[最終号]第15号  2004年10月31日

 

様々なところを訪ね、いろんな人びとに出会いました

おはようございます。

 ロス通信も最終号になりました。今夜、10時の飛行機でロサンゼルスを離れてニューヨーク向かいます。明日朝6時の到着です。広いアメリカは夜行の飛行機が飛んでいます。12日間滞在し、11月12日ニューヨークを発ち、日本へ帰国します。

 7ヶ月のロサンゼルス滞在、長い長いと思っていましたが、あっという間に過ぎてしまいました。ここ数日、片づけや資料整理、荷物の発送、お世話になった人たちへのあいさつ、そしてニューヨーク行きの準備などであわただしく過ごしていました。

 イラクでの香田さんの遺体発見の件、いまちょうどテレビのニュースでやっています。連日イラクで人びと(アメリカ軍を含めて)が殺されていく報道がなされていますが、いったいアメリカ人たちは何を考えているのだろう、前回ブッシュが当選しなければ少なくともイラク戦争はなかっただろうに、と思います。今回の大統領選の行方もまったく見えません。みなさんご承知の通り不正選挙の情報は流れていますが、多くのアメリカ人は知らない(知ろうともしない)ようです。接戦の上、4年前と同様に大混乱するのでしょう。アメリカこそ、国連の選挙監視団が必要な気がします。

さて、最終号の内容は以下のとおりです。

 高須裕彦

1.様々なところを訪ね、いろんな人びとに出会いました
2.ダウンタウンレイバーセンターで報告会兼送別会を開催しました
3.ホテル労働者の闘いが続いています
4.長かった夏も終わり、冬が到来したようです
5.おわりに


 
  在宅介護労働者のデモ

1.様々なところを訪ね、いろんな人びとに出会いました

7ヶ月間を振り返ると、様々なことがありました。その一部は、このメール通信にも詳しく書いてきました。本当にいろんな人たちと出会いました。

ロサンゼルスはあらゆる人種、民族が住んでいます。多様さのすごさ、ものすごさの中で、様々な人びとが必死に生きています。

多様さは巨大な格差や差別的な分離と共存しています。ビジネス地域の高層ビル群、ビバリーヒルズの豪邸街やハリウッドとサウスセントラルの荒れ果てた街並みはわずかな距離で併存していて、決して交わることはありません。

ロサンゼルスの巨大な縫製衣服産業は重層的な下請け構造を形成していて、10万人の移民労働者たちが劣悪な労働条件で働いています。UNITEに組織されているのは1000人だけと言いますから、大変な実態です。黒人労働者を中心とする失業の問題も深刻です。巨大な貧富の格差、階級格差はロス暴動のように暴力の爆発として現れたり、犯罪の多発として現れ、人種・階級の分離が進み、荒れ果てていくわけです。

それを何とかしようと、コミュニティの様々な運動、労働組合運動、労働者センター運動などがあって、取り組みが進められています。私たちはそのほんの一端だけを見てきました。

しかし、どこまで見ることができたのか? 人や風景は見てきたけれども、どこまで理解することができたのか? わかったような顔をしてアメリカ労働運動や社会の解説などしたくありません。いろんなところに顔を出し、見学し、話を聞いてきたけれど、所詮旅人の分際でどこまで理解できたのか、自分に問うているところです。

2.ダウンタウンレイバーセンターで報告会兼送別会を開催しました

10月28日、ダウンタウンレイバーセンターで私たちの調査報告会兼送別会を開催してくれました。青野のビデオ上映(Peace Not War After 911 in NY)と解説、ロスで撮った100枚ほどのスライド上映、二人からの調査して発見したこと(前号のメールで書いたこと)、今後日本でやりたいことなどを報告しました。

20名余の方がご出席されて、熱心に聞いてくれました。プレゼントなどもいただいて、本当に送別会になってしまいました。みんなに、いつ帰ってくるのと聞かれて、困っちゃいました。本当にいろんな人たちに会い、いろんなことを教えていただき、お世話になったなあ、と思いました。また、ケント・ウォンさんをはじめ、レイバーセンターのスタッフのみなさんには本当にお世話になったなあと感謝の念でいっぱいです。彼らのお陰で、本当にいろんな人に会えました。ケント・ウォンさんに会いたいと来られた日本人のみなさんにも出会えました。

3.ホテル労働者の闘いが続いています

 このロス通信でも繰り返しご報告しましたが、UNITE-HEREのホテル労働者たちの闘いが続いています。

 9月29日、サンフランシスコのUNITE-HEREローカル2に加盟するホテル労働者たち2千名が、2週間のストライキに突入しました。経営側は対抗して、ストに入っていない職場の組合員2千名をロックアウトしました。ストの終了した10月13日、経営側は引き続きこれら組合員4千名のロックアウトを決定し、現在まで続いています。

 ロサンゼルスでは、双方がいつでもストライキ、ロックアウトに入れる体制を整えたままにらみ合いが続いています。組合側は、大々的に呼びかけて、ロスの9つのホテルのボイコットを呼びかけています。サンフランシスコも同様ですから、争議中のホテルにはくれぐれも宿泊されないよう日本のみなさんのご協力をお願いします。 ケント・ウォンさん(レイバーセンター所長)はアジア系コミュニティを代表して、これらのホテルのボイコットを訴える記者会見をやりました。ここでも、労働運動の一部として活動しているレイバーセンターのユニークな役割を見ました。

 「私たちは決してピケットラインを越えない」と言うのが支援者たちの合い言葉になっています。

 闘いの最新情報はwww.hotelworkersunited.orgをご覧下さい。

4.長かった夏も終わり、冬が到来したようです

 こちらは6ヵ月半ぶり(4月1日以来はじめて。私たちにとっては2度目の雨。日本のことを考えると驚くべきことですが)に10月17日から4日間も雨が降り、あちこちで洪水やがけ崩れなどの被害がでました。今週も夜、激しい雨が降りました。冬場はこんな天候が時々続くそうです。気温も最高気温が20度を下回り始めました。ロッキー山脈のほうは、雪が降りスキー場がオープンをはじめました。夏から一気に冬への移り変わりです。4月の終わりからずっと夏のようでしたから、季節は変わったなあと言う感じです。

 テレビでこちらの被害報道と一緒に日本の台風のことや地震のことをやっていて驚きました。最初はどこのことだと。

 4日間の雨の翌日、街は澄み切っていました。ゲッティーセンターというUCLA近くの高台にある美術館へ行ってきました。太平洋、カタリナ島、LA全体が見渡せて、とってもきれいでした。雨が汚れを洗い流した感じです。地元の人が今日は空気がきれいだと騒いでいました。


5.おわりに

 季節の移り変わりと共に、私たちの滞在も終わりに近づきました。いろんな人たちの顔が浮かび、ロサンゼルス中に忘れ物をしてきたような気がします。でも、本拠は日本ですから、顔の見えるネットワークを大切にしながら、日本での運動にどう関わっていくか、困難な局面にある日本の労働運動を少しでも立て直していくにはどうしたらいいのか、そのために労働教育のあり方をどう変えていったらいいのか、みなさんんと一緒に議論しながら考え、行動に移していきたいと思います。

 ぜひ、一緒に議論したく思いますので、ご協力をお願い致します。

 明日から12日間のニューヨーク旅行です。3月に来日されたオイスターバーのUNITE-HEREローカル100をはじめ、組合関係や大学を回ってきます。大統領選の投票も見てきます。「ニューヨークから」が出せる余力がありましたら、また送ります。

 帰国報告会は、12月11日(土)13:30―/法政大学市ヶ谷校舎で予定しています。詳しくはまたご案内しますが、ぜひ、ご参加下さい。

 帰国後、みなさんに再会できる日を楽しみにしています。

 では、お元気で


高須裕彦
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ニューヨーク滞在中もメールで連絡がつく予定です。なにかありましたらメールでご連絡下さい。
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 ロス通信のバックナンバーは、以下のAPWSLのホームページから見られます。こちらは写真付きです。 http://www.jca.apc.org/apwsljp/

 労働情報へも引き続き連載を続けていますのでご覧下さい。http://www.rodojoho.org/10月1日号 サンフランシスコからーUCバークレイレイバーセンター10月15日号 労働運動と社会変革のための民衆教育11月1日号 労働組合と映像制作(あおのえみこ)11月15日号 ホテル労働者の闘い

 大原社研雑誌8月号に労働史家・労働教育者のジェームスグリーンの自伝についての書評を書きました。また、7月号には昨年11月の来日時のケントウォンさんの講演が掲載されています。いずれも以下のホームページからダウンロードできます。http://oohara.mt.tama.hosei.ac.jp/