家族同意だけの臓器摘出の中止を求める声明 1、臓器提供者(ドナー)の救命治療は尽くされているのでしょうか。  臓器移植法改悪から1年が経過しました。この間家族同意だけの臓器摘出は49例(7月16日現在)となっています。殆どの事例について救命治療が尽くされたかどうかが明らかにされないままです。それどころか医療機関すら公開されないで、国民にはまさに密室の臓器摘出元年であったと言わざるを得ません。特に15歳未満の臓器提供第1例目は、6歳以上である事と交通事故で入院されたことが公表されていますが、6歳未満と6歳以上では法的脳死判定の第1回目と第2回目の時間間隔が24時間と6時間の違いがあります。医療機関名を公表し、記者会見などで6歳以上であった事の証明や、公平、適切なる対応で法や規則、ガイドラインを順守して実施された事の発表が必須でなければなりません。又患者の交通事故入院の公表は、一部週刊誌で自殺が報道されています。週刊誌の報道が事実であれば、家族による臓器提供承諾迄の手続きは大きく変わることになります。自殺原因の調査や虐待の有無についての調査は必須となります。厚生労働省や日本臓器移植ネットワーク、病院は国民から示された疑義について当然調査して真実を公表する責任があります。  そもそも「脳死」は一律に人の死でない事は、これまでもそうでしたが、改悪法案の審議の中でも確認されている事です。臓器移植を前提にしたときのみ厳格な脳死判定結果で死亡を確認すると言う事ですが、現行の脳死判定基準では意識レベルの完全な消失は判定できないとの見解も多くあります。脳死状態と言われても意識がある、とか痛みを感じる等の徴候に対する疑問に対し未だ行政や移植推進の医学者たちは明確な答えを出していません。このような状況下で一方的に進められる家族同意だけの臓器摘出には強い人権侵害の疑いを感じます。 2、拙速でガイドライン違反の臓器提供誘導が続いています。  私達は独自に情報公開請求をしてこれまでの事例の4例について資料を取り寄せ検証しました。その結果家族同意第23例目では家族同意手続き完了一日前に脳死判定を決めている事や、第34例目についてはガイドラインで定めている「脳死とされうる状態」の確認をする前に臓器提供の確認を求めています。15歳以下の提供事例でも新聞報道からは法的脳死判定の3日前にガイドラインで定めている「脳死とされうる状態」の確認もしないで臓器提供を誘導しています。  この様な実態を招く原因は家族同意だけの臓器摘出を認めた現行の改悪法に起因しています。併せて更に情報を極度に統制し病院名まで非公表としたり、救命治療の詳細等の透明性を恣意的に奪った行政当局の姿勢による密室化も起因しています。 私たちは一刻も早く本改悪法による家族同意だけの臓器摘出を中止することを求めます。 以上  2011年7月16日  臓器移植法改悪一年  いのちの尊さを問う緊急市民集会参加者一同