AAWLのアレックス・マカラムさんとの交流会

新労働法と闘う豪労働組合

アレックスさんがトヨタ東京本社前で連帯の挨拶(9/15)

 

APWSLの参加組織AAWL(オーストラリア・アジア連帯会議)に加盟するオーストラリア電気工組合書記次長のアレックス・マカラムさんが9月休暇で来日し、9/13にAPWSL日本委員会と交流し、9/14に東京労働安全センターを訪れ、9.15にトヨタ本社前行動に参加した。日本委員会(関東)との交流会の報告を掲載します。

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日時:2006/9/13PM7:00〜9:00 会場:東京清掃労組一組本庁支部組合室
参加者:アレックス・マカラム(文中“A”で表記)、河津竜司、高幣真公、持橋多聞、山崎精一(通訳兼)

オーストラリア電気工組合(ETU)

私(アレックス・マカラム Alex McCalum、53歳)は、オーストラリア電気工組合(ETU)の南部州支部書記次長(専従)を11年間続けている。メルボルンの専従は50人いる。組合員は18,000人。ビクトリア州支部はAAWL(豪アジア労働者連帯会議)に加盟している。ETUの上部組合が情報・電気・配管関連産業労組協議会(CEPU)という産業別労働組合(18万人)である。郵便、コミュニケーション(電話)、配管工などを含んでいる。情報と電気関係なので、電気関係はIMF(国際金属労連)に加盟している。私は2002年IMFの会議に参加するため初めて日本に来た。

ETUは電気工の職能別組合だが、さまざまな産業の電気工を組織している。トヨタ自動車にも組合員がいて、会社側の組合もあり、会社はETUを敵視している。いろいろ問題を起す組合と看られている。フォード、GM,三菱自動車の工場にも組合員がいる。ETUは活動的で戦闘的で、他の組合から強い組合だと評価されている。

私は昨年12月香港WTO抗議行動に組合代表として参加し、興味深い体験をし、いろいろな国の運動、農民運動などを見て視野が広がった。棍棒を振り回すなどいろいろな抗議方法も見た。韓国のチャン・チャンウォンさん(APWSL共同議長、神父)の写真が香港の新聞のトップページに載っていた。

アレックス・マカラムさん

日本委員会との交流 東京清掃組合事務所で(9/13)
持橋(左手前)、山崎(左中央)、河津(左奥)、アレックス(右)

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今年改悪されたオーストラリアの労働法

今年労働法の大改悪が実施された。100年以上保障されてきた産業別の労働協約が廃止されて、ほとんど労働に関する規制がない状態になった。アメリカのひどい州以下の状態がもたらされた。その例の一つは、ある民間の清掃トラックの運転手100人の職場(組合員は1人だけ)で会社に奉仕する「愛の労働」という名の週8時間の無給の残業が強制された。

もう1つの例は、西オーストラリア州の建設産業で安全問題について4時間のストライキを行った107人の労働者が起訴されて裁判になり、1人当り28,000ドルから50,000ドル(1オーストラリアドル=100円)の罰金の判決が出された。それは刑事罰である。刑事裁判にもかかわらず弁護士がつけられず、秘密裁判であった。嘘の証言をすれば、直ちに6ヶ月の懲役刑に処せられる。それは労働法だけではなく市民法一般も改悪された結果だ。ビクトリア州の田舎でのその特別秘密法廷は労働事件専門の法廷であった。弁護士はその法廷に参加したが、発言できず傍聴できたのみだ。

かつてオーストラリアは労働者の天国といわれ、100年前から伝統が残っていた。私の組合の小さな電気器具を作る会社で、南アフリカの経営者に変わり労働者に敵対的になった。組合は1週間にわたって全員が残業拒否を闘った。会社側は残業代だけでなく、40時間の働いた分を含めて一切の賃金の支払いをストップした。組合が労働法廷に提訴したが、判決は新しい労働法の下では経営者の不払いを合法だと判決した。 

昔の労働法のページ数は少なかったが、今はたいへん分厚い本になった。労働組合を嫌う経営者が夢としてやりたかったことがすべて労働法に盛り込まれたからだ。新しい労働法の下ではほとんどすべてのストライキが非合法になってしまった。

労働者がやり込められている話ばかりをしたが、逆に組合員の怒りが高まって、組合への結集が強まっている。組合への弾圧が強まっているが、弾圧を跳ね除けてさまざまな創意工夫をした闘いが広がっている。そして、逆に経営者の中にもこんな法律ではやっていけないという声が高まっている。とくにわれわれの産業では小企業が多いので、このままでは従業員との関係が悪くなるのでやっていけないと言う経営者が増えてきている。

また、労働法は労働者を規制しているだけではなく経営者も規制しているので、労働監督官は現場を見て新しい労働法に基づいて労働者にきつく当たっていない経営者に罰金を課し、ひどい所では経営者に対して懲役刑まで課している。

山崎さんが来た昨年10月と今のオーストラリアはまったく違った世界になっている。労働法が改悪されようとしていた以前は、多くの労働組合員は政府が何をやろうとしているのか分からず国民党に投票した。この労働法の大改悪を見て、やっと目覚めた。政府がやろうとしていることに阻止しなければならないという政治的自覚が広がった。先週のクイーンズランド州の選挙で労働党が地すべり的な大勝を果たした。今やジョン・ハワード首相は労使関係に神経を尖らせている。

ETUのジャンパーに付けられたストライキで闘った鉱山労働組合の旗
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