報告「昏睡・瞳孔散大の患者が周囲の話を聞いていた」 2011年2月19日  冠木 克彦 1.「脳死」判定基準  @深昏睡  A瞳孔固定、瞳孔径4mm以上  B脳幹反射の消失  C平坦脳波  D無呼吸テストによる自発呼吸消失  E再確認:少なくとも6時間を経過した後に再確認 2.深昏睡の確認方法と判定(参照 脳死判定ハンドブック、148頁 )  <確認法>  以下のいずれかの方法で疼痛刺激を顔面に加える。  1)虫ピンによる疼痛刺激  2)眼窩切痕部への指による強い圧迫刺激  <判定>  全く顔をしかめない場合、JCS300、GCS3で深昏睡と判定する。 3.JCS300、GCS3とは何か  Japan Coma Scale、Glasgow  Coma Scaleはいずれも意識障害の程度を数値化したものでJCS300、GCS3は最重症度を表し、脳死判定条件の深昏睡はこの最重症度である。  JCS300は   V.刺激しても覚醒しない状態  300.痛み刺激に反応しない  GCS3は   E1開眼せず、V1発語せず、M1全く動かず 4.日本大学大学院 林成之教授(前日本大学板橋病院)「人間の脳が求めている脳低温療法の新たな進化」(日救急医会誌2010.21:207-29)に 「従来、救命さえ不可能と思われていた瞳孔散大患者の中に、助かった後に外からの刺激に反応しない昏睡状態と判断していた時期のことを、自分は反応できなかったが回りのことは理解していたという患者が現れたことである。」(P.209) 「意識障害の判定にはもう一つの疑問がある。それは、急性期の意識障害はJCSで評価できても、慢性期の植物症などにおける意識障害の評価には使えないという問題である。脳低温療法を行うようになって、瞳孔散大患者で社会復帰する患者の中には、瞳孔散大時に周りのことや会話の内容を理解していたという訴えを何度も聞くことがあり、外からの刺激に対する反応で意識を評価する意識の判定法が必ずしも正確でないことを認めざるを得ない。」(P.211) つまり、深昏睡状態の患者の中に、刺激に対して自ら反応できないが、外の話を聞き理解し記憶している患者の存在が多数確認された。 5.関連する事実   1)2009.12.13サンデー毎日、ベルギーで植物状態から生還した男性が「意識はあった」と仰天の証言   2)2010.2.5読売(夕)植物状態でも意思疎通可能か。呼びかけ反応fMRIで確認(ケンブリッジ大など研究)   3)土門拳氏の例   4)柳田邦男氏の息子さんの例   これらの諸事例は「脳死者」から臓器摘出する時に麻酔をかける事実は「意識」の問題と関係しているのか? 6.少なくとも、私たちには知らされていなかった。 「脳死」の深昏睡とは、無意識と同義と思わされてきた。 しかし、「無意識」ではない患者を「脳死」判定してきたのではないのか(ザック君の例)。 これらの事実は、「脳死」は人の死ではないという事実を強く推認させるものであり、「無意識」でない人を「脳死」判定して臓器を摘出したとすれば、殺人そのものとなる。 「脳死」は人の死ではないことを、より強く主張して、本質的な議論を深めるとともに家族同意だけの臓器摘出を中止すべきである。