京都市長 門川大作殿 2017年8月23日 尊厳死法いらない連絡会 やめて!!家族同意だけの『脳死』臓器摘出!市民の会 代表 弁護士 冠木克彦 〒530-0047 大阪市北区西天満1丁目9‐13‐501 冠木克彦法律事務所気付 TEL 06-6315-1517 京都市の「終末期医療に関する事前指示書」に関する 公開質問状 さきに私たちは、「事前指示書」の回収を要望の理由を述べました。次に「事前指示書」について京都市行政がどのように考え配布されているか具体的に質問いたします。9月30日までに上記まで文書での回答を求めます。 1.「事前指示書」を配布されたことについて 行政がなすべきことは、死期が迫っている人に対しても、誰でもが安心して医療機関で診てもらえるように保障することです。 質問 (1)「事前指示書」は医療の切り捨てにつながりますが、承知の上で配布されているのですか。 (2)なぜ、批判の声があってもわざわざ勧めるのですか。 2.貴市が、国立長寿医療研究センターの「事前指示書」を配布されたことについて 国立長寿医療研究センターは社会保障費削減を目的とした「地域包括ケアシステム」推進の旗振り役をしています。2016年4月14日に、日本臨床救急医学会が救急隊の蘇生中止の基準作りを始めたとの報道の際、当センターの部長は、「自宅で看取る場合、蘇生処置を望まない患者が心肺停止になったら主治医や訪問看護ステーションに連絡する。主治医の死亡診断は翌日でもかまわないので慌てて救急車をよばなくてもよい」(朝日新聞)と話していました。当センターの「事前指示書」はとりわけひどい内容と考えています。 質問 (1)なぜ、国立長寿医療研究センターの「事前指示書」を配布されているのですか。 (2)2016年4月報道内容(「慌てて救急車をよばなくてもよい」等)をご存知ですか。 3.「事前指示書」の1(2)「終末期を迎える場所」の項目について 質問 (1)なぜ、この項目があるのですか。医療を受ける機会を狭めることになりませんか。 (2)病院、自宅、施設、病状に応じての選択肢で「自宅」を選んでいた場合、自宅で急に倒れた時でも「救急車をよべない」のですか。 (3)救急車が来てくれたとしても、病院に搬送してくれないのですか。 (4)行政としては、病院に搬送するよう指導するのですか。 4.「事前指示書」の2(3)「抗生剤の強力な使用」の項目について 質問 (1)「希望しない」を選択した場合、合併症の肺炎等を治療してもらえないということですか。 (2)「本人の意思」という形で素人の意思が絶対的な指示になるのはおかしくないですか。 (3)肺炎になっても抗生物質を使用すれば、回復するかもしれないのに、本人の意思だからといって治療を打ち切ることを行政はよしとするのですか。 (4)本人が「治療を希望する」意思変更の表明ができない状態になった場合でも、治療を保障してもらえるのですか。 (5)「本人の意思を尊重する」との理由で治療を打ち切る医療機関や医師に対して、行政はどのように指導監督するのですか。 5.「事前指示書」の2.(2)「延命のための人工呼吸器」2(4)「胃ろうによる栄養補給」の項目について 人工呼吸器や胃ろうがなければ生きられない患者さんたちが社会の中で精一杯生きておられます。 質問 (1)これらの項目が挙げられていることで、生きにくいと感じておられることを、貴市はどのように考えていますか。 6.以下のような具体的事例に遭遇したとき、「事前指示書」に記載があった場合、どのように対応されるのかご回答ください。 質問 (1)上記の場合、終末期と判断されるのでしょうか。終末期の定義はいったいどのような状態を指すのですか。 (2)脳梗塞を起こす前の事前指示書の意思が絶対的とされるのですか。 (3)脳梗塞を起こす前には患者はこのような状態を想像できていませんでした。しかし、心の中で治療を希望しても、意思を表出できない場合は、人工呼吸器装着、抗生物質の使用、胃瘻による栄養補給等の治療をしてもらえないのですか。(いつでも修正・撤回できると書いてありますが) (4)医師AとBはもうだめだと判断し、医師Cは治療すれば回復すると前向きで、医師によって判断は異なりました。この場合、医師AとBが担当医になれば治療してもらえなくなるのですか。 (5)何も治療しなければ、どんどん全身状態が悪化し、数週間後に亡くなることになりかねません。その場合、医療は最善を尽くしたと言えるのですか。本人が望んだ「尊厳ある死」ということになるのですか。 (6)この場合、明らかに死期が早められたことになりませんか。 (7)このような治療の打ち切りが行政が進めようとしている「看取り」なのですか。 (8)救急車を呼んだら来てくれるのですか。 (9)心臓マッサージをしてくれるのですか。 (10)病院に搬送してくれるのですか。 (11)一分一秒争うときに「事前指示書」を確認して、主治医の指示を受けて、救命するかどうかを決めるのですか。(事前指示書を探している場合ではないはずですが) (12)救急事態での対応に対して、素人である「本人」の書いた事前指示書が絶対的な「指示」になるのですか。 (13)救命処置後、病院に搬送されたとして、気管内挿管する、人工呼吸器をつける、点滴による水分補給する等の項目で「希望しない」という「事前指示書」があればどうなるのですか。 (14)(13)で何もしないとなれば、救えたかもしれない命を見殺しにしてしまうことになりませんか。終末期はどんどん早められてしまいませんか。これでいいのですか。 7.「事前指示書」は医師法に照らして医の倫理を覆すことについて 医師法第1条は「医師は、医療及び保健指導を掌ることによって公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。」と医師の任務を定め、更に同法第23条では「医師は診療をした時は、本人またはその保護者に対し、療養の方法その他保健の向上に必要な事項の指導をしなければならない。」と保健指導を行う義務を定めています。更に医療法第1条では「・・・・医療を提供する体制の確保を図り、もつて国民の健康の保持に寄与することを目的とする」と医療機関の開設とその管理に関しての目的を定めています。 貴市の「事前指示書」配布の姿勢は、これまで培ってきた医の倫理を覆し、医師自らが患者の命に手を下し、医師法、医療法上からも導く事のできない内容につながります。 質問 (1)医師法・医療法は助けることのみ定めています。「事前指示書」はこの医師法・医療法の精神と整合しないのではないですか。  以上