〒197−8511 東京都福生市加美平1丁目6番地1 公立福生病院   代表者 院長 松山 健 殿 福生病院透析中止死亡事件 緊急抗議声明 2019年3月15日 大阪市北区西天満1丁目9番13号パークビル中之島501号 冠木克彦法律事務所気付               やめて!!家族同意だけの「脳死」臓器摘出!市民の会               尊厳死法いらない連絡会                  代表  弁護士  冠木 克彦  私達は、尊厳死法や延命治療打ち切り等、患者を早く死なせる政治的・社会的動きに反対して活動している市民団体であるが、3月9日「いまなぜ『終末期』及び『事前指示書』なのか」のテーマで集会を開催したところ、直前に、貴病院で発生した透析中止死亡事件の報道に接し、驚愕とともに激しい怒りを禁じ得ず、以下のとおり、集会参加者の賛同を得て、緊急抗議声明を送ります。 記 1.事実経過 (1)新聞報道によると、2018年8月9日これまで他院で人工透析治療を受けてきた腎臓病患者の女性が、公立福生病院腎臓病総合医療センターへ、これまで受けてきた透析の血液浄化用の針を入れる分路(シャント)が閉塞したため、従来の診療所の紹介状を持って訪れた。担当外科医は、@首周辺に管(カテーテル)を入れて透析治療を続けるか、A透析治療を中止するか、の2つの選択肢を示し、透析を中止すれば「2週間ぐらいで死を迎えます」と説明した。女性は透析中止を決めて意思確認書に署名し、後に、看護師と夫の前でも意思を確認し、夫は迷いながら中止を承諾した。その後、8月14日「息が苦しい」と貴病院に入院し、15日に夫に「透析中止を撤回する」と話したため、夫は治療再開を外科医に求めた。外科医によると,女性は「こんなに苦しいのであれば、透析をまたしようかな」と数回話し、外科医は「するなら『したい』と言ってください。逆に、苦しいのが取れればいいの?」と聞き返し、「苦しいのが取れればいい」という女性に鎮静剤を注入。女性は16日午後5時11分死亡した。 (2)上記外科医を含む医療関係者は、記者の質問に以下のとおり答えている(要旨)。     ・なぜ、死ぬ選択肢を提示するのか         腎不全に根治はない。根治ではない「生」に患者が苦痛をおぼえる例はある。患者の同意をとらずに透析導入にすすむべきというような無益で偏った延命措置がとられている。     ・学会や国のガイドラインから外れている         ガイドラインは「説得して透析を続けさせよう」という「継続ありき」だ。変わっていかなければならない。         本人の意思確認はできていて、(医療)は適正に行われた。(この女性を含めて)透析をしている人は「終末期」だ。本人が利害をきちんと理解しているなら(中止は)医療の一環だ。 (3)なお、貴病院では、過去に同じ提案を20名に対して行い、死亡者が出ていることが報道されている。 2.医師は「死の選択」を提示できないだけでなく義務違反である。 (1)医師は、医療及び保健指導を掌ることによって公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保するものとする(医師法第1条)。したがって、医師は患者を死なせる方向にリードしたり、死なせる裁量権は有しておらず、患者の救命のために職責を尽くす義務を有している。なお、「救命」という言葉に対し「延命」という言葉を対置して、「延命」は中止してもよいという考えがあるが、中止すれば死亡するわけであるから、延命も生命の維持として救命に含まれており、法的正当性のない延命の中止は殺人罪を構成する。 (2)本件で、女性患者に提示した「透析の中止」は「死」の提案であり、自殺の教唆もしくは幇助に該当する。新聞記事によると、この女性は「抑うつ性神経症」で、自殺未遂が3回ある人であって、この事実を死の提案をした医師が知っていたなら、透析方法で首周辺のカテーテル挿入方法以外に数種の方法があるのに、女性が受け入れるのに最も負担に感じると予想される@案を当初から提示したのは、A案を強制するようなものであって、殺人の問題にまで発展するような重大な違法行為を当該医師は行っている。 (3)ところが、記者の質問に対し、透析について「無益で偏った延命措置」と述べ、透析をしている人は「終末期」だという驚くべき主張をしており、この考えの上で本件「死の提案」がなされていることをみると、本件女性患者に対して、医師らは透析をしないことが正しい方針と考えており、したがって、女性が透析の復活を願っても無視して鎮静剤を投与して死亡させ、平然と「医療行為の一環」と嘯いている。女性が透析の復活を求めたにもかかわらず透析を復活せずに死亡させたのは殺人行為ともいえる対応である。 3.深刻なる反省と厳格な再発防止策を求める。 (1)まず、今回の事態並びに過去の20例以上の問題についても、病院長は承知していた旨の新聞報道もあり、全て病院ぐるみで実行されていたことが明らかである。    貴病院は、医療は患者の生命を助ける職務であるという当たり前の原点に立って、何が誤りであったかという原因までさかのぼって深刻な反省がなされなければならない。 (2)そして、その上で、患者の生命をないがしろにするが如き一切の方策を禁止して、ひたすら患者の生命を助ける当然の医療方針を定めて、厳格な再発防止策をたてることを求めるものである。 以 上