第5号  2004年5月23日

 

移民労働者たちのメーデー

みなさん

 お元気ですか?
 東京は月曜日の午後ですね。こちらは日曜日の夜です。
4月30日に第4号を発信してから、3週間ちょっとご無沙汰しておりました。

 5月初めに弟が遊びにきたり(はじめてレンターカーを借りて、あちこちドライブし、少し遊びました)、5月14日にはレイバーセンターで日本の非正規労働者と地域ユニオンの取り組みなどについて報告することになり、その準備にかかりっきりでした。


  弟とドライブしたサンタモニカの海岸

 さらに先週は、メールが受信できても発信できない状態に陥り、修復に時間を費やしてしまいました(修復に消耗したあげくに結局、OSX付属のMailからOfficeのEntourageに乗り換えました)。どうも、持参したマック(Power BookG4,1G,12inc,OS10.3.3)は不調で、調子が悪いとアプリケーションが突然終了したりして、うまくありません。どなたか、マック愛用者で、アドバイスがありましたら、教えてください。レイバーセンターのパソコンはDellのWindowsマシンですが日本語の読み書きができるようになり、メールを読み書きできるように設定しました。ということで、いずれがトラブってもメールができる体制になりました。

 3週間余の間に、たいしたことをやっている訳ではありませんが、ちょっと長文になりましたので、興味のないところは飛ばして読んでください。

今回のテーマは以下の2つです。
1.移民労働者たちのメーデー
2.レイバーセンターではじめてのプレゼンテーション

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1.移民労働者たちのメーデー

 5月1日に、「今こそ合法化を、移民バッシングをやめろ!」をスローガンに、移民労働者たちのメーデーが取り組まれた。


  移民労働者たちのメーデー。シュワルツネッカー知事所有のビル前で抗議集会

 主催はMulti-Ethnic Immigrant Worker Organizing Network [MIWON、多民族移民労働者組織化ネットワーク、構成組織は、ロサンゼルス優しい移民の権利のための連合(CHIRLA)、被服労働者センター(GWC)、フィリピン労働者センター(PWC)、コリアン移民労働者支援団体(KIWA)(団体名は仮訳)]、12時にダウンタウンレイバーセンター前のマッカーサー・パークに結集。ラテン系、アジア系を中心に様々な労働者たちが、所属組織ごとに赤や青のTシャツを着て集まった。団体名やスローガンを記載した横断幕や様々なプラカードがたくさんあるけれど、旗が全くないのが日本のメーデーと大違い。

 出発前に集会を開き、約500名が10台のバスに分乗してのキャラバン行動に出発。バスの中では、若い2人の女性が英語とスペイン語で、1886年にシカゴの労働者たちが8時間労働制を要求して立ち上がったことを出発点に、国際的な労働者連帯の日としてアメリカを除く全世界でメーデーが闘われていることや、行き先々での要求事項と意義を話す。

 最初の行き先は、ロサンゼルス西部、UCLAのそばにある連邦政府庁舎。要求は、<今こそ移民労働者の合法化を!ブッシュが提案している『Guest Worker』制度(短期限定の外国人労働者導入)反対!公正な入管制度改革を!移民バッシングをやめろ!移民の強制退去をやめろ!戦争NO!占領NO!教育・医療・社会福祉のカット反対!>。大型トラックの荷台をステージに、大型PAをのせて、各団体からあいさつを受ける。集会はすべてスペイン語と英語のバイリンガル。

 続いて、バスでサンタモニカの海岸近くへ向かう。サンタモニカは海辺を中心とした観光地。バスの中で紙のお皿が配られ、これに一人ひとりがシュワルツネッカー知事への要求を書き込む。観光客向けのお店が並ぶストリートの一角にある知事の所有するビル(その中に彼のレストランもある)の前での集会。サンタモニカ市警の許可を取って、ビルの前の道路半分を確保。要求は、<すべてのカリフォルニア住民のための知事になれ!運転免許証を与えろ(非合法移民は、州法で運転免許証をとれない)、移民向けプログラム(健康保険・医療・社会福祉)をターゲットにした予算カットNO!>。トラックの荷台のステージに大きなレストランのメニュー(その内容は社会福祉や医療予算)を並べて、シェフ役がメニューの説明をし、集会参加者がお客さんになって、これが食べたいとか声を上げる。バスの中で要求を書いた紙皿をプラカードのかわりに掲げる。お店がコースメニューを廃止するとみんなで抗議する・・・これがわかりやすくおもしろかった。

 次は、コリアンタウンの中心地でバスを降りて、デモ行進。許可条件は歩道を歩くことのようで、車道にはみ出さないようにロス市警のパトカーが規制をしている。歩道側の車線は駐車車両が多いので、結局、二車線目をパトカーが何台も走り、そのお陰で道路は大渋滞。本当の緊急車両が身動きとれずに困っているのに、警察は何もしない。本末転倒。これには驚いた。デモの終点が、「アッシーマーケット」の前。警察の許可を取って4車線の道路を完全に閉鎖して、抗議集会。お店の反対側にも出入り口があるが、合法的に「営業妨害」。約30名のUCLAの学生たちが黒のおそろいのTシャツで現れる。熱気のこもった集会が延々続く。

 アッシーマーケットの争議については第2号で触れたように、韓国人経営の大きなスーパーで、 KIWAがそこで働くラテン系労働者を組織化し、Immigrant Workers Unionという独立組合を結成したが、組合承認選挙で過半数をとれず敗北。その後、経営側は、2002年8月1日に、ソーシャルセキュリティナンバー が合わないこと(多くの資格外就労労働者なので当然に社会保障番号はなく、当該労働者たちが経営者に申告していた番号は違っていた)を理由に、56名の 労働者を解雇し、現在に至るまで、復職と組合承認を求めて闘いが継続している。


  移民労働者たちのメーデー。アッシーマーケット前抗議集会

 こうして、半日の行動を終えた。まず参加してみて思い浮かべたのが、東京でやってきた「生活と権利のための外国人労働者の1日行動」や東京外語前での集会。英語とスペイン語のシュプレヒコールは東京でもなじみのコール。ここでの発言はすべてが完璧なバイリンガルで、通訳体制は徹底していた。それから、長時間の行動でどうするのかなと思っていたのがトイレ。これは、集会のステージとなったトラックに移動式トイレを乗せて運んでいた。バスの中は、バイリンガルの関係資料、飲料水、食料が完備されていて、担当の2名の女性がバイリンガルで説明し、参加者が迷ったり、バスに乗り遅れたりしないように参加者のチェックをしていた。とにかく準備と体制はしっかりしているなあと実感。実行委員のメンバーのほとんどが20代から30代の若手で(これまで参加した労働組合や宗教者の集会だと40代から50代が多い)、それも女性の方が多数だった。


2.レイバーセンターではじめてのプレゼンテーション

 5月14日、ダウンタウン・レイバーセンターで、「日本の非正規労働者の組織化と地域ユニオンの役割」というテーマで、ランチセミナーを開催してもらった。

 連れ合いの青野恵美子が制作にかかわったビデオ「未来をひらく女たち パート・派遣の現場から」(英語版 企画:均等アクション2003、制作:ビデオ塾)の上映、青野が英語でビデオの解説をし、私から30分ほど、なんと英語で「日本の非正規労働者の組織化と地域ユニオンの役割」というテーマでプレゼンテーションを行い、議論した。

ちょうど、ビデオ塾のメンバーでこのビデオの制作に参加した若井真木子さん(完璧なバイリンガル)がロサンゼルスに来ていたので、資料やプレゼン原稿の英文チェックをしてもらい、当日、複雑な話の時は通訳をしてもらったのでなんとかなったが、準備は大変だった。

 SEIU(全米サービス従業員労組)やワーカーズ・センター(前述したメーデーの主催団体。日本の地域ユニオン似ていて、ユニークな活動をしている。後日詳しく報告したい)やレイバーセンターのスタッフ、運動にかかわっている日系人やロス在住の日本人が参加してくれた。

 議論になっておもしろかったのは、やはり、日本の労働組合法。ある職場で一人でも労働者を組織すれば使用者との団交権が発生する点だ。50%+1名を組織しないと団交権のないアメリカで苦労している彼らから見ると魅力的かつ不思議な法律だ。彼らの関心は日本の地域ユニオンがやっている組織化の方法に集中した。どうやって組織化をやっているかについて説明したが、ロサンゼルスで目にしているような大規模な(数千人から数万人単位の)組織化に成功していない日本の状況を考えると恥ずかしくなってしまった。
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 さて、シュワルツネッカー知事は、7月からの新年度予算において教育・医療・社会福祉・労働予算のカット、とりわけカリフォルニア大学レイバーセンター(ロサンゼルス、バークレー)の予算の75%カットを提案しており、レイバーセンター存亡の危機を迎えています。次号は、レイバーセンター特集の予定です。次の週末は三連休になるので、そこで書こうと思っています。

ではまた

高須裕彦

From: Hirohiko Takasu <h_takasu@jca.apc.org>
Date: Sun, 23 May 2004 22:51:55 -0700