news-button.gif (992 バイト) 154.「障害者・患者九条の会」結成1周年記念集会のご報告 (2006/09/10掲載) 

 昨9月9日(土)午後に開かれた「障害者・患者九条の会」結成1周年記念集会に参加しました。いずれ、正式な報告は、同会のホームページ(http://www.nginet.or.jp/9jo/index.html)に掲載されると思いますので、ここでは簡単な個人的印象を記します。
 集会は午後1時から東京・駿河台の明治大学リバティタワーで開かれ、100名弱の参加者がありました。関東近県はもちろん、山梨、大阪、長崎などからの参加者もありました。
 最初、この会の呼びかけ人を代表して秋元波留夫さん(左の写真)から挨拶がありました。秋元さんは元東大医学部教授、都立松沢病院長などを勤められ、現在、「きょうされん」顧問、日本精神衛生会 会長などをされています。驚いたのは、秋元さんが1906年生まれだということでした。100歳を超えるというのに、現役で、ご挨拶も矍鑠〈かくしゃく)としたものでした。私など 、秋元さんより四半世紀も若いわけです!
 秋元さんは、この会の呼びかけアピールの賛同者が700人を超え、埼玉、兵庫、大阪、和歌山など各地にそれぞれの地方の障害者九条の会が生まれていると報告されました。また、九条を改変させいないようにすることが大事なのは言うまでもないが、そのためにも、九条を目の仇にしている日 米安保条約を廃棄することが決定的に重要なのだと力説されました。秋元さんは、同条約の第10条を引用しつつ、日本がその終了をアメリカに通告しさえすれば、1年後にはこの条約は終了 させることになるのだとのべ、安保条約の危険性への認識をもっと深めるよう促されました。

 なお、秋元さんは、この日に合わせて、清水寛さん(埼玉大学名誉教授、全国障害者問題研究会元会長、現顧問)との共著『
忘れられた歴史はくり返す――障害のある人が戦場に行った時代――』 (きょうされん発行、税込 700円)を出版され、会の受付でも頒布されました。この本は、戦争の場合、障害者など弱者がいかに抑圧されるかをこれまでの歴史のなかから具体的に明らかにするとともに、現在の政治を鋭く批判し、反戦・反安保の行動をよびかけたもので、障害をもつ人に限らず、広く読まれるよう、お奨めします。 (「きょうされん」の連絡先:164-0011 東京都中野区中央5-41-18-5F 電話:03-5385-2223 FAX:03-5395-2299 郵便振替:00130-6-26775 e-mail: zenkoku@kyosaren.or.jp  
URL: http://www.kyosaren.or.jp/  )
 この集会と同時に、この日の午後、「視覚障害者九条の会」の発足集会が開かれるということで、同会の 田中彰治さんから、連帯の挨拶もありました。
 集会のメインは、
障害者の生活保障を要求する連絡会議の太田修平さんを司会者とした、斎藤貴男さん(ジャーナリスト)と渡辺剛さん人権回復を求める石川島播磨原告団団長)によるシンポジウムでした。
 斎藤さんは、格差は所得格差だけの問題ではないとして、竹中平蔵氏の「理想の税制は人頭税だ」という説を紹介し、弱者が「最低にして文化的生活」を求めて切捨てを批判し、 支援を求めているのは、自分より裕福な層から金を強奪しようという強盗行為を政府にやらせようとするものだなどという暴論を吐いていると指摘して、所得再配分への大攻撃が開始されていると警告しました。
 また、渡辺さんは、すでに、このホームページでも「
すぐれたTVドキュメンタリ2点のご紹介」で報告した『毎日放送』作製のTVドキュメンタリ「誰も知らない戦地出張 〜もの言えぬ職場から〜 」のごく一部を映しながら、 軍需産業の職場でのひどい人権抑圧の実態と、三菱重工業、石川島播磨、小松製作所など、日本の軍需産業の危険な動向について警告しました。
 この後、フロアからの発言が続きましたが、活発な意見交換がなされ、13人もの発言がありました。私も冒頭で短い意見をのべましたが、発言者の中で印象が深かったのは、横須賀九条の会が、市長の米原子力空母母港化容認に抗議し、それに反対する住民投票を、地方自治法に基づく条例によって行なうことを計画しているという報告と、長崎からの参加者が、繁華街で、道行く人びとを相手に九条改変をめぐる是非の討論を組織しており、毛糸などで作ったミニチュアの箒に「戦争ホウキ」というラベルをつけて配っているといった、積極的な街頭行動の報告でした。
 最後に、「きょうされん」の多田薫さんから行動の提起があり、(1)「障害者・患者九条の会よびかけ」への賛同者をさらに広げる、(2)各地に障害者九条の会を新設、強化する、(3)ホームページなどを利用して、各地の取り組みの交流を図る、(4)来年の集会にはもっと多くの参加者を、の4点が提案されました。人数こそ、昨年の創立集会に比していくらか少なかったものの、全体として、活発で、気持のいい集会でした。

(この集会での私の発言の要旨)
 
この会の呼びかけ人の一人で、「市民の意見30の会・東京」で活動している吉川勇一です。今日は、その会の仲間たちは、明治公園で開かれている WORLD PEACE NOW の集会の方に行っており、私だけは障害者だからということで、こちらの会に参加しています。
 私の場合、外観からは障害者らしく見えませんが、実はガンで膀胱を全摘出しており、人工膀胱をつけております。災害は忘れた頃にやってくると言われますが、今朝、それが私にもまた起こりました。たまにあることなのですが、寝ている間に、ストーマにつけている人工膀胱のパウチが外れ、パジャマからシーツから、寝具がすべてびしょびしょになってしまうのです。一騒ぎして全部取り替えたのですが、この集会から帰ったら、洗濯が待っています。今の時期はまだいいのですが、冬の寒いときにこういう事故がおこると、だいぶ辛いことになります。
 私的な話はそれまでとして、ここでは1点だけ、皆さんに考えていただきたいことをお話ししたいと思います。
 「市民の意見30の会・東京」は、「市民意見広告運動」のよびかけた全国紙への反改憲意見広告運動に、毎年、全面的に参加・協力してきました。今年も5月3日の憲法記念日に『読売新聞』全国版、『沖縄タイムス』、『琉球新報』の3紙に、全面広告を出しました。これまでは、全国紙の『朝日』、『毎日』のほか、イラクに地元自衛隊を送っていた地域のローカル新聞、『北海道新聞』、『東奥日報』、『河北新報』などに意見広告を載せてきたのですが、今年ははじめて『読売』に掲載したのでした。
 九条の会は、全国で5000も組織され、広がり続けているとのことです。これは実にいいことではありますが、しかしそれを喜んでいるだけでは事態はよくなりません。先日、九条の会の呼びかけ人の一人である鶴見俊輔さんと夜遅くまで、この会場のすぐ近くにある山ノ上ホテルでお話しする機会があったのですが、その時の鶴見さんのお話では、この会の9人の呼びかけ人は、みな、運動の見通しについて楽観視はしておらず、場合によると国民投票で敗れることもないとは言えないという認識を共有しているとのことでした。もちろん、それで終わりではなく、「大きな少数派」として、自分たちの主張を続けることにはなるが、かなり厳しい事態の予想もしているというのです。
 では、どうすべきなのか。『読売』に載せた意見広告では、私たちの主張に対して反論や疑問を持つ人もおられるだろう、どうぞご意見を寄せてください、誹謗中朝は別として、意見を寄せられた方には、すべてご返事を差し上げます、議論を起そうではありませんか……という呼びかけもしました。5月3日の当日、電話での意見もたくさん来るだろうと予想し、臨時電話まで引いて用意をしました。確かに、『読売』の読者からの電話も少なからずあったのですが、一番多かったのは、この意見広告運動に賛同して寄金を送ってくれた人びとだったのです。
 今朝の『朝日』を見たが載っていなかった、では『毎日』かと思ってそれも買ってみたが載っていなかった、どうしたのか、募金が足らなかったのか、といった問い合わせです。『読売』に載るなどということはあり得ないと、最初から視野に入っていなかったわけです。
 確かに『読売』は、憲法改悪を社是に掲げ、そういう主張の先頭に立ってきた全国紙です。その読者には、『朝日』や『毎日』の読者に比べて、あるいは改憲論者が多いのかもしれません。しかし、だからといってそれを無視していい訳がありません。反改憲の人びとが集まって意見広告を出し、仲間がこんなにたくさんいたのかと喜び合う、というだけでは、一時の元気づけにはなるかもしれませんが、事態を変えることにはならないでしょう。問題は過半数を超えるかも知れない改憲論者の人びとと議論し、説得し、反改憲の側に変えさせることが必要なのです。とすれば、改憲論の先頭に立つ『読売新聞』を読んでいる人びとに、私たちの主張を伝え、それらの人びとを相手に議論を起すことは、とても重要ではないでしょうか。私たちは、それをやろうとしたのです。
 『読売』の読者からは、誹謗中傷も少なからずありましたが、真剣な態度での反論、疑問も多く寄せられました。なかには自衛官からの手紙もありました。また、こんな広告が載って驚いたという中学生から反戦バッジの注文もありました。私たちは寄せられた反論、疑問を整理し、「非武装で侵略されたらどうするのか」とか「テポドンや中国の軍拡に備えなくていいのか」とか、「戦後日本の平和は、九条ではなく安保体制のおかげではないのか」とか、10項目の問題点にまとめ、それへのわかりやすい回答、返事を執筆、編集して、こういう『武力で平和は創れない――改憲必要論についての私たちの見解』というパンフレット(右の図)を作りました。意見や反論を寄せてきた『読売』の読者には、連絡先が明記されている限り、全員にそれをお送りしました。そのパンフについても意見は届き始めています。議論が始まっているのです。
 パンフレットははじめ2000部を作ったのですが、注文が殺到し、たちまち品切れとななり、増刷に増刷を重ね、発行から一月も経っていない今、1万部に達しようとしています。これにも正直言って驚いています。
 反改憲の仲間たちが、九条の会や意見広告運動に大きく集まる、意思表示をする――それは大切なことです。しかし、そこに留まるのではなく、その外側にいて、憲法を変えることも必要ではないか、と思わされている膨大な人びとに接触し、議論し、説得し、その考えを変えてもらう努力、それに力を注がねばならないでしょう。皆さんも、これまで、障害者や患者の間で、この会を拡げるための努力を続けてこられれたと思いますが、もう一回り大きく、憲法のことなど考えてもいないという人びとや、憲法改定も必要ではないかと思っている人びとの意見をどう変えてもらうか、についてお考え下さるよう、提案します。
 秋元さんのお歳を聞いて驚きました。私より四半世紀も前に生まれておられて、まだ現役で元気いっぱいに活動しておられる。私も年寄り顔をして休んでもいられないな、と、これからもできることを続けてゆくつもりです。ありがとうございました。

(会合の後、この『市民意見広告運動」のパンフレットを入手したいという申し出を何人もの方から頂きました。下記にご注文下されば、すぐお送りします。振替用紙が同封されていますので、それで後から代金1部300円と送料をお送り下されば結構です。申し込み先:151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-29-12-305 市民意見広告運動 電話&FAX: 03-3423-0266 および 03-3423-0185 e−mail: info@ikenkoukoku.jp     URL:  http://www.ikenkoukoku.jp/ )