厚生省、環境庁 血液中ダイオキシン類測定分析に関する公開質問 1999/08/11

 「行政の測定するダイオキシン濃度は低すぎる」、ダイオキシンで揺れる新利根、所沢などダイオキシンで揺れる住民はいつも疑惑を感じている。血中ダイオキシン濃度が分析される度に、住民側の測定値と行政側測定値はいつも大きく食い違い、行政側の値は常に低く、ひどい場合には100倍もの差が生じる例もあるためだ。
 特に茨城県が環境庁の指導の元に行われた城取清掃工場周辺住民血中ダイオキシン類濃度は特に低い値を示し、被測定者120人のうち77%にもあたる住民の2,3,7,8,TCDD、4塩化ダイオキシンが1[pg/g]の検出値以下の結果となった。一般的に先進諸国の2,3,7,8,TCDDダイオキシン濃度の平均は3〜6[pg/g]あり、一般的日本人の2,3,7,8,TCDDダイオキシン濃度の平均は6[pg/g]程度と言われている。この事実を考えると、城取清掃工場周辺住民のダイオキシン類濃度は著しく低い事になる。
 このような低い値は日本では離島など汚染の低い人でも考え辛いダイオキシン類濃度であり、まったく問題外。こんな測定値を公開する行政の常識を疑う。佐高信さんが良く言う「異常識」を持つ役所に常識を求める事、事態が間違いなのかもしれない。

 「行政側の測定方法に欠陥があるのではないか」疑問を感じている住民は測定方法を勉強し、厚生省、環境庁に公開質問をぶつける事にした。
 質問内容は次の通り。

環境庁長官    平成11年8月11日
 真鍋 賢二 様
     血液中のダイオキシン類測定分析に関する公開質問

竜ヶ崎自然と環境を守る会 、グリーンアクション埼玉(上福岡)、西化学農薬被害研究会(九州久留米市)、新利根町ダイオキシンから子どもの未来を守る会、所沢にきれいな空気を取り戻す会、化学物質から赤ちゃんを守る会(志木)、三芳の環境を考える会(三芳) 狭山のお茶を守る会(狭山)、子どもの身体からダイオキシンをなくす母の会ミュー(川越)、Dネット、ルミナス管理組合ダイオキシンを考える会(入間)、複合汚染被害者の会(所沢)、所沢の保育環境を良くする会、環境ネットワーク21(清瀬)、所沢農家 荻野茂喜、カネミ油症患者の会 矢野トヨ子、清瀬市市議会議員 布施哲也、大阪府能勢町議会議員 八木修、日本全国のダイオキシン汚染に苦しめられている住民有志一同

 日本におけるダイオキシン類測定分析の以下の重大な問題点に関して、ここに公開でご質問致します。

質問1:国(貴庁)、県(茨城県)および地方行政(所沢市)などによる人体血液中のダイオキシン類測定分析結果が、住民側の国内外の測定機関による分析値に比べ茨城での最大の相違で1/100、また、所沢周辺の平均値で約1/3と小さくなることについて、税金の無駄遣いを防ぐ意味でもこの相違の原因を糾明し、国民に対して明確に行政による測定分析値が正しい事を証明する必要がある。談合を繰り返してきた国内測定分析会社の技術力が科学的に信頼できるレベルにあるのか、貴庁の公式な見解を求めます。

質問2:貴庁国立環境研究所指導による茨城県の血液中ダイオキシン類汚染調査では、ダイオキシン汚染が深刻な城取清掃工場周辺被測定者120人の実に77%にあたる住民の四塩化ダイオキシン濃度が、N.D.すなわち1pg/g脂肪以下であり、平均が0.66pg/g脂肪とドイツ、アメリカなどの先進諸国に比べ極端に低く、五塩化の1.82pg/g脂肪、六塩化の2.99pg/g脂肪も国内外の平均に比べ著しく低くなった。焼却が多く汚染がひどい日本で何故これほど低くなり、焼却の少ないダイオキシン汚染の少ないとされる諸外国でのこれら四、五、六塩化物が高いことは、事実とすれば、極めて重大なことであり、この理由の科学的な説明を求めます。

質問3:国内のダイオキシン分析のプロセスでは、とくに血液中ダイオキシン濃縮過程において、窒素ガス吹き付けにより溶媒を吹き飛ばしているのか? もし、貴庁の指導により吹き付けを実施しているのであれば、上記の四から六塩化ダイオキシンが著しく低い原因ではないのか? 貴庁の明確な回答と、この指導マニュアルを作成した実質的な責任者は誰かの公表を求めます。

質問4:貴庁が指導している茨城県調査での脂肪含有率最大値は、0.74%と異常に高く、住民側およびこれまでの国内外の調査における脂肪含有率の最小値0.12%に比べると、実に6倍以上という常識では考えられない数値だった。脂肪含有率は、ダイオキシン類測定値に重大な影響を与える数値であり、この最大数値の信憑性を示す医学的データと抽出マニュアルの妥当性を示して下さい。
 
質問5:厚生省では、能勢町のダイオキシン汚染、所沢での野菜およびお茶の汚染などに際し、常に「健康にすぐさま影響がない」というコメントを繰り返してきたが、九州の三西化学農薬被害事件で地下水が汚染された時、これ位の量は一生飲み続けても大丈夫と言われ、その後、沢山の住民がガンで亡くなられたことと、その時、厚生省は何も責任を取らなかった事を考えると全く納得がいかない。ダイオキシンに関して、「健康にすぐさま影響がない」というコメントは、将来に亘った安全宣言なのか? それとも、将来は安全ではないという宣言か? 貴庁の公式な見解をお聞かせ願いたい。

 以上、ダイオキシン類汚染の重大性と緊急性を十分に認識され、血液のダイオキシン類測定分析に関しては、早急に分析方法の再検討と海外の信頼できる測定分析会社のデータと国際クロスチェックを実施して、これまでの測定分析のすべてをゼロからやり直す事を強く要望します。 なお、本日ご回答いただけない部分に関しては、8月20日までに正式に文書によるご回答の程、よろしくお願い申し上げます。


 環境庁の担当者は日本のダイオキシン汚染の深刻さをまったく認識していないような発言が目に付いた。所沢のくぬぎ山を見学に行くと木々が枯れているのが目に付くが、環境庁に1人がくぬぎ山にいったが「木々が枯れているのは気がつかなかった」と言う驚きの発言もあった。かれはずっと下を向いて歩いていたのだろうか。
 西化学農薬被害研究会の方が「あなた方が住民の健康を守ろうとしないでどうするのか」と涙ながらに訴えた。



環境庁と住民。右が住民側、左の5人が環境庁だ。多くの住民が集まり、行政側の測定
値への疑問をぶつけた。


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