18. 在宅酸素療法の器具について――まず概要のご紹介 (2004/09/03記入) 
     いい人は介護する(?)――障害者として、介護者としての雑感  (その18)

 前回に書いたことですが、自宅の中では、ボンベを積んだ車を持って歩くのではなく、固定させた酸素発生器からビニール管で鼻につなぐのだ、ということを、初めて知りました。連れ合いは、階段の昇降がきつく、数年前から、自宅では階段昇降機なる装置(右の写真)を使っています。これは、エレベーターの設置ほどではないにしても、かなり高価なもので、1階から2階へ、2階から3階へと二つをつけるのに200万円弱もかかりました(1階から2階へは、直線の階段でなく、途中で180度曲がって上がる階段だけに、高くなりました) が、ベ平連運動などの友人たちが、そのためのカンパを募ってくださり、全額をそれでまかなうことが出来ました。この階段昇降機を使って上下しながら、酸素ボンベを持つというのは、かなり困難だと思い込んでいたことが、なかなか酸素療法に踏み切れなかったことの一つの理由でした。
 ところが、この酸素ボンベを車に積んで引いて歩くという方式は、外出のときだけで、自宅にいるときは、まったく別の左図のような器具を使うのでした。大きさは、エアコンの室内機ぐらいでしょうか。これが前面のフィルターを通じて空気をとりこみ、そこから空気中に80パーセントある窒素をとりのぞき、20パーセントある酸素を90パーセントに濃縮して取り出すのだそうです。
 酸素の取り出し口は、正面右上にあり、そこにカニューラとつながるビニール・チューブの先端の金具を差し込むようになっています。
 このチューブを、1階用、2階用、3階用と複数用意し、それぞれ、この機械から、壁や天井をはわせて、各階にまで伸ばします。延長は20メートルまで可能です。階を移動するときには、これを差し替えれば、それぞれの階のチューブから酸素が出るようになります。我が家では、この装置を2階の寝室前の廊下に設置しました。チューブを差し替えて、階段昇降機で移動し、行き先の階のチューブのカニューラを鼻に取り付けるまでの、2〜3分間は酸素が補給されないことになりますが、そのくらいの時間なら、酸素療法が中断しても大丈夫だそうです。
 自宅にいる間は、この機械は24時間運転を続け、絶えず酸素を供給し続けます。運転している間は、正面上部の左右にあるライトグリーンのランプがついています。僅かに熱を出しますが、騒音はほとんどしません。真夜中、電気を消した暗闇の中で、静かに光っているこの二つのライトグリーンのランプを見ていると、感動の思いさえします。階段昇降機といい、この酸素供給器といい、いったい、いつから、こんな機械が実用化されたのでしょう? それ以前でしたら、呼吸器不全で酸素不足になった人は、生存できないか、少なくとも、寝たままで体を動かすことは出来なかったのでしょう。
 しかし、 この器具も、もちろん、費用はかかります。老人健康保険の本人1割負担が適用されて、実際の支払いは一月8,000円です。毎月1回ある医師の検診の際、「器具使用指導料」として病院の会計窓口に支払うことになります。そのほかに、運転の電気代が月、約8000円ほどかかるそうです。結局、一月に16,000円、我が家では、年に20万円弱の支出増ということになりそうです。
 こうした酸素濃縮器は、いろいろな会社が製造し、設置の担当をしていますが、連れ合いのかかっている東海大付属東京病院では、これをテイジン――正式には「帝人在宅医療東京株式会社」と契約しています。それで、我が家に設置された機械は、テイジン製の酸素濃縮式供給装置「ハイ サンソ3C」なるものでした。