1994年  12月 1日  自民党の国会議員が「戦争謝罪国会決議」(「戦後50年国 会決議」)に反対して「終戦50周年国会議員連盟」(会長 ・奥野誠亮元法 相)を結成 〔95 年1月31日付「活動方針」の一部〕 「とくに、 戦後、占領政策や左翼勢力の跳梁によってもた らされた、 一方的なわが国に対する断罪と自虐的な歴史認 識を見直し、 公正な史実の検証に基づいて歴史の流れを解 明し、 日本および日本人の名誉と誇りの回復を期すべきで ある」 1995年   2 月21日  新進党議員が 「戦争謝罪国会決議」に反対して「正しい 歴史を伝える国会議員連盟」(会長・小沢辰男)を結成 (以下「正しい歴史・議連」と略す) 〔同議連設立趣意書の一部〕 「戦後50年。私たちのなすべきことは、先の大戦に倒れた 将兵と戦没者を慰霊することと、戦傷者並びに遺家族を慰 藉することが第1でありましょう。 そして、謙虚な反省と 誇りの下に、いまだ解明されていないわが国の戦争の歴史 を繙き、戦争の原因を突き止めることで再び戦争が起きな いよう英知をしぼることが求められています。そしてこれ らの歴史を後世が的確に審判できるよう、必要な作業に着 手する第1歩として本年を迎えるべきではないでしょうか。 17 世紀に着手された『大日本史』が20世紀初頭に完成を 見たように、21世紀の子孫たちにわが国近代の歴史検証の 端緒をつけることこそが、今日を生きる私たちの責任であ ると考えます」   6月 9日  衆議院が「歴史を教訓に平和への決意を新たにする決議」 (「戦後50年国会決議」を可決 7 月「自由主義史観研究 会」が発足。代表は藤岡信勝東大教育学部教授。 同研究会への「おさそい」にはこうある――私たちは、 本誌『「近現代史」の授業改革』を支え、 その内容を創 り出す組織的母体(執筆者グループ)として、このほど、 「自由主義史観」研究会を発足させました。 この会は、 イデオロギーにとらわれない自由な立場からの大胆な歴 史の見直しと、 歴史授業の改革を、多様な形で進めるこ とを目的としています」(『「近現代史」の授業改革』 は明治図書発行) 藤岡の創刊の辞の一部=「近代日本が行った戦争の評価 については、日本だけを悪者にする『東京裁判史観』も、 日本は少しも悪くなかったとする『大東亜戦争肯定史 観』も、 ともに一面的です。日本がとる政策によってあ の戦争は避けることができたのではないかという観点か ら、 戦争回避の可能性と現実性を歴史の具体的脈絡の中 で追究する必要があります。 右のような『近現代史』へ のアプローチを『自由主義史観』とよぶことにします」   8月15日  「戦後50年に当たっての首相談話」(村山富市首相) 〔備考 94年秋から95年夏までに地方議会で採択された「戦没者追悼感謝 決議(侵略・英霊賛美決議)」は、県議会で26、市町村議会で90(推定)。 同決議推進の議会への陳情攻勢がなされたのは、「日本を守る国民会議」 と「英霊にこたえる会」が展開した全国縦断キャラバンの働きかけによる。 これは「戦争謝罪国会決議阻止500万人署名」と車の両輪の関係で推進さ れた。今回の「教科書問題」をめぐる地方議会の動きも同じパターンでつ くられている。ふたつの国会議員連盟と諸右翼団体・右派論客の同盟が、 各地の《草の根保守》勢力を基盤に形成されているが、今回のキャンペー ンにおいては、それに加え、藤岡信勝東大教授が新手の右派知識人として 前面に出て現場の教師をリードしているほか、作家・エッセイスト・漫画 家などマスメディアで有力な人々をフルに活用しているのが特徴〕 1996年   2 月 6日  国連人権委員会の「女性に対する暴力特別報告官」の報 告がまとまり、 この日明らかになる(クマラスワミ報 告)。 第2次大戦中の旧日本軍の行為を「人道に対する 罪」と断定、元従軍慰安婦への国家としての補償と加害 者の処罰など6項目を「勧告」として列記   4月 9日  「終戦50周年国会議員連盟」が名称を変更し「明るい日本 ・国会議員連盟」の結成趣意書をつくる。ただし、組織の 結成は、 96年6月4日(以下、 「明るい日本・議連」と略 す) 会長・奥野誠亮、事務局長・板垣正(日本遺族会顧 問)、顧問・原田憲、藤尾正行、武藤嘉文、山中貞則、林 田悠紀夫 (96年6月3日、正式発足前日現在の加盟議員数 =衆議院・64人、参議院・52人、ただし、96年秋の衆院選 でメンバーに変更がある。たとえば、顧問の原田憲は落選、 同顧問の藤尾正行〔元文相〕は引退) 〔同議連結成趣意書の一部〕「開国以来、 国民の艱難辛苦 と幾多先人の献身と犠牲によって、その存立が守り抜かれ てきたわが国の歴史に対して、侵略国家として罪悪視する 自虐的な歴史認識や、卑屈な謝罪外交に対しては、決して 同調することはできない。(中略)安易に他国の見解に迎 合し追随することは慎むべきである」    23日  自民党の「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」 (小淵恵三会長)と、 新進党の「靖国神社参拝議員連盟」 (渡部恒三会長)の国会議員が、 春季例大祭中の靖国神社 にそろって参拝。自民党の88人(ほかに秘書などの代理参 拝が54人)、 新進党32人(同21人)の計120人で、現職閣 僚では中川秀直科学技術庁長官が参拝。倉田寛之自治相と 岡部三郎北海道・沖縄開発庁長官は、22日に参拝   5月28日  自民党の板垣正参院議員(日本遺族会顧問)が、 同党総 務会で、旧日本軍の従軍慰安婦問題が高校教科書などで取 り上げら れていることについて「未成年の女性を強制的 に慰安婦として働かせたと一面的に記述するなど、歴史の 真実に基づいたものでなくても歴史的事実として取り上げ ているものがある。検定のあり方も含め、もっと真剣に教 科書を扱ってほしい」とのべる   6月 4日  自民党の国会議員が「明るい日本・議連」を結成(衆参両 院で116人が加盟)。 総会後の記者会見で、奥野誠亮会長 が「従軍記者や従軍看護婦はいたが、『従軍』慰安婦はい ない。商行為に参加した人たちだ。戦地で交通の便を(国 や軍が)図っただろうが、強制連行はなかった」とのべ、 高校や中学校の教科書の記述を批判。事務局長の板垣正参 院議員も「性的虐待のイメージを植え込む教科書のあり方 はおかしい」と発言    27日  97年春から使用される中学校社会科教科書の検定結果が公 表され、 7冊すべての教科書に「従軍慰安婦」に関する記 述が登場   7月 2日  自民党の総務会で現行の教科書検定のあり方への批判が右 派議員から出る 16日  自民党はこの日の総務会で、現行の教科書検定に関して文 部省から聴取したが、検定のあり方への批判が出たため、 党文教制度調査内に「教科書検定問題に関する検討小委員 会」(仮称)を設置することを決める 20日  自由主義史観研究会(代表・藤岡信勝東大教授)が中学校 教科書の「従軍慰安婦」記述の削除要求など、歴史教科書 批判を全国規模で展開していくことを決める 26日  自民党が現行の教科書検定の見直し問題で、 9月末をめど に党の見直し案をまとめる方針を固める 29日  橋本首相が「総理として」靖国神社に参拝。85年夏「公式 参拝」をした中曽根康弘以来の現職首相の参拝   8月10日  自由主義史観研究会の第1回全国大会が、この日を含め2日 間の日程で開かれる(山形・蔵王温泉)。全国の教師ら約 100人が参加 14日  「女性のためのアジア平和国民基金」が元従軍慰安婦に償 い金の支給手続きを始めるのにあわせ、政府が元慰安婦に 渡す橋本首相の手紙を公表。その一部=「いわゆる従軍慰 安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と 尊厳を深く傷つけた問題でございました」 15日  東京・九段の「第10回戦没者追悼中央国民集会」での堀江 正夫「英霊にこたえる会」会長の発言=「新聞で、慰安婦 への総理のわび状を見たとき、りつ然たる思いにかられた のは、私だけではないでしょう。戦場に荒稼ぎに行った婦 人に対する金が200万円。こんなことでいいんでしょうか」   9月 1日  右派の教育研究団体「日本教師会」(会長・若井勲夫・京 都文教短大助教授)が、この日までに中学校教科書の「従 軍慰安婦」記述の削除を求める決議を採択、決議文を文部 省に提出 5日  参院自民党が都内のホテルで開かれていた政策研究会に藤 岡信勝東大教授を講師として招き、歴史教科書の検定問題 などについて討議 10日  右派の大学教授や歴史研究者の組織「昭和史研究所」(代 表・中村粲独協大教授)が自民党本部に塩川正十郎総務会 長を訪ね、中学校教科書の「従軍慰安婦」記述の削除など を文部省に求めるよう要請 13日  「明るい日本・議連」(会長・奥野誠亮)が総会を開き、 中学校教科書の「従軍慰安婦」記述の削除に向けて、現行 の教科書検定の見直しを求める決議を全会1致で採択 17日  「明るい日本・議連」が、9月13日の議連総会の決議に沿っ て、中学校教科書の「従軍慰安婦」記述を削除するよう、 奥田幹生文相に要請 20日  この日から1カ月かけて「日本を守る国民会議」(議長・黛 敏郎)が「従軍慰安婦」記述の削除を求め、北海道から鹿 児島まで全国縦断キャラバンを展開。《草の根保守》勢力 を動員して地方議会(都道府県・市町村)に陳情を提出さ せるため(このキャラバンで各地の右派団体に「中学校歴 史教科書の訂正を求める陳情」と「『夫婦別姓を認める民 法改正』に反対を求める陳情」の案(ひな型)を配布した と見られる。 各地で同年の9月・12月議会に同種陳情が提 出される) 24日  岡山県教科書是正協議会が首相官邸を訪れ、中学校社会科 教科書の「反日的・自虐的な記述の訂正」を求める陳情書 を提出 25日  自民党がこの日までに「高校教科書の検定廃止」を衆院選 の公約原案に盛り込む 26日  自民党は選挙公約の原案に盛り込まれた「高校教科書の検 定廃止」を削除し新たに「高校および義務教育段階での教 科書のあり方を検討する」と明記する方針を固める。右派 議員が要望していた「『従軍慰安婦』の記述の削除・訂正 や教科書検定の正常化」は見送り ◆東京・九段北の靖国会館で「教科書の訂正を求める緊急 国民集会」(「昭和史研究所」などが主催)が開かれ約 300人が参加、集会後国会周辺や霞が関をデモ ◆自衛隊OBで組織する「日本郷友連盟」が、この日まで に中学校教科書の「従軍慰安婦」記述の削除を求める要請 文を奥田文相に提出(「3光作戦」や「南京事件の誇大な 犠牲者数」の削除も求める) 27日  同日から『産経』紙上でシリーズ「教科書が歪めた歴史」 が始まり、10月10日まで14回続く。筆者は自由主義史観研 究会会員(第1回=「従軍慰安婦・虚偽の記述が独り歩き」 筆者・藤岡信勝東大教授、最終回=「大正期の政治・共産 党の『理想』一方的に」筆者・赤野達哉大阪市立中央高校 教諭) 29日  自民党はこの日までに「靖国神社への公式参拝の実現」を 総選挙の公約に盛り込む方針を固める 30日  自民党が靖国神社参拝問題で総選挙の公約案に明記してい た「公式参拝の実現」に関する文言を「実現を期す」に修 正  10月 2日  参院自民党が政策審議会に教科書検定問題を議論する「教 育問題に関するプロジェクトチーム」(座長・井上裕元文 相)を設置 3日  櫻井よし子(ジャーナリスト)が横浜市教育委員会の教育 課題研修会で講演(教職員約200人が参加) 発言の一部=「日本はロシアを恐れるあまり、朝鮮半島に 行き中国に行った。でも朝鮮半島ではフランスがインドシ ナを支配したような、イギリスがインドを支配したような やり方ではなかった。日本人としては朝鮮半島の人を日本 人並みに引き上げようとしたということもある」「あの慰 安婦というのは数からみれば確かに朝鮮の人も多かったが、 1番多く慰安婦として働いたのは、 日本人の女性なんです よ。東北の貧しい農村の娘さんが親に売られていったのが、 あの時代の価値観だった。それがいいとか悪いとかは、ま あなんて人権無視でしょうとか、今になってみれば何でも 言えますよ。あの時代はいわゆる売春宿というものがあっ て、これは世間にも認められていた。今振り返って悪いと 言ってもそれはしょうがないね、ということを教えるのが 教育だろうと思う」 (以上は講演から。以下は聴衆との質疑応答から)「今の 日本の歴史教育というのは、これでもかこれでもかと苦し めながら日本を悪く書いている」 「とどのつまり、 当時 の慰安婦問題というのは、それなりのビジネスとしてやっ ていたと言える」 16日  橋本首相は当初、同日を「いとこの戦死公報が届いた記念 の日」として靖国神社参拝を希望していたが、見送る(同 年7月末の「総理としての」靖国参拝に中国が激しく抗議 したため、在任中の参拝はしないと先に表明していた) 18日  自民党の 「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」 (小淵恵三会長、 209人)と、新進党の「靖国神社参拝議 員連盟」(渡部恒三会長、71人)の国会議員が、同日朝、 秋季例大祭中の靖国神社にそろって参拝した。参拝したの は、 参院議員8人(自民6、新進2)と、前代議士と参院議 員の秘書ら代理38人。閣僚の参拝はなし    27日  【衆議院選挙】  11月 4日  『産経』が中国の歴史教科書を非難するシリーズ「中国の 教科書が教える歴史」を開始(4日から10日まで連日7回) 7日  【第2次橋本内閣発足】新文相・小杉隆(旧渡辺派、東京5 区) 13日  参院自民党の「教育問題に関するプロジェクトチーム」が、 現行の教科書検定制度を見直すため、文部省から検定の経 緯を聴取することを決める 22日  同日付『産経』のインタビュー「新閣僚に聞く」で小杉隆 文相が「従軍慰安婦」の記述が掲載される中学校教科書に ついて「専門家が議論した上で記述することになったと認 識しており、これを一方的に削除するのは問題と思う。慎 重な審議を経た結論は尊重しなければならない」とのべる 28日  自民党外交調査会と外交部会の合同会議が党本部で開かれ、 海外から元首など要人が来日した際、靖国神社に参拝して もらうことを早期に実現させるべきとの考えで1致  12月 2日  藤岡信勝東大教授(自由主義史観研究会代表)、西尾幹二 (評論家)、 阿川佐和子(エッセイスト)ら9人が呼びか けた「新しい教科書をつくる会」が発足。記者会見で現行 教科書を「日本の近現代史全体を犯罪の歴史と断罪して筆 を進めている」と批判し、次世代に自信をもって伝えられ る歴史教科書の作成、提供をめざすほか、文相に「従軍慰 安婦」記述の削除勧告を要求するなどの活動をおこなうと 発表 〔呼びかけ人〕藤岡信勝(東大教授・自由主義史観研究会 代表)、西尾幹二(評論家)、阿  川佐和子(エッセイ スト)、小林よしのり(漫画家)、坂本多加雄(学習院大 教授)、高  橋史朗(明星大教授)、林真理子(作家)、 深田祐介(作家)、山本夏彦(評論家) ◆この日までに、「かながわ人権フォーラム」(会長・弓 削達前フェリス女学院学長)が、横浜市教育委員会に対し、 10月3日の櫻井発言を「国際問題にかかわる重大な事柄」 と批判し、反対の立場の学者による講演を要請 3日  新進党の「正しい歴史・議連」が総会を開き、教科書問題 に関する対外的な声明を臨時国会中に発表する、政府・与 党の歴史認識の姿勢を正す、正しい歴史認識を伝えるよう 文部省に働きかけるなどの方針を決める ◆米国司法省が73一部隊など第2次世界大戦中の戦争犯罪 に関係した日本の元軍人16人を米国入国禁止処分にするこ とを決める 5日  この日、兵庫県播磨町教育委員会が8日午後に予定されてい た櫻井よし子の講演会を中止すると櫻井側に伝えてきたこ とが判明 11日  参院予算委員会で自民党の板垣正議員(「明るい日本・議 連」事務局長、日本遺族会・顧問)に中学校教科書の「従 軍慰安婦」記述などについての見解を求められた小杉文相 は、「専門家による教科用図書検定調査審議会の検定に基 づいたものであり、妥当と考える。客観的事情に変化がな い限り、教科書発行者に対する訂正申請の勧告はおこなう 考えがない」とのべる 19日  岡山県議会の自民党県議団が単独で、右派団体連合「岡山 県教科書是正協議会」が提出した陳情「今後採択される中 学校教科書から『従軍慰安婦』並びに『3光作戦』等の記 述の削除を求める意見書提出について」の趣旨採択を強行 〔陳情を提出した県教科書是正協議会(江見祐道会長)の 構成団体=県叙勲者の会、 県PTA役員有志、不2歌道会 県支部、岡山国民文化懇談会、県傷痍軍人会、日本世論の 会県支部、県郷友軍恩連盟、県ハルビン会、内外ニュース 岡山懇談会、生長の家有志、県憲友会、県工華会、11クラ ブ、直毘塾、平和日本を守る県民会議、県教育振興会、県 護國神社、平成ビジョンの会、県海交会、祖国日本の会、 県遺族連盟、神道政治連盟、美作地区教育振興会、笠井山 大仏護立会、県英霊にこたえる会、モラロジー岡山東部支 部、県甲飛会、県隊友会有志、県神社庁、県参陵会、県ビ ルマ会、県金鵄会、津山防衛協会、岡山子供を守る会〕 ◆横浜弁護士会が創設した「人権賞」の第1回授賞団体に 選ばれた、在日外国人労働者の人権問題に取り組んでいる 「カラバオの会」(渡辺英俊代表)が、 10月3日に問題発 言をおこなったジャーナリスト櫻井よし子が選考委員に入 っていることを理由に受賞を辞退 20日  自民党の「明るい日本・議連」が党本部で教育問題に関す る小委員会を開き、「学校教育用図書検定基準」にある、 中国、 韓国などに配慮することを明記した「近隣諸国条 項」に問題があるという認識で1致。 政府や党執行部に同 条項の削除を働きかける方針を決める ◆新進党の「正しい歴史・議連」が国会内で記者会見をお こない、中学校教科書の「従軍慰安婦」などの記述の訂正 を求める声明を発表 22日  同日付『産経』の社説(「主張」)「何が悪い桜井さんの 『認識』」 23日  自民党総務会で森喜朗総務会長は、「従軍慰安婦」の記述 や「近隣諸国条項」に対する批判について、「近隣諸国条 項は、 当時政府・与党が1致して決めたことであり、頭越 しの決定ではない。現実問題としては教科書の印刷は始ま っており、止めることはできない。検定基準にのっとって いる限りは、執筆者の考えが優先される」とのべる 26日  右派団体「昭和史研究所」の会員らが文部省に小杉文相を 訪ね、「従軍慰安婦」記述の削除を要請。同文相は「検定 は基準に沿っておこなわれている。(昭和史研究所とは) 認識の違いがあり、削除・訂正を教科書会社に求める考え はない」とのべる 1997年   1月 1日  同日付『産経』の「年頭の主張」―「日本史には、 125代 にわたって平和裏に存続した天皇の存在がある。連綿とし た文化の継承性を象徴する。この歴史は誇りとすべきであ り、守らなければならない」 4日  橋本龍太郎首相が伊勢神宮に参拝 「明るい日本・議連」(自民党)と「正しい歴史・議連」 (新進党)が、中学校教科書の「従軍慰安婦」記述の削除 や検定制度の見直しに向けて、連携する方針を固める(同 日現在、両議連に所属する議員は衆参両院で177人) 7日  同日付『産経』によれば、同紙の6日までの調べで、中学校 教科書から「従軍慰安婦」記述の削除を求める陳情を趣旨 採択したり、 政府への意見書を採択したのは、96年暮れま でに10議会にのぼっている(【都道府県議会】岡山県 【市町村議会】青森県黒石市、 金木町、柏村、山形県南陽 市、 新潟県栃尾市、岡山県瀬戸町、大原町、北房町 京都 府加茂町)。また陳情が継続審議などになっているのは、6 議会である(【都道府県議会】新潟、 福井、熊本、鹿児島 の各県 【市町村議会】青森県中里町、長崎県琴海町)   13日  自民党の江藤隆美代議士(元総務庁長官、宮崎2区選出)が 北9州市内でおこなった講演で、 次のように発言。教科書 の歴史記述に関連し「韓国併合」について「国と国が条約 を結んで決めたことの、どこが侵略なのか。言葉は悪いか も知れないが、町村合併といかほどの差があるのか」。中 学校の教科書に従軍慰安婦などの記述が盛り込まれること について「侵略とは武力による占領、弾圧、搾取だ。いっ たい日本がどこを侵略したというのか。白人世界がやった 植民地支配とは違うのに、なぜ教科書に載せなければなら ないのか」(1・14付『朝日』) さらに江藤は同日夕、共同通信に対し「町村合併ですら血 で血を洗うような抗争がある。 1つの国がなくなり歴史が 途絶える時、国を挙げて賛成するわけがない。しかし、当 時の韓国政府はそういう選択をした」とのべる(江藤は第 2 次村山連立政権の総務庁長官だった95年10月11日、「韓 国併合」について「当時は国が弱いとやられた時代だった んだから、やむをえないことだ」など日本による朝鮮の植 民地化を正当化する発言をして、 辞任をよぎなくされ た。) 14日  自民党の総務会で板垣正参院議員が96年秋総選挙の公約に 盛り込まれた「靖国公式参拝の実現」が97年の党運動方針 案で見送られたことを批判、板野重信参院議員会長などが 教科書問題など歴史教育の是正への対応について執行部を 批判 19日  右派弁護士グループが「自虐的・反日的な教科書を使った 授業は公平・公正な教育を受ける子どもたちの教育権を侵 害する」として、国、教科書会社を相手取り、検定教科書 の履修義務不存在の確認を求める訴訟を東京地裁に起こす ことを決める ◆東京・渋谷区で「『従軍』慰安婦と教科書問題」をテー マに藤岡信勝東大教授らをパネリストにパネルディスカッ ション(主催・東京レディスフォーラム)が開かれ、 約 400人が参加 21日  「新しい歴史教科書をつくる会」の呼びかけ人代表 7人が 文部省で小杉文相と会談。教育課程審議会で歴史教育の見 直しを加える、中学校教科書の「従軍慰安婦」関連記述を 大臣勧告で削除する、 の2点を申し入れ。文相は後者につ いては拒否、前者について「ヒアリングなどをおこない、 真剣に審議するよう事務当局に指示する」とのべる(この 時点で「新しい歴史教科書をつくる会」の呼びかけ人は20 人になり、賛同者は100人を超える) 〔「新しい歴史教科書をつくる会」の新たな呼びかけ人11 名〕(最初の呼びかけ人9名については、 本年表の96年12 月2日の項を参照してほしい)井沢元彦(作家)、 伊藤隆 (東大名誉教授)、 大月隆寛(国立歴史民俗博物館助教 授)、大宅映子(評論家)、賀来龍三郎(キヤノン代表取 締役)、川嶋廣守(プロ野球セ・リーグ会長)、佐藤愛子 (作家)、 遠山1行(音楽評論家)、 涛(なみ)川栄太 (作家・新松下村塾塾長)、芳賀徹(国際日本文化研究セ ンター教授)、山本卓真(富士通会長) 24日  同日付『朝日』夕刊によれば、 4月から使われる中学校社 会科教科書の執筆者や出版社役員の自宅、出版社などに、 執筆者や役員の自宅の写真コピーを同封した脅迫状が送ら れていたことがわかった。文書は教科書の内容が偏向して いると批判する内容で、「赤報隊精神も想起しましょう」 などの表現もあった。文書が届いた出版社は、教科書を発 行している7社のうち東京書籍、 大阪書籍、日本書籍、教 育出版で、96年12月上旬から中旬にかけて届いたという。 (「赤報隊」は、一連の朝日新聞襲撃事件後、通信社に犯 行声明を郵送している。) ◆同日夕、梶山静六官房長官が首相官邸で元従軍慰安婦問 題に関連して「中国に行って来た中山太郎さん(元外相) と今日、慰安婦の問題などについて電話で話した。今、声 高に言っている人たちは、その時代背景について習ってい るわけではない。当時、公娼(こうしょう)制度があった ということを知らない。私たちより上の世代は従軍慰安婦 といってもそれほど驚かない。(公娼になったのは)多く は貧しくてカネのためだったんだろう。戦地に行くと加給 金がもらえるということもあったし、最後には徴用とか徴 発があったんだ。背景も知らずに、そういうことだけを教 えるのはどう思うか」などとのべる(この発言内容は1・ 25付『朝日』。同日付『産経』では「今の人はその当時の 社会状況というものを教えられていない。昔は公娼制度と いうものがあった。それが、戦地にもそういうものができ て、いくらか加給金がはずまれた。戦争の後の方に徴発と いうか、そういうことがあったかもしれない」となってい る)。中山元外相は24日、 梶山長官に「過去の戦争中の 出来事を否定するものではないが、元慰安婦問題などを青 少年に教えるのは時期尚早であることを理解してほしい」 などと電話で語った(1・25付『産経』)。 25日  橋本龍太郎首相は韓国の金泳三大統領との昼食会(大分県 別府市)で、 前日の梶山発言について、 「報道の結果、 (大統領と韓国国民が)懸念を持たれたとすれば申し訳な いし、本意ではない」と「陳謝」する。金大統領は「官房 長官は内閣のスポークスマン。発言は非常に不幸なタイミ ングで、(韓国)国民に衝撃を与えた」とのべ、さらに同 日の共同記者会見で「日本の一部の政治家が過去に対して 韓国国民にとって理解に苦しむ話をよくしている。実際に あったことは、隠すことも消すこともできない。ありのま まの過去を直視したうえで、未来志向的な関係を築いてい かなければならない」と不快感を表明。 (1・26付『産 経』の記事〔署名・榊原智〕は、梶山発言について「官房 長官としての立場、首脳会談の直前というタイミングをわ きまえなかったのは、軽率とのそしりを免れないが、ある 意味では『正論』といえる」と論評) ◆東京の九段会館でシンポジウム「反日・自虐の歴史教科 書を如何に正すか」がおこなわれ、大原康男國學院大教授、 長谷川潤桜丘中学校教諭(大阪府枚方市)、半本茂「教科 書を正す親子の会」事務局長らが発言。半本発言「教科書 問題では政府も役所も責任をとらない。各地方議会に教科 書是正のための請願を出したり、裁判などを行うことで、 政府が政策を変更しやすくなる状況を作り上げていく必要 がある」 26日  岡山市内で藤岡信勝東大教授が講演(タイトル「教科書が 教えない歴史」)。主催は「岡山キリストの幕屋・教育問 題を考える会」〔「原始福音・キリストの幕屋(まく や)」は、「日本の精神的荒廃を嘆き、大和魂の振起を願 う」ことを信条のひとつとする国粋主義的キリスト教派〕 27日  梶山官房長官が記者会見で開き直る。その発言「(1月24日 の発言が日韓首脳会談で取り上げられたことについて)正 当に書いていただければ良いが、(記者の)自分の判断を 交えて書かれるのは大変迷惑だ。一部の方々が、日韓関係 を悪くしたいという意思があったかわからないが、結果と して、そういうものをもくろんだというなら反省をしてほ しい」(報道機関への不信感の表明)、そのうえで「首脳 会談で少しでも不快な思いと、韓国国民に誤解を与えたこ とは、 私の不徳の致すところで、 心からおわび申し上げ る」「(発言の真意について)日韓にまたがる慰安婦問題 を申し上げたのではない。戦争中の時代、貧しいために公 娼制度があった。やむを得ず自分の体を売らなくてはなら ない立場に追い込まれた経済的な弱者がたくさんいた。軍 隊が外地に行くにしたがって、そういう方々も進出してい った」「(教科書の記述について)慰安婦問題も当然取り 上げるべきだ」(発言内容は1・27付『朝日』夕刊) ◆同日、神奈川人権センター(日高六郎理事長)が、 1月 29 日に開催される三浦商工会議所(神奈川県)新春経済 講演会の講師としてジャーナリストの櫻井よし子が予定さ れていることに対して、再検討を要請 ◆同日付『産経』のコラム「産経抄」=「梶山発言は間然 するところもないほど正しい」 28日  三浦商工会議所は、神奈川人権センターの申し入れと市民 からの抗議の電話を 「総合的に判断して」、翌日予定さ れていた櫻井よし子の講演会を中止 ◆衆院予算委員会で梶山官房長官が「釈明」=「大人げな いといえば大人げないが、(発言の)次の日に首脳会談が おこなわれることをつい失念していた。そのことを橋本龍 太郎首相におわびしたし、首相から金泳三韓国大統領に事 情の説明を願い、『韓国民に嫌な思いをかけたとすればお わびして欲しい』と申し上げた」 29日  日本教育会熊本県支部(校長などで構成、支部長・瀬下享 済々黌高校校長)が2月1日に予定している藤岡信勝東大教 授の講演会を熊本県と熊本市の教育委員会が後援している ことに対して、「歴史を歪曲する藤岡信勝講演会に反対す る市民の会」(「自衛隊の海外派兵に反対する熊本市民フ ォーラム」など約50の団体・個人が参加・賛同)が、両教 育委員会に後援の取り消しを申し入れ。県教委は拒否(30 日には、「子どもと教育くらしを守る県教職員懇談会」と 「新日本婦人の会県本部」が県教委に後援の撤回を要請。 31 日にも「熊本『証言』集会実行委員会」が県・市教委 に抗議) ◆同日付『産経』によれば「参院自民党が政策審議会に設 置した『教育問題に関するプロジェクトチーム』(座長・ 井上裕元文相)は、昨年12月中旬の会合を最後に再開のメ ドが立っていない。教科書問題への対応をめぐって、打ち 切りを求める座長と議論の継続を訴えるメンバーとが対立 しているため」 30日 参院予算委員会での質疑の一部。田村秀昭議員(新進党、 会派=平成会)「中学校教科書に事実と違う部分がある。 訂正する気はあるのか」・小杉隆文相「慰安婦の部分につ いては目を通したが、妥当と判断している」、片山虎之助 議員(自民党、「明るい日本・議連」)「教科書でも政府 のものでも、 従軍慰安婦という言葉をやめていただきた い」・小杉文相「従軍慰安婦の問題が教科書に載ったのは、 戦後処理問題が議論された1991年3月頃からだ。 政府とし て調査し、内外の調査機関にあたったり、資料を検証した りして、 客観的な結果として、93年8月に慰安婦関係調査 結果が公表された。この問題が社会的に大きく取り上げら れ、歴史の実証として、中学生にも理解できるとして、執 筆に踏み切ったと思う」・平林博内閣外政審議室長(同じ く片山議員への答弁)「政府が調査した限りの文書には軍 や官憲の強制募集を示す記述は見いだせなかったが、総合 的に判断した結果、 1定の強制性はあると判断した」〔片 山議員が資料の予算委提出を要求したため、理事懇談会で 協議した結果、全会1致で提出を求めることで合意〕 31日 『読売』が社説「見逃せぬ《言論封じ》の動き」で、三浦 商工会議所の櫻井よし子講演中止について、神奈川人権セ ンターを批判(同紙朝刊「編集手帳」も櫻井擁護)。同セ ンターは文書で社説の修正を要求。同日、埼玉県羽生市と 同市教育委員会などが主催する講演会(2月22日)で当初 講師に予定されていた櫻井よし子がキャンセルされイーデ ス・ハンソンに変更されたことが判明 ◆文部省記者クラブで「新しい歴史教科書をつくる会」の 高橋史朗明星大教授ら呼びかけ人代表が、30日現在でまと めた賛同者名簿を配布(言論・経済・スポーツ界から計 203人、 2・1付『産経』が氏名・肩書きを掲載)。同会が 30日、任意団体としての設立総会を開き、会長に評論家の 西尾幹二、副会長に藤岡信勝東大教授を選任したことを明 らかにし、社団法人化を視野に入れて幅広く会員を募集し ながら、歴史教科書の正常化運動を進める考えを示す。さ らに櫻井よし子の講演が各地で中止されたことに憂慮を表 明 2月 1日  ◆日本教育会熊本県支部主催の藤岡信勝講演会(熊本市、 約600人参加) ◆福岡キリストの幕屋主催の藤岡信勝講演会(福岡市、約 200人参加) ◆「新しい歴史教科書をつくる会」が1月31日に公表した 賛同者名簿に名前が掲載されたダイエーホークスの王貞治 監督は賛同していないことが判明 2日  フジテレビの報道番組での中曽根康弘元首相の発言「ガー ドレールのようなある限度の枠はいるが、 (学校教科書 の)検定をやめて自由につくれるようにした方がいい。今 はまるで上から与えられたものを採用している。教科書会 社の寡占形態をやめ、だれでも良い教科書をつくれるとい う競争時代にしたらいい」   3日  「よしりんの主張を支持する読者」による「10代から20代 の若者中心」の文部省・外務省に向けた教科書是正要求デ モ(主催「教科書是正を求める青少年の会」)集会・デモ 参加者は約35人で、若者は5、6人〔2・4付『産経』は「大 学生ら約50人」と表記〕。 右翼団体の街宣車つきでデモ 〔よしりん=雑誌『SAPIO』(小学館発行)連載の 「新ゴーマニズム宣言」で、教科書の「従軍慰安婦」記述 の削除を呼号している漫画家小林よしのりのこと〕 〔集会・デモで撒かれたチラシ「まった!その教科書」の 一部〕「慰安婦とは明日にも命を落とすかもしれない兵隊 をなぐさめる公娼のことであって、 兵隊と慰安婦の営みを 非難できるでしょうか?」「(日本の教科書がアジアの反 日感情を煽る結果になってしまい)現に昨今の日本は、 竹 島や尖閣諸島の領有権の正当性についてさえ、 何も言えな くなってしまいました」 ◆和歌山市内で藤岡信勝が講演(和歌山「正論」懇話会)。 発言の一部「大東亜戦争が結果として東南アジア諸国の独 立に寄与したという事実についても子どもたちは知る権利 がある」「自虐的な歴史教育を克服しないと、日本は国家 として生き残れない」 ◆衆院予算委員会での質疑 西村真悟(新進党、 「正しい 歴史・議連」)「私は、梶山官房長官の発言が事実に反す ると思わない。 なぜ、 韓国の金泳三大統領に陳謝したの か」・橋本首相「陳謝という言葉が適切かどうかわからな いが、お客さんとしてお迎えし、報道されたことに対し、 不快を覚えられたとすれば申し訳なかった、ということは 確かに申した」、 西村「陳謝というのは謝罪ではないの か」・橋本「報道されたことが不快感を与えたとすれば申 し訳なかった」(2・4付『産経』の見出し=「首相、報道 を否定、『梶山発言』自体は陳謝せず) ◆同日付『朝日』朝刊によれば、日台交流の議連である自 民党の「日華関係議員懇談会」(山中貞則会長、 202人) と新進党の「日華議員連盟」(小沢辰男会長、 67人)が2 月5日に統合する。 また、自民党の「みんなで靖国神社に 参拝する国会議員の会」(小渕恵三会長、 209人)と新進 党の「靖国神社参拝議員連盟」(渡部恒三会長、71人)と の間でも、統合の話が進んでいる。さらに自民党の「明る い日本・議連」(奥野誠亮会長)と新進党の「正しい歴史 ・議連」(小沢辰男会長)にも共同歩調をとりたいとの声 が出ている。新進党の日台、靖国をめぐるふたつの議連は、 いずれも自民党分裂の際、旧新生党議員を中心に発足した。 一連の動きは「保保連合」を視野にいれたものとの憶測も ある〔山中貞則は「明るい日本・議連」顧問でもある〕 ◆参院自民党の「教育問題に関するプロジェクトチーム」 が活動を再開。教科書問題に関する自由討議をおこなう ◆同日付諸地方紙の記事(共同配信)「文部省が検定を進 めている来春から使用の高校教科書のうち、日本史全点が 従軍慰安婦について記述、現代社会と世界史でも過半数が 取り上げていることが2日、 明らかになった。被害者証言 を採録したり、民間基金による補償にも言及するなど、現 在使われている教科書より詳細な内容となっている。関係 者によると、検定では従軍慰安婦の記述は大筋で認められ る見通しだが、軍の直接的な「強制連行」を示す記述と被 害者数については、書き換えや削除となりそう。史実とし て教科書に記載する流れは、定着したと言える」 2月 4日  藤岡信勝東大教授が「明るい日本・議連」の招きで講演 (自民党本部、演題「教科書問題を衝(つ)く」)。自民 党の衆参両院議員39人、代理49人が出席。藤岡は講演で、 慰安婦問題について、旧日本軍による強制連行の事実がな かったとして、その虚構性を指摘、「戦時下と同様のマイ ンド・コントロールが言論の自由の世の中でおこなわれて いる」とのべる。出席した高市早苗衆院議員の発言=「政 府、国会議員の役割は国益を守ることだが、主権までが侵 されている状況になっている。それなのに教科書に慰安婦 を記述する必然性はあるのか」、小野晋也衆院議員の講師 への質問=「慰安婦問題は、国際的にこの問題を利用しよ うとする人がいるのではないか」・藤岡の答え=「この問 題は、今まで中国や韓国がカードとして使っていたが、平 成7年前後から米国のメディアは反日的になってきている」 ◆民主党の鳩山邦夫副代表が、衆院予算委員会で教科書の 検定制度必要論を展開し、その上で「従軍慰安婦を書くか 書かないかは自由だ、というぐらいの自由度をもった教科 書の検定があった方がよい」とのべる 5日  橋本首相が衆院予算委員会で、靖国神社公式参拝をめぐる 1985 年 8 月の中曽根内閣当時の官房長官談話や政府見解 について「変える意思はない」とのべ、 96年7月の参拝に ついて「(中曽根内閣の)官房長官見解に当てはめれば、 私的参拝だった」と公式に認める(同首相は96年7月に参 拝した際、参拝の資格に関する記者団の質問に「もう、ど うでもいいだろう。公私を分ける質問自体が、ばかげてい る」などとのべていた。) ◆自民党の島村宜伸広報本部長(元文相)は、同党旧渡辺 派の総会で歴史教科書問題などについて講演したのち、記 者団と懇談し、自ら「ところで、みなさんはどうやって慰 安婦を集めたとみるか」と切り出し、こうのべた。「軍隊 が出ていって『ちょっと来い』と連れていったと思ってい る人が多いようだ。おおむね現地の女衒(ぜげん)が一役 買って、中国の人なり韓国の人なりが(女性を)集めてい た。問題発言はしたくないが、本人の意思で、望んでそう いう道を選んだ人たちがいる」、(戦後社会の混乱時を念 頭に)「日本では本人の意思をまったく無視し、女衒が悪 さをして売春婦にした例があった。(しかし)いわゆるパ ンスケさんは得意になっていた」。同席した中尾栄一前建 設相も(従軍慰安婦に関して)「食べるのに困っている人 を女衒が組織的に集めたことがあるようだ」とのべ、さら に「公娼制度がなくなったことには、いろいろな意見があ る。 1般の女性が助かっている面もないわけではない。英 BBC放送は米軍基地では年間5千件のレイプ事件がある と流した。公娼制度があった方がいいということで、ドイ ツにはいまだにある」とのべる(女衒=買春施設に女性を 斡旋する業者) 〔島村宜伸は第2次村山連立政権の文相であった95年8月9 日、「侵略戦争じゃないかというのは、考え方の問題。侵 略のやり合いが戦争じゃないか。これをいつまでもほじく ってやっていることが果たして賢明なやり方なのか」との べ、韓国の諸新聞に厳しく批判されたが、なかなか撤回し なかった。そして結局、記者会見をおこなわずに「撤回」 の短いコメントを出しただけで、文相の座に居座った。〕 ◆神奈川人権センターが「櫻井よし子問題発言と『言論の 自由』についての声明」を発する。 「『言論の自由』は 『差別発言の自由』ではない。『言論の自由』の名のもと に差別、人権破壊の扇動を行うことは許されない。特にマ スコミ、ジャーナリズムがこれを忘れるとき、『言論』は 『凶器』となる。(中略)公的な機関や、社会的な影響力 をもった団体や法人の場合、講演会や研修会の持ち方は、 人権擁護の観点をきちんともって行うべきだと考える」 ◆96年10月3日に横浜市教育委員会主催の教職員研修でお こなわれた櫻井よし子講演を批判し、同市教委に「講師選 択を反省すべきだ」などと申し入れをしていた神奈川人権 センターに対し、 同市教委から回答があった。内容は1、 慰安婦への強制があったことを認めた1993年の河野洋平官 房長官(当時)の談話や政府の調査結果が、この問題の基 本認識だと考えている、 2、櫻井講演が、市教委が91年に 策定し、旧日本軍の朝鮮侵略などに触れた「在日外国人に かかわる教育の基本方針」と異なる歴史認識で展開された ことは大変残念、 3、今後も差別を許さず人権を尊重する 観点で講師を選ぶ。人権センターは「申し入れに沿った回 答で了承する」とコメント(2・6付『産経』は「横浜市教 委、神奈川人権センターに屈服」と伝える) ◆超党派の「日華関係議員懇談会」(会長・山中貞則= 「明るい日本・議連」顧問)が発足。 参加者は5日現在、 自民党202人、 新進党86人、太陽党7人、さきがけ5人の合 計300人。 会長=自民党の山中、副会長=新進党の日華議 員連盟会長だった小沢辰男(「正しい歴史・議連」会長)、 自民党の村上正邦(「明るい日本・議連」副会長)、平沼 赳夫(「明るい日本・議連」)、前田勲男、幹事長=自民 党の藤井孝男(「明るい日本・議連」幹事)、幹事長代理 =林寛子 2月 6日  自民党の加藤紘一幹事長が伊藤茂社民党幹事長と会談、梶 山官房長官の問題発言について「内閣のスポークスマンと しては慎重を欠いたもの」として遺憾の意を表明。同時に 梶山発言は「従軍慰安婦問題を直接のべたものではなく、 (記者に)部分的に受け取られ、広く伝えられたことは本 意ではない」と、報道機関の責任を指摘。自民党の見解は 1、従軍慰安婦問題で政府の見解に変更はない、2、歴史認 識に関しては3党政策合意をふまえ、平成7年(95年)の村 山首相談話を基本とする、など。伊藤幹事長はなお不満を 示しながらもそれ以上の追及をせず了承。あいまいな決着 となる 7日  岐阜県が後援し11日の「建国記念の日」に開かれる右派勢 力の式典(主催「日本の文化と伝統を守る岐阜県民会議」 〔会長・有吉慶三岐阜銀行頭取〕)で、講師(中村粲〔あ きら〕独協大学教授、著名な右派論客)が「南京大虐殺や 従軍慰安婦の強制連行はうそで、史実として教科書に記載 を許した検定は学校教育法違反」との自説を語ることが判 明(演題=「検定パスした歴史の大嘘―新しい中学校歴史 教科書の実態」)。講演内容を知らなかった県は、演題を 変えるよう主催者に通知、主催者側は県の後援を返上、名 誉会長の梶原拓知事は出席を取りやめ ◆衆院予算委員会で栗本慎一郎(自民)の従軍慰安婦記述 に関する質問に対して小杉文相が答える。小杉文相「特定 の歴史的事実について、教科書にどのように記述するかは、 基本的に執筆者、発行者の判断にゆだねられている。教科 書の検定は専門家からなる審議会で検定基準に基づいて、 客観的、学問的な成果や資料に照らして適切におこなわれ ている。いろいろな学説がある場合、定説になっていない ものは教科書には載せていないはずだ。検定審議会の委員 は、学会、教育界に非常に視野の広い人、総合的専門的見 地から客観的判断ができる人に委嘱している」(2・8付 『産経』の見出し=「小杉文相、 教科書問題『従軍慰安 婦』で答弁、定説以外載せていない」) ● 1997年・2月11日  特集=「建国記念の日」の右派勢力の動き ◎同日付『産経』のコラム「産経抄」の一部=「『建国記念の 日』だからいうわけではないが、いまこの国・日本は国家とし ての体をなしているだろうか。国家としての威厳と品位と名誉 を保ちえているだろうか。/日本の首相として韓国大統領に謝 罪すべき理由は全くなかったにもかかわらず、ひたすら頭を下 げる行為も続いている。しかも発言者である官房長官自身が後 になって弁解これ努め、あげくに陳謝してしまう。話にも何に もなりはしない。/教科書も教科書で、自国の歴史をさながら 外国人の目のごとく冷ややかに、意地悪く、さげすんで書く。 父祖の悲しみに対して一片の愛憐(あいれん)も惜哀(せきあ い)も抱かず、「日本ほど悪い国家はない」と教える。そして それが良心的で、理性的で、文化的な態度だと錯覚している。 /これでも日本は国家と呼べるだろうか」 【全国各地の動き】(地域の並べ方はアト・ランダム) ◆《奈良》橿原(かしはら)市畝傍(うねび)町の橿原神宮で、恒例の紀 元祭がおこなわれ、 約4,200人が列席。 2月14日付『産経』夕刊によると 《祭典は午前11時から。内庭に並んだ崇敬者の列の間を、天皇陛下の勅使 一行が内拝殿へ、ゆっくりと入場。五色絹が入ったお供え物の奉納や、巫 女(みこ)による神楽「扇の舞」、 総勢約100人の「紀元奉頌(ほうしょ う)の歌」を歌うなど、厳かに進められた》(そのまま引用)。午後から は、外拝殿前広場で全国民謡大会などの行事が催され、全国から約14万人 が集まる。 〔註 紀元祭は、 記紀(古事記と日本書記)伝承で第1代の神武天皇が大 和国畝傍の橿原宮(かしはらのみや)で即位したとされる日(2月11日) にちなむ行事。 神武天皇を祭る同神宮では年1度の大祭として1891年(明 治24年)に始まる。 なお「建国記念の日」は、 明治天皇制国家が1872年 (明治5年)、 神武天皇即位の日として祝日とした「紀元節」を継承した もの。 「紀元節」は第2次大戦後廃止されたが、1966年(昭和41年)、自 民党政府が「建国記念の日」として強引に復活させ、翌年から実施されて いる。〕 ◆《東京》「日本の建国を祝う会」(村尾次郎会長)が「奉祝中央式典」 を東京都渋谷区の明治神宮会館で開く。島村宜伸自民党広報本部長(元文 相)など国会議員や外交団を初め、作曲家の黛敏郎(日本を守る国民会議 ・議長)ら約千人が参加。病欠の会長に代わって関口孝副会長が「国を愛 する心の欠如を感じる。建国のみなもとを再確認し、ゆるぎない愛国心を 子々孫々まで伝えていくことが我々の責務」などと挨拶。教科書問題のほ か、夫婦別姓や「竹島・尖閣諸島」問題どを挙げ「自国の誇りある歴史を 冒涜 (ぼうとく)し、家族の絆(きずな)を軽んずる傾向をもたらし、 さらには国家主権を自ら否定するもの」などとする決議案を採択 ◆《東京》「建国記念の日を祝う国民式典」(主催・財団法人「国民の祝 日を祝う会」、後援・総理府、外務省など)が、東京都千代田区の日比谷 公会堂で開かれる。来賓として挨拶した橋本首相は「建国記念の日に当た り、先人のご労苦に感謝し、平和で活力に満ちた祖国をつくる責任を深く 認識し、 その決意を新たにする」とのべ、「6つの改革」の必要を強調。 〔同式典には、94年に細川首相(当時)が外遊のため、95年には村山首相 (同)が阪神大震災への対応を理由に欠席しているが、 橋本首相は昨年 (96年)に続いての参加。また、土井たか子衆院議長(現・社民党党首) は過去3回出席を見合わせていたが、 今回は自民党出身の伊藤宗一郎が現 職議長として4年ぶりに出席〕 ◆《岩手》盛岡市内の県公会堂で、 「県建国記念日奉祝会」が主催して 「建国記念の日を祝う奉祝県民大会」が開かれ、 神社関係者ら約500人が 参加。自民党の玉沢徳一郎、鈴木俊一代議士が来賓として出席。栃内松四 郎同会副会長が「外国では、建国記念日を盛大に祝う。国家の統合をはか る精神的よりどころとして重要なのに、日本ではいまだに民間団体が主体 で、国民こぞってとなっていない。31年目を迎える今、そのもつ意味を再 確認したい」と挨拶、国や県による式典の開催を求める。大会では、アジ ア太平洋戦争で戦死した若い兵士の手紙をもとにした映画『天翔(あまが け)る青春―日本を愛した勇士たち』も上映される。さらに、▽国の誇り を傷つける歴史教科書や夫婦別姓導入に反対すること ▽政府主催の奉祝 行事を実現すること、などを橋本首相に求める決議を採択 ◆《宮城》仙台市内の県民会館で「第31回建国記念の日を祝う県民大会」 が開かれ、 約1,500人が参加。「君が代」を斉唱したあと、大会会長の高 橋健輔県議会議長が「5月に白石市で開かれる全国植樹祭では、 ご訪問さ れる天皇、皇后両陛下を真心を持ってお迎えしたい」と式辞をのべる。式 典に先立ち参加者は、市内を「日の丸」や、夫婦別姓に反対するプラカー ドを掲げてパレード ◆《石川》金沢市内の石川郷友会館で、 「石川県郷友会」が主催して 「『建国記念の日』奉祝の会」が開かれ、 約100人が参加。「君が代」や 「紀元節頌歌」を斉唱して「建国の日」を祝う。式では石崎皓三同会会長 が「建国をしのび、 国を愛する心を養うことを1人でも多くの隣人に理解 してもらえるよう、共に行動しよう」と挨拶。その後、全員で橿原(かし はら)神宮を遥拝(ようはい)し、万歳三唱で今後の日本の発展を祈願。 続いて講演会がおこなわれ、自衛隊石川地方連絡部の菊川忠継部長が 「我が国の安全保障をめぐる現状と問題点」と題して話す 〔註 遥拝 (ようはい)=はるかに遠い所からおがむこと〕 ◆《福井》▽福井市内の市民福祉会館で、「足羽(あすわ)山招魂(しょ うこん)社奉賛会」(会長・酒井哲夫福井市長)が主催して「『建国記念 の日』式典」が開かれ、市遺族会連合会や市連合婦人会などの約60人が参 加。酒井市長が「今日の日本の平和と繁栄は、先人の努力のたまもの。民 族の誇りと自覚を持ち、さらなる発展を期したい」と挨拶。中谷輝雄市会 議長が祝辞をのべ、福井市史編纂委員の松原信之が「朝廷と朝倉氏」と題 して講演 ▽福井市内の学校法人・金井学園の金井講堂で「平成9年・建国 記念の日式典」がおこなわれ、 中高校生、大学生、教職員ら約 2,500 人 が出席。建学の精神を唱和したあと、金井兼造学園長が「伝統を大切にし、 祖先に感謝するのが日本人の心。 この日を機会に歴史を振り返ってほし い」と挨拶 ◆《愛媛》松山市の県民文化会館で「建国記念の日奉祝県民大会」が開か れ、 約千人が参加(「日本の伝統と文化を守る県民の会」〔久松定成会 長〕などで構成する実行委員会主催)。久松会長は挨拶の中で「この日は 日本人の《心のふるさと》。大会を、わが国の発展について考える機会に してほしい」とのべ、教科書問題に触れて「検討不十分な歴史教科書の出 版は、日本人の責任感の欠如の現れで亡国にもつながりかねない」と語る。 来賓の小菅亘恭・愛媛県副知事が「世界平和に向けて、わが国の文化を見 直してほしい」と祝辞をのべ、 台湾・東方工商専科大学の許国雄学長が 「日本人へのメッセージ―台湾に生きる《やまとだましい》」と題する講 演をおこなう。同大会は、▽政府および県主催の建国記念の日奉祝行事を 要望する▽夫婦別姓に反対し家族のきずなを守る▽偏向した反日歴史教科 書を是正する▽日本固有の領土竹島、尖閣諸島を守る、などを決議し、さ らに愛媛玉ぐし料訴訟に関し一部の新聞が「最高裁が違憲判断を示す見通 し」と伝えたことについて、司法の中立性や裁判官らの守秘義務に反する として最高裁に抗議文を提出することを決める ◆《高知》▽高知市内の高知会館で、「建国記念の日・天皇誕生日県奉祝 会」(谷相勝二代表)が主催して「県奉祝式典」がおこなわれ、 約200人 が参加。「日の丸」に拝礼、皇居遥拝(ようはい)のあと、「君が代」と 「紀元節頌歌」を斉唱。 谷相代表が「祖国日本は2,657回目の誕生日を迎 えたが、建国以来の危機にひんしている。建国の理念を思い起こし、世界 平和に向け再起できる日となることを願う」と式辞。日本固有の精神文化 の退廃などに懸念を表明。さらに橋本大二郎知事の「国歌」見直し発言 (註参照)に触れ「いかに個人的見解といえども、現職知事が国歌を否定 する発言をしたことは許しがたい。国歌を変える国民運動を提唱するなら 知事の座を離れ、一市民としてなすべきだ」と批判。続いて青年、女性代 表が「知事発言は腹立たしく、あきれてものが言えない」「理想の国日本 に生まれたことに誇りを持つ」などと祝辞。「橋本知事に厳重に抗議し、 発言の取り消しを求める」との決議を採択し、 万歳三唱。 「君が代」や 「日の丸」の歴史を紹介したビデオを観賞 ▽〈嶺北地域〉土佐郡土佐町 の農村環境改善センターで、 「嶺北建国記念日を祝う会」(川村満海会 長)が主催して「奉祝式典」を開き、 地域内から約140人が参加。式典で は壇上の「日の丸」に拝礼、「君が代」と「教育勅語」を斉唱。川村会長 の挨拶に続き、中谷元衆院議員や川田雅俊県議らが 「薬害エイズや住専 問題などこのところ、モラルを問われる事件が相次いでいる。日本人古来 の素晴らしい道徳心を取り戻そう」などと訴える。橋本知事の発言に「何 らかの抗議をしたい」などの声も出る 〔註 橋本大二郎高知県知事は2月1日、高知市内で開かれた「人権・同和 問題啓発フェスティバル」のシンポジウムで、現在の天皇制について会場 からの質問に答え、「個人としては」と断りながら、「日の丸はともかく として『君が代』が国歌であることはおかしいと思う。戦後50年がたって、 もうそろそろ変えることを国民運動として起こすべきではないかと思う」 とのべた。 同知事は96年の県議会2月定例会で質問に答え「義務教育の中 で子どもたちに日の丸・君が代を強制することには、 個人としては反対 だ」などと答弁。「私見に当たる部分」として発言を取り消している。〕 ◆《岡山》県遺族連盟や県郷友軍恩連盟などでつくる「平和日本を守る岡 山県民会議」(木村睦男会長)が、岡山市の県護國神社で「皇紀2657年奉 祝県民大会」を開き、約200人が参加(約100人という報道もある)。同神 社本殿で建国祭の祭事がおこなわれ、橿原神宮への遥拝(ようはい)、紀 元節奉祝歌の斉唱などに続き、荒木栄悦同県民会議議長が挨拶。「民法改 正による『夫婦別姓』や『反日教科書の記述』に断固反対し、 国家100年 の大計に立って祖国再生の礎を確立する」という趣旨の大会決議を採択。 場所を同神社遺族福祉会館に移し、「新しい歴史教科書をつくる会」呼び かけ人の高橋史朗・明星大教授の記念講演「建国記念日に因(ちな)ん で」がおこなわれる。高橋は新しい中学歴史教科書を見せながら「『従軍 慰安婦』という言葉は戦争当時はなかった ▽強制連行を裏付ける資料は ない ▽日本だけが特殊だったわけではない、などの理由を挙げ、教科書 に取り上げるのは適切ではない。歴史教育で負の場面のみを強調したため、 日本の子どもたちが自信を持てなくなった。元気が出るような歴史教育が 必要。中学の教科書に従軍慰安婦のことを書いている国はどこにもない。 自分を愛せない者は隣人を愛せないように、自国を愛せない国は隣国を愛 せない。自国の物語を自分の言葉で、子どもたちに語り継ぐことが大切」 と話す ◆《鳥取》鳥取市内の聖神社で「日本を守る鳥取県民会議」が主催して 「建国祭」がおこなわれ、鳥取聯隊会などの旧軍人、県議ら約40人が参加。 「紀元祭」と式典があり、参加者らは神社の拝殿で、祖先が営んできた建 国の歴史に感謝、 国の安泰と世界の平和を祈願する。 また橿原(かしは ら)神宮を遥拝(ようはい)し、「君が代」「紀元節頌歌」などを斉唱し て「建国記念日」を祝う ◆《熊本》▽熊本市内の藤崎八幡宮で「建国記念の日奉祝式典」が開かれ、 約300人が参加(老人クラブのメンバーなど約500人という報道もある)。 「主要祝日等熊本県奉祝会」(会長・中山義崇=熊本工大学長、約70団体 で構成)が主催。来賓として魚住汎輝・副知事、岩本洋一・熊本市収入役 も出席。皇居遥拝、「君が代」斉唱に続き、中山会長が「あらためて建国 の大義を感じ、民族の誇りをもって国・人づくりを進め、愛国の輪が広が ることを期待します」と祝辞をのべ、 高校1年生が奉祝の言葉をのべる ▽菊池市内の菊池神社で紀元祭がおこなわれ、その後市中央公民館で奉祝 式典(約200人が出席)。 ◆《佐賀》「県内各地の神社で祝賀行事がおこなわれた」という報道もあ るが、詳細は不明。判明しているのは、次の2つ ▽佐賀市内の県護國神社 で「建国記念祭」があり、神社関係者や県遺族会のメンバーら約60人が参 加、神殿に玉ぐしをささげる。参拝客には「護国粥(がゆ)」と名付けら れたあずき粥がふるまわれる。このあと、神社隣の市平和会館で、「日本 を守る県民会議」(会長・陣内孝雄参院議員)が主催し「紀元2657年奉祝 建国まつり」を開催、 約200人が参加。陣内会長が「戦後の教育改革で日 の丸、君が代がどこかへ行ってしまったような状況が続き寂しかった。最 近、やっと国旗、国歌として認められた。奉祝会の長い努力の成果で大変 おめでたい。歴史を尊ぶ教育をしっかりやって日本を繁栄に導かなければ ならない」と式辞をのべる。政府主催の建国記念行事の実現を要望する決 議をおこなう ▽同市内の伊勢神社では、戦前からこの日に続けられてい る「大祭」があり、午前零時に「建国祭」を開いたあと、商売繁盛、五穀 豊穣(ほうじょう)、進学合格などを祈願 ◆《長崎》▽長崎市内の市公会堂前広場で「第38回奉祝大会」が開かれ、 旧日本軍の遺族、老人会など約2000人が参加(主催者発表、1000人という 報道もある)。主催者の上杉千郷・「長崎日の丸会」理事長(諏訪神社宮 司)が「命を投げ出し国を守った英霊に感謝し、伝統を大切にして国を守 っていこう」と挨拶。「祖国への誇りを喪失した歴史教科書問題、家族の きずなを断ち切ろうとする夫婦別姓問題、竹島・尖閣諸島問題など何の解 決策も見いだしえないままだ。今こそ、語り伝えてきた理想の姿を示して いくべきだ」とし「建国記念の日」の政府主催行事の開催を求める大会宣 言を採択。集会後、市中心部で「日の丸大行進」。「日の丸」を振りなが ら「建国記念日を祝おう」と呼びかける ▽佐世保市で、「佐世保市建国 記念の日奉祝会」(辻田徹会長)が主催し「日の丸行進」。商工会議所や 自衛隊など48団体の約1万1800人が参加し(主催者発表)、 「日の丸」の 小旗を振って市中心部を行進。 式典で実行委員長の梯正和市議(自民、 「奉祝会」副会長)が「日本人は世界で類を見ない優秀な民族だが、最近、 日本古来の精神を忘れている。わが国は内外政に勇気と自信をもって対処 すべき。 日本民族の誇りを忘れないため建国の日を祝う」と挨拶 ◆《山口》下関市の海峡メッセ下関で奉祝式典。約2000人が参加。高千穂 商科大学の名越二荒之助講師が「韓国は建国の祖とされる壇君を大切にし ている。日本では建国記念の日にも神武天皇を口にしない。祖先の心まで 教えていない」と歴史教育を批判 ◆《広島》広島市内で「建国記念の日奉祝式典」(主催者代表、岡本繁・ 朋和会会長、 広島商工会議所後援)が開催され、 国会議員6人を含む約 1200人が参加。▽県主催の「建国記念の日奉祝式典」開催を要望する ▽ 建国の理想を強く掲げ、我が国の歴史・伝統を県下の若い世代に伝える、 などと宣言。宣言文は「自虐的な視点に貫かれた歴史教科書の改訂問題、 夫婦別姓問題など、国の歴史・伝統にかかわる事件が相次いだが、国民が 自らの歴史・伝統を否定する国が滅びていくのは世界の歴史に明らか」と している。同式典に平岡敬・広島市長が「式典が、国民としての使命と責 任を自覚し、わが国の平和と繁栄はもとより、世界恒久平和の確立に寄与 する契機となることを祈念する」とのメッセージを寄せる(これについて、 「プルトニウム・アクション・ヒロシマ」が同月13日、「広島市長が国連 のクマラスワミ勧告さえも否定する国粋主義者に与(くみ)したと判断さ れても、反論の余地はありません」などと抗議) ◆《徳島》県神社庁や県遺族会など20団体でつくる「県建国記念の日奉祝 会」(森下元晴会長)が、 徳島市内の眉山中腹にある神武天皇銅像前で 「建国記念の日県式典」を開き、 約80人が参加。 御所神社の舞姫6人が 「浦安の舞」を奉納し、森下会長らが玉ぐしをささげたあと「君が代」を 斉唱。同会長は「最近教科書問題が話題になっているが、自国の国柄を悪 く言うのは憂うべき風潮だ。個人が誕生日を祝うように、国家の誕生日を 祝う行事が盛んにおこなわれることを願っています」と挨拶。式典は「日 本の伝統精神を高く掲げ、歴史と文化を次代の若い世代に伝え、平成の御 代の発展に全力を尽くすことを誓う」と宣言、政府による奉祝行事開催な どを求める決議を採択 ◆《福岡》福岡市内の県神社庁で、「日本を守る福岡県民会議」(高千穂 有英会長)が主催して「建国記念の日奉祝県民大会」が開かれ、 約300人 が参加。高千穂会長は「昨年は民法での夫婦別姓問題や中学歴史教科書記 述問題など反日、 反国家思想が蔓延した1年だった。国家は生存と繁栄を 宿命づけられており、国の道程の中で反省、改善すべき点は改め、守るべ きものは伝えていかなければならない」と挨拶。映画上映の後、青年の意 見発表 ◆《鹿児島》鹿児島市内のホテルで「日本を守る県民会議」など7団体が 主催して「建国記念の日奉祝大会」が開かれ、 約70人が参加。 会場には 「反日歴史教科書を是正しよう」などの垂れ幕が掲げられ、戦争責任容認 派に反発する発言が相次ぐ。「日本を守る県民会議」の上原康議長は、従 軍慰安婦の記述問題に触れて「歴史教科書は事実が曲げられている」と批 判、「うそが伝えられないように、歴史認識を正しく持ち、政治に反映さ せなければならない」と強調。大会決議で「自虐史観に貫かれた歴史教科 書は歴史を冒涜(ぼうとく)するものだ。今こそ高貴なる歴史に思いを致 し、国の理想の姿を宣揚すべきだ」と訴える ◆《沖縄》那覇市内の県青年会館で、「国旗国歌推進沖縄県民会議」が主 催して「建国記念の日を奉祝する県民のつどい」が開かれ、 100人近くが 参加(参加者は数10人との報道もある)。「君が代」斉唱で始まり、主催 者を代表して恵忠久会長が「国の生い立ちや由来をしのび、平和を願って 建国を祝うのは当然」と記念日の趣旨を強調し、「戦後教育は日本の歴史 を抹殺した占領軍による改革を基本にしている」と歴史教育のあり方を批 判。「日本神話は真実である」と題する講演で、言語学研究家の西平守盛 が日本書記や古事記、沖縄の古謡オモロから日本史を検証。県吟詠詩舞道 連盟の舞踊や「特別参加」した自衛隊音楽隊による演奏がおこなわれ、 「県や市町村が率先して奉祝式典を主催し、全県民こぞって日本国の豊か な、そして平和な弥栄(いやさか)を祈念すべき」とする決議を採択 〔註 「建国記念の日」をめぐる右派勢力の動向については、なお調査を つづけており、  今後もニュースを追加する予定。これは、2月16日まで に入手できたものである。〕 12日  新進党の「正しい歴史を伝える国会議員連盟」(小沢辰男 会長、 38人)が、国会内で小杉文相と会い、4月から使用 される中学校歴史教科書の内容の訂正を求める「歴史教科 書問題に対する声明」を提出。声明は「中学校の歴史教科 書は、罪悪史観に立って、わが国の近現代史を記述してお り、特に従軍慰安婦の強制連行をすべての教科書が記述し ている」としたうえで「国家による強制の事実が何ら確認 されていないのに、義務教育の教科書としては極めて不適 格である。国の将来を担う青少年を育成できるのか」とし て、記述内容の訂正を要求している。これに対し、小杉文 相は「現在のところ大臣の職権による教科書の修正をおこ なうつもりはない」と答える。 同議連の永野茂門(しげ と)幹事長(参院議員)は「政治的決断をしない文相に怒 りを感じる。今後とも事実に反したり、確定していなかっ たりする内容に対しては積極的に発言していく」とし、自 民党内のグループとも連携していく考えを明らかにする 〔本略年表制作者・註 問題とされている中学校教科書には、政府でさえ 認めざるをえなかった日本軍の強制性を表わす文言はあるが、「従軍慰安 婦の強制連行をすべての教科書が記述している」という主張は事実に基づ いていない。これはためにするデマである。  ちなみに、 永野茂門は羽田政権の法相に就任した直後(94年5月)「私 は南京事件というのは、あれ、でっち上げだと思う。私は、あの直後に南 京に行っている。いずれにせよ、そういうことは戦争に伴う悪であり、そ れを侵略的行為と言うなら、それはまあ言えるが、日本は、そこを日本領 土にしようとしたのでもないし、そういう所を占領したのでもない」と発 言し、中国政府や韓国政府の激しい抗議によって辞任をよぎなくされた。 「あの直後に南京に行っている」というのは明白なウソである。永野は同 時に「日本で言う大東亜戦争というものが、侵略を目的にやったか。日本 がつぶされそうだったから生きるために立ち上がったのであり、かつ植民 地を解放する、大東亜共栄圏を確立するということを、まじめに考えた。 戦争目的そのものは、 当時としては、 基本的に許される正当なものだっ た」とのべ、アジア太平洋戦争を肯定した。またこの暴言に続き、永野は 「慰安婦は当時の公娼であって、それを今の目から女性蔑視とか、韓国人 差別とかは言えない」とのべている。〕 14日  同日付『産経』のシリーズ「教科書が教えない歴史」第22 6 回「日本国憲  法・10」の記述=「こと天皇の地位に 関するかぎり、日本国憲法と明治憲法との間にはそれほど 大きな違いはないのです/天皇が国家の栄光の源泉であり、 元首であることに疑いがありません/自由な国民の民主主 義は権力の制限という考え方に基づく民主主義であり、君 主制と決して対立するものではありません/権威と権力を 分離する立憲君主制は、独裁や専制政治の出現を抑止する はたらきなどをもっているのです」(著者・平成国際大教 授・慶野義雄=自由主義史観研究会会員) 15日  同日付『産経』夕刊の論説委員・安村廉(やすむらきよし) のコラム「消滅した国軍の記憶」の一部=「(私の中学生 時代〔昭和32―35年〕、軍事雑誌『丸』には大東亜戦争に 関する貴重な証言や戦史がふんだんに盛り込まれてい た。)少年期の記憶というのは案外馬鹿にならない。私が 読んだ『丸』の1つに元慰安婦の1ページ大の写真が載って いたのを思い出す。部隊の後を追って行くのであろう。黒 いスカートに白いブラウス、小川でも渡っていたのか、ス カートの裾をつまみ頭の上に荷物を乗せている。問題はそ の顔だった。金属製の丸いフレームの度の強そうなメガネ をかけているが、何かひたむきさを感じさせるような表情 だ。《強制連行》とやらを思わせる暗さはない。/兵士と の交情物語や慰安所、軍医の検診風景なども、マンガ風の 絵入りで、すべてが陰惨さなく当たり前のように書かれて いた。私はこのころ『検黴(けんばい)』(性病検査)と いう難しい漢字を初めて知った。ごく自然な好奇心で少年 たちは、こうしたことを知っていくものである。何も中学 の教科書で教え込む必要などないのだ」 〔備考・藤岡信勝(自由主義史観研究会代表、「新しい歴史教科書をつく る会」呼びかけ人)にとっての「歴史教科書問題」の位置づけ=「今、日 本国民の歴史認識に大きな変化の兆しが見えはじめているといえる。古い 枠組みにしがみついている朝日新聞を初めとするマスコミ主流や左翼勢力 は、いずれ国民の意識の変化に置き去りにされていく可能性がある。  もちろん、別の可能性があることも事実である。このままジクジクと自 虐・迎合・保身・怯懦の風潮が勝利を占めてしまう可能性である。新しい 動きに対する反動も、各種の謀略を含めてすさまじいものになるだろう。 彼らは、まちがいなく外国の勢力と結びつき、次々と日本国家破壊の策謀 を仕掛けてくるはずである。  だから歴史教科書をめぐる闘いは、 単なる1つの特殊な教育問題に過ぎ ないという見方は、 全くの的はずれである。 西尾幹二氏の指摘どおり、 「20世紀の戦争解釈が国益を分ける」のであり、これから21世紀にかけて 「歴史が国際政治の最大闘争」になるのである。歴史教科書問題とは、右 の戦争解釈・歴史解釈問題の最も大衆的な表現形態に過ぎない」(97年3 月号『サンサーラ』掲載の藤岡のアジ文「歴史教科書をめぐる闘い・日本 人は常識に還れ」)〕   〔註 本略年表は、97年2月16日までに入手したニュースに基づいている。制作者〕 ___________________________________________________________________ (c)井上 澄夫