フォーラム90の抗議声明


抗議声明

1999年12月17日

 臼井日出夫法務大臣は、本日、東京拘置所において佐川和男死刑確定者に対し、また福岡拘置支所において小野照男死刑確定者に対し、死刑を執行した。

 これは、死刑廃止を求める国際的動向に逆行し、昨年11月6日の国連規約人権委員会の死刑廃止勧告を踏みにじるものであって、およそ許し難い行為である。

 今回の執行は、9月10日の3名の執行に続く、わずか3ヶ月以内の合計5名に対する執行であって、過去、このように短期間の間に連続する執行が行われたことがないこと、そして、12月15日には、国連死刑廃止条約が採択されて記念すべき10年目を迎えたばかりであることに明らかなとおり、極めて政治的な執行である。

 とりわけ、小野さんにあっては、本人による再審請求もとより、弁護人において再審請求中が申し立てられたばかりの死刑執行であって、過去に全く前例のない、甚だしい暴挙であり、再審を求める権利、弁護人の弁護を受ける権利を奪う明らかに違法な執行である。

 また、佐川さんにあっても、その執行の停止を求めて12月15日人身保護請求が申し立てられ、東京地方裁判所民事9部においてその是非について審理が開始され、法務省は裁判所から答弁を求められていたところである。これにあっても、過去に全く前例がなく、人身保護法制の趣旨を完全に踏みにじるものであり、裁判を受ける権利を真っ向から否定するものである。

 メディアに配布された法務省当局の「通知」は、名宛人も発信人もない「怪文書」としかいいようがないものであり、個人名も特定できない以上、事後的にさえ執行の法適合性を確認することができず、説明責任を果たしうる「公開」とはいえない。死刑確定囚の違法な執行から自己を防御する権利が全く奪われており、これは、およそ法治国家にあるまじき死刑執行手続きである。

 1993年に執行が再開されて以来、7年の間に36人が執行されたが、再開前の7年間には、7人の執行であり、実に5倍もの大量執行となっている。そして、再審請求中であっても、人身保護請求中であっても執行をすることで、行き着くところまで行き着いた法務省当局の過剰な対応に、強く抗議する。

死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90