2006年度総会議案書(抜粋)

2006.8.26

2005年度劣化ウラン研究会活動報告
05年8月〜06年8月

1, 概観

 劣化ウラン研究会は、1999年に設立され第一回総会が2000年8月18日に、第二回が2001年8月19日に、第三回の総会が2003年5月17日に、第四回の総会が04年5月29日に第5回の総会は2005年8月27日に開かれました。
 「劣化ウラン研究会」も8年目を迎えたいま、ウラニウム兵器廃絶の運動は世界各地にその活動範囲を広げていますが、それにつれて廃絶への道程は、むしろ具体化に向けては厳しさを増しているとさえ言えます。
 99年に劣化ウラン研究会が設立された頃は、主に91年の湾岸戦争で使われた劣化ウラン弾の影響などについてが話題の中心でした。その後95年のボスニア・ヘルツェゴビナ、99年のコソボ紛争で使われた劣化ウランの影響が徐々に明らかになり、そして21世紀になってから、2001年10月8日から現在に至るアフガニスタン攻撃、2003年3月20日から現在に至るイラク攻撃と、米英軍主導の戦場では必ずといっていいほどウラニウム兵器が使われてきました。
 この間、「劣化ウラン」という言葉は、イラク攻撃反対や米国の占領反対のアピールと共に世界中を駆けめぐりました。「戦争・占領反対」と「劣化ウラン反対」この言葉が同列で語られるようになったことは、一方で私たちの訴えが世に広まりつつあることを意味しますが、もう一方ではそれだけ大きな影響を与えてきたことが、世界中で認識されるようになってしまったことも意味します。
 一方、使う側の米軍は、これに対して今まで以上に情報の秘匿を強めました。  91年湾岸戦争で使われた劣化ウランについては、比較的オープンに「320トン」という数字を明らかにし、議論の余地はあるにしてもイラク・クウェートで使われた劣化ウランの総量は300トンあまりという水準を基底量とすることは世界の人々の共通認識だと思います。
 ボスニア・コソボも合わせて約10トンという数値は、米軍情報を元にNATO軍が公表した数値で、これもまた、多くの調査研究や支援などの際の基底量となっています。
 ところが、2001年9月11日のニューヨークで発生した事件の後、様子は大きく変わっていきました。
 10月8日から始まったアフガニスタンへの攻撃、2003年3月に始まったイラク攻撃後は、軍は一切劣化ウランの使用地域も使用量も使用兵器も語らなくなりました。
 それが、今日の劣化ウラン被害を推定したり、汚染調査や汚染除去を極めて困難にしています。

2,「劣化ウラン」という言葉について

 さて、「劣化ウラン」という言葉が実態にそぐわないのではないかという指摘があります。「劣化」という言葉があたかも安全上問題が少ないかのような印象を与えているからです。もちろん、「劣化」ウランであっても重金属毒性に関しては濃縮、天然と何ら変わるものではないし、放射性毒性についても天然ウランの6割相当の量の放射線が出ているのですから、放射線防護学的にはほとんど変わりはありません。
 実際に放射性物質からの被曝に関する法令上の規制も「劣化」ウランは天然ウランと何ら違いはないのです。しかし一部の専門家も含め「劣化」という言葉に着目し、環境や健康への影響は少ないかのような論調が見られます。
 2004年には原子力推進の宣伝をもっぱら行っている「原子力文化振興財団」(略称;原文振)が、「プレスレリーズNo.111」で「劣化ウランの危険性はほとんどない」かのような文書を、特に報道関係者に向けて790部も配布していることが明らかとなりました。
 劣化ウラン研究会も参加をしている「劣化ウラン兵器禁止・市民ネットワーク」は、この文書の問題点を追及し、公開討論会を開くよう求める公開質問書を送りました。回答はあったものの、その内容は依然としてプレスレリーズの誤りを認めようとしないものであり、さらに私たちとの「話し合いは一方的に打ち切る」と通告してきました。
 しかし原子力文化振興財団はその後、自身のホームページに掲載されていたプレスレリーズNo.111を削除しました。これは、市民ネットワークなどからの抗議によるものであると思われます。

3.「劣化」ではないウラン汚染

 劣化ウラン兵器に、「非劣化ウラン、回収ウランが使われている」という事態が新たな問題として明らかになっています。
 カナダのNGOであるUMRC(ウラニウム・メディカル・リサーチセンター)のアサフ・ドゥラコビッチ氏がアフガニスタンの人々を調査したところ、組成が劣化ウランのものではなく天然ウランに極めて近いものが見つかったというのです。このことが何を意味するのかは、現時点では解答がありません。
 また、ウラニウム236という、天然にはほとんど存在しないウランを含む劣化ウランも見つかっています。これは既にUNEPの2001年コソボ調査で確認され、UMRCのアフガニスタン調査でも見つかっています。核燃料再処理工場で処理されたウランにのみ見られるものですから、天然ウランよりもさらに汚染度の高い再処理工場からの回収ウランが使われていたことを立証しています。
 プルトニウムをも含む回収ウランの混入は、ウラニウム兵器の危険性を増すことになり、このようなウランも兵器転用していたことに憤りを感じます。

4. イラク攻撃以後

 2003年からのイラク攻撃では、これまで見られなかったことが起きています。一つは、ほぼリアルタイムといえる形で米英軍の劣化ウラン弾の使用が確認されました。日本からイラクに向かった市民の調査団は、劣化ウラン弾で破壊された戦車や建物を確認し、大量のウラニウム汚染が軍事基地以外にも広がっていることを突き止めました。これらに対する有効な対策はいまのところありません。
 米英軍が自ら汚染除去作業を行わないばかりか、暫定占領当局や暫定政権、政権移譲後の政権そして国連機関による現地調査や汚染除去作業さえ、ほとんど行われていません。
 JIM−NETをはじめとする日本や欧米のNGOや現地ボランティアスタッフによる医療支援活動などが行われています。
 イラク全土にわたるウラニウム汚染調査や広範囲の汚染除去作業などは、カジャック・バルタニアンさんが代表を勤めるNGO「グリーンランド・イラク」が環境調査を開始していますが、まだはじまったばかりというのが実態です。
 それでも、私たちは「イラクの子どもたちとなかよくする会」などを通じて、少しでもイラクの子どもたちとつながっていく必要があります。

5. 市民の取り組み

5-1 国内 劣化ウラン禁止・市民ネットワーク

 日本国内でも、北は北海道から南は沖縄まで、各地で劣化ウラン禁止、廃絶を目指す市民の取り組みが数多く行われています。一つ一つ紹介することができませんが、その活動量は急速に増えてきていることをお伝えします。
 その中で、劣化ウラン研究会も基幹団体として参加をしているものに、「劣化ウラン禁止・市民ネットワーク」(NO DU!市民ネット)があります。
 これまで各人が独自に各集会や外務省交渉あるいは映像表現などで劣化ウランの危険性を訴えてきた個人や団体が、劣化ウラン禁止を求める活動を集中的に行おうという目的で集まりました。
 「市民ネット」は2004年3月に結成集会を持ち、その後毎年、劣化ウランの廃絶を求める集会を開いています。また、外務省や防衛庁との交渉も数次にわたり取り組み、国会議員への働きかけ、それを通じての国会質問なども取り組んできました。
 ウラニウム兵器の禁止に向けた国内、国際的な活動に取り組むと共に、イラクへの医療支援もJIM−NETなどと共に積極的に取り組んでいます。劣化ウラン研究会も、この会の活動や、その他に日本各地の劣化ウラン廃絶の取り組みを続けている市民団体に協力していくことを、会員の皆さんに呼びかけます。

5-2 国内 ウラン兵器禁止を求める国際共同行動デー

 2004年11月6日「戦争と武力紛争による環境収奪を防止する国際デー」(2001年11月6日に国連総会で決議)に、広島、大阪、神戸、福岡などで劣化ウラン廃絶の取り組みが開催されました。(東京では11月7日)
 この行動はウラン兵器禁止を求める国際連合(ICBUW)の呼びかけに応えて、世界の運動と連帯することをめざして開かれました。
 翌2005年には、「ウラン兵器禁止を求める国際共同行動デー/2005」企画としてイラク帰還兵ジェラルド・マシューさん夫妻が来日し、日本各地で開催された同行動に参加され、自らの体験を語りました。
 東京では11月6日に「劣化ウラン禁止・市民ネットワーク」が主催して「劣化ウラン兵器禁止を求める国際行動デー集会」として開催されました。

5-3 国際 ICBUWの設立と活動

 劣化ウラン兵器を禁止し、廃絶をめざす運動は、世界に広がり続けています。
 その中心となる団体の一つは、「ウラン兵器禁止を求める国際連合」ICBUWです。2003年5月にベルギーのベルラールで開かれた国際会議において設立が決定され、現在は世界各地で活動中です。
 このICBUWも含め、本年5月に国連本部内においてワークショップが開催され、大勢の市民が集まりました。
 2005年11月9日にはジュネーヴで「ウラン兵器禁止に向けたワークショップ」が開催され、日本からはICBUW評議員の振津かつみさんが参加をしました。

5-4 国際 ICBUW第三回ヒロシマ総会

 被爆地広島で8月3日から6日にかけて第三回総会が開催され、世界各国からおよそ250名が参加をしました。3日間にわたる膨大な報告、討論を経て、6日にはヒロシマ・アピールが採択されました。
 アピールでは、ウランの化学的、放射線毒性の危険性を明らかにすることを科学者に求め、世界の報道人にはウラニウム兵器の問題を取り上げ、廃絶に向けた世論喚起を求めています。また、恒久的禁止を実現するためにあらゆる法的手段を駆使する決意を明らかにすると共に、軍事利用の全面禁止、禁止条約の締結、被害者への補償、情報公開に取り組むことを宣言しています。
参考までに、以下に3日〜5日の間のセッションにおける「目的」の項目を原文通り掲載します。
8月3日:第一日 全体会議オープニング
国際キャンペーンの展開 ベルラールからヒロシマまで/ヒロシマから世界へ
 2003年10月に発足したICBUW(ウラン兵器禁止を求める国際連合)の今まで活動を紹介し、「禁止条約」実現を目指す国際キャンペーンの意義、課題などを明らかにする。さらに、国会で禁止法案の成立が目指されているベルギーでの活動を踏まえて、「ヒロシマ大会」において検討されるべき問題・課題を確認する。

第一日第1セッション 被害セッション―1/イラク
 1991年の湾岸戦争において、アメリカ側の公式発表でも300トン以上の劣化ウラン弾が投下されたイラク南部では、ガンや白血病、先天性障害などの憂慮すべき増加が報告されている。2003年のイラク戦争においては、湾岸戦争を上回る量の劣化ウラン兵器が、都市部も含めて使用されたと推定され、今後、より一層深刻な被害が危惧される。長年、劣化ウランによる人体への影響や環境汚染を直視してきたイラクの医師・科学者たちの報告に耳を傾ける。

第一日第2セッション 被害セッション―2/アメリカ
 アメリカ内部にも、劣化ウラン被害者は生み出されている。湾岸戦争やイラク戦争でイラクに赴いた兵士たち、さらには、劣化ウラン兵器工場や射爆場周辺の汚染に苦しむ住民たちである。帰還兵、市民活動家たちが、アメリカ内部で引き起こされてきている劣化ウラン被害、そして、アメリカ政府や軍の劣化ウラン問題に対する公式見解がはらむ欺瞞を明らかにする。

8月4日:第二日 全体会議
第3セッション 科学―1
 劣化ウランは放射性毒性と化学毒性を持つことが知られている。劣化ウランが兵器として利用された際に生じる微細粒子による体内被曝と環境汚染が、人々の健康と生態系にどのような危険をもたらすのかについて様々な専門分野からの報告を受け討論を行う。そしてウラン兵器の禁止が緊急の課題であることの科学的根拠を明らかにしたい。また、劣化ウランの健康・環境影響評価をめぐる科学的論争の争点についても検討する。

第二日第4セッション 被害-3/ヨーロッパ
 ヨーロッパにおいても、劣化ウラン兵器は、「湾岸戦争症候群」のみならず、「バルカン症候群」の原因として問題になってきている。バルカン戦争で攻撃を受けたコソボなどの地域住民および帰還兵の間にガンなどの重い病気・健康障害が発生しているのである。特に、イタリアでは、裁判や国会の場において、「劣化ウランは危険ではない」と主張してきた政府や軍の責任が厳しく問われている。日本ではあまり報じられない、ヨーロッパ内部の劣化ウラン被害の隠された実態に光りをあてる。

第二日第5セッション キャンペーン-1/アジア太平洋:韓国、日本、オーストラリア
 劣化ウラン問題に関する、アジア太平洋地域各国における様々な活動や国際キャンペーンへの取り組みを報告する。アジア・太平洋地域における劣化ウラン兵器問題は、アメリカ軍基地の問題と直結した、地域共通の問題である。アメリカ軍の基地や演習場が数多く存在する韓国、日本、オーストラリアにとり、劣化ウラン兵器問題は、“遠い戦場”の問題でなく、私たち自身の戦争への関与の責任が問われる、焦眉の問題であることが明らかとなろう。

8月5日:第三日 分科会
特別セッション「ヒバクシャとの交流/特に“内部ヒバク“をめぐって
 イラク戦争開始直前から、イラクの医師たちは、日本に、そして、とりわけ広島にはるばるやって来て、劣化ウラン兵器によると思われる被害を訴えてきている。それは、イラクの人々が、劣化ウラン問題を、広い意味での「放射能ヒバク」の問題と捉えているからにほかならない。最近の「原爆被害者訴訟」においても一つの焦点となりつつある“内部ヒバク”を接点として、原爆ヒバクシャと劣化ウランヒバクシャの交流・連帯を目指す。

第三日第6セッション キャンペーン-2/禁止条約実現に向けての戦略
 劣化ウラン兵器問題をめぐる各国での様々な取り組み、および直面している問題を確認し、禁止条約実現に向けての具体的方策を検討する。日本各地から、そして世界各地から集まった活動家・専門家相互の間のネットワークを強め、国際キャンペーンのさらなる前進を目指す。

第三日第7セッション 科学-2/科学的問題をめぐる討議
 ウラン兵器の人々の健康や環境・生態系への影響評価は、科学的にまだ議論の尽くされていない課題も多い。今後、その影響をより明らかにするために科学者としてどのような研究・調査や議論が求められているのか、ウラン兵器禁止運動の前進と被害者支援のために科学者として何をなすべきかについて討論する。またICBUWの国際キャンペーンを支援する科学者の国際的なネットワーク作りをめざす。

第三日第8セッション キャンペーン-3/被害者支援に向けて
 ウラン兵器禁止の運動と結んで被害者支援をどのように進めてゆくか検討する。ウラン兵器の被害地域で緊急に求められている支援について、イラクへの医薬品・医療機器提供、医師の医療研修、・技術者研修など医療支援に取り組むNGOの報告を受け議論する。健康被害を明らかにしようとバスラの医師らが開始した疫学調査への支援、人体の劣化ウラン汚染を明らかにしようと呼びかけられている「歯のプロジェクト」への協力などについても話し合う。そして健康調査と補償を求めて闘っている各国の帰還兵への支援と連帯の課題についても議論する。


活動経過報告

A.2005年度の総会を2005年8月27日に開催しました。

B.企画講演会等は、2006年5月13日(土)午後1時半より、たんぽぽ舎会議室において河野益近さん(京都大学原子核工学専攻)による「劣化ウランの基礎の基礎」という講演会を行いました。

C.定例会を原則毎月第二火曜日に固定し、12回開催いたしました。(臨時会を除く)

D.劣化ウラン研究会として参加をした各種行動
2005年11月 6日「劣化ウラン兵器禁止を求める国際行動デー集会」
2006年 7月17日「劣化ウラン兵器禁止・市民ネットワーク学習会」
2006年 7月21日「外務省・防衛庁交渉」
2006年 8月3〜6日「劣化ウラン(DU)兵器禁止を訴える国際大会」

E.印刷物は以下のものを発行しました。
「ニュースレターNo.14」2005年12月
「ニュースレターNo.15」2006年 2月
「ニュースレターNo.16」2006年 3月

F.劣化ウラン研究会として出した声明・賛同など
声明はありませんでした。賛同は下記の通り
2006年5月 ICBUW(ウラン兵器禁止を求める国際連合)広島大会への賛同
2006年1月 青森県六ヶ所村の再処理工場アクティブ試験反対ー青森県知事宛て要望書への賛同
2005年4月「日本からの緊急アピール/劣化ウラン兵器禁止と被害者支援を求めて」
(5月4日:国連で開催されたワークショップへの賛同)

G.劣化ウラン被害告発ドキュメントビデオの翻訳出版を行いました。
 「ポイズン・ダスト−米軍による劣化ウラン汚染」というビデオ・DVDの日本語ダイジェスト版を出版しました。



2006年度劣化ウラン研究会活動方針

 1991年の湾岸戦争で劣化ウラン弾が初めて使われてから16年が経過しようとしています。
 放射性物質は時間をかけて人々を傷つけます。また当時生まれてさえいなかった子どもたちも残留しているウランの影響を受け、健康を破壊されていきます。生まれる前から既に先天性の疾患という形で命を奪われるのです。
 各地の劣化ウラン被害は、これまで知られていなかったものも含めて、顕著になりつつあり、健康被害対策や環境対策はますます急がれるのですが、イラクの混乱は収まる気配もないまま16年目が過ぎていきます。
 劣化ウランを取り上げる報道、ドキュメンタリーは日本でも海外でも数多く作られるようになってきました。ニュースや論文も増えています。しかし一方で「劣化ウラン弾」が、兵器の一般名称として周知されつつある現状は、やはり異常事態です。これは悲しむべきことなのです。
 このような世界情勢の中で、何もしないことは劣化ウラン被害拡大に荷担していると同じことになります。劣化ウラン兵器の廃絶を実現するためにも、劣化ウランの危険性をいち早く世に問うた当会の活動は、さらに重要となっております。

 以上の状況を踏まえて、次のように活動を提案します。

1,定例会の開催
原則として毎月、定例会を開催し、事務的な作業の確認と実行の他、各人の持ってく る情報交換をおこないます。場所と時間は原則、以下の通り。
期日:毎月第2火曜日
場所:たんぽぽ舎(東京都千代田区三崎町2−6−2,ダイナミックビル5F)

2,他団体との協力
劣化ウラン兵器禁止・市民ネットワークの基幹団体として参加を継続し、今後の学習会開催、国や地方議会への働きかけ、節目での集会等へ積極的に参加をしていきます。また、当会の目的を遂行するために有用な団体との協力・連携をおこないます。

3,イベントの開催
劣化ウラン廃絶に関連する活動を行っている内外の人々を招待した講演会等を、関連団体との共催などを行って積極的に開催します。さらに、外務省交渉など国の機関や国際組織への働きかけもおこないます。

4,劣化ウラン廃絶国際会議などへの参加
劣化ウラン兵器禁止・廃絶への取り組みは、イラク攻撃の現実を前に、国際的な広がりを見せていますので、ICBUWなどの取り組みにも、重要活動項目として、積極的に関わっていきます。

5,ニュースレター発行
ニュースレターは当会の公式機関誌で、会員への最大の情報伝達手段であると同時に、非会員へ配布できる最も重要な文書です。このニュースレターには、活動のために必要な情報を掲載し、原則として年間4回の発行します。

6,インターネットの活用
電子メールによる会員相互の情報交換に使っている「劣化ウラン研究会メーリングリスト」の運用継続をいたします。また、開設中の「劣化ウラン研究会ウェブサイト」をさらに充実して、会員の活動を支援すると共に、広報活動にも利用します。

7,パンフレットの作成などのメディアへの対応
劣化ウラン弾に関するマンガ、パンフレットがいくつも制作され、報道や特集番組も組まれるようになっています。当会としてもパンフレット等を発行すると共に、他の団体や個人、出版社などへの協力支援も行います。

8,会員の拡大
当会の活動を発展させ劣化ウラン兵器の廃絶をめざすためには、会員の拡大と個々の会員の積極的な取り組みが不可欠で、無理なく活動を続けるために、財政面、活動面双方を支える会員の拡充をめざします。


【資料編】

<劣化ウラン関連意見書>

これまでに都道府県市町村で既に採択された意見書の一覧です。他の自治体で、ご存じの方がいらっしゃいましたらご連絡をいただけると幸いです。

自治体採択日備考
町田市(東京都)15.12.25 
熊本市(熊本県)16.3.26全会一致で可決
高知県16.3.18全会一致で可決
三郷市(埼玉県)16.3.22全会一致で可決
尾道市(広島県)16.3.23全会一致で可決
旭川市(北海道)16.3.24提出者は15名(無所属4、民主党6、共産党3、社民党2)
武蔵野市(東京都)16.3.26 
小金井市(東京都)16.3.26賛成19、反対0、棄権4(自民党1、公明党3)
東久留米市(東京都)16.3.26全会一致で可決
調布市(東京都)16.3 
石川県16.6.22全会一致で可決
立川市(東京都)16.6.18イラク攻撃前の3月にも提出されましたが、意見不一致。「戦後」処理の項目を加え、6月議会において、全会一致で可決
向日市(京都府)16.6.23 
金沢市(石川県)16.9.17賛成多数で可決
富山県16.9.27全会一致で可決
茅ヶ崎市(神奈川県)16.9.28 
文京区(東京都)16.10.14 
栗東市(滋賀県)17.3.24全会派賛同提出。全会一致で可決
守山市(滋賀県)17.3.24全会派一致で可決
草津市(滋賀県)17.3.25全会派共同提案。全会一致で可決
野洲市(滋賀県)17.6.29全会一致で可決

参考までに、一番直近の富山県と野洲市の意見書を掲載します。


《富山県》

議員提出議案第17号
劣化ウラン兵器の使用禁止を求める意見書
 上記の議案を別紙のとおり会議規則第14条の規定により提案理由を付け提出します。

   平成16年9月27日

富山県議会議長  上 田 信 雅 殿

提出者 富山県議会議員
北  島  秀一郎 
高  平  公  嗣
江  西  甚  昇
米  原     蕃
山  本     修
湊  谷  道  夫
横  山  真  人
山  辺  美  嗣
中  川  忠  昭
島  田     一
山  上  正  隆
火  爪  弘  子

平成16年9月27日

提 出 先
 衆議院議長
 参議院議長
 内閣総理大臣 あて
 外務大臣
 内閣官房長官

富山県議会議長  上 田 信 雅

劣化ウラン兵器の使用禁止を求める意見書

 イラク戦争では、劣化ウラン兵器が使用されたとの報道がある。
 半減期45億年の放射性物質ウラン238を成分とする劣化ウランは安価で重いために弾頭に多用され、戦車の装甲を貫通し内部の人間を焼き尽くす兵器として恐れられている。これが使用される際には、劣化ウランが細かいチリとなって大気中に拡散し、呼吸によって人間の肺に取り込まれたり、地下水を汚染して長期にわたって農作物を汚染することになると考えられている。
 湾岸戦争後、イラクの人々や米軍の帰還兵、その子供たちに広がった健康被害の原因と推測され、国連人権小委員会でも核兵器などと並ぶ非人道的兵器として製造・使用禁止決議が採択されている。
 無差別に被害を与え、将来に生まれてくる子供たちにまで被害が及ぶ劣化ウラン兵器は、まさに悪魔の兵器というべきものである。広島・長崎の悲惨な体験を持つ日本こそが、劣化ウラン禁止の先頭に立つべきである。
 よって、国会並びに政府におかれては、次の事項について積極的に取り組むよう強く要望する。


1 劣化ウラン兵器の使用及び健康被害について、国連などの機関で調査すること。
2 劣化ウラン兵器禁止の立場を明確にし、既に保有する国に対して廃棄を促すこと。
3 人道的立場から、被爆医療で高い水準を持つ我が国が、被害者救済に必要な医療支援を行うこと。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

提   案   理   由

 劣化ウラン兵器は、無差別に被害を与え、将来に生まれてくる子供たちにまで被害が及ぶため、使用及び健康被害について国連などの機関で調査すること、既に保有する国に対して廃棄を促すこと、我が国が被害者救済に必要な医療支援に積極的に取り組むことを要望するものである。


《滋賀県野洲市》

劣化ウラン兵器の使用禁止と廃絶を求める意見書

劣化ウラン弾とは、核兵器製造や原子力発電のため、天然ウランを濃縮する燃料加工過程でできる放射性廃棄物の合金を弾頭につけた砲弾です。貫通力が強く、戦車の装甲板を破ることができる威力を持っています。
アメリカは、この劣化ウラン弾を1991年の湾岸戦争、1995年のボスニア軍事介入、1999年の旧ユーゴ空爆、2001年の対アフガン戦争で使用したといわれ、そして、昨年3月20日に始まったイラク戦争でも使用してきました。
劣化ウランは、45億年の半減期を持つ放射性物質であり、環境中にまきちらされれば、その影響は極めて広範囲に及び、長期間持続します。また、劣化ウランは、アルファ放射線と呼ばれる強い放射線を出し、体内に蓄積されることで、癌・白血病、先天性障害、そしてその他、全身にわたる様々な疾病・障害を引き起こし、その影響は何の罪もない子供達が受けているのです。劣化ウラン兵器は、その被害の持続性、甚大さ、無差別性からして、明らかに非人道兵器であり国際人道法にも違反しています。
広島・長崎の悲惨な体験を持つ日本こそが、劣化ウラン兵器の禁止と廃絶の先頭に立ち、劣化ウランの汚染調査や被災者の医療支援などに積極的に取り組むとともに、世界の恒久平和に尽力すべきだと考えています。
よって、野洲市議会として、国に対して以下の点に積極的に取り組み、国際社会で積極的に活動することを要請します。

1.あらゆる戦闘、訓練において、劣化ウラン兵器の使用を禁止すること。
2.現在保有している劣化ウラン兵器を廃棄処分すること。
3.劣化ウラン兵器の販売を禁止し、既に同兵器を保有している国に対し廃棄を促すこと。
4.劣化ウラン弾による被害を受けた人々に対して、適切な医学的検査と治療を行うこと。
5.全世界で、住民の生活の場に放置されている使用済みの劣化ウラン弾や、劣化ウラン弾によって被爆した車両・兵器などを、早急に収集し、生活の場から撤去すること。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。

平成17年6月30日

滋賀県野洲市議会議長 秦 眞治

内閣総理大臣 小泉純一郎 様
内閣官房長官 細田 博之 様
外務大臣   町村 信孝 様
防衛庁長官  大野 功統 様



《米国帰還兵の劣化ウラン被害賠償請求訴訟・訴状の抜粋》

19.イラク駐留中、原告マシューは、放射性の劣化ウラン(以下、DUと表記)に被曝させられた。

20.2004年4月、原告マシューは、検査の結果、劣化ウラン汚染にされていることが明らかとなった。

44.原告たちが被曝した地域は、各原告が被曝する以前に、DUに汚染されていると知られていたし、被告には知られていたはずである。

46.被告は、DU被曝の、知られていた危険を、各原告に対して隠していた。

51. 連合軍の他の国々の軍隊は、DU汚染への被曝の危険から自国の軍隊を守り、安全を確保するため、司令官によって当該地域から移動させられた。

53.各原告がイラクに派遣される以前に、被告は、DU兵器の燃焼より生じる高濃度の酸化ウランを含有する、容易に吸引される微粒子からなるエアゾール状チリの毒性について知っていたか、知っている所以があった。

54.ミクロン・サイズのDU粒子は、大気中に広まり、難なく20キロも運ばれ、頻繁に風の吹くイラクではさらに遠くまで運ばれるものであることを、当該のあらゆる時点において知っていたし、知っている所以があった。

64.当該のあらゆる時点において、被告は、アルファ放射線は、発ガン過程や変異に広く結びつけられている遺伝子の不安定化を引き起こす強力な原因であると知られている、ということを知っていたか、知っている所以があった。

「第一救済請求」
73.被告は、警告や保護を与えずに、各原告をDU汚染の周知の危険に曝したことにより、各原告に対する義務に違反した。

以下、略。



《ハワイで劣化ウラン弾 米軍演習場に破片15個》

琉球新報 2006.1.10 【ワシントン8日=滝本匠本紙特派員】
 ハワイ・オアフ島にある米軍スコフィールド・バラックス基地の実弾演習場で、これまでハワイでは使用していないと米軍が説明してきた劣化ウラン弾が昨年発見されていたことが明らかになり、地元環境団体や先住民団体らが「(軍は)無責任だ」「完全なる説明を求める」などと米軍の姿勢を強く非難している。劣化ウラン弾をめぐっては米軍鳥島射爆場への誤射事件も未解決のままで、米軍の武器管理のずさんさを示すものとして、沖縄でも批判が出てきそうだ。
 地元紙ホノルル・スター・ブレティンなどが伝えた。地元運動家からの問い合わせに対し、米陸軍が認めた。
 昨年8月、基地内の複合射撃訓練場の拡張工事に伴い着弾地の不発弾除去を行っていた業者が、直径約2・5センチ、長さ約10センチの劣化ウラン弾の尾部15個を発見した。同基地駐留の米陸軍第25歩兵師団は1960年代に訓練で使用された劣化ウラン弾の破片だと説明している。
 地元の平和団体アメリカン・フレンズ・サービス・コミッティーのカイル・カジヒロ・プログラム部長によると、これまで米軍側はハワイでは一切劣化ウラン弾を使用していないと発表していた。カジヒロ部長は「米陸軍は劣化ウラン弾の使用について把握していないか、あるいは故意に市民を欺いたかだ。どちらにしても大変な問題だ」と軍を批判した。
 発見された劣化ウラン弾について陸軍では低レベル放射能で危険はないとしている。陸軍ハワイ守備隊のハワード・キリアン司令官は「陸軍は決して故意に欺こうとしたのではない」と釈明、そこ以外では存在しないことを強調した。
 県内では嘉手納弾薬庫にも貯蔵される劣化ウラン弾。95年から96年にかけて米軍が鳥島射爆場で誤射したが、完全な回収もされず、地元の求めにも健康診断は実施されていない。また99年には薬きょうが米軍から民間に流出し、問題となった。



《劣化ウラン弾、嘉手納基地に40万発 情報公開で明らかに》

琉球新報 2006.8.2  2001年当時、米軍嘉手納基地に約40万発の劣化ウラン弾が貯蔵されていたことが、米情報公開法に基づき米空軍の公開した資料で明らかになった。沖縄の劣化ウラン弾については2000年5月に嘉手納基地の米空軍第18航空団司令官が嘉手納弾薬庫内に貯蔵していることを明らかにしたが、具体的な保管数が明らかになったのは初めて。
 情報公開請求では、米ハワイ州の米平和団体のカイル・カジヒロさんが01年2月、米太平洋軍の劣化ウラン弾の全記録を請求した。同年8月に米空軍が、嘉手納基地と韓国烏山(オサン)空軍基地の記録として公開した。
 嘉手納基地は本紙の取材に対し、在日米軍の見解として特定の弾薬の量や保管場所は話せないと断った上で「航空機や戦車、艦船のいくつかの兵器で劣化ウラン弾を使用できる。これは劣化ウラン弾を使っていることを意味しない。劣化ウラン弾は訓練では使用していない」と回答し、取り扱いに当たって安全確保に努めているという姿勢を強調した。
 2000年5月当時、司令官が記者団に対し嘉手納弾薬庫内にある580カ所の倉庫うち1カ所に劣化ウラン弾が貯蔵されていると明らかにしていた。



《劣化ウラン研究会で訳した重要文献》

A Global Access Science Source誌
2005年4月17日
翻訳:山崎久隆

[表題]劣化ウランエアゾールの催奇形:疫学の見地からの論評

[著者]:リタ・ヒンディン(1)、ダグ・ブルージュ(2)、バインドゥ・パニッカー(3)
(1)マサチューセッツ州立大学保健科学公衆衛生・生物統計・疫学専攻科
Biostatistics and Epidemiology Concentration, University of Massachusetts School of Public Health and Health Sciences
(2)タフツ医科大学 公衆衛生学部家庭医療科
Department of Public Health and Family Medicine, Tufts University School of Medicine
(3)タフツ工科大学 土木環境工学部環境衛生
Department of Civil and Environmental Engineering, Tufts School of Engineering

[要約]
背景:最近、軍事衝突の際に、劣化ウランが頻繁に軍需品の構成要素として使われるようになった。軍人、文民および劣化ウラン軍需品生産者は、発生する劣化ウランエアゾールに暴露している。

調査方法:我々は天然および劣化ウランの双方に関連する毒物学的データの再検討を実施した。その中には、天然および劣化ウランによる出生時の先天性障害発生について査読を経た研究研究や、まだ出版されていない専門的な文献も含まれる。我々がめざしたのは劣化ウランの催奇形に関する「証拠の重要さ」を評価することであった。

結果:動物を使った実験は、まぎれもなく劣化ウランが催奇性の物質であるということを強く支持している。環境中の劣化ウランを体内に取り込んだあと生殖細胞に到達する詳細な経路は、まだ完全に説明されないけれども、所見はそれを支持する。これまでの調査では使用したヒトの疫学データは症例、疾病登録記録、症例対照研究および予想される長期的な調査が含まれる。

検討:先天性疾患について(ヒトの)親の劣化ウラン被曝および子の出生についての原因となる経路を確証するには、次の2つが最も重要な解明点である。
i)他の潜在的な催奇性物質暴露の影響から劣化ウラン被曝の影響を区別すること。
ii)親の劣化ウラン被曝量を各個人ごとの被曝レベルがわかるようにデータによる裏付けをつけること。

生物指標を使う研究はこれまで一つも報告がないが、後者で行われる追試での取り組みに役立つ。

劣化ウラン催奇性に関する多数の研究(疫学やその他)をつき合わせることは、種々の潜在的催奇性の役割をひもとくことにつながり、親の劣化ウラン被曝の影響を解明することに貢献をするだろう。この論文はこれに取り組んだものである。

結論:全体として、劣化ウランに被曝した人の子に先天性疾患の危険性が増加する合理的整合性があると、ヒトの疫学的所見は示している。


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