ニュースレター第12号(2004/12)

<はじめに>

2004年最後のニュースレターをお送りします。今年は劣化ウランの問題が日本各地で語られ、議論され、取り組まれた年でした。昨年10月のハンブルグ会議に日本から20名が参加をし、その成果が今年になり開き始めたと言えます。
最初に、劣化ウラン研究会として参加をした「劣化ウラン禁止を求める国際行動デー」の報告と、当会会員も参加をした平和学会の報告を、福島和夫さんによる報告として掲載します。

劣化ウラン兵器禁止を求める国際行動デー;11月6〜7日東京からの報告

11月6日は国連が「戦争と武力紛争による環境破壊を防止する国際行動デー」と定めている。これをふまえて「ウラン兵器禁止を求める国際連合(ICBUW)」は、この日を劣化ウラン禁止を求める国際共同行動日と設定し全世界に呼びかけを行った。日本では、大阪、神戸、広島、札幌、福岡など全国各地で取り組まれ、世界でもベルギー、イギリス、イタリア、オランダ、米国など各国において取り組まれた。

11月7日「劣化ウラン兵器禁止市民ネットワーク」が講演会;パレードなどを実現

私たち劣化ウラン研究会は、「劣化ウラン兵器禁止市民ネットワーク」に参加をして、基調報告を行った。集会では、国連人権小委員会にも参加をしている東京造形大学教授の前田朗さんに講演をお願いした。
「国連人権小委員会では劣化ウランの使用禁止をめぐる報告が少なくなってきており、報告が難しくなっていること」を述べられた。
写真家の豊田直己さんは、香田さん殺害事件に触れ、「テロには反対だけれども占領軍のやっていることはひどい」と訴え、特にサマーワ現地での日本の報道関係者の対応のひどさに怒っていた。続いてJVC(国際ボランティアセンター)の佐藤真紀さんは、イラクでの医療支援活動を進めるために「医療・物資輸送は現地の人、支援センターはヨルダン、資金は日本というように分業体制でやらなければならない状況にあること」が占領軍との戦闘激化により強いられていることを報告した。
会場には豊田さんや豊崎博光さんの写真が展示され、多くの賛同団体の物販もあり、狭い会場は熱気にあふれて、イラクの子どもたちへの支援カンパも5万円以上が寄せられた。
集会終了後は、「放射能兵器・劣化ウラン弾を禁止しよう」「イラクの子どもたちを救おう」と市民に呼びかけながら、キャンドルをかかげて宮下公園まで行進した。宮下公園では「NO・DU」の文字をキャンドルでかたどって、参加団体がそれぞれリレースピーチを行った。

日本平和学会が劣化ウラン兵器問題を提起;11月6日

日本平和学会が恵泉女学園大学で開催され、開催校企画部会として「劣化ウラン兵器の国際禁止運動と市民社会の役割」と題するシンポジウムが行われた。
参加者が主催者が用意したレジュメが無くなってしまうほど会場はいっぱいであった。司会の内海愛子さんは「ブッシュ再選の時期にあたって、この問題を議論する価値がある」と提起した。
パネラーは神戸大学教授でNO・DUヒロシマプロジェクト代表の嘉指信雄さん、JVCの佐藤真紀さん、沖縄環境ネットワークの砂川かおりさん、鹿児島大学の木村朗さん、シカゴ大学で小林多喜二研究のノーマ・フィールドさんの5人で、劣化ウラン問題、人道支援、沖縄の米軍と環境問題、米国の戦略、米国市民感情と多岐にわたって発言された。
シカゴ大学のノーマ・フィールドさんが、米国では劣化ウラン問題をはじめとして、原爆問題などについて「左翼からリベラルまで全く関心を持っておらず、ほとんど知らない」と発言されたので会場から「それは事実とは違うのではないかとの質問が出たが、残念ながら議論はかみ合わなかった。
沖縄からの報告で、米国内では軍、市民団体、自治体との間で環境汚染をめぐって協定を結び、様々な軍への圧力をかけて安全確保の追求が可能であるが、沖縄では全くそれが出来ないことが問題提起された。この米軍のダブルスタンダードを追求するために、国連環境計画や国連人権委員会を活用して行っていくことが重要との発言があった。
私たちはこのような取り組みの成果をふまえて、さらに劣化ウラン禁止の運動を広げるために努力を続けていきたいと考える。

<劣化ウラン兵器に関する国連人権小委員会での新倉教授の発言>(2004年8月)

今年8月の国連人権小委員会に参加し発言した新倉修・青山学院大学教授の発言を「UraniumWeaponsBANNEWS」より許諾を得て転載します。

人権活動日本委員会・新倉修
第56期人権小委員会

(c)優先させるべき重要課題、特にテロと反テロリズム
昨日は長崎の、先週金曜日は広島の原爆祈でした。二つの原子爆弾は数十万人の市民を殺し、今日でもその生存者は放射線の影響に苦しんでいます。
日本委員会を代表して、本会議の討議事項に極めて関連の深い劣化ウランの問題を発言したい。劣化ウランは自然界で最も重い金属だが、兵器に使用されると地球上の全ての生物に持続的な害を与える極めて恐ろしい物質です。その微粒子は呼吸や摂取で体内にはいると長期間、低レベルの放射線を体内で発し続けます。劣化ウラン弾の射撃が推測される地域での先天性障害の発生率はすでに報告されています。私の考えでは、先天性障害やガンの発生と劣化ウラン兵器の使用の因果関係は疑いようがありません。
過去二年間、特別報告官が小委員会に提出した一連の報告書は、国連機関の中でも出色の内容でした。うれしいことに今年もカレン・パーカーさんが代表するIEDやダレン・ディアス・マルティンスさんが代表するDJPなどのNGOが反響をよせました。さらに注目すべきは、日本のいくつかのNGOが世界的なキャンペーンを計画していることです。日本の一般市民が本能で劣化ウラン兵器の恐ろしい毒性に気づき始めていることです。それはアフガニスタンやイラクで起きたことを現地で見た人たちがいるためです。イラクでの日本人誘拐事件の被害者・今井紀明さんもアフガニスタン、イラク、ユーゴスラビアの劣化ウラン兵器の大規模な空爆に衝撃を受けた一人です。
テロリズムは非国家組織の活動家だけでなく、ミゲル・アルフォンス・マルティンスさんが発言の中で明確に指摘したとおり、国家もテロの犯人となり得るのです。当然のことですが、国家も国際法−特に国際人権法と人道法−に厳格に拘束されねばなりません。過剰な、あるいは無差別な武力攻撃は禁止されています。これ故、劣化ウラン兵器の使用は禁止されねばなりません。劣化ウラン兵器の国際的な使用はジェノサイド、あるいはオムニサイド(これは全ての生物の殺戮を意味します)の罪であると言えるでしょう。
今、劣化ウラン兵器のあらゆる使用、製造、輸送、保管を禁止するイニシアチブを取るときです。そうでなければ世代を超えて何千もの子どもたちが苦しみ、死んでいきます。今、劣化ウラン兵器の使用者と製造者の補償責任の原則を明確にした被害者への医療体制を構築するときです。
世界の良心に代わり、日本委員会は本小委員会の委員の皆さんがこの価値ある事業を再開するよう、そして少なくともその緊急性を明示して劣化ウラン兵器の廃絶のために禁止条約を起草するか、地域的または国際的な会議、セミナーを招集する決定を下すよう訴えます。

<拡散する核のゴミ>

劣化ウラン研究会・山崎久隆

拡散する核のゴミ

バグダッドからアンマンに向かう、くず鉄を積んだ複数のコンテナに「放射性同位元素」が含まれていることが分かり、積み戻された。バスラからは、破壊されたイラク軍戦車などが売却され、インドに向かって輸送されているという情報も伝えられている。「核のゴミ」の国際的な拡散が始まった。
一方ではイラク国内でも、汚染が広がっていると懸念されるのだが、占領体制下では情報はほとんど伝わってこない。なにしろ略奪も破壊も占領軍が関与しているものが多数あると見られているのだから。アル・グレイブ刑務所で起きたことがイラク各地で起きていると伝えられているように、イラク原子力研究所「ツワイサ」で起きた放射性物資拡散事件のようなこともイラク各地で起きている。
放射性物質やウラニウムによる汚染が世界規模に拡散する危険性について次に紹介する。

「完ぺきな兵器」

厚さ10センチの鋼鉄製装甲板から地下100メートルの岩盤に守られた施設まで、重戦車からコンクリートの掩体壕の陰に隠れている歩兵にいたるまでを標的とし、確実に破壊できる兵器があるとしたら、それは軍人にとって「完ぺきな夢の兵器」となる。
それが劣化ウラン弾などの「ウラニウム兵器」を採用した米英軍の発想である。彼らは湾岸戦争、ボスニア・コソボ戦争、アフガニスタン戦争から今日のイラク戦争まで使用し続け、推定2000トンとも3000トンとも言われる量のウラニウムを現在もばらまき続けている。
元米陸軍少佐で湾岸戦争時の劣化ウラン汚染除去作業の責任者であったダグ・ロッキー氏は「ウラニウム兵器の使用は人類に対する犯罪」と言い切る。
汚染除去作業に従事したロッキー氏は、全身に劣化ウランの粉塵をかぶり、大量に粒子を吸い込んだと思われる。彼の体内にも劣化ウランが蓄積され、そのため尿中から、平均的な米国市民の実に5000倍にもあたる1500ナノグラム/リットル(1ナノグラムは10億分の1グラム)の劣化ウランが検出されている。
彼の部下はその多くが病に倒れ、死んでいった。湾岸戦争症候群と総称される様々な病気は、湾岸戦争退役兵士を襲い、およそ70万人の従軍兵士のうち20万人あまりが働けないほど重篤な症状を呈し、1万人以上が亡くなったと言われている。

国連環境計画の警告

国連環境計画で湾岸戦争やコソボ紛争での環境影響調査を行ってきたポッカ・ハーヴィストは英国紙サンデー・ヘラルドのインタビューに応えて言う。
「おとなたちが働き、子どもたちが遊ぶ場に、その物質(ウラニウム)が放置されたままの状態で、汚染除去もされないことは愚かなことだ。もし劣化ウランが除去されないのならば、それを懸念せざるを得ない。危険性は減るどころか増大しているのだ。それは絶対に間違っている。」
ハーヴィスト氏は、この発言に先立ってこうも言っている。「(劣化ウランに汚染された金属が)フォークやナイフになるかもしれない。」
劣化ウランが回収されたスクラップに混入し、収集された後にリサイクルされていたという証拠を強調しての発言である。
ハーヴィスト氏の最大の懸念が、ウラニウム兵器により攻撃を受けた建物が補修された後に再利用されていることである。適切に汚染除去されないままに再び使用されているケースは、現実に旧イラク計画省の建物に見られる。劣化ウラン弾により攻撃されている写真が証拠として国連環境計画の報告書に掲載されている。

放射能汚染スクラップ

そして懸念は実態となって現れた。
ヨルダンタイムスが5月31日にアンマンから伝えたニュースは、放射能汚染コンテナの存在だった。
イラクからアンマン経由アカバ港行きの40トンコンテナが次々にイラク・ヨルダン国境で放射能警報装置に引っかかった。
バックグラウンドが0.75マイクロシーベルト/時に対して、コンテナからは1.118マイクロシーベルト/時の放射線が出ていたのである。環境値のおよそ15倍。これは有意に高い値である。
国境に設置されていた放射線測定器は、トラックゲートと呼ばれる装置と見られる。もともと高濃縮ウランの密輸入を警戒するためにあったのだが、今回は汚染スクラップの発見に一役買った。
コンテナはイラクに積み戻されたというが、ヨルダン政府の報道官アズマ・カダーは、それを確認することができなかった。しかしAFP通信には、ヨルダン政府がイラクから入国するスクラップは、汚染されていないことを保証できる処置をとっていると言っている。
とはいえ、放射能汚染コンテナがヨルダンにだけ向かうとは考えられない。イラクと国境を接する国は6カ国あるし、そのうえイラク国内に出回っているスクラップには監視の目は届いていない。

ウラニウム汚染スクラップの輸出

現在、イラクから大量の「戦争廃棄物」が持ち出されようとしている。
例えば戦車などの残骸だ。
イラク戦争で破壊された戦車などの軍用車輌は合計3000台にもなるという。そのスクラップがインドに輸出されていることをすっぱ抜いたのがバスラの情報誌「バスラ・ネット」だ。
イラク暫定評議会の複数のメンバーがインドの企業と20万トンのくず鉄を1億1100万ドルで輸出する契約を結んだという。
くず鉄の多くは戦場の廃棄物、つまり劣化ウラン弾で破壊された戦車などである。
イラク現地調査を行った藤田祐幸さんによれば、少なくても10台に1台は劣化ウランの反応を示したそうだ。300台以上の劣化ウラン汚染車輌が存在し、それがイラクの国内から持ち出されようとしているのである。
ウラニウム汚染の戦車がどれほど危険かは、既にダグ・ロッキー氏の部隊が経験をしている。彼が指揮した作業が、劣化ウラン汚染車輌の処理そのものなのだ。

危険性の推定

劣化ウラン弾に破壊された戦車はどうなっているかというと、銃砲弾に撃ち抜かれた場所とその周辺には、溶けたウラニウムが溶着している。測定器を使って測定すると穴の周辺が高い値を示すのは、劣化ウランが溶けて固まっているからである。
内部は炎上した際に発生した大量の微小なウラニウム粒子の汚染地帯だ。車体に付着し、あるいは空間に舞い上がっていて、高い汚染になっている。
戦車の周辺もこの微粒子が舞い散っているので、少なくても100メートル以上は離れなければ危険であろう。
破壊された戦車の撤去作業を行う場合、作業員は安全のために放射線防護服と顔を全面覆うことができる空気呼吸器(マスク)を使用する必要がある。微粒子を吸い込まないためには外気から完全に遮断されなければならない。
実際に、米国内でウラニウム汚染土壌を除去する際には、完全防護の装備で作業を行っている。
ウラニウム汚染された戦場の廃棄物を処理する際、どのような状況で作業にあたっているのかは情報がない。しかし一台一台十分な洗浄作先のヨルダン国境で差し止められたコンテナに積まれていた放射線源は、正体が明らかではないが、ウラニウムではない可能性が高い。
イラクでは、略奪などにより多くの資材が市場に出回っている。真新しい機械類やアルミニウムの配管など、使用された形跡のないものさえスクラップとして流出している。これは組織的な略奪だと指摘するのは米国シンクタンクのジョン・ハムレ戦略国際研究センター所長である。
この「組織的略奪」の対象には、イラク最大の原子力研究所「ツワイサ原子力研究所」が含まれる。
大量の放射性廃棄物を貯蔵していた研究所は、2003年4月に大規模な略奪を受けた。米海兵隊によりIAEAの封印を破壊され、警備するものも居なくなった直後から、組織的な略奪により大量の放射4月に始まった略奪は、6月まで続いた。「何でも良いから持ってくれば一つ3ドルで買い取る」とモスクが告知をしたことで集まった廃棄物の山。中にはツワイサの職員さえ近寄らなかったという物体もあったという。
ウラニウムを転換する装置が、道路上に放置されていたり、放射性廃棄物が道端に捨てられるという事態が続出した。ゴイアニアの事件の再現である。
その略奪現場から持ち出された廃棄物がスクラップとして流出している可能性が高い。これは高濃度汚染物である。
ウラニウム汚染物は、溶解された場合金属に混入し時間と共に他の放射性物質に変わっていく。そのうちラジウム226は強いガンマ線を出し、周辺を被曝させるし、ラドン222は気体なので鉄筋などからしみ出しアルファ線による被曝をもたらす。
このような材料が大勢の住民の住む住宅建材などに使用されれば、一つ一つの被曝は低線量であっても、集団線量が大きくなり、ガンや白血病になる人が出てくるであろう。しかしながら何万人もの中から少数の過剰なガンがあっても容易にはわからない。深く静かに悲劇を拡散させる結果となる。
ウラニウム汚染スクラップの流出は、世界規模の被曝増大につながる重大事件なのである。

<ニュースクリップ>

兵器の粉塵がイラク人を苦しめる。
イラク暫定政府は汚染除去を求めるが米国は危険を軽視

11月1日付ハートフォード新報
トーマス・D・ウィリアムズ

米軍当局による、劣化ウラン兵器から放出された金属粉塵が健康への重大な脅威にはなり得ないという保証にもかかわらず、イラク暫定政府は米英軍によってペルシャ湾戦争(訳注:第一次湾岸戦争を指す)の間に国中の戦場に広がった低レベルの放射性物質であるウランの粉塵を取り除いてほしいと国際連合に依頼している。
イラクで今戦闘を行っている有志連合国の重要なパートナーである英国は、イラク南部で同様に劣化ウランを使ったが、その地点の座標を国連に提供した。しかし米国はそうしなかった。英国とドイツはイラクに対して環境科学者を養成する資金を供給している。国際連合はイラクで(湾岸戦争とイラク戦争の)両方の戦争で使用された劣化ウランの高汚染地域の調査を計画しているが、それが有効な調査として行われるためには、使用された地点の座標情報が必要となるという。
英国と米国当局のいずれの健康専門家も、イラク市民の健康を脅やかしていると言われる戦時汚染地域を評価するため、日本から国際連合に提供された470万ドルで補填しようとは申し出なかった。
10月下旬に陸軍中佐マーク・メランソンは、国防総省が劣化ウランで破壊された戦車について5年の歳月と600万ドルの資金を使って行ったシミュレーション研究によれば、戦車の乗員でさえ「ウラン粉塵を吸い込むことによる化学毒性の危険は非常に低いので、それが長期にわたる健康被害を起こすことはないであろう」と言う。

クウェートの除染
軍が海外で劣化ウラン除染を指揮した多くの実例がある。
例えば、国防総省下で働いている民間の請負業者に対し、劣化ウランによって汚染された軍の装備品およびクウェートの実地射撃練習場の除染作業で350万ドルが支払われた。テキサス州スタフォードに本拠地を置くMKMエンジニア社は2003年2月から2004年6月までクウェートでの限られた地域の除染作業を行なった。会社は22トンの劣化ウランの残骸と75個の非劣化ウラン軍用品スクラップを回収した。不発の劣化ウラン兵器はクウェート政府の協力で破壊された。MKMは、同様に戦車を含む兵器を除染し、それらを米国に送り返す前に、表面汚染の拡散防止のために梱包している。
クウェートの計画に対して責任がある米国の陸軍物質コマンドは、その作業を装備および武器の回収であり除染ではないとしている。
国防総省のメリッサ・ボーハン陸軍広報業務担当者は「米国の兵器システムにより放たれた劣化ウランは、いまだかつて汚染除去などしたことがない。それがブラッドリー戦闘車であろうと敵のビルまたは車両であろうとも」と言った。陸軍の規則では劣化ウラン兵器により攻撃された米軍装備の適切な取り扱いを要求している。
MKMはクウェートにおける作業のいくつかを徐線であると言っている。そして、国防総省は劣化ウランを含めて、その目的を「低レベル放射性廃棄物の安全な、そして条件に適う処分」とする低レベル放射性廃棄物除染計画を持っている。それには世界的に陸軍装備の低レベル放射能汚染除去を監督する、陸軍汚染装備回復チームが含まれている。
軍の規則では劣化ウラン弾の爆発から生ずる塵埃および破片にさらされるどんな兵士に対しても直ちに医学的な検査および処理が必要とされている。劣化ウランを吸い込むことにより起こる健康への影響を調査しているいくらかの核科学者は、肺または血流に存在する粉塵が微小なものに過ぎなくても、結局は成人にガンまたは腎臓病を、あるいはどちらか一方の親であっても劣化ウランにさらされていた場合は、赤ん坊にガンまたは先天性疾患をもたらす可能性があると考えている。
83歳になるマリオン・フルク、彼はマンハッタン計画で原子爆弾の開発に関係したローレンス・リバモア国立研究所の前の核化学物理学者であるが、血液および肺におけるナノサイズ(十億分の1メートルのサイズ)の劣化ウラン粒子でさえ、重大かつ破壊的な力を持っていると語った。
国防総省の見解を支持する人たちは、大量の吸入のみが重大な健康への影響を引き起こすだけであると言う。

湾岸戦争症候群ストレス説の終焉

11月13日付AP通信によると、米復員軍人援護局は湾岸戦争症候群の原因として「ストレス」を追求する研究には資金提供を行わないことに決定した。
これまで湾岸戦争症候群の原因については、ウランを含む軍事有害物質と、ストレスが主張され、連邦政府はストレス説をとってきた。しかし「湾岸戦争症候群に関する研究諮問委員会」は調査内容の再検討を2年にわたって行い、復員軍人省はストレス研究をやめて他の有害物質に焦点を合わせ直すことを勧告する報告書を12日に明らかにした。
年間1500万ドルの予算は、今後ストレス研究には支払わないと、ステファン・フィン研究開発局次官は語った。
退役軍人省のプリンシピ長官は、新たに千五百万ドルを計上して、兵士たちの神経に障害を引き起こした物質を特定するための科学的な調査を進めていく方針を示した。

劣化ウランの戦場で戦っている米軍兵士は「使い捨ての兵隊」と呼ばれる

12月2日アメリカン・フリー・プレス
クリストファー・ボーリン

戦争(ファルージャ侵攻アル・ファジュル作戦を指す)が始まって第一週目のCNNで、ファルージャでビルに向けて劣化ウラン(DU)ミサイルが発射されているように見える映像が映し出された。アメリカン・フリー・プレス(AFP)は国防総省に、劣化ウラン兵器がファルージャで使われているのかどうかを尋ねたところ、同省(の報道官ジョー・ヨスワ中佐)によれば、劣化ウランはM−1エイブラムス戦車の標準的な砲弾であるとして、その使用事実を認めた。
ファルージャの米海兵隊員は、爆発した劣化ウラン弾により発生した(重金属と放射性の)毒ガスに非常に近い場所にいる。そこでAFPはヨスワに対し、兵士を劣化ウランの毒から防護するための対策を何か取っているか尋ねた。ヨスワは劣化ウランの使用によって引き起こされる危険性については気づいてさえいなかったように思われた。
元ローレンス・リバモア国立研究所で核科学者だったマリオン・フルクはAFPに対し、米軍が劣化ウランで汚染した戦場に派遣されている兵士は「使い捨て軍人」だと思うと語った。ファルージャでも、そしてほかのところでも、劣化ウランに暴露された海兵隊員は将来ガンやその他の健康被害を受け、さらにその子らが先天性の疾患に罹る危険性に直面する。

<書籍紹介>

世界は変えられる

JCJ日本ジャーナリスト会議市民メディア賞受賞
TUP(Translators United for Peace; 平和をめざす翻訳者たち)が伝えるイラク戦争の「真実」と「非戦」
定価1800円+税四六判上製240ページ
ISBN4-8228-0480-1

放射能兵器・劣化ウラン−−核の戦場・ウラン汚染地帯

劣化ウラン研究会編
技術と人間社発行
〒162-0814東京都新宿区新小川町3−16
TEL:03-3260-9321 FAX:03-3260-9320
2003年3月発行
定価2500円
「ボクは死ぬんだ。死んでしまうのだ。」イラクの小児病棟では連日、血を吐きながら子どもたちが死んでゆく。劣化ウランは史上最悪の大量殺りく兵器である。この兵器を使用しているかぎり、人類だけでなく、地球上の生きとし生けるものに未来はない!
<主要目次>
第1章危険な劣化ウラン弾
第2章劣化ウランの軍事転用
第3章核燃料サイクルと劣化ウラン
第4章身近にあらわれる劣化ウラン
第5章劣化ウランおよび劣化ウラン兵器廃絶運動
<著者紹介>(50音順)
伊藤政子:アラブの子どもとなかよくする会代表
新倉修:青山学院大学法学部教授
野村修身:電磁波問題市民研究会代表
藤田祐幸:慶応義塾大学物理学教室助教授
森住卓:フォトジャーナリスト
矢ヶ崎克馬:琉球大学理学部教授
山崎久隆:劣化ウラン研究会代表


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