、十分に特定されていない。
 革手錠の締めすぎによる内臓出血、右手前左手後に革手錠され両足に捕縄をされた姿勢による窒息の可能性を否定し切れない。事件性のある、きわめて疑わしい事件である。
 両足捕縄は他のケースと比較しても異常で、これらの異常な措置が内臓出血や窒息の原因になった可能性があり、徹底的な事案の解明が必要だ。

補充の第5  黒羽刑務所10−2 整理番号969 死亡時28歳 平成10年4月
@A
検察官通報 司法検死あり 司法解剖なし
1 死亡帳
不整脈の疑い、電解質異常、栄養不良
抑うつ状態により向精神薬を服用中

保護房収容に関してはいっさい記述なし

2 視察表
9号 保護房拘禁について
居房の捜検中に「おちつかない」と発しながら突然走り出した。
 著しい興奮状態
逃走企図の報告書あり

10号
 午後4時55分ころ保護房内西側壁付近で応答がない状態で発見
 意識喪失状態
瞳孔散大 自発呼吸が認められない
 救急車搬送

11号
 搬送先で午後5時52分に死亡確認

3 収容者動静報告簿
4月X日 15時16分 逃走企図により保護房収容
17時30分 「ここから出してください」
18時「ここから今すぐ出してください」
18時15分 布団を入れる際「注射を打ってください」「出してください」
21時 「息苦しいです。私をここから出してください。」「やっぱり明日までガマンします。」
動静としては、布団を掛けて横臥している状態
X+1  7時15分 正座して名前を言う
昼間は壁により掛かり安座しうつむいている状態
夜は布団を首までかけ横臥している
X+2  6時「先生胸が痛い」
顔色を見せなさいというと正座する。横になって待つよう指導したところ、「わかりました」といい、横臥する。
16時30分 夕食をにらんで食べようとしない
16時45分 主食副食とも5分の1程度喫食する。錠剤は「いらない」と言って投薬を拒否する。
16時55分 声をかけても返答がないので処遇部門に通報した。

テレビ監視の記録
X+1  8時10分 ペットボトルのお茶を飲むのみ
9時40分 「頭がずきずき痛いんですけど」
12時8分 「医務はどうなんでしょう」
12時15分 「ウーと奇声を発しながら居室内を徘徊している。」
12時30分 「先生医務は」
16時    点検合図に対し、居室中央に移動し、正座して「*番」と発する。
X+2  3時13分 用便後布団に入って「いたいいたい」
16時16分 夕食喫食しようとしない
16時45分 くの字に曲げて横臥している。
16時55分 3回呼んでも返答せず。
 16時57分 応援職員かけつけ、開錠、人工呼吸器使用する。
     17時08分 保護房より搬出

4 カルテ
10年 1月 不眠症
    2月 抑うつ状態
4月 不安神経症
食事摂取を促すが不喫食
経鼻カテーテルで栄養補給
4月 経鼻カテーテルで栄養補給 
4月 17時 瞳孔散大 脈ふれず
呼吸なし 意識レベル300
蘇生法実施

5 所見
 死亡帳の記載からは、このような深刻な事件であることは一切わからない。すくなくとも、死亡帳の死因の記載はでたらめである。
 抑うつ状態で、不安神経症から摂食障害を起こして低栄養状態にあり、経鼻カテーテルからの栄養補給まで受けている者を保護房に収容すること自体が問題である。
 また、仮に保護房収容の要件があったとしても、収容後は早く出してほしい、医務の診察を受けたいという希望を一貫して丁寧に述べ、点検にも従順に従っている者を3日間に渡って、医師にも診断させることなく放置したことは、著しい遺棄・虐待である。
 本件当時の保護房管理者、医務管理者は保護責任者遺棄致死罪に問われてしかるべき事案である。
また、最後に受刑者は食事を拒否し、投薬も拒否しているので、そのことで何らかの刑務官とのトラブルが起きた可能性もある。死体の検案書なども添付されておらず、死体の状況も明確ではないが、最後の死亡の経過には事件性の疑いも払拭できない。

補充の第6 横浜刑務所 8-1 整理番号1453 死亡時年齢不明 平成8年1月
 このケースは、法務省の継続調査案件ではなく、開示された238件の中で、記録を精査した結果、著しい医療過誤である疑いのあるケースとして新たに追加する。
1 死亡帳
心筋梗塞
午前2時42分に容態に異常が認められるとの急報
ほとんど意識不明
人工呼吸等の応急処置、意識回復せず
救急車で外部の病院に移送、病院で死亡
監察医により死体検案

2 視察表
金属組立工として工場に出役
1月13日
 午後9時21分ころ、居室の布団の上で上半身を起こして座った状態で、苦しそうに肩を上下させながら、小刻みに呼吸をしていた。「胸が苦しい」と申し出た。
 午後9時38分、医務課宅直助手看守部長が血圧測定(血圧112-82、脈拍96、不整脈なし)した後、法務技官医師の電話による指示でニトロール1錠を舌下投与。「苦しくなったら、再度飲むように」とニトロール1錠を本人に所持させ、明日診察する旨申し渡す。本人「わかりました。ありがとうございました。」
 午後11時15分ころ、状態が改善しないので本人に所持させたニトロール1錠を投与。
 午後11時20分、布団の中に入り横臥。
1月14日
 午前1時35分ころ、同上。
 午前2時10分ころ、布団の上に上半身を起こし、前後に上体を動かしていた。
 午前2時25分ころ、布団の上で両手を前に倒れたような格好で横になっていた。名前を呼んだが返事がないので、処遇部に電話報告。
 午前2時40分ころ、居室を開扉してみると、両手を前にして背中を丸めるような格好で左向きに横になっていた。脈拍はあった。
 午前2時55分ころ、医務課宅直助手看守部長が本人の状況を見ると、ほとんど意識がない状態。人工呼吸等行うも、意識回復せず。
 午前3時25分、救急車要請。
 午前3時44分、外部の病院へ搬送。
 午前4時7分、蘇生術の効果なく、病院で死亡。

 午前9時30分、死因不明のため、横浜犯罪科学研究所で監察医が死体検案。「死因は心筋梗塞と判明した」。

3 視察表のみの開示で、死体検案書、カルテ、被収容者死亡報告の開示なし。同じ横浜刑務所の他の2件(いずれも平成14年)はすべて開示あり。

4 所見
 重大な医療過誤、医療放置の疑いがある。
 死亡前日の午後9時21分の時点の本人の状態は、明らかに心臓病の発作(最もありうるのは急性心筋梗塞か狭心症)と見られる。法務技官医師がニトロールの投与を指示したのも、そのように診断したからと見られる。しかし、医師であれば、ニトロールを投与して直ちに効果が現れなければ、狭心症ではなく心筋梗塞と判断してしかるべき。心筋梗塞なら一刻を争うから午後10時前の段階で直ちに救急車を要請すべき。「明日の朝診察する」では見殺しに等しい。
 心臓病はいまやガンに並んで成人の死亡原因のトップになっており、特に発作後短時間内に処置しなければ確実に死亡すると言われる急性心筋梗塞に対する対応は、刑務所・拘置所でも常識化すべき。
 死体検案書等の資料がこの件に限って開示されていないのも、腑に落ちない。

***********************************
第1 名古屋刑務所 13ー3  整理番号86  死亡時38歳 13年3月
@A
1 死亡帳
慢性B型肝炎による肝硬変

2 視察表
肝硬変、拘禁反応の疑いで休養加療中
3月X日 保護房収容
「どうして祝日菜を食べさせないんだ。一年前に約束したじゃないか。このうそつき野郎」
扉を蹴り続けていた。

3 保護房動静視察表
 提出なし

4 カルテ
3月X日 保護房入診察
     調子はいい
     臥床して、大声で返答
     拘禁に差し支えなし
X+1 保護房で臥床、起座不能
     保護房解除
     食事入らず
     尿失禁状態
X+2 食事摂取状態不良なら点滴考慮
     時々大声を出している。
X+3 問いに対し答えるが内容理解できず、開眼せず。
     奇声を発する
X+4  肝性昏睡 重症指定
X+5  IVH施行
     傾眠傾向
     死亡に至る可能性大
X+6  左上肢の動きを認め、抑制施行
     うなづく行為あり
X+7  0時09分意識レベルV−3
     死亡確認

5 所見
 肝硬変で拘禁反応のある者を保護房に収容したため、急速に症状を悪化させたものと考 えられる。拘禁反応があるということがはっきりしており、休養加療中の者を保護房に 入れたこと自体が、虐待といえるのではないか。

第2 府中刑務所 7−8 整理番号133 死亡時42歳 平成7年9月
@A
1 死亡帳
 急性気管支肺炎
 検察官通報と検死あり、司法解剖なし
 (保護房拘禁についての言及なし)

2 視察表
17号
懲罰執行中壁により掛かっていた
  職員の注意指導
  「足が痛くてどうしようもない。できないですよ。」
  顔面蒼白になり
  「できないものはできないんですよー」と泣き叫ぶ。

18号
  懲罰の執行停止 
これをみると、本人は3回も懲罰の停止となっており、懲罰と保護房拘禁を繰り返していたと思われる。したがって、保護房に拘禁されていない間はずっと、懲罰を執行されていたものと考えられ、終日安座を強制され、壁により掛かることも認められないことの苦痛は極限に達していたものと考えられる。

19号
  保護房更新(8日目)
  「先生、先生」と大声で呼んで水を要求し、水を大量に飲んだり、房中央で頭からかぶる異常行動

20号
  保護房更新(11日目)
頭から水をかぶり、その都度「先生、先生」と職員を呼び続ける

21号
  保護房更新(14日目)
「水を下さい。水を下さい。」と大声で叫び続け、布団の上で水を頭からかぶる」

22号
  保護房更新(17日目)
職員の気配を感じるとその都度「先生、先生」と職員を呼び続ける。

23号
  保護房の解除、懲罰執行の再開、取調独居
  本人を立たせようとしたが、本人は立ち上がることができず、また、臀部に10センチメートル四方程度のかさぶた状のもの、下唇の腫れ、左頬骨あたりにこぶ状の腫れおよび胸部など擦過傷のような発赤があり、医務に診察依頼

24号
  肺炎の疑いで急用

25号
  休養により、懲罰の執行停止

26号
  肺炎、呼吸不全、病状不良、重症指定

番号なし
  親族宛重症通知

27号
  9月午前5時37分
  急性気管支肺炎で死亡

3 保護房動静視察表
8月X日午前8時17分保護房収容
  徘徊、
  壁によりかかっている。
仰向きに寝ている。

X+1
  下着姿で仰向けに寝ている。
X+2
  何も掛けずに寝ている。
  安座している。
X+3
  下着姿で横臥している。
  独語を発す
X+4
  パンツ姿で仰向けに寝ている。
X+5(この日から9月なので9月1日と思われる)
何も掛けずに仰向けに寝ている。
X+6
下着姿で仰臥している。
X+7
  仰向けに寝ている。
X+8
  何もかけずに仰向けに寝ている。
  安座している。
X+9
  パンツ一枚で布団の上で寝ている。
X+10
  パンツ姿で布団の上に仰向けに寝ている。
(ほとんど同じ記載)
X+17
全裸で房中央で俯せで寝ている。

4 カルテ
 添付なし

5 所見
 懲罰中の姿勢の強要の過酷さが保護房収容の引き金となった。
 保護房の収容の要件、継続の要件があったかどうか自体が疑問である。
水を要求したり、頭から水をかぶるのは、保護房が異常に暑いため、異常ではない
 「先生、先生」と呼び続けているのも救いを求めてのもの
 肺炎となったのは、水をかぶって、裸で寝ていたためと思われる。
 不必要な保護房拘禁とその継続が死亡の原因であることは明らかである。
 カルテが一切添付されていないことも不審である。


第3 府中刑務所 8−9 整理番号143 死亡時64歳 平成8年12月
@A
1 死亡帳
外傷性硬膜下血腫
  不穏状態であったこと、心肺停止で発見されたことの記載はあるが、保護房収容についての言及なし

2 視察表
1号
平成8年12月X日午前4時32分
 本人の居房付近から「おーい、おーい」という声が聞こえた。
 「おーい、たばこ持ってこいよ」と大声を発していたが制止しても聞き入れず。
 「おーい、腹減ったよ。めしを食いに行くから出せよ。」
 保護房拘禁
2号
 保護房解除 取り調べに付さない
「トカゲがみえる。」「部屋が揺れている。」
 医務部所見 幻覚妄想状態
 判断力の乏しい状態での事犯 取り調べに付さない
3号(2号を3号になおしてある)
 幻覚妄想状態で休養を必要と認める。
4号
 親族宛の病状通報
5号(4号を5号になおしてある)
 「頭蓋内出血のうたがい」
6号(3号を6号になおしてある)
 午後7時3分 本人の病状悪化
呼吸停止状態を確認、問いかけても応答なし
 7時5分
 口から泡状のものを吹いた
 心臓マッサージ、注射
 8時13分死亡確認

3 保護房動静記録表
X日 午前4時35分
 静穏阻害で保護房収容
 戒具なし
   5時05分 ブツブツいいながら壁たたきをする。
 房扉前で独語を発している。
 房内徘徊
X+2 10時50分
  房内で後ろによろけ後頭部を強く打つ
    52分
  開房し外傷を調べる(後頭部にこぶが) 
15時01分
  房内中央にて後ろからころび後頭部を強く打つ
X+3
  13時41分
  保護房解除

4 カルテ
8年12月 不穏・拒薬    
12月 保護房収容中 入眠している
      房内でうろうろしている
      幻視 虫取りをしている
  12月 保護房収容中
      こちらの指示には「はい」と答えられる。
      やや不穏気味に観察されるが、とりあえず経観とする。
  12月 幻覚妄想状態
      壁が揺れて見える。
      布団にワニ(トカゲ)がいる。
  12月 布団の付近を何か探すような仕草をしている。  
薬物精神病または精神分裂病
      てんかんによる精神発作
      せん妄
      いずれか判然としない。
  12月 知らない男の人が見えた
      壁に大黒様が見えた
  19時10分 舎房で倒れていると連絡
  19時15分 心肺停止
口から泡を吐き出している
  20時13分 死亡確認

5 所見
 明らかに精神症状を起こしているものを3日半程度の長期にわたって保護房に拘禁した。
 精神科の医師が診断しているにも係わらず、保護房拘禁をすぐに止めなかった。
 房内でころんで後頭部を二回強打しているにも係わらず、頭部の医学的検査をしていない。
死因の外傷性硬膜下血腫の原因も、房内で倒れたためである可能性が高い。
 あきらかに、不適切な保護房拘禁、その継続、不適切な医療的対応に起因する虐待死亡事件である。

第4 府中刑務所9−5 整理番号150 死亡時38歳 平成9年6月
@(疑い)A
1 死亡帳 
急性心不全
 平成9年 午後?時25分
 不穏興奮状態
 幻覚に左右され、興奮状態
 筋肉注射
 自発呼吸低下
 午後4時38分 重症指定
 17時10分心停止
 検察官通報と司法検死あり 司法解剖なし

2 視察表
8号まで欠
9号
覚醒剤中毒後遺症で休養
10号
4時38分 重症に認定
11号
親族宛に重症通知
12号
午後5時10分
 急性心不全で死去

3 保護房動静視察記録
 なし

4 カルテ
状態急変し、連絡を受け急行
 興奮状態で意味不明の発語あり
 刑務官4名で抑制している状態
 覚醒剤使用歴があり、幻覚に左右され興奮状態にあると考え、16時30分頃幻覚に対し、セレネース1A アキネトン1A 混i.m,興奮状態に対してコントミン(25)1Ai.m.を行った。
 脈拍は105毎分であったが、自発呼吸が低下したため人工呼吸を開始し、休養処遇とした。
 16時38分
 救命措置が必要と連絡し重症指定。

5 所見
 事件発生までの経過に関連した視察表が隠されている可能性があるので、全ての視察表を提出するように求める。
 経過から、この薬剤の投与が原因で呼吸が停止したことは明らかである。
 連絡を受けて急行した場所が明らかでなく、保護房であった可能性もある。
幻覚を訴えている病者を治療の対象としてみるのではなく、鎮圧と制圧の対象と見ているために、発生した重大な医療過誤・虐待事件である。

第5 府中刑務所 11−6 整理番号165 死亡時46歳 平成11年8月
@A
1 死亡帳
急性心不全
2 本件は身分帳簿紛失事案である。
  極めて疑わしい事件である。
  身分帳簿が紛失しているために保護房収容に関連した視察表も動静視察記録が出ていないために、事件の全体を明らかにすることができないが、今回明らかになったカルテだけからも、問題点は明らかだ。
 
3 矯正局宛の死亡報告
  平成11年8月9日午前8時56分
  大声で保護房拘禁
8月10日午前4時52分
  房内に横たわり、顔面が赤らみ、呼びかけに反応しない
  呼吸微弱
  午前5時5分
  集中治療室に収容
  午前5時15分
  心停止
  司法検視
  遺体に外傷なし 脱水症状などもみられず
  急性心不全
  房内の温度29度 湿度70パーセント

4 カルテ
 カルテに現れた保護房内診察の日付
 10.12.25
 10.12.28
 11.1.4
 11.2.1,2,3,4,5
 11.2.8,9,10
 11.2.12
 11.2.15,16,17,18,19
 11.2.22,23,24
 11.3.10
 11.3.25,26,29,30,31
 11.4.1,2,5,6,7,8,9
 11.4.12,13,14,15,16
 11.4.19,20,24
 11.5.28,31
 11.6.9,10,11,14,15,16,17,18,21,22,23,24
 11.6.28,29,30
 11.7.1,2,5,6,8,9,12,13
 11.7.19,21,22,23,26,27
 11.8.9,10
 独居房で意識不明状態
 心肺停止状態

5 所見
 明らかに精神症状を呈しているものを超長期にわたって断続的に保護房に拘禁し、全く精神科的医療対応をしないまま、夏期の高熱による脱水と長期の保護房拘禁による衰弱によって死亡させたもので、刑務所当局と担当医師は明らかに保護責任者遺棄致死罪に該当する。
 身分帳簿の紛失はこのような刑事責任の追及を恐れる内部の者の証拠隠滅のための犯行と思われ、医師を含めて刑事捜査を早急に行うべき事案であると考える。   

第6 府中刑務所 13−10 整理番号189 死亡時年齢45歳 平成13年12月
A
1 死亡帳
摂食障害
  平成11年から体重減少
  治療によって一進一退
入眠中に死亡

2 視察表
視察表の前の部分がないので、保護房収容や革手錠の使用が先行していた疑いがある。

31号
 栄養失調で医療上独居
 低体温によって休養
 視察表が30号まであるということは、この間にはさまざまな処遇上の問題が発生していた可能性がある。
32号
 病名変更
 摂食障害
33号
 死亡
 八王子医療刑務所に移送予定
34号
大使館に通報
遺体は遺族が直接引き取る

3 矯正局への通報
 拘置所入所中に10ヶ月で62キロから38キロに体重減少
 府中入所時 43キロ
医療上の独居処遇
44キロが最高31.5キロが最低
 低栄養で休養処遇
 41キロで工場に出役させた
 めまいで転倒
 13年11月
 起床時に起床せず
 低体温状態
 摂食障害で八王子医療刑務所に移送予定
 12月
 朝起床せず
 朝昼食を喫食せず。
 午後4時
 心肺停止

4 カルテ
13年11月 食事を隠して時に嘔吐している

5 所見
 外国人受刑者が慣れない日本の監獄で、家族とも会えず、2年8ヶ月にわたり、深刻で明らかな摂食障害を引き起こしているにも係わらず、これに対応するための精神科医師による専門的治療が全くなされていない。
 摂食障害の病名変更が11月で遅すぎる。
 八王子医療刑務所に移送する措置が間に合わず、遅すぎる。
 医療上独居措置が摂食障害をさらに悪化させた可能性がある。工場に出した時期や方法についても疑問が残る。
 
第7 府中刑務所 14ー11  整理番号201  死亡時47歳 14年4月13日
@A
1 死亡帳
「当初入所以前より覚醒剤誘発性精神病性障害で加療。当初での病名は多剤使用による薬物中毒後遺症」

2 視察表
3月14日午前4時5分
大声騒音により保護房収容(更新9回、計19日)
4月2日午後1時10分
同解除
4月2日午後1時28分
大声騒音により保護房収容(更新5回、計11日)
4月13日午前10時28分
保護房内で、前かがみに座り、床に顔を着けた状態で…心肺停止状態を確認

視察表第15号
「本年3月20日及び同月27日の2回、医務部医師により、心情の安定を図るために注射を実施した経緯がある。」との記載。

視察表第19号保護房収容を解除し、取調べに付さないことについて(伺い)
3月28日頃(推定)、職員に対する暴行。「本人は当初医務部精神科において「多剤乱用による薬物中毒後遺症」と診断され、●●医師の所見によると、同疾患の憎悪時には幻覚・妄想に支配され、心情が著しく不安定となり、大声を発するなどの粗暴行為や異常行動に出ることがあるということ。」「…自己の意思に反して本件事犯に及んだものと思料されること。」「現段階においては、懲罰等で精神的負荷を与えることは好ましくなく、今後は精神科の治療及びカウンセリングを実施し、心情の安定を図りながら病状を注意深く観察することが最良の方策と考えられること」「以上の理由から本件については取調べに付さないこととして…」

3 保護房動静記録表
4月11日以降の喫食状況
4月11日朝食(全不喫食)
     昼食(全喫食)
     夕食(主食副食共喫食)
4月12日朝食(不喫食)
     昼食(不喫食)
     夕食(全不喫食)
4月13日朝食(主食副食とも1/5喫食)

4 カルテ(診療録)
 視察表第15号には「本年3月20日及び同月27日の2回、医務部医師により、心情の安定を図るために注射を実施した経緯がある。」との記載があるが、カルテに記載なし。

5 所見
 保護房に約1ヶ月も収容。理由は「大声騒音」だが、原因は「多剤乱用による薬物中毒」と診断されており、病人を保護房に収容し、死亡に至らせた典型例である。
 また、死亡の2日前には不喫食が見られ、死亡との因果関係が疑われるが、司法解剖が実施されておらず、原因究明を図った形跡が見られない。

第8 府中刑務所 14ー15  整理番号205  死亡時50歳 14年9月
B
1 死亡帳
吐物誤嚥による窒息の疑い

2 所見
 視察表第15号に「本人にてんかんの既往があるか確認のため医務部に問い合わせたところ」との記載はあるものの、視察表第15号入所時(スミ塗りにより不明)以降のカルテが不開示(死亡時のみ開示)のため、既往歴が不明である。

第9 横須賀刑務所 死亡帳番号12-1 整理番号214
@A
死亡年月:H12年12月4日
死亡時年齢:58歳 保護房収容の翌日に死亡。
死体検案書の記載:脳腫瘍

所見:
 本件は、保護房内死亡事案として当初から一部の資料が開示され、国会でも取り上げられた事件である。
 診療録によれば、当該被拘禁者は入所以来めまい、頭痛、嘔吐などを訴え続けていた。そのためH12年12月に法務技官医師によって「脳腫瘍の影響も疑われ、専門医師による検査などの必要が認められ」、同12日に精密検査を受ける予定であった。その直前に保護房に収容し、その直後に死亡したことから、治療が必要な者に適切な措置を取らなかった疑いが強い。被拘禁者の苦痛は極限に達しており、衣類を脱ぎ捨て便器やゴミ箱を蹴るなどの行為は、十分な医療措置が施されないことに対する抗議であった可能性もある。


第10 大阪刑務所 死亡帳番号7-3 整理番号217
A
死亡年月:H7年8月
死亡時年齢:61歳
病名:熱中症

所見:熱中症になった原因と考えられる処遇あるいは状況の記載がない。第4号によれば、「前号視察表判定に基づき、本日、第■舎昼夜単独室棟に身柄移動の上、処遇上独居拘禁に付す予定の者」とある。直前に保護房に収容されていた可能性もあり、視察表第4号〜第3号の資料を確認する必要あり。

第11 大阪刑務所 死亡帳番号11-4 整理番号235
A
死亡年月:H11年7月
死亡時年齢:59歳
病名:敗血症による急性循環不全。

所見:診察録から、摂食、服薬の拒否が続き衰弱していたことがわかる。精神的治療を含めた適切な医療措置が施されていれば、死亡に至らなかった可能性がある。


第12 大阪刑務所 死亡帳番号12-1 整理番号238
A
死亡年月:H12年1月
死亡時年齢:40歳
病名:急性心筋梗塞(疑)

所見:死亡診断書によれば、「拘禁反応」が急性心筋梗塞に影響を及ぼしたとあり、また死亡報告に「意思の疎通が図れず」とある。拘禁反応に対する適切かつ十分な対応がなされていれば、死亡に至らなかった可能性がある。

第13  笠松刑務所 9−1 整理番号286  死亡時21歳(女) 9年3月
A
1、死亡帳
急性心不全

2、視察表
3月X日
昼夜間独居拘禁中
精神科診察でてんかん、人格障害
「便秘でイライラ」

午前0時15分頃、突然「ワー」と声を発し、落ち着くよう指導し寝息を立てて眠った
様子が認められたが、午前1時頃呼びかけに応答せず病院移送

午前1時ごろ 死亡

2時50分 検視、外傷なし

4、カルテ 
9年2月X日    便秘
 +1  めまい、かなりひどいとのこと
      +3  イライラ始まった。今日もめまい。眼球定まらない様子
      +4  めまい、字がかけない
      +5  右手が震える、天井が回る、字に立体感が出ることがある
    +11 おなかが張って便通3週間くらいなし
        下剤を増やして欲しい
      +12 38.8度 関節痛
      +13 38度 頭痛腰痛あり 今朝は比較的元気
      +14 死亡の日(視察表どおり)

5、考察
 めまいや発熱、腹痛などの症状がかなり出ていたにも関わらず、対処療法的な投薬に終始していたことが、突然死を引き起こしたことにつながったと思われる。適切な治療をしていれば明らかに死亡は防げたケース。

第14  笠松刑務所 14−1 整理番号288 死亡時52歳(女) 14年1月
@A
1−1、死亡帳
心不全
1−2、死体検案書
窒息死(そううつ病)
のどに食物を詰まらせ、呼吸停止しているところを発見される

2、視察表
 昼夜独居拘禁中
 おせちの餅をほおばっていて問いかけに応答しなかったため、餅や口の中にあった食物を取り出すと4つんばいで畳の上を徘徊しはじめた。
午後3時頃 4つんばいで苦しそうな表情をしているとの報告うけ確認したところ、そしゃくした食物を口腔内一杯に含んでおり、職員が食物をかき出し、手足が冷えていたのでマッサージを行った。
 6時5分ごろ うつぶせの状態で失禁しており、口腔内を確認するとそしゃくした食物を含んで口を食いしばるようになかなか開かなかったが、かき出し、6時40分ころ横臥
させた。
8時24分ごろ 呼吸、脈を確認したが確認できず
8時30分ごろ 119番通報
8時40分ごろ 病院移送
翌午前2時41分 死亡確認 不慮の外因死(窒息)
   9時30分〜司法解剖
医内容の気道内への吸引があった公算が大きい。
         これにより、呼吸不全を起こした可能性ある

3、保護房動静視察表
保護房に収容されているが提出なし

4、カルテ
13年X日   相変わらず房内徘徊 下腹部膨満 
+1 房内徘徊
+4 保護房内で壁をまさぐりながら徘徊している
        座って話しをしようと促すと緩慢であるが従う
        視線は全く合わない              
質問にも一言も答えない
        便失禁、異食行為あり
     +5 相変わらず房内をぐるぐる歩いている
        よだれたれながしている
     +6 身体しびれる(しびれは10月から)
        コミュニケーション可(よく話す)
        意識しっかりしている。フォローでよい
     +7 むくみ顔面、下腹
身体がこわばってしかたない・・・しばらく様子みる
     +8 死亡当日(視察表参照)  

5、考察
 保護房動静視察表の提出がない点が疑問である。速やかな提出を求める。
 直接の死因は窒息死とされるが、そこにいたるまでの原因が検証されていない。明らかに異常行為を繰り返し意思疎通が図れない状態にあり、適切な医療行為が行われなかったことが本人を死に至らしめる結果となったといわざるをえない。

第15 岡崎医療刑務所 死亡帳番号6-1 整理番号289
@A
死亡年月:H6年7月
死亡時年齢:28歳
病名:急性致死性緊張病、精神延滞
1 死亡に至る経緯:
 軽屏禁懲罰中に大声で発したために保護房に収容。保護房において大声を発する他に、全裸になったり、敷き布団や毛布を引き裂く、段ボールの小机を壊す、便を壁に投げる、壁のリノリウムを剥がすなどを繰り返す。

2 診察録より。
1日目
「非定型精神病であろうか」「錯乱状態」
セルシン(5)3T
ヒルナミン(5)3T
アタP(25)3T  U3×1
バランス(10)3T
2日目
15時「非定型病?を認める」
ヒルナミン(25)1T
セレネス(1.5) 2T を服用
同夕方 ラインタミン(25)1A、ピレチア(25)1A 筋肉注射
処方変更→@ラインタミン(50) 2T
  テグレトール(200) 2T
  ピレチア(25) 2T
     AベグタミンA 2T
テグレトール(200) 1T
サイレース(1) 2T
不眠時→ ベグA 3T 追加投与
不穏時→ ヒルナミン(25) 2T投与
17時30分 ラインタミン1A 、ピレチア1A 
注射前の体温36.8度 脈拍78、血圧118~60
3日目 「夜間は朝までよく眠っており特別変わりはない」
4日目 定期薬服用。独り言、壁の足蹴り、床たたきが時折見られる以外は寝ていることが多かった。午前3時45分頃から目を覚まし、独り言、リノリウムはがし。
5日目 朝定時薬使用。
セレネース5mg
アキネトン2mg
プルセンド1T
バルネチール(100) 1T
@ラインタミン(50)2T
 テグレトール(200)2T
 ピレチア(25)2T
 セレネース(1.5)2T
 アキネトン 2T    U2×1 朝昼2T
Aベクタミン2T
 テグレトール(200)1T
 サイレース(1)2T
 バルネチール(100)1T
 セレネース(1.5)1T
 イソミタール0.2
 ヒルナミン30mg
 アキネトン1T
 NIS1 2T
Bプルセンド1T
 カヌ(?)
 ラックB0.5
 体温37.7度 脈拍66 血圧120~60
 6日目
「休養指定」錯乱状態。疲弊状態へ移行する可能性がある。
 午後零時40分回診「ともかく全身状態悪い」
 午後2時 メイロン3A 点内補充
 午後3時40分 突然呼吸停止
 午後5時 呼吸状態悪化
 午後5時30分 重症指定
 午後6時35分 呼吸停止、再び蘇生。
 午後7時25分 体温40.7度
 午後8時 血圧43〜 脈拍33
 午後8時11分 呼吸停止。
 午後8時20分 死亡。「急性致死性緊張病」

3 所見:
 保護房に収容されてからの被拘禁者の症状が数日間で急変している。保護房内における被拘禁者の行動を抑制するために過剰な薬物投与がなされている強い疑いがある。専門医による診察録記録および投与薬の確認が必要である。

第16 鳥取刑務所 死亡帳番号なし 整理番号308
A
死亡年月:H6年8月
死亡時年齢:42歳
病名:悪性症候群(疑)
死亡の経緯:独居拘禁中。午前1時頃、脈拍を確認できず。心臓マッサージ、強心剤注射などの外医治療を行ったが、午前2時に死亡。検視時の直腸温度が高温(43度)だっため「悪性症候群」と診断されている。
所見: A
 当該被拘禁者は入所当時から「精神分裂症」と診断され投薬治療を受けていたが、独居拘禁となった理由および独居拘禁中の状況に関する資料がない。また「悪性症候群」の診療内容が不明で、直接の原因もまったく不明。少なくとも、独居拘禁に至る経緯と処遇に関して把握すべきである。また「悪性症候群」という病名が医学事典に掲載されておらず、それ自体が医学的に確定したものといえない。

第17 松江刑務所 死亡帳番号なし 整理番号309
@A
死亡年月:H8年7月
死亡時年齢:44歳
病名:熱射病の疑い

1 死亡の経緯:金属手錠を両手前にかけられ、保護房に収容。その後金属手錠から皮手錠に変更、戒具は解除されたが、4日目に保護房内で熱射病にて容態が急変、病院に搬送されたが死亡している。

2 所見:
 本件はすでに国家賠償によって国の敗訴が確定している事件。判決では、アルコール依存症による脱水症状を認識しながら対策を取らず保護房に収容していたとして刑務所側の落ち度を認定している。このような事件が氷山の一角であったことが今回明らかになったといえる。

第18  岡山刑務所 整理番号316 死亡帳番号13‐1
@A
H13年1月
1 死亡帳

2 視察表
2号 保護房収容
 大声
 「おーい、悪口を言うやつがおるんじゃー」
 顔面を紅潮させながら意味不明な大声を発し続け
3号 保護房収容解除 取調に付さない
1号視察表のとおり、精神分裂病の診断(1号視察表にはそのような記載はない)
4号
 異常行動・要視察者に指定の上、物品制限
5号
 再度の保護房収容
 「おーい、おーい、助けてくれ」
 医師の意見 保護房収容差し支えなし
6号
 保護房解除 取調に付さない
7号
 保護房収容
 「おーいおーい」
 「天井からおまえ殺すぞー、言うのがおるんじゃー」
 医師の意見 保護房収容差し支えなし
8号
 保護房解除 取調に付さない
9号
 保護房収容
 「精神病院に入れてくれ」  
 「天井の方からおまえ、殺してやるからのー、という声が聞こえるんじゃ」
10号
 保護房解除 取調に付さない
1号視察表のとおり、精神分裂病の診断(1号視察表にはそのような記載はない)
番号なし
 精神科診察結果
 精神分裂病 投薬変更増量
11号
 動静について
 第二種独居房(テレビ監視つき)
 点検時の動静について記載
 居室内でうつぶせで呼吸のない状態で発見 午前8時05分過ぎ
12号
 緊急車両要請
13号
 病院搬送
14号
 死亡 午前9時15分 
  
3 死因関係
直接死因=詳細不明(死体検案書)
発病から死亡まで約1時間(死体検案書)
原因特定できず(死体検案書)
検視結果=病死(病名不明)・事件性は認められない(視察表)
解剖結果=急性心不全と判断された(被収容者死亡報告)

4 保護房動静記録
8日間分開示されている
 大声を発していることと他は寝ている。

5 カルテ
 精神科の診察がなされたのは、最後の保護房拘禁の際で、精神分裂病・妄想型の診断がなされている。開示されたデータからは死亡の原因は不明のままであるが、繰り返し保護房に拘禁したことが死亡と関連している疑いが強い。精神科の診察が遅きに失しており、治療の必要な精神科患者を繰り返し保護房に拘禁し続け、症状を悪化させて死亡させた虐待死亡事件である。

第19 岡山刑務所 整理番号319 死亡帳番号14‐2
B
H14年2月
1 事案の概要
パーキンソン症候群により休養中(被収容者死亡報告)、病舎内で意識不明の状態が発見される。病院移送後急死。
直接死因=急性心不全の疑い(死体検案書)
発病から死亡までの時間=短時間(死体検案書)

2 所見
 結局、開示されたデータからは急性心不全以上のことは不明のままである。

第20 山口刑務所 死亡帳番号なし 整理番号369 死亡時38歳 平成6年7月
A
1 死亡帳
直接死因・多臓器障害(発病から6日)
その原因・熱射病(発病から7日)(死亡診断書による)

2 所見
 作業後のシャワー室で倒れた熱射病のケース。
 工場内の経理作業衛生係がなぜ熱射病になるのか。7月の事件だが、工場の労働環境等のデータもなく、死亡に至った経緯の合理的な説明がなされていない。

第21 山口刑務所 12-1 整理番号372 死亡時32歳 H12年12月
B
1 死亡帳
 直接死因は心室細動

2 
不整脈による心臓停止:発病から約15分)(死刑検案書より)

3 所見
 既往歴に不整脈、動悸等なし。だから原因不明というほかない。
 視察表で自殺の可能性を否定している。

第22 山口刑務所 死亡帳番号12-1 整理番号373 死亡時57歳 H12年1月
 刑事被告人
A
直接死因は消化管内出血(発病から約3時間)(死亡診断書)

1 経過 某日午前8時33ころ吐血し、外部治療を受けたが、そこでは「心因性のヒステリー」と診断され、同日午前11時10分帰庁している(法務省矯正局への被収容者死亡報告より)。
   嘔吐、吐血により外部病院で診察後、経過観察中、吐血し、死亡した。
2 所見
  死亡日は不明だが同月中のことである。外部治療の際のあきらかな誤診ではないかと考えられる。

第23  福岡刑務所 死亡帳番号7-1 整理番号388 死亡時43歳 H7年6月
@A
1 死亡帳
 死因は不明
 司法解剖結果によっても原因は不詳
 外因性ではない
 病死であるが死因を特定することは難しい
 軽度の心肥大、冠動脈硬化、脂肪肝、胃壁にわずかな出血

2 視察表
1号 被疑者として警察署から送致された当日午後0時55分に二種独居房に収容
   独言
唾を吐いたり
俺はなにもしとらんのにいつまで入れとくんか。早う出さんかい」
大声、器物損壊、房内汚染、自傷、暴行
2号
  午前7時55分保護房収容中に意識不明
   救急車で移送。
3号
午前8時25分死亡

3 保護房動静記録
 23時40分
 「水を飲め」と声を掛けるが無視して視察孔を毛布で隠す。
 0時38分
 虫がいるように指で挟んで捨てる動作
 1時25分
 顔面一杯に汗をかき「俺はみよった。逃げられた。」と意味不明のことをいって、徘徊
 水を飲むように指示するが無視
この状態で朝まで、かわらず、明け方にぐったりとして寝込んでいる。
 
4 所見
浜田拘置支所事件とほとんど同様の事件。
アルコール依存症からくる脱水症状で死亡に至ったことは確実。
看守は水分の補給が必要なことを知りながら、保護房から出して、病舎に収容するような対応を一切とっていない。治療の必要なものを保護房内に放置して死なせた虐待致死事案である。

第24  福岡刑務所 死亡帳番号12-3 整理番号401 死亡時51歳 H12年7月
B
1 事案の概要
 病舎で容態急変。
直接死因は悪性症候群(発病から3ヵ月)、その原因は精神分裂病(発病から20年)とされている。
2 所見
 死因は全く不明と言うほかない。

第25  福岡刑務所 死亡帳番号13-2 整理番号404 死亡時58歳 H13年3月
B
1 事案の概要
 急性上気道炎のため病舎休養中に呼吸停止。移送先病院で死亡。
多臓器不全による呼吸不全と診断。既往歴はなく原因は不明とのこと。
2 所見
 この件も死因は全く不明のままである。

第26  長崎刑務所 死亡帳番号9-1 整理番号412 死亡時50歳 H9年9月
B
1 事案の概要
 所内の医療施設で、胃潰瘍で点滴を実施中、容態が急変し、ショック状態におちいり、外部病院移送中、肝臓破裂で死亡した。
 直接死因は肝破裂、その原因は肝臓癌(死亡診断書)とされている。
2 所見
 点滴実施中というが、点滴と死亡に関連はないのか。所内での医療過誤の可能性あり。開示されたデータだけではわからない。死亡帳では以前より肝硬変と診断されていた、とされるが、胃潰瘍・点滴実施中云々の記載はない。

第27  長崎刑務所 死亡帳番号12-1 整理番号413 死亡時43歳 H12年12月
B
1 事案の概要
 運動場で意識不明になったケース。
直接死因(急性心臓死)(死亡診断書)
「外因死は否定できる」とされている。(死体解剖報告書)
2 所見
 依然として死因は明らかでない。

第28  大分刑務所 死亡帳番号12-1 整理番号415 2000(H12)年
B
1 事案の概要
 病舎で肺病と診断され、外部治療を受けることになり一旦自室に戻ったのち意識がなくなったケース。死因は肺炎(死亡診断書)とされている。

2 所見
 発病から死亡まで6日間、となっている。その6日間に適切な医療がなされたか疑問であり、専門医師の解析が必要である。

第29  大分刑務所 死亡帳番号14-2 整理番号418 2002(H14)年7月
B
1 事案の概要
 昼夜間独居者の就寝中に異変が発見され、病院移送するが蘇生されなかったケース。精神分裂病の治療を受けていた。
死因は急性心肺停止(その原因は不明)(視察表より)

2 所見
 開示データからは原因はわからない。

第30 宮崎刑務所 死亡帳番号9-1 整理番号419 死亡時37歳 H9年12月
B
1 事案の概要
運動場でジョギング中突然倒れ、外部病院へ移送中死亡のケース。
急性心不全、心筋梗塞(視察表)

2 所見
 同工場の受刑者48人とともに運動中であったことから考えると、暴行等は考えにくいが、死因が明らかにされているとは言い難い。

第31  鹿児島刑務所 整理番号424 死亡帳番号なし 死亡時27歳 H7年8月 
@A
1 死亡帳
 急性心不全
 保護房内で急に静になった。(死亡帳)
 
2 視察表
8月?日午前11時55分 アルコール中毒を呈して入所
    午後0時40分 入所時言渡しの際突然転倒
           第2種房(TVカメラ付)に入る。
  ?日午前9時02分 保護房へ(大声)
    午後0時17分 革手錠(右手前左手後)を使われる。(扉に体当たりなどして)
      7時15分 急におとなしくなった。
      7時20分 革手錠を解除し心臓マッサージなどする。
      7時40分 救急車到着し病院移送。
      8時47分 急性心不全により死亡が確認される。

3「動静視察事項及び措置等」
  に記された本人の叫び声抜粋と革手錠解除前後のようす
    ?日14時10分 「出してくれ出してくれ」と大声で言っている。      
      14時36分 「これ(革手錠)はいつはずしてくれるんや」と言ってくる。
      
?日13時05分 「取ってくれ、言うことを聞きます」と言っている。
      13時24分 「外してくれ、外してくれ」と叫んでいる。
      13時30分 「取ってくれ、外してくれ」としきりに叫んでいる。
      14時59分 「助けてくれ」「開けてくれ」等を繰り返し叫んでいる。
      19時12分 相変わらず扉にもたれ独り言を言っている。
      19時15分 扉にもたれて座っているが、急におとなしくなったので、保護室に赴き様子を見ると、息をしている様子がしないので、右横の視察孔から視察したが、様子がおかしい。直ちに監督当直者に報告した。
      19時17分 部長が様子がおかしいと駆けもどり報告する。
      19時19分 開扉し本人に「おいおい」と何回も声をかけ本人をゆり動かしている。
      19時23分 副看守に医務へ連絡するよう指示を受ける。
      19時25分 ポケベルで医務職員連絡終了。
      19時30分 処遇首席の指示により救急車を要請した。

4 所見
 革手錠使用中の死亡事件であり、重大事件である。
 視察表第8号の家族への連絡では「昨日から酒による禁断症状があり…」とされている。
 視察表第12号では司法解剖したようであるが、その結果を記した文書なし。また、死亡診断書(死体検案書)も出されていない。革手錠の使用、保護房の拘禁と死亡が関連していることは明らかであり、司法解剖結果と死体検案書、死亡診断書の提出を求める。


第32  沖縄刑務所 整理番号429 死亡帳番号なし 死亡時42歳 H8年7月
B
1 事案の概要
独居房内での急死のケース。
医師の所見では、肥満による呼吸不全、糖尿病による心不全、肝臓疾患等による病死と思料されたが、死因が特定できないため司法解剖が行われた。

2 所見
 司法解剖の結果を記した文書等がなく、正確な死因を特定できない。

第33 福岡拘置所 整理番号432 死亡帳番号10‐1 死亡時27歳 H10年3月
B
1 事案の概要
独居拘禁中、嘔吐物で窒息していたケース。
直接死因=窒息
その原因=急性嘔吐
その原因=不詳・原因不明と言わざるをえない(カルテ)

2 所見
本人の周囲にバナナの皮等、間食類があったので、夕食以外にかなり摂食していたものと思われる。(カルテ)

第34  福岡拘置所 整理番号437 死亡帳番号12‐1 死亡時61歳 H12年6月
B
1 事案の概要
急性心筋梗塞により死亡。
視察表によれば午前8時15分胸部の痛みを訴える。血圧および心電図の測定を行い、医師の指示で投薬を行い、経過観察していたが、午前11時29分ごろ呼吸が止まり心臓停止の状態に陥った。
病院に搬送したが午後1時02分に急性心筋梗塞により死亡した。
既往歴には心臓疾患に関するものはなかった。(被収容者死亡報告)

2 所見
 結局心筋梗塞の原因は不明のままである。

第35  福岡拘置所 整理番号441 死亡帳番号13‐3 死亡時51歳 H13年12月
B
1 事案の概要
肝硬変で休養加療中、意識喪失していたケース。
病院移送され死亡した。
直接死因=肝不全(発病から約1ヶ月)
その原因=肝硬変(発病から約13年)(死亡診断書)

2 所見
 死亡の経過が合理的に説明されていない。

第36  秋田刑務所 死亡帳番号8-1 整理番号495 死亡時45歳 H8年2月
B
1 事案の概要
同衆【ママ】より殴られ倒れて意識不明となる。
死因は外傷性クモ膜下出血と考える(解剖結果一応報告書)

2 所見
 珍しい、同囚傷害による死亡事件であるので、加害者に対する刑事処分や、関係者の行政処分など事件に対する刑務所当局、捜査当局の対応を明らかにされたい。

第37 山形刑務所 9−1 整理番号499 死亡時40歳 平成9年1月
@A
1 死亡帳
急性心不全
  保護房観察中の突然死である。
  死因は経過からすると不整脈による突然死と考えられる。
 司法解剖実施事件

2 視察表
  11号 戒具使用の上、保護房に収容したことについて
  平成8年12月
  「おれはキリストだ。わかんないのか。天から指示されているんだ。うるさい。」
  「うるさい。おれは神だ。」
  意味不明の怒号を発し続けた
  保護房に収容しようとしたところ、「この野郎。やってやる。」と怒鳴りながら副看守長の顔をめがけて殴りかかろうとした。
革手錠右手前左手後
  職員の負傷はなし

  12号
 革手錠解除

  13号
  保護房で額から血を流しながら壁に額をこすりつけている
  自傷行為の防止のため両手前で革手錠

  14号
  保護帽子の使用

  15号
  保護帽子の使用解除

  16号
  平成9年1月
  戒具使用の解除

  17号
  保護房収容期間の更新
  意味不明のわめき声
  壁をたたく
  険悪な形相

18号
  保護房収容期間の更新
室内徘徊、裸体になって室内に放尿
  壁を蹴る

19号
  保護房一時解除 入浴実施

  20号
  保護房収容解除

  21号
  保護房に収容
  制止に従わず、保温ポットとやかんに小便をしている
  醤油やソースを飲んだり机を倒したり、布団を蹴り上げ、毛布を便器に押し込む異常挙動

  22号
  保護房を解除し病舎に収容
  午後6時25分に送話マイクで呼びかけたが返答なし
  呼吸脈拍確認できず。
 
  23号
  蘇生器を使用したこと
  午後6時26分
  救急車の出動要請 6時32分
         到着 6時46分
         出発 6時59分
         病院到着 7時12分
  24号
  親族への危篤通報
  午後7時33分

  25号
  午後9時22分 うっ血性心不全で死亡確認

3 司法検視、司法解剖実施
  殺人被疑事件の鑑定処分許可状あり

4 保護室被収容者動静記録表
8年12月X日
 17時57分 保護室収容
 
X+1
  大声を発している
  歌っている
  怒鳴り散らしている
  カメラをにらみつけ、銃を撃つまねをする。

X+2
 突然大声で「とうちゃーん」などと3−4回繰り返す。
 がんばれ、やったぞー
 やったぞ、サイコーだ

X+3
 0時35分
  額の治療
 7時
  扉に小便
 23時25分
  ヘッドギアー外す
 23時30分 
  ヘッドギアーかぶせる

X+4
  1時30分
ヘッドギアー外す
  1時35分 
  ヘッドギアーかぶせる
意味不明のことを言い続けている。

X+5
  眠っている
  天井に向かって一生懸命話しかけている。

X+6
  時々大声を出し、歌を歌っている。
  下半身裸で徘徊
その後も特に変化なし
11日目ないし12日目に収容解除

再度保護房に収容
二度目の保護房動静記録は時間が連続していないので、日数の計算は不可能
おそらく数日か
二度目の保護房解除直後に死亡したものと考えられる。

5 所見
 明らかな精神分裂病(統合失調症)の病者を、その救いを求める叫びも無視して、長期間にわたって、保護房に拘禁し、その精神症状を悪化させ、さらに体力を消耗させたために急性心不全で死亡したと考えられる。精神障害者の精神症状に対して、漫然と保護房拘禁を継続することの危険性に全く無自覚である。二度にわたる革手錠の使用によって、何らかの傷害を負った可能性もある。
 殺人被疑事件として捜査されたようであるが、その結論も明確となっていない。
 すくなくとも、刑務所の当局者には明らかな保護責任者遺棄致死罪に問うべき重大な罪責がある。徹底した再捜査がなされるべきである。  

第38 山形刑務所 12−1 整理番号500 死亡時28歳 平成12年3月
A
1 死亡帳
 急性呼吸促迫症候群
 検察官通報のみ
 司法検死も司法解剖もされていない

2 視察表
 37号
 熱発のため休養
 38号
 病院搬送
 午後3時35分病舎で「動けない」
 ストレッチャーに乗せ医務課棟内入ったところ、口から血の混じった泡を吹きだした。
 呼吸停止状態
 3時54分救急車要請
 4時17分病院到着
 4時47分死亡確認

3 死亡診断書
 原因不明の急性呼吸促迫症候群
 関連傷病 出血性胃潰瘍

4 カルテ
12年2月 「取り調べ可能」の記載あり
       なんらかの懲罰事犯の対象とされていたと思われる。

12年3月風邪
       頭痛・咽頭痛
    3月    体温39度まで上昇
    3月    体温37.6
           呼吸苦しい・歩行困難・眠れない
    3月    採血・痰培養 
    3月    意識消失・呼吸停止

5 所見
 高熱を発し、なんらかの感染症にかかっていると思われる者に対して、原因探索もせず、ボルタレン投与のみで、漫然と放置し、血液検査や痰の培養も指示しながら、その結果の記載もない。突然死亡とされているが、先行する医療の欠如が死亡と関連していることは明らかであり、医療担当者の業務上過失致死責任は明らかと思われる。
 死因確定のための解剖も実施されておらず、目に余る無責任医療の犠牲者といえる。

第39  福島刑務所7−3 整理番号509 死亡時48歳 平成7年8月
A
1 死亡帳
 急性心不全
 検察官通報のみで、司法検視司法解剖なし

2 視察表
8号
感冒で休養
9号
 布団の上で横臥した状態で目をぱちぱちしている。
 呼びかけに反応せず。

3 所見
 カルテの添付がないので、カルテの提出を求める。
 感冒の治療が不十分であった可能性がある。

第40 月形刑務所 番号なし 整理番号544 死亡時 44歳 5年5月
@A
1 死亡帳
急性心不全

2 視察表
第14号、報告書2通
緊急病院搬送について
職員暴行事犯により軽屏禁40日の懲罰執行中。
5月X日午前7時59分ころ・・・起床点検のため居房に行き、布団の中にいる本人に声をかけるが返事なし。人工呼吸の措置。(酸素吸入器使用、気道確保。)
  同日8時30分・・・●●病院へ緊急搬送。
第15号、16号、死亡診断書
5月X日午前9時05分・・・死亡
急性心不全 
第17号
行政検視について
「身体に外傷等は一切見受けられずまた本人の居房内も通常のままで自殺又は他殺等、病死以外の疑いは認められなかった。」
第31号
司法検視について
「検視の結果、病死と認定された。」(司法検視については項目のみで結果の記載がない)特別動静視察簿
4月X日11時32分・・・職員暴行のため非常ベル
同   34分・・・保護房収容 
X+1日11時05分・・・保護房解除

3 保護房
収容あり

4 カルテ
保護房収容中・・・頭部に擦過症。
懲罰前検診・・・懲罰支障なし、入浴禁止
4月●日・・・懲罰中(朝下痢2回、腹痛、鼻汁、倦怠、腰痛、足浮腫)
4月○日・・・懲罰中(腹部に圧痛と記載あり)
5月X日・・・午前9時5分死亡

5 所見
 保護房解除後、懲罰中に死亡。
 革手錠については特にふれられていないが、保護房解除後下痢をしたり、腹痛があるようなので使用した疑いがある。 保護房収容に至る経緯と戒具の使用に関する書類が欠落しているのではないか。カルテの2枚目にも不審な点がある。

第41 月形刑務所 12−1 整理番号546 死亡時 58歳 12年4月
B
1 死亡帳
急性肺炎 

2 視察表
第7号
レントゲン撮影の結果、肺炎の疑いがあるため外部の病院へ移送
被収容者死亡報告書

3 所見
 遺族は死因について不審に思っている様子との記載あり。肺炎で死亡にまで至った経過が不可避であることが示されておらず、医療過誤の疑いが残る。

第42 月形刑務所 12−2 整理番号547 死亡時 43歳 12年7月
A
1 死亡帳
脳幹出血による病死

2 視察表 
第21号〜26号 
12年7月X日午前6時45分ころ・・・起床時間になっても布団に横臥したまま起きないため呼びかけたが反応なし。
6時59分・・・呼吸、脈拍は認められたが意識不明だったため救急車を要請し●●病院へ移送。診断の結果、脳幹出血の疑いがあるため○○病院へ移送。
9時58分・・・死亡が確認される。
被収容者死亡報告書
「体調も良いので、高血圧の薬を止めたい旨の申し出があり、打ち切りとなる。」との記載あり。

3 保護房
収容なし

4 カルテ
被収容者死亡報告書とカルテから判断すると、高血圧の薬を止めた後、血圧が152/98になり、その後脳幹出血で死亡している。

5 所見
高血圧の薬を止めた後、脳幹出血で死亡するというのは医療ミスではないのか。


第43  月形刑務所 13−1 整理番号548 死亡時 66歳 13年2月
@A
1 死亡帳
急性心不全

2 視察表
第6号
 取り調べのため独居拘禁中、暴行のおそれがあるため保護房に収容。
 「体が動かないので作業を休ませて下さい。今日だけでいいです。」(リウマチ、高血圧の既往症あり)との申し出に対して職員が 「ゆっくりでもいいので作業するように」と指示すると「貴様俺を殺す気か」と言ったため取調室へ連行。
 取調室で朝食の不喫食と作業について問いただしすも暴行の気勢が継続していたため保護房へ連行。その際両手両足をそれぞれ看守が抱えて連行。
 戒具の使用はなし。
第7号
 保護房収容の解除。引き続き取り調べ。
特別動静視察表
 保護房解除後取り調べの独居房にて、数時間おきに用便に行く。座ることができないくらいのひどい下痢。

3 カルテ
保護房収容中から下痢。

4 保護房
収容あり

5 所見
 保護房解除の翌日に死亡した可能性がある。もともと体調の不良を訴えて、作業の免業を願い出ているものを反抗的と決めつけて、保護房に入れた措置は著しく妥当性を欠くと言わざるを得ない。
 保護房への拘禁・医療の不適切な対応と急性心不全の間に因果関係があることは明らかである。

第44 徳島刑務所 番号なし 整理番号553 
請求した物と異なるものが開示されている。
請求した物は平成6年の1件めで、感冒で休養中のものを請求したもの。正確なものを提出されたい。

第45 徳島刑務所 7−1 整理番号554 死亡時 46歳 7年5月
@AB
1 死亡帳
心筋梗塞
(以前から肝硬変、糖尿病があった)

2視察表
第64号
肝硬変のため休養をみとめる

第65号
保護房拘禁について
「のどがかわいたので水を飲ませてほしい」と申し出たので手元の容器に水が入っているのでそれを飲むように指導したところ意味不明の言葉をくりかえし、何度か指導しているうちに房扉をはげしく叩き始め、やめるよう注意してもやめないので保護房に拘禁した。(5月×日午前3時50分)

第66号
日付不明15時43分 医師の意見は保護房さしつかえない(たぶん5月×+1日)

第67号
大声を出したら房扉をたたくので上の階の者から苦情がきて転房

第68号
日付不明2時34分 呼吸状態が異常 呼吸困難
その後診察室に搬送し酸素吸入、心臓マッサージ

第72号
検察庁へ通報「死因は当所の医師の推定で消化管出血脳内出血」

3 保護房動静視察表
5月×日3時50分 保護房拘禁
ブツブツ独り言が続いている。食事は食べたり食べなかったり
5月×+1日 10時45分 医師の診察(5分間)
このかんも食事は食べたり食べなかったり
17時40分 出してくださいなどと叫ぶ
〜19時40分 出してくれ、お父さんに会わせてくれなど叫び続ける

5月×+2日 10時5分「助けてくれ」と大声でどなり続ける
〜11時5分

13時9分 保護房転房
15時20分 監視卓より吐血したとの連絡有り
「腹が痛い」と訴える
吐血杯一杯
副看守長、処遇官立ち会い
様子を見るよう指導 チリ紙20枚を入れる

5月×+2日16時30分〜5月×+3日 7時41分までの記載なし

5月×+3日 朝食5分の1と少ししか飲まない
この日は視察表の記載が4時間ごとにしかない

5月×+3日 16時45分 さかずき2杯吐血
処遇官 歯茎からの出血を確認

5月×+4日 2時35分 医務課へ搬送
(たぶん第68号の呼吸困難のときと思われる)

5 所見
保護房収容前から精神状態に異常が認められる。にもかかわらず、保護房に入れる必要はあったのか。
保護房収容後、まる1日以上の医師の診察がなかった。
保護房収容中、医師の診察があったと認められるのは1回だけである。
保護房収容中食事はほとんど食べていない。
ずっとブツブツとひとりごとを言ったり、出してくれ、助けてくれと叫んでいる。
途中便器に頭を入れたり、上半身裸になったり、糞尿を床にまきちらしたりしている。
また吐血しているにもかかわらず、医師の診察は受けていない。
死亡帳は心筋梗塞である。
ただ視察表第72号では「死因は当所の医師の推定で消化管出血か脳内出血」とある。
死亡診断書、カルテが一切ないため死因は不明

死亡診断書(死体検案書)、カルテ等一切なし。
  心筋梗塞のの原因はデータが不足のため不明である。
  保護房収容直後から訳の分からないことを大声で叫ぶ等、精神状態に異常が認められるので、早期に精神科なりの診断を受けていれば生命を失うことはなかったと考えられる。医療に落ち度があることは明らかである。

第46  徳島刑務所 7−2 整理番号555 死亡時 28歳 7年7月
B
死亡診断書(死体検案書)、カルテ等一切なし。
司法検視の報告書にも検視の結果の記載なし。

第47  徳島刑務所 9−1 整理番号558 死亡時 68歳 9年9月 
B
死亡診断書(死体検案書)、カルテ等一切なし。
検視の結果の記載もなし。

1 死亡帳
 老人性痴呆症のため休養加療中、軽い脱水症状の症状があり、急性心不全にて死亡。

2 視察表
 軽度の脱水症状が認められるが顕著な異常は認められないとの記載あり。その直後に様態が急変して死亡。

3 所見
 脱水が死亡と関連している疑いあり。

第48  徳島刑務所 14−1 整理番号568 死亡時 57歳 14年1月 
A
1 死亡帳
急性呼吸不全

2 視察表
死亡診断書
急性呼吸不全の原因は急性肺炎。

5 所見
 発病より約7日間あるので適正な医療によっては救えたのではないか。カルテは提出されているので専門医師による解析が必要である。 

第49 高松刑務所 7−1 整理番号571 死亡時 50歳 7年9月 
B
死亡診断書(死体検案書)、カルテ等一切なし。

1 死亡帳
 急性心筋梗塞

2 所見
 死因が一切不明である。

第50 松山刑務所 2 整理番号578 死亡時 26歳 7年9月 
A
1 死亡帳
喘息重績発作による病死

2 視察表
被収容者の死亡の報告書
気管支喘息と診断されている。
4月X日・・・喘息発作の感覚が徐々に短くなっていたので、本人から吸入器の使用を願い出ても「辛抱するよう」指導した。
4月XX日・・・喘息発作が収まらず病院で治療を受けて戻ったが、その後、再び喘息発作が出始めた。
4月XXX日・・・午後2時ごろ「吸入器を貸して下さい」と申し出たが、吸入器の使用時間の感覚が短いことから我慢するよう指導した。その後、再度願い出たので、症状を聞くために食器口の方へ来るよう指示したところ躓きたおれ、そのまま呼吸困難に陥った。病院に移送したが、2時47分死亡。
(すべて日付不明。)

3 所見 
 職員の喘息治療に対する無理解が起こした事件であり、明らかな医療看護のミスによる死亡事件である。

第51 高知刑務所 1 整理番号583 死亡時 54歳 11年4月
B
1 死亡帳
急性心臓死

2 所見
急性心臓死という病名は●●大学医学部教授の司法解剖の報告によるものであるが、死因を特定したものといえない。
 
第52 滋賀刑務所 10−3 整理番号587 死亡時 35歳 10年10月
B
1 死亡帳
急死(死因の特定なし。)

2 視察表
夕食の盛りつけ作業中突然しゃがみ込み意識不明、司法解剖の結果、急性心筋梗塞と診断された。(解剖報告書あり。)

3 所見
死因は不明である。

第53 京都拘置所 11−1 整理番号913 死亡時48歳  11年9月
@A
1−1、死亡帳
多臓器不全
原因は消化管出血、脱水

1−2、死亡報告
9月27日付けで「絶食報告」
点滴中意識混濁し死亡
直接死因は多臓器不全、原因は消化管出血・脱水
司法解剖結果では直接死因を虚血性心疾患の疑い

2、視察表
<保護房拘禁について>
午後6時15分頃 壁に頭を打ち付けたり手拳で殴打、整理棚に頭をつっこみ意味不明の
言葉を発しながら頭突きを繰り返すなどの異常行動をしているとの連絡
職員が指示するも、全く返事をしない極度の興奮状態。自傷等のおそれが認められたことから保護房拘禁。
<診察結果>
健康状態を聞くと、弁護士に会わせて欲しい、大使館に連絡してほしいという。
精神的にかなり興奮。正常な意思疎通の出来がたい状態であったが、保護房拘禁に支障
ないものと判断。
不喫食状態が続き、精神科診察についても検討する必要あるが、緊急性認められないので
経過観察したうえで意見を出したい
<保護房解除・第二種独居房拘禁取調べ>
多少奇異な言動は見られるものの、自傷のおそれ薄らいだとし、保護房解除、拘禁の端緒となった事犯は取調べに付す。
<保護房拘禁>
壁をけりつづけたため制止したが従わずけりつづけたため保護房収容。
<保護房解除>
制止を聞き入れることなく騒音を発することはおさまったため解除
解除時、身体検査実施し、両足に青あざの痕跡を数箇所認めた
<診察>
解除し同夜再び房内汚染・騒音のため保護房拘禁。診察。
問診事項にまともに答えない状態
喫食、喫飲を強く勧めたが摂取せず
強制栄養のため鼻道給与試みるも成功せず。
拘束台に拘束し、フィジオゾール液500ミリ点滴。途中から眠り始めたので、支障なく実施されるかに見えた。
<外部専門医連行>
点滴中体温34度まで低下。意識混濁状態になり外部連行
<死亡>
移送中多臓器不全で死亡

3、保護房動静視察表
処遇上の注意事項 社会においては精神病院に通院歴

<1回目収容>
・X日   午後6時55分   尻を出し逆立ち
・X+1日 午前1時20分   大声で意味不明の独り言
↓ 不食続く
+2日 午前8時57分  食事投げ捨てていたので引き上げる
      ↓ 不食続く
11時44分   拘禁解除

<2回目収容>
・Y日   午後6時30分   ズボン脱ぎ、パンツずり下ろして転げまわっている
8時45分  裸体で徘徊。大声で一人言。
10時15分   痛いと叫びつづけている
・Y+1日 午前2時10分   しくしく泣いている
↓不食続く
・Y+2日 午前5時15分   徘徊しながら泣いている
・Y+3日 午前7時31分   食器台を足蹴りし食事まきちらす
      午前11時44分  解除

<3回目収容>
・Z+1日 午前0時56分   便器の水を右手でかき回す
        5時56分   うつぶせで洗面所に頭を突っ込んでいる
↓不食続く
+2日  
↓不食続く
      午後2時55分   ヘルプヘルプと言っている
+3日 午前10時55分  解除

<4回目収容>
・A+1日
↓大声の独り言+不食続く
+2日 
↓独り言+不食続く
+3日 午前10時55分  解除

4、カルテ
新入り診察

11年9月X日   昨日頃よりコミュニケーションとれなくなった
      +1 ふろに入りたい、おどおどして立ち上がったまま
+2 保護房診察 血圧測定するも拒否
      +3  点滴(死亡日)

5、考察
 精神障害の病者に対して、保護房収容を繰り返し、それに対するハンストの末、脱水症で死亡してしまった最悪のケース。点滴中に状態悪化して死亡していることも問題。
 提出されているカルテの記述があまりにも少なく、字体も同じで明らかに後からまとめて改ざんされた疑いが濃厚である。
 保護房に収容されているときには毎日診察が行われなくてはならないにも関わらずカルテ上は新入診察からたったの6回しか診察されていないことになっている。
 京都拘置所のカルテは他に提出された2件の死亡事案についても、あまりにも記載不備が目立つ。医療側の対応にカルテを改ざんするなどを大きな問題があることが強く疑われる。

第54 大阪拘置所 死亡帳番号なし  整理番号918 死亡時33歳 6年7月 @A

1 死亡帳
急性心不全

2 視察表
7月X日
午後0時40分
「アカシジアの発作のため、イライラいして落ち着かず、舌も引きつってどうにもならない。保護房に入れてほしい。」
発作時の薬を投薬し「少し様子を見るよう」指導したが、なおも「落ち着きません。」と繰り返すため、保護房に拘禁した。
午後5時頃「死にたい」と言いながらタオルを首に巻いたり
午後5時10分注射措置
精神科受診結果
イライラ感 徘徊
覚せい剤中毒入院歴
保護房内で頭部を房扉に向けて、うつ伏せに倒れ、意識不明、自発呼吸のない状態
テラプチック(呼吸促進剤)を注射

3 保護房動静視察表
 (視察表と合わない)
X日 19時08分
   大声を発し続けたため保護房拘禁となった
   うつぶせになり、意味不明な言葉を発している
X+1日
   横臥していることが多い
X+2日
   13時
   「おーい、医務はまだか」
   15時20分
   「何で、こんな所でいるんや」
   17時15分
   横臥しているが、視察に気づくと起きあがり「もう死にそうや」
17時38分
   視察に気づくと「頭痛いですわ」
   19時40分
   「担当はん、吐きそうなんですわ。」
   この後からだを丸めるようにして横臥している
X+3
   9時30分 
   視察孔に近づき、「保釈申請するから出してくれ」
   10時0分
   「担当さん」と繰り返し言ってる。
   11時45分
   「しんどい、食べれない」
   14時30分
   医務部長診察 「幻聴がある。頭が痛い。」等と訴えていた。
   16時35分
   呼びかけに応じない
16時39分
   意識なし
   16時43分
   人工呼吸

4 カルテ
(提出されず)カルテの提出を求める

5 所見
 1、保護房収容の要件がない。保護房は本人の希望で入れるようなところではない。
 2、大声を発していたという動静記録の記載を裏付ける視察表がない。
   何度も保護房から出してほしいという懇願にも係わらず、聞き入れなかった。
 3、本件は7月であり、暑さのために脱水症状に陥った可能性もある。

  もともと拘禁反応のある被拘禁者を誤って、保護房に拘禁し、本人の懇願も聞き入れ  ないで収容を継続したことそのものにより、死亡に至らせたことが明らかである。
  司法検視、司法解剖ありとされるが、その結果は未公表である。
  
第55 大阪拘置所 死亡帳番号なし 整理番号919 死亡時37歳 9年10月
@A

1 死亡帳
急性心不全
保護房解除後動静観察中
口腔内に分泌液を貯め、窒息状態
酸素吸入、心臓マッサージ、呼吸促進剤の筋注、
死亡確認

2視察表
独居拘禁中
弁当箱、副食皿を廊下に投げつけた。
「なにもしてないやないか。おかしなこというな」
拳で視察窓をたたいた。
「なんや、俺が何をした。俺をどうするつもりや」
「やかましい。うるさいんじゃ。あっちへ行け。」
午後7時20分 保護房 拘禁
右手甲部に擦過傷
保護房で精神不安強く精神分裂病を疑ったので、向精神薬を投与
保護房で裸になっていたのでシャツとパンツを着用させた。
保護房解除時検診を行ったが、身体などに異状を認めず。
精神分裂病の疑い、専門施設での医療処遇が必要
保護房解除後も取り調べに付さず。
口腔内に分泌液を貯め、窒息状態で発見された。

3 保護房動静視察表
10月X日19時20分 保護房収容
X+1日 14時45分 暑いのでシャツを脱ぐぞ。
     23時35分 布団を便器の水で濡らし交換してくれと言う
X+2日 0時24分  「出たい、出してくれ」
     2時30分  独り言をつぶやいたり、体をふるわせたりしている
X+3日 21時15分 「おい、電気消してくれ。明るくて眠れん」
X+4日 3時20分  「腹が減った。お母ちゃん助けてな、お母ちゃん」
X+5日 全裸徘徊
X+6日 全裸徘徊
X+7日 8時37分  保護房解除 

4 カルテ
(提出なし)
提出を求める。

5 所見
1、カルテが提出されていない
2、検察官通報も司法検視も司法解剖もなし
3、一切の死因が不明
4、提出されている資料からは保護房解除後どれだけの後に死亡したのかもわからない。
5、死亡したのは、10月15日で午前7時10分に異変が発見され、8時43分には死亡が確認されている。

  精神分裂病の医療を施さなければならない者を安易に長期間保護房に拘禁し続け、身体的な衰弱を招いて死に至らせたものであり、虐待死亡事件といえる。

第56  大阪拘置所 13ー4  整理番号942  死亡時38歳 13年7月
@A
1 死亡帳
13年6月入所
脱水性ショック
6時20分頃布団をつかみながら大声を上げていた
6時28分かけつけると居房中央で仰向けで手足をけいれんさせていた

2−1 視察表
 (保護房収容時のものがない)
 6時35分医務部に搬送
 6時46分死亡確認
 家族「金曜日まで元気だったのになぜ、死んだか。薬をくれないと言っていたがなぜ治療しなかったのか。」
 司法解剖実施 

2−2死体検案書
 全身貧血、脱水状態

3 保護房動静視察表
 (あるはずなのに、提出されていない)

4 カルテ
 うつ病で精神科受診していたことを告知している。
 6月 うつ病について症状記載
 7月1日 保護房収容
 7月X日 保護房解除
 7月Y日 保護房収容
 7月Z日 夜になると幻聴が聞こえる
 7月A日 保護房解除
 (法務省の説明では、この間に二週間以上の間があるということであるが、
  提出された記録上では確認できない。)
 7月B日 けいれん発作
      頚部硬直
      手掌チアノーゼ
      意識レベル V−300
      呼吸停止状態
      心臓マッサージで回復せず

5 所見
 1、夏場に二度にわたり、保護房に拘禁し、その後の経過の中で脱水症状で死亡に至らせたものであり、保護房内の記録の提出を求める。
 2、保護房に収容していたケースであるにも係わらず、保護房収容に係わる視察表と保護房動静視察表が提出されていないので、追加提出を求める。
  水分の補給、精神科医療が必要な状態であったことが明らかであるのに、精神科医療の対象としないで、保護房収容を繰り返し、身体的に衰弱させ、結果として脱水性ショックで死亡にいたらせたものである。覚せい剤の後遺症による全身貧血が原因とされるが、覚せい剤の後遺症についての医療的対応がなされていた記録はなく、医療措置の過誤以前の精神障害者に対する虐待・放置による脱水性ショック死亡事件であると言わざるを得ない。

第57  栃木刑務所 平成5年番号なし  整理番号953  死亡時25歳(女) 5年1月
@A
1−1、死亡帳
急性心不全

1−2、死体検案書
 急性心不全
 原因は縊死未遂による中枢神経障害

2、視察表
<緊急戒具使用について>
 工場で水の入ったやかんを看守に投げつける暴行をしたため、制圧したものの拳を震わせ極度の興奮状態を示し、暴行に出るおそれが顕著なため、緊急戒具使用。(金属手錠)
<職員暴行報告>
 かぜをひいたと申し出たが検温で35度6分のため様子を見るよう指導。 
 ↓
 作業始めるが苦しいと訴えたためメントールを胸に塗るよう指導
 ↓
 やかんを投げつけ、にらみつけていたため非常ベルを鳴らした
 ↓
 腕がらみで制圧し、駆けつけた職員により金属手錠施用。
 やかんは当たらず、水のみ飛び散る

<(作業材料)投棄の件>
 作業材料の鈴を大量に投げつけ、注意すると「仕事できない」といいふてくされた態度で更に散乱させた

<保護房拘禁、緊急戒具使用>
作業投棄のため居室から出房させようとしたところ、連行拒否し、廊下で暴れはじめた。保護房拘禁直後両足を交互に蹴り上げ、制圧していた職員の振り払うなど興奮著しく、保護房収容のみでは制止が困難とし戒具使用。
午前8時20分 革手錠両手後ろ
<戒具解除>
午後0時20分 解除
<保護房解除>
<自殺未遂>
 机に向かって作業をしていたが、本人から「話したいことがある」というので聞きにいったところ「頭が痛い」というため、「作業を出来る範囲でやってごらん」と指導していた。

3、保護房動静視察表・戒具使用視察表

<1回目>

1月X日 午前8時( )分   金属手錠両手後ろのまま収容
       11時00分 ズボン下げれませんとトイレにいって叫んでいる
13分   両手前に変更
12時26分   「ぎゃーいやだよ」など奇声を発する
       14時38分   戒具解除

<2回目>

1月Y日 午前8時11分    革手錠、金属手錠施用
10時28分   「すいません先生、先生」と何度も言っている
10時29分   「ズボンをあげてください」と繰り返す
10時55分   ズボンあげる 
12時20分   金属手錠両手前に変える
14時18分   革手錠解除
      16時38分    保護房解除


4、カルテ
   提出なし

5、考察
 カルテが提出されていない。
 保護房収容、革手錠施用後ほどなく自殺を図って、その結果の中枢神経障害が死因とされるが、精神不安定な若い女性に対して、精神的なケアが必要であるのに、保護房と革手錠で対応し、トイレに行くためにズボンを自分で下げることも、その後上げることもできない状況で、著しい羞恥心と精神的ショックを与えたことが自殺の引き金となったことは明らかであり、保護房・革手錠使用による犠牲者であるといえる。

第58 黒羽刑務所 11ー6  整理番号976  死亡時26歳 11年10月
A

1 死亡帳
気管支喘息、覚醒剤中毒後遺症。気管支喘息

1 視察表

第33号
10月X日
午後5時45分…「苦しい」との訴えから医務課へ連行し医務当直者副看守●●の処置を受けさせた後、同居室へ還房させ動静を観察中、
午後7時50分ころ…本人が扉を叩いている旨の電話報告を受け、夜勤監督者副看守長●●と共に同居室前へ急行した。
同時53分ころ、同居室前へ到着し、居室内を視察すると本人は扉前において敷布団の上に正座し肩を大きく動かし呼吸している状態であったので、楽な姿勢を取り扉を叩くことなく静かにする旨指導するが、本人は息を切らせながら「できません。」と応答するため、同所においての指導は困難と認め、応援職員と共に開房したところ本人は下着姿であったため衣類を着用し静かに居室を出るよう指示すると本人はゆっくりした動作で衣類を着用し廊下へ出たが、歩行が困難であったため本人の左腕を●●看守が同右手腕を●●看守部長がそれぞれ抱えるようにして連行し、同寮階段を下りる際には更に●●副看守長が同人の腹部を持ち抱え腹ばいの状態で同寮●階入口まで連行した。
同時57分、同寮●階において、本人自ら準備していたストレッチャーに腹ばい状態に乗ったので、そのままの状態で処遇部門調べ室へ連行したが、到着直後に力が抜けたように身体がぐったりしたため、
午後8時2分、駆け付けた医務当直副看守●●が直ちに本人を仰向けにし…
同時16分、救急車が到着、
同時21分、●●病院へ搬送した
死亡診断書
本人に気管支喘息の既往歴(「約10年間」)の記載がある。

2 保護房
収容はなし

3 カルテ
11年9月
この段階ですでに「喘息、覚醒剤中毒後遺症」の記載がある。(以降、10月まで喘息の治療の記録あり。)

5 所見
  1) 午後5時45分に処置し、還房させた医務当直者副看守●●の対応が不適切だったのではないか。
  2) 午後7時53分ころの対応。本人が喘息発作を知らせるために「扉を叩いている」行動について、あろうことか規律違反容疑として「処遇部門調べ室へ連行」している。緊急の医療の必要な者に対して、保安的に接する職員の対応が直接受刑者の死亡に結びついている。
  3) 行政検視の報告書なし。検視、司法解剖の実施の記載なし。


第59 黒羽刑務所 死亡帳番号13ー3  整理番号982  死亡時66歳 13年11月
A
1 死亡帳
「別紙診断書のとおり」
「総合的に判断し、病死と認める。」

2視察表
第40号
「本人は、糖尿病及び糖尿病性壊疽のため休養加療中の者であるが、…」
死亡診断書
発病から死亡までの期間「約2時間」
死因は「急性心筋梗塞」

3 保護房
なし

3 カルテ
13年9月
「八王子医療刑務所でope拒否」の記載
13年10月
「足を切断しない、保存して症状が悪化しても良いという本人の意見とのことで、八王子から無理矢理当所へ帰所された。(●●八王子医療部長の強引な強制)しかし八王子で本人が切断しないことに同意した証拠がないため、当所で同意書を作成する必要あり」「本人に再度確認しましたが、切断したくないとのことです」との記載

5 所見
 カルテに記載のある「本人が切断しないことに同意した」書面が提出されていない。無責任な八王子医療刑務所の医療の結果死亡したものと言うほかない。

第60 黒羽刑務所 番号なし(宇都宮拘置支所の事案)  整理番号987  死亡時61歳(女性) 14年12月
A
1 死亡帳
死因が「心臓停止」

2 視察表
「自殺未遂事犯により病院に搬送」
「本人の居室を捜検したところ別添写しのとおり遺書らしきものを発見したので報告します」の記載があるが、遺書(写し)の添付はなし

3 保護房
なし

4 カルテ
2002年10月
 「うつ状態」
2002年11月
 「うつ状態」

5 所見
 カルテに「うつ状態」の記載があるにもかかわらず、適切な動静把握がなされていたか、疑問であり、適切な医療的対応により自殺を未然に防止できた可能性が高い。

第61 静岡刑務所 12ー2  整理番号1506 死亡時42歳 12年2月
A
1ー1 死亡帳 
不整脈(検視のみ、解剖は行われず) 

1−2死体検案書
<直接死因>不整脈
<原因>不詳
<他の傷病>脱水症 

2ー1視察表
第74号(病院搬送)12年2月  
7時18分頃 起床時間を過ぎていたにも関わらず全く動きがない
       動静に不審、前屈みでうつ伏せの状態。脈拍、呼吸も確認できず、
       医務診察室に搬送。
7時52分、救急車で病院に搬送、8時11分死亡確認。
2−2 法務省への連絡
独居室収容中の者。
       6時50分起床、7時点呼の時には体を動かして応え、着替えを
しないことにテレビ視察している職員が気付き、病院に搬送。
       不整脈による死亡が確認された。
       本人は神経症(潔癖症)だった。

4 カルテ
12年1月 目が悪い、夜中に幻聴があ
      要求多い、頻繁に要求
栄養失調
2月 飯だけ食べている、水は飲まない
顎下部化膿

5 所見
 不整脈の原因は全く解明されていないにも関わらず、解剖すら行われていない。
 栄養失調、脱水症だったにも関わらず適切な処置がとられていなかったため、
 衰弱死した疑いが高い。医療放置の疑い大。 

第62  川越少年刑務所 7ー1  整理番号1533  死亡時49歳
7年10月
@A
1ー1 死亡帳 
10時10分頃保護房において診察したところ、
心肺停止瞳孔散大状態、心肺蘇生及び酸素吸入実施。
回復せず大学に搬出したが、11時死亡確認。
死因は吐物吸引による窒息死
1ー2 死体検案書
<解剖所見>気道内にやや多量の吐物の存在。前頸部の圧迫痕、右側腹部、
       両前腕のしばり痕、四肢の打撲傷群
 <外因死の追加事項> 
暴れていたところを押さえられた際、吐物を吸引
2 視察表
第一号(保護房収容)7年10月28日  
午後1時20分頃警察署から入所。
       入所事務手続きである収容者身分帳指印徴収時、突然
       「何するんだよ。馬鹿野郎。ふざけんな」と大声を発しながら
       長椅子を蹴り、副看守長に右手拳で殴りかかろうとしたため、
       右手、左手をそれぞれ腕がらみで制圧したが、さらに大声で
       怒号し続け、職員暴行等の行為に出る恐れが顕著に認められたため
       保護房に収容。収容時間は午後1時35分
  第二号(戒具使用)31日
保護房収容し動静視察中
       午前8時3分頃、(三名で)保護房に行き視察口開けたと同時に大声発し、       開房直後、突然殴りかかってきた為、上体を押さえ、非常ベルで通報。
       保護房前の床に腹這いに制圧の直後、通報でかけつけた(二人)看守が
       制圧に加わった。本人が制圧から逃れようと暴れ続け、暴行行為の恐れが       認められることから、戒具使用したい。
※ 制圧し革手錠した際現場にいたのは五人
第三号(戒具使用)
午前8時5分、革手錠、右手前、左手後(脱錠防止のため金属手錠併用)
第四号(戒具使用解除)
房内に仰向けに横臥し、暴行等の行為に出る恐れが薄らいだものと
       認められること、健康診断行う必要があることから戒具解除したい。
第五号(戒具使用解除)
 午前10時7分解除
第六号(外医治療依頼) 
精神状態不安定のため保護房収容中の者、10時10分診察、
       心肺停止瞳孔散大状態、緊急蘇生を試みたが回復の徴候みられず、
       下記医療機関へ。 
第八号(保護房収容解除)
室内で心臓マッサージ、酸素吸入器使用し、外部で治療させる必要ある
       と認められることから収容解除したい
  第九号(収容解除)
10時34分
  第十号(重症通知)
10時40分
  第十一号(外医治療結果)
11時死亡確認、死因は窒息死

3 保護房動静視察簿
29日 13時35分  
(8人の刑務官)立会いのもと入房。「こんな所いやだ」と言っている
 30日 3時15分(それ以前はずっと横臥)  
意味不明なことを言い、房内を徘徊
     5時45分 
全裸になり意味不明なことを言っている
     7時半 
パンツ一枚になって徘徊
9時半
       大声を発し房内徘徊(以後大声発して徘徊続く)
     10時50分 
医務診察 暴行の気勢

 31日 (前日から一睡もしておらず大声と徘徊続く)
      7時15分       
じっとこちらをにらんでいる
      7時35分
朝食入れる
      8時3分
        殴りかかり房外に出たことから非常ベルで通報
      8時5分
革手錠施錠
      8時30分
房内中央で仰向きで目を閉じて足を扉の方にして寝ている
      9時37分
       腹部を上下し呼吸していたのを確認
      10時8分 
診療実施中

4 カルテ
      入所時 奇声を発し暴れている状態により健康診断できず
30日 大暴れして診察受けようとしない
31日10時10分 呼びかけに対して反応なし、対光なし
30分 救急車到着

※ 矯正局保安課長の説明など
殺人容疑者として28日緊急逮捕、取調中暴れたため、当日刑務所拘置部門に移送。取調は1日だけ。
     容疑者は8月頃から精神分裂症で入退院を繰り返していたという。
     入所時にすでに打撲傷的なものはあったが、それ以外の傷は制圧などが何かしらあったものと思われる。
業務上過失致死が疑われ、かなり捜査が進められたが不起訴処分となっている。

5 所見
 1、革手錠施錠後すぐに横臥、およそ2時間後には無反応の状態になっている。
 2、当時の検視や解剖では、窒息死と革手錠との関係は指摘されなかったのか、議事録の公開が必要。遺族に遺骨は引き渡されたのか、遺族は死因に疑いを持っていなかったのか、刑務所側がどのように説明したのかなどの情報(遺体受領書など)も必要。 
  死因は吐物吸引による窒息であり、革手錠締めすぎが原因である疑いが濃厚。事件性が大いに疑われる

第63  川越少年刑務所 12ー1  整理番号1539  死亡時21歳 12年2月
A
1ー1 死亡帳
死因「不明(現在司法解剖にて原因検索中)病理学的には脳表の顕著な浮腫」。
平成12年X日より、嘔気吐の訴えあり
平成12年X日吐気軽快す
平成12年X日舎房にて体調不良となり死亡。

1−2死亡診断書
直接死因は「不明」

2ー1 視察表
第7号(行政検視)
   2月X日午前零時20分。医師に病状等を確認したところ、「擦過傷や打撲痕等の外傷は認められなかった」「脳内出血等の脳疾患と判断していたが、髄液ににごりがないので、死因不明とした。外傷は全くない」とのことであった。
第8号(遺族が遺体と対面)
   2月X日午前1時10分。遺族は「刑務所に●●を殺された。」と言わんばかりに怒鳴り、また●●も乱気状態で説明を求めたりしたため、病院職員が驚いて
   出てくる状況であった。…居室内でのいじめ、発見や処置の遅れに疑念を抱く発言が多く、説明を納得する状況はなかった。…その後、担当医師や司法検視を終えた●●から説明を受けているうち、死因がいじめによるものではないことを理解した様子であった。

第9号(検察官による司法検視)
   2月●日午前1時24分。司法解剖の必要。
第11号(司法解剖の実施)
   著しい脳脹が見られ、急性脳症の疑いがあるが、確定診断は組織学的検査後
  (所要期間約1ヶ月)に行う。

2−2 被収容者死亡報告(川少刑発第286号)
  遺族は、…「刑務所に息子を殺された。」と言わんばかりに詰問し著しく興奮していた…。病理解剖の結果は知らされておらず、司法解剖、検死の結果も、通知文書等なく不明である。しかし、検視担当の検事、病理解剖担当教授が、死因は不明ながらも、事件性は無い旨、コメントしていた記録は残っている。

3 保護房動静観察簿
なし

4 カルテ
12年1月●日移送か?
    「CD万引き、路中の車を物色しているところ通報される。親から仕事のことを口うるさく言われ家出。電気工事士免許あり」
   1月●日「本日嘔気+」2回吐いた
   2月●日「嘔気↑」

5 所見
  1、視察表第8号で司法検視が終了していないにもかかわらず、「司法検視を終えた●●から説明」との記載がある。
   
    1月に吐き気を訴えた時点で診察がなされているべき。医療放置の疑い高い

第64   川越少年刑務所 13ー1  整理番号1540 死亡時30歳女 13年7月
A
1ー1 死亡帳
「摂食障害による低栄養状態」
「平成13年●●入所時より既に著名な低栄養状態があった。種々の治療に抵抗し、病状は進行しH13.●●死亡。」

1−2 死体検案書
   死因は「検査中」、解剖「有」「主要所見:高度の低栄養状態、胃から回腸上部迄粘膜の出血、肺の急性うっ血水腫、胸水、腹水貯留」

2ー1 視察表
  第9号(緊急に病院に移送)
  「朝点検時にも起床せず…血圧等については最近の状態より若干良好であるが、…看護婦 ●●技官に一度確認してもらうべく登庁を依頼したところ、同日午後1時35分ころ、同●●技官が登庁し、…問い掛けに対する反応が見られず、…同日午後1時45分ころ救急車を要請し、同1時50分ころ●●医療センターに搬送したので報告します。」

  第11号(病院で死亡)
  「午後3時29分同所において死亡…死因については不明とのことである…」


2−2被収容者死亡報告
「午前7時55分ころ…起床していなかった…午前11時20分ころ、副監督当直者が昼食配食のため同室を視察したところ、朝食を喫食した状況がなかったことから、…。午後1時35分、…医務技官(正看護婦)が登庁し、…午後1時45分、…救急車を要請し、…午後2時15分、同センターに到着した。」
「遺族(夫)は当初、施設の処置について、かなり不満を抱いていた様子であったが、本人の舎房を見せる等を行った結果、だいぶ感情がやわらいだとのこと。」

3 革手錠・保護房:なし

4 カルテ
  13年6月●日、低血圧「BP65/42mmHg P47/分」
  13年6月●日「血圧低いので、ラシックス服用は好ましくないことを説明するも“大丈夫”と言って、ラシックスを強く希望する。…ラシックス40mg1T1V1日分」
  13年6月●日、下腿浮腫、両足背edema(+)ラシックスを服用すると一時的に軽減」
  13年7月●日、ラシックス20mgではあまり効かない。しかし、40mgにすると体がだるい。現在隔日でラシックス20mgのんでいる。→1日1回20mgにしてみる(慎重に経過観察)。
  13年7月●日、BW29kg(着衣)、低栄養状態「点滴を強く希望する。」

※矯正局の話
 ・女性30歳。平成13年5月入所。入所後5ヶ月で死亡。
  鑑定留置の目的で移送。
 ・入所時から拒食症。20代後半から精神病院の通院歴有、入所時に体重が32.5
  キロ(身長は人並み)、血圧上が70、下40、肝機能障害あり
 ・抗不安薬、抗うつ剤を投与、肢体浮腫のため投薬停止
 ・食事を“食べている”と言っているが流しに捨てている様子も見受けられた
 ・低栄養状態で7月からは点滴していたが、その10日後、朝起きてこなくて准看護士  が経過観察。
 ・同日11時20分脈正常、13時35分脈貧弱、意識混濁、3時29分死亡
 ・これまでに精神鑑定を4回行っている。

5 所見
  血圧が非常に低く、この時点で摂食状態を疑うべきではないか。
  最後の医務診察まで摂食障害に対する適切な治療(IVHなど)がなされていない。
  7時55分ころの点検時に返答がなかった時点で何らかの医療処置が必要だったのではないか(外部病院への移送は午後2時15分)。

第65  東京拘置所 9−1  整理番号1558  死亡時31歳 9年3月
@A
1 死亡帳
 急性心不全
午前2時30分頃居房で昏睡状態
 まもなく心肺停止
午前4時08分死亡確認

2 視察表
 「精神病院につれていってくれ」と言っていた
 大声を上げているということで保護房に収容
 保護房解除後拘禁反応で病舎に収容

3 保護房動静視察表
 収容 3月X日18時47分
 房内で暴れているという記載はない
 「いつでれますか」と聞いている。
 X+1日11時37分医務診察実施
     21時05分「薬をくれ」等大声を発している。
 X+2日12時38分医務診察実施 注射一本実施
 X+3日21時05分以降「体を震わせている」との記載あり
 X+4日O時03分以降 頭を左右に揺らしている。
     2時02分以降 体をふるわせている。
     5時17分以降 口の周り左手に血(吐血したものらしい)
     10時30分  保護房解除    

4 カルテ
 X+1日
 保護房 「精神科受診必要か」との記載あり
 X+2日
     「突っ立っている。硬い表情 昼食手を付けていない。」
  22時40分頃 
      過換気症候群の発作ありとの報告あり診察
 X+4日
  5時35分「吐血している」との報告あり。
  昨日同様もうろうとしている
  舌下に切り傷
  精神科受診必要かと思われる。
X+5日
  保護房  座っている
  開眼しボーとしている。
  11時頃 舌をかんでいる
  13時30分 開口器施行されている
  15時?分  開口器オフ
 X+6日
  2時30分 10分前からうなり始めた
  午前4時08分に死亡確認
  保護房解除後一日以内で死亡

5 所見
1、監察医の死体検案で行政解剖が必要とされているが、行政解剖結果が不明。
2、司法解剖も実施されていない。
3、死亡帳一覧表には保護房記載なしとされているが、実際には死亡の直前に保護房収容の事実が判明した。
4、死因が急性心不全というだけで、いまもって全くわからない。
5、何度も精神科受診が必要とされているのに、受診させていない。

 拘禁反応のある被拘禁者を長時間保護房に閉じこめ、過換気症候群の発作を引き起こしている者を、精神科の診療も受けさせず、保護房に5日も放置し続けた措置は、医療過 誤の範囲を遙かに超えた虐待・遺棄行為といえる。