日の出感想

[背景]
 谷戸沢棄物広域処分場。1984年に稼動を開始した処分場は日の出町の玉の内に作られた。ここは緑豊かな大地であり、ホトケドジョウ・ムササビ・フクロウの住む豊かな森であった。冬イチゴも良く採れたという。結局作られてしまい、今では、無残にもドーム状に切り開かれ、昔のかけらは何処にも伺えない。
 この処分場は、毎日100トントラック100代分の焼却灰と不燃ゴミが埋められ続けた。焼却灰には当然ダイオキシンが含まれている。
 この処分場は「一般廃棄物広域処分組合」によって管理されている。処分組合は23区、諸島、日の出町、奥多摩町、五日市町、檜原市、秋川市を除く東京都26市1町の自治体で組織された、一般廃棄物の最終処分場を確保運営するための組織。所在地の日の出町のゴミはここには持ち込まれていない。代表管理者は各役場持ち回りで行う。持ち回りのため、担当者は腰掛け程度にしか考えておらず、責任の所在も非常にあいまいである。

 1992年、谷戸沢一般廃棄物処分場近くの住民宅にある40年も前から飲み続けていた井戸水が、数年前から臭くなって飲めなくなっていた。役場の訊ねに言ったが「処分組合に行きなさい」と言われ、処分組合に行くと「役場に行きなさい」とたらいまわしされ、回答が得られなかった。水質検査を行った所、「TBXP」「TCEP」が検出された。「TBXP」とはプラスチックやビニールなど石油化学製品を作る時に燃えにくくするための難燃剤、「TCEP」は脆さをおぎない弾性や塑性もたせる為に使う人工的な添加剤(可塑剤)である。これらは当然自然界には有り得ない物質であり、不燃ゴミとして粉砕されたものから溶け出した物質である。周囲にある人工的な物=谷戸沢一般廃棄物処分場が原因と考えられる。処分場には汚水が漏れないようにゴムシートをひいているのだが、たった1.5ミリのゴムシートだった。穴だらけになっているに違いない。実際に処分場を見学した人の目撃によると、修理に修理を重ねても修理不全で、ゴムシートのしたから地下水が染み出ている所があったそうだ。最新式の処分場では5層構造のゴミシートがあるが、それでも耐久年数は50年という説明だった。いずれは我々の生活 形態に戻ってくる。
 処分組合は、谷戸沢棄物広域処分場はゴミに対して厳しくチェックをしていると公言していた。処分場を見学した人の目撃によると、医療廃棄物、15cm以上の不燃物など、明らかに違反したゴミが見つかったという。厳しいチェックは嘘で、殆どザルではなかったのか、と簡単に想像出来る。見学時に焼却灰が風に舞って空高く舞いあがっているのを見て恐くなったと言う。実際、処分場の風下の住民にガンが多発しているという話もある。

 水は不純物が多くなると電気伝導度が高くなる。純水は当然電気伝導度は低い水である。水の汚染を調べる簡易的な方法に電気伝導度を図る方法があり、水を調査した所、高い値を示した。この事実に対し、日の出市長は、味噌汁でも電気伝導度はふれる(おなじような値になる)」と味噌汁を持って回ったらしい。彼はどちらを向いて市政を行っているのだろうか。

 この地区は東京都民の水源である。多摩川の川底からダイオキシンが検出された話もあり、多くの毒が川を流れて都民の上水として、そして東京湾に流れていく。
 汚水が漏れている事に対して処分組合は「汚水は漏れているが、敷地内なので問題が無い」と噴飯物の暴言をも吐いている。彼らは地層と言う物を全く分かっていないのだろうか(分かってないふりだろうが)。この論理は、放射能が漏れても敷地内だから問題ないと言っているのと同じだ。

 第二処分場の二つ塚処分場建設計画が持ちあがったのは1991年。第一処分場の汚水漏れをどう解決するのか見通しも立っていないのに、第二処分場を建設を決定した。この建設は多くの人が反対し、処分場の建設は大幅に遅れ、現在も第二処分場はまだ完全には完成していない。
 だが、ゴミの搬入は行われた。この時、ゲート前では多くの人が搬入ダンプを阻止をするために集まっていた。当日ダンプはやってこなかった。廃棄物を搭載したダンプは前日に、第二処分場と道を繋ぐトンネルの中に待機していたのだ。これには皆、憤慨した。
 「完成をしていない処分場にゴミを持ち込むなんて、これは不法投棄じゃないか」地元の人は怒る。私もそのとおりだと思う。何故、そんなに急ぐのか?第一処分場が満杯になったからという単純な理由の為である。

[感想]
 谷戸入の森を登って行く。頂上に近づいた頃、鉄線と木の杭による柵が見える。この柵の敷地内が谷戸沢第二処分場だ。稜線を連ねていた広大な土地が処分場と化した。木々の隙間から、処分場を垣間見る事が出来る。取り返しのつかない破壊が行われてしまった。 トラスト地があるのは処分場の一部の山の谷間。このトラスト地に住民票を移した方がおり、通行権が保証されているという事だった。トラスト地に近づくと、黄色いハンカチが迎えてくれる。それぞれのハンカチには処分場に対するそれぞれの思いが記されている。私もハンカチを購入して思いを書込む。ハンカチを通り過ぎると風の塔が静かに建っている。実に芸術的な作品。このトラスト地にはステージも有る。ここで野外コンサートも開いた事があるそうだ。
 谷間のトラスト地から谷の上を見ると、数人の警備員がこちらを監視している。今日、見学に来る事を事前に伝えてあった事も有り、人員を配置したのだろう。なにやら書込んでいる警備員もいた。御用学者が強硬な岩盤と言っていたらしいが、切り取った箇所が崩れている。素人の儂が見ても強硬な岩盤とは言えそうもない。それともあれを強硬な岩盤と言うのか。この辺りの石は蛇紋岩という種のもので、非常に脆い種類であるらしい。
 第二処分場を山の上から見る。まだまだ完成には程遠い。「廃棄物を安全に貯留する」目的の貯留堤など影も形も無く、「浸出水を下水排除基準以下まで処理する」浸出水処理施設までの配管も終了していないそうだ。この状態でゴミを持ち込むとはどんな論理なんだろう。

 この問題は日の出の問題であると共に、下流に住む多摩川水系の人々の問題でもある。多くの住民が共に立ち上がる日が近日中に来る事を願っている。

 二つ塚処分場を山から見る。山の稜線が幾つも見え、多くの自然を破壊した様子がよくわかる。廃棄物は既に持ち込まれたが、まだ完成していないため工事が急ピッチで行われている。


















 谷間のトラスト地。実に芸術的な風の塔が静かに建っている。30m向こうは二ツ塚処分場が広がっている。













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