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[フランス農民同盟]ジョゼ・ボベさん来日 10・27〜11・1

地球は売り物じゃない―WTOに異議あり

希望をグローバル化するために
 闘いをグローバル化させよう!

 昨年8月、「米国の食の象徴」マクドナルドの店舗を壊し、遺伝子組み換え作物(GMO)反対のデモンストレーションとして農業化学企業の広大な畑のトウモロコシを次々と引き抜いた、フランス農民同盟の指導者ジョゼ・ボベさんが10月末、来日した。5日間で全国6地域をまわるハードなスケジュールの中、各会場は超満員、全国総計で2000人を超える人びとが、ボベさんの話に耳を傾けた。小紙掲載は東京講演の要旨。【文責は編集部・大島正裕】

 日本の農業の状況というのは、世界中でみられる状況とほとんど同じだと思います。地球上の至るところで同じ帰結がもたらされていますが、これは同じ原因、論理によるものです。日本の農業が経験していることは、かつて私たちが経験したことでもあり、南米、アフリカの農民が経験している状況と同じです。
 この論理は、農民たちをそこから追い出すロジックであり、食品の質を悪化させるロジックであり、環境を悪化させるロジックです。こうした帰結をもたらす原因は、今日のWTO(世界貿易機関)体制にほかなりません。
 今日、WTOがおこなっていることは、農民による農業を破壊して、多国籍企業のアグリビジネスに道を開こうとする選択です。これは各国が自らの農業で生きつづけることを阻害することにほかなりません。WTOは、その必要がないにもかかわらず、それぞれの国が食糧を輸入しなければならないような状況に追い込もうとしています。グローバルプライスを設けて食糧の輸入を強制することで莫大な利益を得るのは、ひとにぎりの食糧輸出国と多国籍企業だけです。さまざまな国に関税障壁を低くすることを強制し、自国の農業を支えることを禁止しています。
 この論理は1986年、GATT(関税貿易一般協定)ウルグアイラウンドの枠組の中で決定されました。WTO設立とともに加速されたこのプロセスにより、ダンピング価格で生産される食料を輸入させられる各国の農業生産が破壊されるという、非常にカタストロフィックな結果をもたらすわけです。そして、その被害者は、たんに農民だけではなくて、消費者も、そして環境も被害を受けます。
 ただし最初に被害を受けるのは自らの土地を手放さなくてはならなくなり、収入を破壊される農民です。収入を保証したり収入にフォローを与えることは、WTOのルールによって禁止されています。しかし一部の国々、米国や欧州においては、環境に対する援助だと称し、実は補助金が支給されていて、ダンピング価格での他国への輸出が可能になっているわけです。このような不公平なシステムは当然認めることはできません。
 とくに米国は昨年、農業補助金を70%増額した一方で他の国々に対して、農業補助金を減額せよ、関税障壁をなくせ、と強硬に主張しています。米国の究極的な目的は、この地球に対する帝国主義的な支配にほかなりません。また米国がおこなう食料援助も、食糧輸出の偽装されたかたちにほかなりません。
 今日、明らかなことは、こうしたシステムを変えなければならないということです。さもないと、農民たちは消滅してしまいます。そして「食糧主権」という考え方、つまり自国の生産物によって自国の人びとを養うという権利、これはすべての民族にとって失うことはできないということも明らかです。そして、その権利をWTO体制が阻害しているのです。これは許し難いことだと思います。
 今日においても世界の労働人口の約50%は農民です。WTOの政策は、この農民の大部分を消滅させるのみならず、この地球という星の均衡にとって自殺的な政策です。中国がWTOに加盟しましたが、これにより二億五千万人もの農民が離農しなければならなりません。
 私の、農民として、そして農民組合員としての結論は、WTOは農業分野から出ていかなければならないということです。私たちは今日、それぞれの政府を相手にして闘わなければなりませんが、市民が、WTOの諸問題に関して発言権を持っていないことは非常にスキャンダラスなことです。このWTOという極めて非民主的な組織が、地球の未来を、農民の未来を、そして市民の未来を決定づけてしまうということは、受け容れ難いことだと思います。
 農民を襲うこの運命は、他のカテゴリーの人びとをも襲っています。たとえば賃労働者。社会的なダンピング構造のなかで、「正規」の賃労働者は解雇され、そのかわりに、未組織の弱い立場の労働者が雇用される。規制緩和という論理によって、これまで構築してきたさまざまな社会的保障システムのすべてを破壊・解体し、弱者をさらに弱くするということを、WTOはめざしているのです。
 WTOの政策というものはいったい誰のための政策なのかということを、あらためて問わなければなりません。世界中でいま、ますます多くの人びとが立ちあがって、この支配の論理、商業化の論理に立ち向かっています。こうした流れに抵抗することは、もはやたんなる選択の問題ではなく、義務の問題になっています。今日、脅かされているのは、たんに社会的な均衡ではありません。それどころか、水や大気、土壌といった人類の資産そのものが脅かされているのです。
 そして今日、おそらく一種の最終段階として脅かされているのは、生物多様性の問題です。今日、南米やアジアでは、木材への投機的な買い付けのために森林が脅かされています。それによって数多くの動物種、植物種の存続が脅かされています。
 そういう状況のなかでWTOは今日、生物多様性をいわば特許化することで人質にとってしまうという、あまりにも皮肉な末期的政策をおこないつつあります。その実行者は巨大な製薬、化学メーカーであり、彼らによって人間のゲノムまでもが特許化、私物化されようとしているのです。 

GMOを葬る非暴力の闘い

 特許化され私有化されたものを農業分野では遺伝子組み換え作物(以下、GMO)と呼んでいます。多国籍企業の数社が世界中のすべての種子産業を牛耳ろうとしているのです。このことはつまり、多国籍企業の農民に対するホールドアップだというふうに言うことができます。特許があるがために農民はもはや、自分の畑で収穫した種子をろくに撒くことができない。それを撒いてしまうと、特許侵害だとみなされるからです。すでに米国やカナダでは、500人以上の農民がモンサント社によって訴えられています。
 私たちは、非常に根本的な闘いに直面しています。農民にとっての根本的な自立というものは、自分の畑で収穫した物を再び撒けるということではないでしょうか。そればかりではありません。こうしたGMOは、健康にとって、そして環境にとって、大きな危険を及ぼしつつあります。多国籍企業は、世界中で飢餓をなくすためとか、環境改善に役立つからGMOを作るんだと言っていますが、それとはまったく逆の事態が引き起こされています。さらに、この遺伝子組み換え農業というのは、他の農業の共生を許さない全体主義的な農業であるといえると思います。
 したがってGMOに関しては、最大限の透明性を求めなければなりません。そして、国家に対して、その作物なり製品がどこでどういうふうに作られているのかを確認する追跡可能な手続きを求めることが必要です。それから、消費者に対して、遺伝子組み換え作物を使っているのか、いないのかに関する明快な表示が必要です。さらに、この作物の実験が、屋外でおこなわれることもやめさせなければなりません。
 私たちは、こうした闘いを欧州でおこなっています。それは、かなりの成果をあげました。99年にはGMOのモラトリアムを求める政策がとら、そして1ヵ月前、新たなGMOを市場に流通させることを禁止した措置がとられました。こうしたことは、農民たちが立ちあがったことによって可能になったわけです。
 こうした闘いのなかで、時に私たちは、違法とされる行為も確かにおこないました。理不尽な法規に対して、私たちは、農民の権利、消費者の権利、環境の権利というものを主張しなければならないのです。確かに、収監されてしまうというリスクもありますが、それを恐れてこの闘いをやめてしまうということはできません。仲間の一人が収監されたとしても、より多くの仲間たちが立ちあがって、闘いが続けられるのです。
 そうした努力のおかげで、欧州においては80%の人びとが遺伝子組み換え作物に反対の意見を表明しています。これは非常に勇気づけられる結果です。なぜなら、食をめぐって、農民と、消費者と、一般の市民が、互いに手をとりあって共闘できるということを意味するからです。
 私は日本のみなさんに、遺伝子組み換えイネに対して闘ってほしいと思っています。この闘いは日本のみならず世界中的な重要課題です。そしてもうひとつ、不服従の勧めもさせていただきます。闘うといっても、私たちに武器はありません。私たちは弱者の武器である「非暴力」を用いて闘わなければなりません。
 私たちが決然とした態度で臨むならば、さまざまな闘いを結び合わせることができるでしょう。そうすることによって、農民と市民の連帯、和解が成立するのであって、そして食糧を絆にして、私たちは、文化と、自然との間の調和を再び勝ちとることができると確信しております。
 最期に、私は「農民の道」という国際的な農民の組織にも所属しております。そのスローガンをご紹介します。
 「希望をグローバル化するために、闘いをグローバル化しよう」
 ありがとうございました。


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