JALからの回答と、それに対する反論

請願書 ver.1 2001年4月に対して、JALから以下のメールが送られてきました。JALでこの件を担当なさっている方、ご丁寧なお返事ありがとうございます。ただし、この問題に関しては、JAL側の事実認識と現地の状況との間に、大きな落差が見られます。その点を、以下簡単にまとめてみました(の箇所をご覧下さい)。なお、現地からのリポートについては、情報がまとまり次第、更新していく予定ですので、引き続きこのページにご注目いただけると幸いです。


JALからの返信メール

いつもJALホームページならびに日本航空をご利用いただきありがとうございます。

この度、ご指摘いただきました、このハワイのリゾート開発計画は、弊社の孫会社がライルアンダーソン社と共同で設立した会社が実施しており、新聞の見出しにございますような、一部工事中止命令は、この会社に対して出されたものでございます。(◆1

 記事にありますように、台風時の土砂流出や、先住民の遺跡を誤って破壊してしまったことにつきましては事実でございます(◆2)。土砂流出時も工事を一時中断し、行政側に相談、必要な補完工事を行なった上で再開しております(◆3)。

 遺跡破壊を指摘されている部分につきましては、直ちに工事を中止し、行政側に届け出た後、行政側の指導に基づき、必要な措置を施し、工事を再開しており、今後も指示に従って行く所存でございます。工事地区の遺跡につきましては、充分に調査の上、細心の注意を払って工事を実施しておりますが、今回、誤って損害を与えてしまいましたことは、大変申し訳なく思っております。(◆4
ただ、本計画は、1992年に現地の事務所を開設して以来、開発を開始するまでの7年間かけまして、説明会や開発用地の見学会(約2000名の住民が参加)等を通じて、地域住民の方々のご理解を得るための努力を続けるとともに、開発申請の手続きにあたって、常日頃より地域住民、ハワイ州政府およびハワイ郡当局のご要望を踏まえて進めてきたと聞いております(◆5)。

 以上のような活動を通じて、地域への貢献、環境に最大限の配慮を行う開発姿勢が、住民の皆様並びに地元の行政当局に、十分なご理解を得られました結果、公聴会に於ける大多数の住民の方のご賛同を得て、必要な許認可をいただけたものと考えております(◆6)。

 全般的な計画につきましては変更の予定はございませんが、今後も反対派や先住民の方々との話し合いを誠意を持って対応し、ご理解を求めてまいりたいと考えております。

JAL WEBMASTER
webmaster@jal.co.jp


JALへの反論

>  この度、ご指摘いただきました、このハワイのリゾート開発計画は、
> 弊社の孫会社がライルアンダーソン社と共同で設立した会社が
> 実施しており、新聞の見出しにございますような、一部工事中止
> 命令は、この会社に対して出されたものでございます。

◆1:いま問題となっている現地開発会社(1250オーシャンサイドパートナーズ)を設立したのは、JALの孫会社といっても、100%JAL資本の現地法人ですし、役員は全員JAL本社の役員です。しかもJALは、オーシャンサイドの最大出資会社でもあります。  埋葬地破壊違反に対する名目上の工事停止命令は、確かにこのオーシャンサイドに対して出されていますが、実質上はJALに対して出されたとも言えるでしょう。

>  記事にありますように、台風時の土砂流出や、先住民の遺跡を
> 誤って破壊してしまったことにつきましては事実でございます。

◆2:朝日の記事にもありましたが、JALは「数十年来に一度という規模の台風に襲われたため、土砂流出が起きた」と主張しています。けれど、そのような大規模な台風や熱帯性暴風雨が襲来したという事実はありません。
 工事現場から1マイル離れたところにある国立気象サービス(日本の気象庁にあたる)の雨量計データによれば、9月8ー9日当時の24時間で降った雨は、わずか0.4インチと報告されています。また同様に大雨が降ったとされる11月1ー3日での72時間に降った雨量は2.57インチで、これもコナ地域では別に大雨とされるものでもありません。しかも工事現場は、国立気象サービス雨量計の下方に位置しているので、実際の工事現場の雨量はこ の半分と考えられるのです。
 さらに、JALは、10年に1度の大雨に相当する1時間に最大1.75インチの雨にも耐えるような土壌侵食防止策を行ったと主張しています。しかし、前述のようにわずかな雨で土壌流出を起してしまったことは、この工事がいかに不適切にされているかを、如実に物語っています。
 しかも、9月の土壌流出の後、政府の指導でさらなる土壌侵食防止工事をおこなったことになっているのに、またまた11月の雨で同様な土壌流出事件を起しているのです。
 以上の事実から、土砂流出の原因を自然災害のように主張するとしたら、明らかな事実歪曲といわざるをえません。
 なお、海に流出した大量の土砂と除草剤は、ゴルフ場建設のために持ち込 まれたものであることを、指摘しておきたいと思います。

> 土砂流出時も工事を一時中断し、行政側に相談、必要な補完工事
> を行なった上で再開しております。

◆3:工事が中止になったのは、昨年9月と11月の二回にわたって起きた土砂流出について住民側が提訴し、それを受けて裁判所が工事停止命令を出したのが原因です。しかも、それ以来、海岸線の生態系は致命的な打撃を受け、特にサンゴと魚介類への被害は顕著で、ここで漁業を営んできたハワイ人たちの生活はたいへん逼迫されているのです (土砂流出によるサンゴへの影響--公式調査報告ページ参照)。

>  遺跡破壊を指摘されている部分につきましては、直ちに工事を
> 中止し、行政側に届け出た後、行政側の指導に基づき、必要な
> 措置を施し、工事を再開しており、今後も指示に従って行く所存で
> ございます。
>  工事地区の遺跡につきましては、充分に調査の上、細心の注意
> を払って工事を実施 しておりますが、今回、誤って損害を与えて
> しまいましたことは、大変申し訳なく思っております。

◆4:この会社は、事前にはきわめて杜撰な遺跡調査しかおこなわず、また遺跡発見後もあいまいな対応をとり続けてきました。先住ハワイ人の遺跡はとても粗末に扱われ、ブルドーザーで潰された遺骨が幾日も雨ざらしにされたり、遺骨がビニール袋に入れて何カ月も納屋に保管されたり、遺族が何の報告も受けなかったりというような状況が続いたのです。  もちろん、問題は行政側にもあり、この会社に対して適切な処置と指導をしなかったことが、裁判で明らかになっています。つまり、業者と行政の癒着が見られるのです。裁判では、業者から担当役人に金品が渡された事実も、証拠として提出されています。  なお、裁判では、事前に調査された数をはるかに上回る遺跡が存在することが、明らかになっています。このことからは、工事完成を急ぐあまり、大幅な計画変更を恐れた業者が、遺跡が存在している事実を故意に揉み消した疑いが非常に高いといわざるをえません。  もし、遺跡破壊について本当に申し訳なく思う気持ちがJAL側にあるのなら、なぜJALの代表が現地に赴いて、地元の遺族たちに直接謝罪しないのでしょうか。

>   ただ、本計画は、1992年に現地の事務所を開設して以来、開発
> を開始するまでの7年間かけまして、説明会や開発用地の見学会
> (約2000名の住民が参加)等を通じて、地域住民の方々のご理解を
> 得るための努力を続けるとともに、開発申請の手続きにあたって、
> 常日頃より地域住民、ハワイ州政府およびハワイ郡当局のご要望
> を踏まえて進めてきたと聞いております。

◆5:地元では計画当初から反対の声があがっていて、1993年の反対請願書には住民住民の過半数が署名しています。また、最近まで工事が凍結されていた理由は、住民から起された裁判と、グローバルアンタイゴルフムーブメントが展開した、国際JALボイコット運動のためでした。このことからも、この計画に反対している住民がたくさんいることは明らかです。
 なお、1994年と1996年の2回にわたって、地元住民代表がJAL本社を訪れて計画中止を求めていますが、いずれも会見を拒否されています。

>  以上のような活動を通じて、地域への貢献、環境に最大限の配慮
> を行う開発姿勢が、住民の皆様並びに地元の行政当局に、十分な
> ご理解を得られました結果、公聴会に於ける大多数の住民の方の
> ご賛同を得て、必要な許認可をいただけたものと考えております。

◆6:地元ハワイ人社会は、この工事を容認する側と反対する側に二分され、家族崩壊にまでいたって、険悪で深刻な状況に陥っています。従業員や反対派に対する脅しや強迫もひどく、先週の金曜日(13日)には反対派の家が放火されて全焼する事件も起きています。
 また、遺跡破壊などの文化遺産破壊だけではなく、環境破壊も深刻です。特に海岸線の破壊は大きな問題で、近隣のさんごは死滅しつつあります。例えば、工事では除草剤を使わないという約束があったのにも関わらず、州政府の調査ではランドアップという強力な除草剤が海から検出されており、それらが多量に撒かれたことが明らかになっています。

【まとめ】
 このJALのゴルフリゾートは、そもそも計画段階から大きな無理があり、大きな問題をはらんでいました。しかも、工事は事前の約束を破り、法律違反の連続です。そして、関連会社で働く従業員は、脅しと口止めされたうえ、週わずか250ー300ドルという最低賃金で働かされているのです。祖先が眠る墓を壊し、工事を続けなくてはならない現地ハワイ人労働者の気持ちは、いったいどんなものでしょうか。JAL幹部のみなさんは、どうか少しでも思いを馳せていただきたいと思います。


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最終更新 2001/05/02