トピックス2003


<もくじ>
ブラジルMST(土地なき農民運動)活動家シーロさん来日記念講演録

脱WTO草の根キャンペーン呼びかけ【第一期】

茨城でのGM大豆「刈り込み」のトピック

アタック・ジャパン第2回総会報告

◆WTO非公式東京閣僚会議(2/14-16) ウォールデン・ベロー総括文

「WTOは誰のため? 東京行動」呼びかけ
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ジョゼ・ボベさん2002年日本各地の集会大盛況!
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ブラジル土地なし農民運動・MST
シーロ・コヘア(Ciro Correa)さん講演会

2003年10月5日(日) 日本キリスト教会館 6階フォークトルーム 

 

○シーロ・コヘアさん
ブラジルは世界最大の国のひとつで、土地の広さは800万平方キロ、生物多様性も豊かで、気候は様々な作物の栽培に適しています。人種は混血が進んだ国で多文化が共棲しています。地域的には東南部が発達しています。
人口は1億6千万人、うち9千万人が貧困層で5千万人が飢餓に瀕しています。また経済面では公式には500年の歴史を持っていますが、常に少数のエリート階層に富が握られてきました。現在も人口のたった16パーセントが国の富の80パーセントを握っています。残りの大多数の国民は労働者階級で、住居、雇用、食料、健康、教育などの社会面で阻害されています。
国内の人口移動を見ると、この40年間で400万人の農村人口の都市への流入が進みました。その中で人々は大土地所有制に対して抵抗の気持ちを持ってきました。先住民インディオの人たちの抵抗、黒人の抵抗、小規模農民の抵抗、そして私たちの抵抗です。

ブラジルでも「緑の革命」がありましたが、それによって農業の機械化、改良された種の使用などの背景で農民たちが土地を追われる形になりました。農業の工業化というべき過程を経て、穀物(大豆、とうもろこし)を輸出する輸出大国になったのですが、一方、国内では多くの人々が飢餓に瀕しました。
1964年、社会変革の動きのひとつとして農地改革がありましたが、その後20年間続く軍事政権時代によってその芽は摘み取られてしまいました。軍事クーデターによって軍事政権が確立され、当初30の重要な社会計画があったのですが、軍事政権によってつぶされてしまいました。
それから70年代末、キリスト教会の革新派の中で労働者の権利を守る動きが出てきました。さらに80年代に入り、3つの社会運動が登場しました。MST、CUT、BT(労働者党)であります。MSTが設立されて20年を迎えようとしていますが、労働者を組織し、運動方針を立て、そしてそれを実行する、両側面から闘ってきました。

MSTはブラジル26州+ブラジリアのうち23州で活動し、土地を占拠し手に入れてきました。私たちの運動は大人数で力を結集しています。零細農民、またその子孫、農業労働者、失業者などです。運動の性格は、共同性を重視しています。一人がリーダーになるのではなく、たくさんの人々すべてが参加し、共同で作り上げていく。そのために人々をトレーニングし力をつけています。
この運動は社会正義の追及です。限られたエリート階層が土地を所有し資本を占有していますが、これは不法な手段や社会的な汚職手段で手に入れたものです。われわれはそれを追求し、州政府に働きかけ不正な状況にある土地を法的に見直していくこと、その所有権を農場主から奪還することを働きかけています。30万家族がすでに土地を手に入れました。現在、10万家族が土地を手に入れるために野営をしています。

われわれは政府に、農地改革を進めるよう圧力をかけていますが、農地改革は土地の所有だけでなく、社会的な側面――教育の普及、健康的な生活の補償、社会的インフラの整備、共同作業、ジェンダー――の問題に目を向けることでもあります。
われわれの運動は新しい社会を構築していくことです。それは共生の発想です。環境との共生、生産手段を手に入れること、いろんな側面を持った社会協同組合方式での、生産、生産物を加工する小規模の工業化、作物をダイレクトに消費者にとどけるという商業的な面での共生です。また、われわれは有機農業を重視しています。農薬や化学肥料を一切使わない古典的農業を重視しています。

ここ10年ほどの活動の中で、農地改革を必要としている他の開発途上国との連帯、社会から阻害されている人々との連帯という国際的な連帯運動に力を入れてきています。
その国際的な農民の連帯運動のひとつの代表的なものが、ビア・カンペシーナです。世界中の農民たちの連帯運動であり、世界を牛耳っている新自由主義に対抗する運動です。
このビア・カンペシーナは、われわれMSTもその構成団体ですが、私たちの主張はWTOの方針に異議を唱えていくことです。食料は単に商品として扱われてはなりません。食料は人類が必要としている生命の基礎であり、ゆえにすべての人々が食料にアクセスできなければなりません。WTOによって操作されるのでなく、国連において社会の中で語られるべきです。

このWTOが推進する世界というのは、食料を限られた先進国の人々が商品として握っていくものです。食料と自然環境の商品化という視点です。世界中の貧民を土地から追い出し、農民たちを搾取していくことです。食料の大生産国は開発途上国が多いのですが、そこが生産した食料が先進国に搾取されていく構造を作り出しています。
また、ビア・カンペシーナが取り組んでいるのは知的所有権に関する国境問題です。限られた豊かな先進国が生物的多様性を特許として登録し手中におさめようとしています。しかし開発途上国の生物多様性は、長い歴史をかけてコミュニティで育まれたものです。それにも関わらず先進国は自然資源を海賊行為のように登録し、そしてそれを利用する者には高いロイヤリティを要求するという構造になってきています。

われわれはラテンアメリカ大陸で力強い運動をしてきましたが、同じアメリカ大陸にあるアメリカ合衆国は強力な支配力をもつ国に対抗するという動きを続けてきたわけですが、日増しに一国による支配を強めてきています。
アメリカによる一国支配の例として進められているのがFTAAです。このラテンアメリカ諸国の中で自由貿易地域化しようという構想ですが、アメリカ合衆国はラテンアメリカ諸国の8億人の人口を巨大な商品マーケットとしてしか見ていない。結局はアメリカの限られた巨大産業が握り、ラテンアメリカの人々を消費者として扱っていくための動きなのです。
ブラジルでFTAAが確立してしまえば自国の支配権を失い、アメリカによるマクロ経済支配がすすみます。昨年われわれはブラジルで世論調査をしましたが、その結果1千万人の人々がFTAAに反対している。ルーラ大統領はアメリカとの交渉に入っていて、もっと時間をかけるべきだと主張し話し合いを続けています。

もうひとつの北米による支配形態は、ラテンアメリカ諸国をアメリカの軍事基地をおいていく構想です。前カルドーゾ政権でブラジル領内アマゾンのマラニオンという地域にアメリカの軍事基地をおく構想が立てられました。今年ルーラ大統領になり、現政権のうちはこれを実現させないと公約しています。
もうひとつは文化的支配です。アメリカの製品の流入、コミュニケーションの分野、コマーシャルが垂れ流されるなど、われわれの生活文化スタイルを単一化しています。食、服装、行動様式など。それは地域で長年培われた伝統的文化、歴史的価値を否定するものです。

これに対抗するために大切なのは一人一人が抗議していくことです。この支配論理に対して対抗していくことです。その反抗の例として3年連続で世界社会フォーラムが行われてきました。3年目の今年は10万人が集まりました。そこでは単なるグローバリゼーションや一極世界への反対を唱えるだけではなく、社会はどうあるべきか、人々の権利、伝統文化を守ること、農民の権利や農民文化を尊重しようといった提案がなされました。
この世界社会フォーラムでは、新自由主義に対抗していこうという声が上げられました。新自由主義とは限られた人々が文化的な生活をおこなうための動きです。この動きに対抗していきましょう。

来年はインドで行われますが、たくさんのアジアからの人々に参加してほしいと思います。次世代の人々がよりよい世界を作り上げられるよう、ぜひ来年のフォーラムで皆さんとお会いしたいと思います。



<質疑応答>

○質問
ポルトアレグレ市の参加型予算をどのように評価していますか。
また、ビア・カンペシーナの国際的運動に触れて、フランス農民運動など北の運動との連帯をどのように展望していますか。

○シーロさん
この参加型予算というものは、リオグランデ州において15年前から取り組まれているが、労働者党政権だったころから始まった一般民衆が参加していくシステムです。すべての人々が予算に関する情報にアクセスできること、財源がどこから来てどう使われるのかを一般市民が把握していくことです。これには州政府が限られた分野への集中化をやめていこうという意味があります。特に貧困層には重要な一般市民が予算に参加することで不足した部分への予算投入などが実現し、予算の民主的管理が実現するという重要な法案です。
限界もありました。細分化されているため毎年の予算計上の中で社会的プロジェクトの実施される速度が非常に遅く、ブラジルの伝統的な官僚主義があり、進まない。もし、これが地域的なものではなく、きちんと連邦政府で参加型予算に関する法律が整備されていれば、地域でうまく動いていったはずです。だが官僚主義による悪影響下でうまくいっていない部分も確かにあります。

ビア・カンペシーナと北の国々との連帯ですが、ビア・カンペシーナは世界中すべての農民たちの運動です。すべての農民が共に発展していこうという、新自由主義やグローバリゼーションの社会から阻害されている人々、その声を集め共に行動していこうという運動です。
ですから、発展途上国だけでなくフランスやベルギー、オランダにもありますし、世界中に構成団体があります。グローバリゼーションの現代の中で、さらに貧困化が進んでいるのは農民が多いが、もちろん都市生活者の中でもより貧困な状態に追い込まれる人々もいるので、すべての貧しい人々に参加してほしい。いろんな人々に議論しコンセンサスしていくことを必要としています。だからビア・カンペシーナだけですべてを決定していくわけではない。人々の力を統一して闘っていきたいと思っています。


○質問
農民たちの農地獲得のプロセスにおいて地主と暴力的衝突の様子がビデオで見られました。すでに30万家族の人々が土地を得ているわけですが、彼らにもそういうプロセスがあったのですか。今後も農地獲得の過程でそういうことがありうるのですか。
また、土地を得た後、地方の行政との関係はどうなっているのでしょうか。

○シーロさん
ブラジルは500年の歴史のうち、常に権力者による抑圧・暴力の歴史がありました。最初は先住民に対する抑圧の歴史です。ブラジルにもといた先住民は今は40万人に減っており、それだけ虐殺されたということです。
次にアフリカ大陸からつれられてきた奴隷たちの差別待遇の歴史がありました。ブラジルは一番最後まで奴隷制が残った国です。解放された1850年代以降も、奴隷の人々は教育を受けたり市民として認められるということがなかった。そして彼らが貧困層に貶められていきました。
土地を獲得するというのは常に権力者との戦いです。限られたエリート階層が大資本を所有し権力を持つことに対抗していくという側面があります。

MSTの運動は、20年の歴史の間にたくさんの活動拠点が暴力に苦しめられてきました。殺されたリーダーもいるし、活動拠点が、警察や大土地所有者が雇ったガードマンたちに取り囲まれて圧力を受けるということがたくさんおきました。ブラジルでは大土地所有者が殺し屋を雇うことが普通です。たとえば運動に関わる神父さんの場合は報酬がいくら、普通の市民ならいくらといった報酬の値段表もあります。1996年に起きた大虐殺事件では、エルドラドパラジャアというところで、土地なし農民のところに警官がやってきていきなり発砲し19人が殺されました。
CPTというキリスト教関係の団体が定期的に犯罪的暴力被害により殺された人のデータを定期的に発行しています。
【CPT土地神木教会 http//www.cpt.org 】

地方行政自治体との連携ですが、その地域の公権力がどの方面にあるのかに左右されると思います。たとえばその地域の裁判所の判事などがMSTの運動にあまり同意していない場合、反対している場合は難しいものがあります。それぞれの活動拠点で内部的なオーガナイズの問題もある。しっかりオーガナイズされている団体は地方団体と連携することが可能で、市長さんが都市なし農民の出身だったり関係者だったりする場合。サンタカタリーナ州や、リオグランデ州の市議会議員を送り出している場合もあります。
われわれは地域行政との連携を重視しています。健康、保健衛生、教育、交通手段の問題などに連携していく必要があるからです。


○質問
ブラジルは農産物輸出国であるのに、WTOにおいてインドと共にEUに反対した背景は。
ビア・カンペシーナなどはG22の方向に反対の立場をとっていますが、MSTではWTOの動きにどう対応していますか。

○シーロさん
ブラジルでビア・カンペシーナ運動が主張されていることが反映されています。WTOでブラジルがとった態度はわれわれの活動が実を結んだ結果、先進国だけが利益を得ることのない方向性に引っ張り出す効果があったのではないか。

今回のカンクンでの会議を通して、ブラジル政府にとってもビア・カンペシーナにとっても、アメリカのやり方が明確になったと思われます。アメリカ合衆国がFTAAに対して目論んでいることは、アメリカがWTOにおいて目論んでいることと同じであることがあからさまになりました。
この前のカンクン会議では農業だけでなく商業取引輸出謬について話し合われたが、アメリカやヨーロッパ諸国が目指す新自由主義は、自分たちでなくほかの国々に強いるものだということです。彼らは年間3千億ドルを自国内の農業補助金や輸入品の関税対策に使っています。
もしちゃんとした社会正義が存在すれば、ブラジルはもっとたくさん輸出ができるはずですが、安い価格で一次産品を輸出し工業製品を輸入を受け入れるだけという姿勢を強いられています。


○質問
ルーラ政権とMSTの乖離が今後必定となるでしょうが、ビア・カンペシーナはどのような態度をとるのでしょうか。
農業改革相として入閣しているミゲル・ホセットという人はルーラ政権の中で対立があるのかどうか。

○シーロさん
ブラジルでいま動いていることを理解するのは難しい。ルーラ政権は大統領選挙中、彼が主張した政権の表明はより慎重で適切な表現をおこなってきました。現政権はリベラル党と連携しているが、より多くの票を得るために若干今までの主張を変えてきました。
ルーラ政権発足時、ブラジルの経済は、外国為替は1ドル4レアルと下落していたし、利率が年26パーセントでした。組閣が始まった当時ルーラ政権は単純に左派であり、いまだ人民から賛同を得ているわけではありません。政府内では上院議員も下院議員も反対勢力がほとんどで、労働党は少数与党なので、政権の安定が大切なのです。ゆえに少数与党の主張が通ることは難しく、他党の同意を得ることが必要になるのです。
現政権が進めていく政策は、必ずしも労働者党や市民が望まない政策が進められることがあります。農業省や工業商業省、ブラジル中央銀行の人はより新自由主義的な発想を持っている連立党の人々です。

内閣の中には政権党である労働者党以外の出身の大臣もいれば、労働者党出身の閣僚もいます。ミゲル・ホセットは農地改革省の大臣ですが、労働者党の閣僚たちは社会変革への望みがあります。しかし連立政権の他の新自由主義者たちは変化を望まない。その双方が政府の中でせめぎあっている状況です。われわれは政府を労働者党や市民社会が望むように政府を支えていく必要があります。それは支配階層に立ち向かうことです。われわれはルーラを支持し、彼は大統領に選ばれました。今後、彼の政策が社会変革を実現するように圧力をかけると共に、支えていかねばならないと思います。


○質問
来年ムンバイで行われる世界社会フォーラムにMSTから30人派遣するようですが、参加するにあたり豊富はありますか。

○シーロさん
すでにMST内では来年の世界社会フォーラムにどういう形で参加するか討議しています。州支部ごとに1人、23州で23人。ブラジル国内から最低30人が参加する予定です。すでに世界社会フォーラムの事務局と話し合ったが、MSTはビア・カンペシーナ・ブラジルという形で参加する予定です。
世界社会フォーラムでは、多国籍企業の支配に反対することを主張したい。世界で500の企業が世界の富の50%を得ている現状があり、そういった経済支配や独占に反対していく立場をとるつもりです。多国籍企業の中には、世界の貧しい国々の国内総生産よりも多い富を得ている企業がたくさんあります。そういう現状を、特に土地の問題を通して語っていきたい。
さらにわれわれは、もうひとつのキャンペーンを展開します。「種子を人類の手に」というものです。種子は人類の遺産であり人類のために用いられるべきだというものです。今年の世界社会フォーラムは1万5千人の参加があり、そこでも行いました。さらにほかの国々の参加も求めて、キャンペーンに巻き込んでいきたい。種子を守っていく大切さを主張するために参加を求めたい。それは、遺伝子組み換え作物の種子に反対していく運動でもあります。


○質問
10月4日に三里塚で交流した農民たちとどのようなことを話したのですか。

○シーロさん
昨日三里塚を訪ねて、私は彼らの抵抗の力、続けた年月の長さ、また、この土地に住み続ける信念の強さに驚きました。残った農民たちが有機農業を行い、多種多様な種類の作物を育てていること、都市生活者への啓蒙活動、そしてあの土地に住み続けている力に、また、生産するだけでなく消費者と直接つながって産直運動を行っていることに感動しました。
しかしこういう運動は、支えていく市民社会が必要です。そういう意味で、都市生活者の理解や賛同が必要です。私は彼らを見ていて、ブラジルにおけるダム反対運動を――貯水池を作るために川を堰き止めて広い面積を水没させ、零細農業の土地が追い出されることに対して展開された抵抗運動を思い出しました。
三里塚は、長い運動の歴史の中で多くの人があきらめて農地を手放し、数少ない農家だけが残っている。今後20〜30年を見据えた新しい力が必要ではないか。関わる人を増やす、農民の数をもっと増やす、それを支えていく社会の力の構築が必要であるという感想を持ちました。

「もうひとつの世界は可能だ」という言葉を皆さんに贈りたいと思います。

 

上の2枚は10月3日撮影



“脱WTO”を草の根からつくりだそう!
=市場の暴力から生命とくらしを守る全国実行委員会の結成を呼びかけます=

 生命も自然も文化も、すべてのものに値段表がつけられ、地球上を動きまわる、そんな時代に私たちは生きています。いわゆるグローバリゼーションの時代です。売り物にならないもの、売り物になることを拒否したもの、売り物にしてはいけないものは、消え去るしかありません。

 すべてのものが売り買いされるということは、力のあるものがますます肥え太り、貧しいものはいっそう貧しくなって貧困と飢餓が広がり、本来その地域に住む人々のものであった自然環境も地域資源も文化も、肥え太った強者に吸い上げられることを意味します。人々は絶望し、紛争とテロリズムの温床が生まれます。強者はそこに自分たちの豊かさへの脅威があるとして大量殺戮を繰り返す。アフガニスタン、イラク、そして世界の普通の人々の苦しみと涙の向こうに、グローバリゼーションの構造と仕組みが透けて見えます。

 このグローバリゼーションの暴力を制度的に裏打ちし、より完全なものにするための国際機関であるWTO(世界貿易機関)が2004年末の合意をめざし、新しい交渉を始めています。今年9月にはメキシコのカンクンで交渉の一里塚ともいえる閣僚会議が開かれます。

 ここでは地域固有の風土と歴史が育んできた伝統的農業、家族農業を衰退に追いやり、食の安全性に脅威をもたらす農産物の自由化、いまや地球上の貴重資源となった水を金儲けの手段として資本にゆだね、医療や教育、福祉、公共サービスといった人々のくらしに欠かせない仕組みを企業に明け渡す民営化、エイズをはじめとする伝染病に苦しむアフリカなど途上国の人々に、高価な薬を売りつけるために医薬資本の権益を強化する制度づくりなど、生命とくらしに直接かかわる問題が協議されます。こうした重大な事柄を決定する機関でありながら、WTOはその公開性や運営における民主主義について、NGOや市民団体などから常に疑問が出されています。

 私たちは今年2月、東京で開かれたWTO非公式閣僚会議に向け、さまざまの立場の個人、組織で「WTOは誰のため?東京行動実行委員会」を立ち上げ、運動を展開しました。その行動は個別課題の枠をこえた市民の広がりをつくりだすという一定の成果を上げましたが、WTOに対する運動を地域や職場の現実、そこで起こっているさまざまな課題やそれに対する運動ときちんと結びつけるという面で、大きな課題を残しました。
 日本の「豊かさ」は、WTOが進める自由貿易や途上国への投資によってもたらされているという現実があります。しかしその一方で、もうひとつの現実が地域や職場で進行しています。職場を追われたパート労働者、リストラで働き場がなくなった人たち、増え続けるホームレスの人々、農林漁業の衰退、消滅する山村、埋め立てられる海、削られる里山、自立自助を強いられ自死を選ぶ高齢者、激増する中小零細企業の倒産、次々とシャッターが下りる商店街、中高年男性の自殺、など深刻な現実が山積しています。こうした問題の原因を探っていくと、グローバリゼーションの暴力という共通の根っ子にぶつかります。

 地域や職場で起こっているこれらの問題と向き合うことから、WTOに対する運動を積み上げていくことが、いま私たちに問われていると考えます。地域や職場で集まり、話し合い、そこでの現実や出された意見を交換し、寄せ合い、世界に発信し、世界の反グローバリゼーション、WTOに対する民衆の運動と草の根のレベルでつながり連携していく。そうした積み上げと連携のもとに、強者の経済秩序としてのWTOを乗り越え、弱者が主体的に決定と運営に参加し、生命とくらしを守るための経済と交易の仕組みをつくりあげる。そんな運動をつくりあげようではありませんか。そうした運動を担う全国実行委員会の結成を呼びかけます。さまざまな分野、立場の団体、個人の積極的な参加をお待ちします。

 全国実行委員会の当面の仕事は、全国各地で地域・職場の問題とWTO問題を結びつけて考える大小さまざまな集まりをつくるサポートと相互の交流、情報の内外への発信などを通して、9月のカンクン閣僚会議に向け運動を積み上げていくことです。

 2003年4月吉日 
脱WTO草の根キャンペーン全国実行委員会
<結成呼びかけ人>
秋本陽子(ATTAC Japan)、市村忠文(フォーラム平和・人権・環境)、稲垣豊(ATTAC Japan)、入沢牧子(ストップ遺伝子組み換え汚染種子ネット)、遠藤一郎(全国一般全国協労働組合)、大野和興(農業ジャーナリスト)、久保田裕子(日本有機農業研究会)、榊原裕美(ATTAC Japan)、佐久間智子(「環境・持続社会」研究センター)、田中徹二(ATTAC Japan)、原田俊二(山形・置賜百姓交流会)、堀井修(自治体”農”ネット)、古沢広祐(国学院大学)、中村和夫・喜代(福島・農民)、峯村正文(新潟・農民)、安田節子(食政策センター ビジョン21)、柳川秀夫(地球的課題の実験村・農民)、山浦康明(日本消費者連盟)

◆脱WTO草の根キャンペーン全国実行委員会賛同団体・個人
 (5月24日現在)
【団体】
ATTAC Japan 、アジア連帯講座、アジア農民交流センター(山下惣一)、協同センター・労働情報、自治体"農"ネット(代表堀井修)、全国一般労働組合全国協議会、全国労働組合連絡協議会(全労協)、全日本農民組合連合会、地球的課題の実験村(代表柳川秀夫)、中小労組政策ネットワーク、(株)ななくさの郷(食品加工、代表松田優正)、日本環境法律家連盟(JELF)、日本国際ボランティアセンター(JVC)、日本消費者連盟、日本ネグロス・キャンペーン委員会、ピースネット、ピープルズ・プラン研究所、フォーラム平和・人権・環境(平和フォーラム)
【個人】
秋山宣子、浅井真由美(協同センター・労働情報)、石井恒司(千葉・農業)、飯田美樹(A Seed Japan)、伊藤晃・泰子(菜園「野の扉」)、井野博光(たまごの会)、岡部達彦、小倉利丸(ピープルズ・プラン研究所)、御地合二郎(全日農書記長)、河添誠(レイバーネット日本)、金靖郎(生協職員)、金野正晴(SCATセミナールーム)、近藤康男(株・オルター・トレード・ジャパン)、坂本進一郎(秋田・農民)、壽賀一仁(日本国際ボランティアセンター)、鈴木友治(埼玉・農業)、宗世一(在日韓国民主統一連合)、土松克典(「異議あり!日韓自由貿易協定」キャンペーン)、中島聡、間英輔(全農林新潟県協議会)、橋本明子(茨城・提携米ネットワーク)、橋本久雄(小平市議)、坂喜代子(名古屋ふれあいユニオン委員長)、平野靖識(千葉・農産加工)、枡形俊子(淑徳大学)、吉田収(地球倫理協会・ミズーリ禅センター・東洋大学)、渡辺好造

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       ★茨城でのGM大豆「刈り込み」のトピック★
(以下、転載)

地域、県民、国民、農業関係者、消費者、県、農水省、警察のみなさんへ!

「遺伝子組み換え作物いらない!茨城ネットワーク」
つくば環境と人権のための市民会議  代 表 中島 スミ子
八郷町農業協同組合(JAやさと)  組合長 萩原  久 
日本有機農業研究会(八郷町在住)  理 事 魚住 道郎 
北浦・微生物農法の会        代 表 長島 昌裕 
砂長商店(米穀/水海道市)      代 表 砂長 弘一 
常総生活協同組合          理事長 畠山 智子 
(連絡先:常総生活協同組合/専務理事大石/0297-48-4911)

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7月26日の遺伝子汚染拡大防止措置に至る経緯と
今後の至急の措置対策について

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■日本においてはじめて、とりわけ納豆小粒や青大豆などの在来種を大切に守り代々受け継いで栽培されてきたここ茨城の地において、わたしたちは「モンサント」という多国籍企業が開発した「除草剤耐性の遺伝子組み換え大豆」が谷和原村の一般ほ場においてすでに7月21日前に開花していたことを知りました。

 以後、栽培当事者である「バイオ作物懇話会」(代表/長友勝利氏・宮崎県在住)、土地を貸した地主さん(谷和原村)に、「周辺への交雑がおき在来の種に遺伝子汚染の恐れがあるので、”開花前に刈り取る”とした県などへの報告どおり、すぐに刈り取っていただけるよう」再々にわたってお願いをいたしました。また農水省にも出向き、わたしたちといっしょに栽培者にお願いをしてもらえるよう要請をおこないました。

 しかし、「バイオ作物懇話会」からの返事は、「開花ごろまでにと言った」、最後には「開花前に刈り取るとは約束していない。今年は枝豆まで実験する」という変化を見せました。すでに播種後に県に報告(「情報提供したまで」と言われます)に行った農水省の外郭団体STAFFの理事に至っては、「約束をした覚えはない。私達が言ったことを県が誤解したのだろう」と言う始末でした。

■目の前で開花がはじまり花粉の飛散や虫による媒介がはじまってすでに一週間。
 緊急の措置として図面を含む具体的な「花粉の飛散防止措置」を示してギリギリまでお願いをいたしましたが「飛散防止措置はする必要がない」との返事に至り、農業者を含む私達の構成員がやむなく「緊急避難措置」として刈り取りをいたしました。

 このまま花粉の飛散が続いたときどうなったか考えてみてください。
遺伝子伝搬による種の遺伝子汚染は、いちど汚染されたらその種子から限りなく汚染の連鎖が拡大されていったはず(核分裂とおなじです)。茨城の大豆や納豆は「遺伝子汚染されている可能性がある」として再び社会経済的損失を被ったに違いありません。こうなってからではとりかえしがつかなかったはずです。

 東海村JCO事故ではありませんが、目の前で花粉飛散による交雑が臨界点に達しようとしているとき、そのことを知った人間が身の危険を冒して事故を止めた行為は、本来「功労者」「協力者」とされなければなりません。
 ところが今、警察はその行為者を「犯人」として挙げようとしています。


■農水省は昨年11月、各県ならびにモンサント社に対して、「一般ほ場で栽培される以上、万が一でも周辺の非組み換え大豆との交雑や収穫物の混入といったことが起これば、生産・流通上の混乱を招かないとも限りません。」したがって、「安全性確認後の試験的栽培であっても、栽培にあたっては事前に周辺地域、住民の理解を十分得るとともに、栽培地が属する都道府県の大豆の生産流通担当部局、JA等の関係者に事前に栽培に関する情報提供を行うことが必要であることを周知徹底し」「生産・流通上の混乱を招かないための交雑・混入防止等の措置について十分徹底した頂きますようお願い」する通知を出しています。

 この「事件」をマスコミは「無断で」などと報じていますが、周辺農家や住民はここで遺伝子組み換え大豆が栽培されていることを知らされておらず、県にも栽培者本人が報告にも行っていない、農水省STAFFから情報提供があったのはすでに種を播いた後であったこと、栽培地は農地法にもとづく農業委員会への申請もされていないという「無断」行為を重ねていました。

 わたしたちは、夜討ちをしたわけでもなく、当該「バイオ作物懇話会」の代表と地主へギリギリまでお願いをし続け、「花粉飛散防止措置」をとることへの地主の了解を得、その措置の方法についての選択肢も断った上で刈り取りをおこないました。


 花粉飛散防止の緊急避難措置をした私達の構成員が「犯人」にしたてあげられようとしているとき、今に至って農水省は「すきこんで、土地はビニールシートで覆いをするつもりだったのに」などと言ってきました。彼らは汚染の危険性、社会的・自然的影響を知っているかのような発言です。


■わたしたちは、「26日の執行は地域への汚染の拡大をくい止めた措置である」ことを明らかにするとともに、すでに花粉が飛散しはじめて1週間放置されたことから、農水省はその責任において、直ちに当該土地をビニールで覆い、汚染区域として封鎖した上で、組み換え遺伝子の挙動、周辺の汚染状況の調査、ならびに他感物質(アレロパシー物質)などの植物生態系への調査を至急行うことを求めます。

 水海道警察は、この問題がこうした経緯と社会的な問題を含んでいる以上、私達への捜査ではなく、当該「バイオ作物懇話会」の社会的無断行為、農地法違反行為、農水省の不作為行為を捜査することを求めます。


 なお、わたしたちは、善後策について、バイオ作物懇話会、地主さん、わたしたち、谷和原村、茨城県、全農いばらき、農水省、日本モンサント社が同席して経緯の確認と事後処理についての「協議の場」を設けて頂けるよう農水省にお願いいたしました。農水省がやりにくい場合は、わたしたちから呼びかけて社会的な責任を最後まで全うすることもお伝えしてあります。

2003年7月29日   

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<アタック・ジャパン第2回総会報告>

 2003年4月27日(日)午後4時20分から代々木区民会館集会室にて、会員40名出席の下、アタック・ジャパン(首都圏)の第2回総会が開催され、運営委員会提案の活動報告と新年度の方針、会計決算・予算、規約改正の議案に対し、たくさんの会員から様々な意見が寄せられ、最終的に参加会員総体の賛成を得て、新年度の活動に踏み出すことができました。参加した皆さん、ご苦労様でした。

今回は、議案の紹介よりも、総会で寄せられた会員の意見を中心にまとめてみました。参加できなかった会員の皆さんの意見も、引き続きこのMLなどで寄せてくだされば、議論が深まるかと思います。出された順番に羅列してみました。

・脱WTO実行委員会の今後の予定は?
    Ans→実行委員会が持たれ、5団体で事務局が出来つつある。事務局長は、大野和興さんに。また、事務局アルバイトに長塚さんをアタック有志が財政的に支えることが提案・確認される。呼びかけ文にあるように、日本の抵抗運動の掘り起こし、9月カンクンに向けた短期課題キャンペーン(閣僚会議の議題)、全国キャラバン(アジアからのゲスト含め)が予定される。次回拡大事務局は、5月6日夕方〜神楽坂にて。

・会員に対する読書案内など入門的、初心者向け内容・プログラムの充実を。

・日本国内の地方的ローカルな分析も必要。(市町村合併、地場産業など)。

・自由民権という雑誌があるが、研究者が「グローバル化と自由民権」といった論文を書いている。研究者への働きかけを…。

・機関紙の充実を、単に情報を流すだけでなく、ML見る余裕のない人などへの配慮を。また、2月WTO東京行動の時には、紙のちらしも出なかった。コンピュータ・コミュニケーションに比重を置きすぎている。

・全国アタックをどう創っていくのかが議案に書かれていない。重要ではないか。また、アタック関西の定期的講座もおもしろいものを行っており、内容的な共有化も必要ではないか。

・首都圏でいえば、結成前準備段階で、たくさんの人が集まったのに、今は来ていない。この部分への働きかけを考えるべき。

・ローカル・アタックの提起だが、これと首都圏アタックの関係性など組織的な問題をクリアーにすべき。

・社会フォ−ラムについては、A SEEDの若者が日本ユース社会フォーラムの呼びかけなど始め、小倉さんなどが呼びかけている5月18日のフォーラム相談会もあり、協力すべきだと思うがどうか?

・CTT部会など、どこに広げ、議員への働きかけ、政策展開など戦略が必要。それがない感じだ。

・公共サ−ビス研究会には、いま図書館や老人介護で進行するNGO/NPOへの下請民営化の課題も取り上げて欲しい。

・京都/大阪のアタックは組織として今どうなっているのか。会費は別か?

・トービン税は、その管理は国連機関ということで合意されているのか?問題は、アメリカという猫に誰が鈴を付けられるのか。戦略を明確に。もちろんアメリカの市民とは連帯すべきだが。

・京都/関西はアタック・ジャパンとして一緒にすべきでは?

・社会フォーラムということで、インドに行くことは結構だが、それだけでいいのか?何を持って参加するか明確にすべき。

・アタック・インフォへの参加を旅費まで持つと参加を求められたのに、何故断ったのか。情報を運営委員会が独占しているのではないか。オフィシャルなものは、すぐに公開すべき。そのためにHPやMLを活用すべき。その協力は可能だ。

・アタックの正式名称を表紙などでいつも載せるべきだ。また、「市民のための…」では、トービン税の理念が伝わらない。

・前段フォーラム報告会でピースボートの若い人の発言もあったが、海外に行ってみて、グローバリゼーションのひどさを発見したり、自分が北側に属していることを実感できたということでもあるように、アタックとしても、第三世界の国々に訪問交流するツアーを企画してみたらどうか?また、ただポルトアレグレやムンバイに行くだけでなく、そこに至るプロセス、新自由主義に反対する世界観を日本の中で、どう創っていくのかが大事。

・ニュースタイル・プロジェクトはいい取り組みだった。旗だけは目立つが、それ以外のメッセージをもっと大切に。反戦デモの中では、プラカードやコールで、自分なりに努力してみた。今後も工夫して欲しい。

・九月までWTOの取り組みで忙しいだろうが、平行して社会フォーラムへ何を持って参加するか検討すべき。今までは日本からの発信が中心だったが、今後はアジアレベルの取り組みが必要では。APA(アジア平和連合)では、少なくとも米軍基地を抱える日本・韓国・フィリピンでの合同した取り組みを考えている。

・イラク反戦運動の中で中心を果たしてきたワールド・ピース・ナウは、今後も継続するか否か、いま総括論議があるが、若い彼らも単なる平和運動ということでなく、反グローバリゼーションの価値観を強く持っている。積極的な働きかけをすべきだ。

(ここで、議案書に意見を寄せている田邊さんへのアンサー)
 Ans→アタックジャパンの法人化、NPO化は、今はまだその段階ではなく、今後の課題に。

 Ans→MLの公開は、会員としてのメリットなくなること、MLあらしなど被害の恐れも増えることから、今は現状維持。

 Ans→HPなどへの積極的意見も、運営委員会の体制がそれに応えられていない。今後は会員の意向が反映できるマネージメントを目指したい。ただ、伝言板は、誹謗中傷などで中断するサイトが多く、出来ない。

 Ans→トービン税を規約に盛り込まなかった理由は、反グローバル運動が税導入運動だけに限定できない内容を持っている積極的な視点からだった。また、今後はトービン税部会を公開して開催できるので、その場の活用をお願いしたい。

 Ans→芸術部会の提案も、あまり広げすぎて一年後何も出来なかったという提案では無責任になる。また、会員が自分で出来ることを積極的に取り組むことも大切。

(京都/関西アタックについては、関西からの提言を読み上げ)
 関西としても脱WTOキャンペーンを取り組み、特に 
 @公共サービス民営化問題を、公共性の概念の構築をはかりながら取り組む。
 A各分野での日常的抵抗の組織化を進める。自治体などが出している構造改革特区構想への反対組織化。
 Bアジア・アフリカのダム建設反対運動との連帯。
 Cアタック組織は、アタック−Jに一本化が必要。秋めどに全国の会議を開催する提案。

・関西からの提案のアタック−Jだが、アタック・ジャパンとすべき。格好の問題だが。

・アタックの表記も、大文字のATTACではなく、小文字のattacに統一すべき。小文字の方がマイルド。大文字は攻撃的・軍隊的。

〔その後、会計決算と予算、規約改正案の討論となりましたが、以下の点以外、特に意見もなく賛意を得て採択されました。〕

・規約改正で、会員の運営委員会での確認というのは?

・問題ある場合は、除名規定を明確にすればいいのでは?

 Ans→規約の不備がまだ多く、入会できない場合の規定の明確化と除名の規定は、今後の課題。運営委委員の退任の規定もなく、今回は準運営委員の補充という形で、二年後まで適時増やして行きたい。運営委員に立候補したい方は、受け付けている。その場合例会で随時報告、確認したい。

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東京より愛を込めて。
ウォールデン・ベロー(フォーカス・オン・ザ・グローバル・サウス)

 成田国際空港で出国便を待っていたら、テレビに見慣れた米国通商代表部(USTR)のロバート・ゼーリック代表の姿があった。彼は「他の国が日本の生産加工品のために自らの市場を開放してきた」ように、今回は、日本にもその農業市場を開くよう要求していた。それは東京ミニ閣僚会議の最終記者会見であり、またゼーリック通商代表や彼の仲間であるEUのパスカル・ラミー通商代表、ならびに他の出席者たちの譲歩しない言葉や身振りは、現在、行なわれているWTO農業交渉が問題を抱えていることを示唆していた。

 スチュアート・ハービンソンWTO農業交渉議長によって準備された交渉原案は、議題のトップ案件になった。会議が始まる前から、日本の大島農水相は、5年間で、すべての農産品関税を最低で25〜45%削減するか、または平均で40〜60%削減するという提案を拒絶していた。「貿易を歪曲する」補助金を5年間で60%削減し、そして輸出補助金を9年にわたって段階的に完全に廃止していくという提案に対して、欧州連合(EU)は、日本と同じくハービンソン提案を「片寄っている」と非難した。日本およびEUは同提案に対し、米国を農業交渉の唯一の勝利者にさせるものだとして非難した。

◆ハービンソン提案は発展途上国の問題を回避する
 農産品輸出大国間の争いにおいて発展途上国の問題は見事に消えていった。フォーカス・オン・ザ・グローバル・サウスのアナリスト、アイリーン・クワが指摘するように、ハービンソン提案では、EUと米国の補助金問題がいわゆる「グリーン・ボックス」―直接または間接的に貿易を歪曲する、農業従事者への大規模な直接の支払いなどの免除金リスト―に入れられるではないか、という発展途上国の不安を取り上げていない。

 さらにハービンソン提案では、補助金を受けている先進国の農産物に対して、発展途上国にその補助金に相当する割合で関税を引き上げることを認めるという相殺措置を求めたアルゼンチンとフィリピン(その両国とも東京会議には招かれなかった)の提案は完全に無視された。その代わり、発展途上国には、裕福な農産品輸出国で実施されている補助金とは無関係に、120%を超える関税については40%、20〜40%の関税は33%引き下げることが提案された。
 また提案には、農業発展の様々なレベルや条件による構造的な理由から、発展途上国の農業部門に重要な保護を与える「特別かつ区別された待遇(S&D)」の原則を発展途上国に適用するといった有意義な勧告は記載されていない。

  要するには、ハービンソン提案では、EU、米国、オーストラリア、カナダの独占的競争条件の一部変更が要求されるとともに、発展途上国市場の保護障壁について早期撤廃が求められている。

◆無視された透明性の問題
  ミニ閣僚会議の透明性とその正当性に関する問題が取りざたされているが、会議に出席した22カ国の政府代表がその問題に苛立つことはなかったようである。 それは、おそらく英字新聞がかなり簡潔に報告したことと、NHKが短いニュース・クリップで報じた以外には、ほとんどこの問題が報道されなかったからである。しかしながら、非透明性については、2月14日にATTCジャパン、日本消費者連盟、ならびにその他の市民団体たちが開催した市民集会ではメインテーマであった。集会には様々な部門から約400人が参加し、今後、日本においてもWTO問題で(運動が)組織化できる可能性を示した。

  その他の重大な問題についてもミニ閣僚会議では熱の入らない論議が繰り広げられた。その中には、公衆衛生に関してTRIPS(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)を無効にするドーハ宣言条項(第6項)を弱体化させようという米国の努力について継続的な論争があった。東京会議で、米国は、特許より公衆衛生が優先されるという病気について、その病気の数を厳重に制限するという姿勢を崩すことを拒否した。国境なき医師団(MSF)、アフリカ日本協議会(AJF)、オックスファム・インターナショナルなどのNGOは、東京会議に出席した各政府に対して、クリティカル薬(決定的に重大な薬品)の強制実施権を 「国家的危機あるいは、その他の緊急状態」に限定すべきであるというTRIPS理事会の最新勧告を拒否するようロビー活動を展開した。これらのNGOは、ドーハ宣言では、TRIPSの優先事項を「国家的危機」に限定することについては何も語られていない、と指摘した。

◆台本通りの会議?
 2月15日、こうしたその他の問題点を指摘するために、私たちはミニ閣僚会議を開催した日本の川口外務大臣に直接会う機会があった。彼女は前もってNGO代表と会うことに同意していた。私たちが東京の帝国ホテルの会議室に案内されてから10分後に、外務省の藤崎審議官の携帯電話が鳴り、「スケジュールの多忙」により残念ながら来ることはできないという外相の言葉が伝えられた。私は、川口外相と藤崎審議官は最初からすべての台本を書いていたという印象を強く持った。

 そこで、私たちは問題点を藤崎審議官に伝える羽目になった。彼が適度な真面目さを示したのは、市民社会が持っている関心事に対して日本政府はすぐに対応するのだ、というもう1つの例を記録するためにカメラマンがスナップ写真をとったときである。

  TRIPS問題と会議の非透明性のほかに、私たちは、ニュー・イッシュー、とりわけ投資交渉を推進させようとする日本の主導的な役割について、私たちの懸念を持ち出した。私たちは次のように指摘した。発展途上国は、シアトル閣僚会議以前から意見を変えない日本の姿勢に脅迫されているように感じている。すなわち「内国民待遇と最恵国待遇はWTO協定の基本原則であり、したがって、その原則は今後のWTO投資ルールにも盛り込まれるべきだ。とりわけ、いったん外国企業がある国で設立されると、原則として、その企業はその国の国内企業と同等に扱われるべきである。ほとんど差別的待遇には理論的根拠がないからである」という姿勢である。

 日本は投資に関する自国の立場を執拗に追求してきた。そこで、ジュネーブの消息筋によれば、ドーハ閣僚会議以前に、日本はインドネシア政府に対して、WTOに投資交渉を盛り込ませる日本政府の努力を阻止しようとするインドネシアの試みは、資本をインドネシアに持ち込む日本の投資家の意欲に支障に来たすかもしれない、という警告を発したとされている。

 私たちの話を丁寧に聞いた後、藤崎審議官は次の2つのコメントを言うだけであった。1つは、「ミニ閣僚会議は『非公式会議』である」ことと、もう1つは、その「投資に間する日本の立場は他の国によっても共有されている(支持されている)」ということであった。

◆WTOを隔離させないために
 シドニーのミニ閣僚会議と比較すると、明らかに東京会議は一般の人々から問題点が指摘されるまでには至らなかった。その責任の大半は日本の農民組織のリーダー、とりわけ全国農業協同組合中央会(全中)になければならない。2月15日、土曜の朝、全中によって組織化された、ほとんど高齢の農民2,000人弱の哀れなほど小さいデモは、WTO問題に世論を引き付けるというアプローチが弱いことを示していた。

 まず第一に、日比谷公園でデモの前に行なわれた大集会では15人くらいがスピーチをしたが、TRIPS、非透明性、投資に関する日本政府の立場などその他の問題については誰も取り上げなかった。他の−そして若い−有権者たちに日本の農民の闘争を広げるのではなく、集会主催者はWTO問題を農業に限定することに懸命になっているようであった。日本のWTOは高齢化した農民の問題としてしか取り上げられないのは当たり前だ! 私は壇上に駆け上って、重要なのは、わずか数ブロックしか離れていない帝国ホテルで開かれている会議の「正当性」なのだ、と叫びたかった。しかし、誰も主催者と連絡をとれないようであった。

 第二に、この大集会のテーマは日本政府およびEUに対する日本の農民の支持を示すものであり、そこには小規模農民を守るというレトリックがあった。すなわち、農業とは1つの生活様式であり、環境に有益な効果をもたらすという意味で、農業は工業とは異なるものという情熱的な発言もあった。しかし、政府間の同盟を維持しようとして、日本の農業とEUの農業は根本的に違うということは語られなかった。日本は農業輸出国ではなく、農民たちが単に生き残ろうとして、他の社会と有機的なつながりを維持しようとしているにすぎない。EUは大規模な農業輸出国であり、彼らの生産した補助金による産品は発展途上国の小規模農民たちを破滅に追いやっている。日本農民の本当の利益は、大規模なEUの農業従事者やブリュッセルの農業技術者とではなく、ダンピングに反対する共同戦線で発展途上国の小規模農民たちと連帯することである。

◆結末
  確かに他の市民団体もデモに参加したが、集会主催者は、彼らをカメラから離れた、デモの最後の方に追いやった。とにかく、午後1時までに、デモ参加者たちは、他の21カ国の政府に対し、日本の農民と日本政府は1つであることを伝えるという全中と日本政府の目的を果たすことができた。彼らは政府を困らせていなかった。日本政府がすでに疑わしい立場を取っていた投資などの問題には、集会では誰も言及しなかった。彼らはすでに、NGOが都合の悪い事件を引き起こすことはないことを確認した。

 デモは突然終了し、デモ参加者のほとんどは、地方まで送るために待機していた暖められたバスの中に急いだ。ある参加者は「これは力の誇示ではない」として、「彼らは主催者から来るように言われたから、やってきたのだ。多分、昨年は彼らの隣人がデモにやってきていて、今年は、彼らが参加する番だったのだ」と語っていた。

 私は、市民の不服従をはじめとして戦闘的な行動を考えながら東京にやってきた!

 とにかく、いいニュースは、農業がWTOのアキレス腱になり得るかも知れないということである。3月31日の期限までに農業交渉が合意に至らない場合は、工業関税、ニュー・イシュー、 サービス、そしてTRIPSなどの他の分野での交渉が白紙に戻されるであろう。9月中旬にメキシコ・カンクンで開催される第5回閣僚会議の前に合意形成に向けた動きがないとしたら、とWTOのスパチャイ・パニチャパクディ事務局長は大きな不安を抱いている。あまりにも多くの点で合意が欠落している「角括弧でくくられたテキスト」は、残念ながらシアトルの大失敗をもたらした一因となったことをWTO官僚たちは十分によく知っている。

 よくないニュースは、2002年11月にシドニーで開催されたミニ閣僚会議では、反対する大規模な抗議によって「正当性」をいくらか取り去ることができたが、東京会議に反対する抗議が相対的になかったことで再び違法な会議へと戻してしまったことである。

 スポットライトは、3月中旬に次のミニ閣僚会議が予定されるニュー・デリーに移った。インドの市民社会は、私たちには、カンクーンへの前段階においてもう1つの東京を差し出す(東京会議を再現させる)余裕がないことを悟らなくてはならない。

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◆◇2月WTO非公式閣僚会議(東京)にむけて◆◇
「WTOは誰のため? 東京行動」賛同のお願い

 WTO(世界貿易機関)問題や地球規模の南北問題に関心を寄せられているみなさん。この2月にWTOが東京にやってきます。15日、16日の2日間、非公式閣僚会議が開かれますが、中心議題は3月に関税削減などのモダリティ(大枠)を決定しなければならない農業協定問題と言われています。

 自由貿易を推進するための国際機関がWTOですが、その意思決定システムの民主的手続きと透明性に関して途上国や市民社会から批判が強まっています。1999年米国シアトルでの閣僚会議失敗の大きな原因は、WTO事務局長――おおむね米欧日など主要先進国側の意向を受けている――を軸に少数の国々で非公式にものごとを進めていこうとする「グリーンルーム(事務局長の部屋の色)方式」に対して途上国側が強く反発したためでした。今また、非公式会議ということで、恣意的に選ばれたわずか20数ヶ国による会合によって、加盟145ヶ国全体に影響を及ぼす課題の合意を図ろうとしています。会議には議事録もなく、選ばれなかった加盟国には内容も知らされませんし、NGOやプレスも締め出されます。いわばグリーンルーム方式の海外版といえます。このようなやり方は、1国1票制というWTOの合意形成システムに反することではないでしょうか。

 WTO交渉は、水、環境、農業、食料、タネ(種子)、クスリ(医薬品)等々、私たちの「命とくらし」に直結する課題をことごとく網羅しており、ここで決まったことが国の政策に大きな影響を及ぼします。

 農業のいっそうの自由化は、今や穀物自給が27%という事態にまで落ちこんだ日本農業の衰退に拍車をかけ、食料主権は風前の灯となっています。また、水道・廃棄物処理・医療・教育など公共サービスの部門が、「サービス貿易の自由化」によって営利化・民営化されようとしています。すでに途上国では様々な公共サービスが、北側の多国籍企業によって経営され、貧しい人々が社会的サービスを享受できず、大きな社会問題となっています。

 このようにWTOは各国の国内政策を決めるものでありながら、大多数の国やNGO・市民社会を置き去りにして交渉を行っています。その典型が非公式閣僚会議なのです。こうした事態に憂慮し、憤る私たちは、「WTOは誰のため?東京行動」実行委員会を立ち上げ、"命やくらしは売り物ではない!"をスローガンにアクションを起こしていくことにしま
した。多くの皆様の賛同を呼びかけます。

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