厚生労働大臣 田村憲久殿 2021年4月19日 尊厳死法いらない連絡会 やめて!!家族同意だけの『脳死』臓器摘出!市民の会 代表 弁護士 冠木克彦 〒530-0047 大阪市北区西天満1丁目9‐13‐501 冠木克彦法律事務所気付 TEL 06-6315-1517 「病床ひっ迫時における高齢者施設での施設内感染発生時の留意点等について」(事務連絡)に対しての意見書  私たちの団体はこれまで「脳死」による臓器摘出に反対し、「尊厳死法」を批判しその法制化に反対してきました。  「脳死」の問題については生きている人から臓器を摘出する行為であり、「尊厳死法」は「脳死」にも至らない人を明確な基準もない「終末期」として「早く死なせる」ことを合法化し、高齢者や障がい者、難病患者の生きる権利を否定するからです。  厚生労働省が、去る1月14日付けで各都道府県、保健所設置市、特別区の衛生主管部あてに通知された上記表題文書に対して、私たちは重大な問題があると考え、この意見書を作成するに至りました。  この事務連絡が出されて以降、各区長あるいは保健所が施設に対して、高齢者はPCR検査で陽性になっても自施設で介護、看護するように通達を出しています。  特にDNAR(患者本人または代理人の意思決定を受けて心肺蘇生を行わないこと)を取っている人については、DNARの本来の意味を逸脱して「治療しないことに同意している」と勝手に解釈して病院に搬送しない方針を打ち出しているところさえ出ています。  近年、高齢者施設の入所の際、DNARを書くことが条件になっていることが多くなっています。この現状のもとでは高齢者施設の入所者は、陽性になっても病院に搬送されない、ということを意味しており、もし施設で看ることになれば、クラスターが発生することは必至です。  感染対策を取るように財政的援助をすると事務連絡には書いてありますが、そのような財政的援助だけでは感染対策は決定的に不十分です。2~3倍の人的保障と経費保障やさまざまな整備がなければ、手洗い、防護等の対策は実行できません。それは介護施設であっても病院と同様です。  さらに、施設入所中の高齢者を入院させないということは、治療を受けさせないということです。現状では、新型コロナの治療に使用している薬剤は、介護施設の施設医では処方できない仕組みになっています。入所中の高齢者は、医療から排除されるということを意味してあまりにもひどい対応と言わざるを得ません。 日本国憲法で保障された生きる権利さえ守られない事態を、国がすすめるとはどういうことでしょうか。  厚労省はワクチン接種を進める一方で、陽性者の保護隔離や濃厚接触者のPCR検査の縮小を行っており、そのことで、むしろ感染拡大を助長させることになっています。また陽性者の状態の急変に備えることができないことにもなっています。  今すべきことは、感染者の保護隔離対策です。  そのためには、緊急的に感染症を受け入れる専門病院や保護施設を設置することを求めます。猶予はありません。今の日本では可能なはずです。  新型コロナウイルスに感染した施設入所者に対して、適切な救命治療を尽くし、入所者間での感染が蔓延しない対策を講じてください。                                  以上