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1996年
2 月 6日 国連人権委員会の「女性に対する暴力特別報告官」の報
告がまとまり、 この日明らかになる(クマラスワミ報
告)。 第2次大戦中の旧日本軍の行為を「人道に対する
罪」と断定、元従軍慰安婦への国家としての補償と加害
者の処罰など6項目を「勧告」として列記
4月 9日 「終戦50周年国会議員連盟」が名称を変更し「明るい日本
・国会議員連盟」の結成趣意書をつくる。ただし、組織の
結成は、 96年6月4日(以下、 「明るい日本・議連」と略
す) 会長・奥野誠亮、事務局長・板垣正(日本遺族会顧
問)、顧問・原田憲、藤尾正行、武藤嘉文、山中貞則、林
田悠紀夫 (96年6月3日、正式発足前日現在の加盟議員数
=衆議院・64人、参議院・52人、ただし、96年秋の衆院選
でメンバーに変更がある。たとえば、顧問の原田憲は落選、
同顧問の藤尾正行〔元文相〕は引退)
〔同議連結成趣意書の一部〕「開国以来、 国民の艱難辛苦
と幾多先人の献身と犠牲によって、その存立が守り抜かれ
てきたわが国の歴史に対して、侵略国家として罪悪視する
自虐的な歴史認識や、卑屈な謝罪外交に対しては、決して
同調することはできない。(中略)安易に他国の見解に迎
合し追随することは慎むべきである」
23日 自民党の「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」
(小淵恵三会長)と、 新進党の「靖国神社参拝議員連盟」
(渡部恒三会長)の国会議員が、 春季例大祭中の靖国神社
にそろって参拝。自民党の88人(ほかに秘書などの代理参
拝が54人)、 新進党32人(同21人)の計120人で、現職閣
僚では中川秀直科学技術庁長官が参拝。倉田寛之自治相と
岡部三郎北海道・沖縄開発庁長官は、22日に参拝
5月28日 自民党の板垣正参院議員(日本遺族会顧問)が、 同党総
務会で、旧日本軍の従軍慰安婦問題が高校教科書などで取
り上げら れていることについて「未成年の女性を強制的
に慰安婦として働かせたと一面的に記述するなど、歴史の
真実に基づいたものでなくても歴史的事実として取り上げ
ているものがある。検定のあり方も含め、もっと真剣に教
科書を扱ってほしい」とのべる
6月 4日 自民党の国会議員が「明るい日本・議連」を結成(衆参両
院で116人が加盟)。 総会後の記者会見で、奥野誠亮会長
が「従軍記者や従軍看護婦はいたが、『従軍』慰安婦はい
ない。商行為に参加した人たちだ。戦地で交通の便を(国
や軍が)図っただろうが、強制連行はなかった」とのべ、
高校や中学校の教科書の記述を批判。事務局長の板垣正参
院議員も「性的虐待のイメージを植え込む教科書のあり方
はおかしい」と発言
27日 97年春から使用される中学校社会科教科書の検定結果が公
表され、 7冊すべての教科書に「従軍慰安婦」に関する記
述が登場
7月 2日 自民党の総務会で現行の教科書検定のあり方への批判が右
派議員から出る
16日 自民党はこの日の総務会で、現行の教科書検定に関して文
部省から聴取したが、検定のあり方への批判が出たため、
党文教制度調査内に「教科書検定問題に関する検討小委員
会」(仮称)を設置することを決める
20日 自由主義史観研究会(代表・藤岡信勝東大教授)が中学校
教科書の「従軍慰安婦」記述の削除要求など、歴史教科書
批判を全国規模で展開していくことを決める
26日 自民党が現行の教科書検定の見直し問題で、 9月末をめど
に党の見直し案をまとめる方針を固める
29日 橋本首相が「総理として」靖国神社に参拝。85年夏「公式
参拝」をした中曽根康弘以来の現職首相の参拝
8月10日 自由主義史観研究会の第1回全国大会が、この日を含め2日
間の日程で開かれる(山形・蔵王温泉)。全国の教師ら約
100人が参加
14日 「女性のためのアジア平和国民基金」が元従軍慰安婦に償
い金の支給手続きを始めるのにあわせ、政府が元慰安婦に
渡す橋本首相の手紙を公表。その一部=「いわゆる従軍慰
安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と
尊厳を深く傷つけた問題でございました」
15日 東京・九段の「第10回戦没者追悼中央国民集会」での堀江
正夫「英霊にこたえる会」会長の発言=「新聞で、慰安婦
への総理のわび状を見たとき、りつ然たる思いにかられた
のは、私だけではないでしょう。戦場に荒稼ぎに行った婦
人に対する金が200万円。こんなことでいいんでしょうか」
9月 1日 右派の教育研究団体「日本教師会」(会長・若井勲夫・京
都文教短大助教授)が、この日までに中学校教科書の「従
軍慰安婦」記述の削除を求める決議を採択、決議文を文部
省に提出
5日 参院自民党が都内のホテルで開かれていた政策研究会に藤
岡信勝東大教授を講師として招き、歴史教科書の検定問題
などについて討議
10日 右派の大学教授や歴史研究者の組織「昭和史研究所」(代
表・中村粲独協大教授)が自民党本部に塩川正十郎総務会
長を訪ね、中学校教科書の「従軍慰安婦」記述の削除など
を文部省に求めるよう要請
13日 「明るい日本・議連」(会長・奥野誠亮)が総会を開き、
中学校教科書の「従軍慰安婦」記述の削除に向けて、現行
の教科書検定の見直しを求める決議を全会1致で採択
17日 「明るい日本・議連」が、9月13日の議連総会の決議に沿っ
て、中学校教科書の「従軍慰安婦」記述を削除するよう、
奥田幹生文相に要請
20日 この日から1カ月かけて「日本を守る国民会議」(議長・黛
敏郎)が「従軍慰安婦」記述の削除を求め、北海道から鹿
児島まで全国縦断キャラバンを展開。《草の根保守》勢力
を動員して地方議会(都道府県・市町村)に陳情を提出さ
せるため(このキャラバンで各地の右派団体に「中学校歴
史教科書の訂正を求める陳情」と「『夫婦別姓を認める民
法改正』に反対を求める陳情」の案(ひな型)を配布した
と見られる。 各地で同年の9月・12月議会に同種陳情が提
出される)
24日 岡山県教科書是正協議会が首相官邸を訪れ、中学校社会科
教科書の「反日的・自虐的な記述の訂正」を求める陳情書
を提出
25日 自民党がこの日までに「高校教科書の検定廃止」を衆院選
の公約原案に盛り込む
26日 自民党は選挙公約の原案に盛り込まれた「高校教科書の検
定廃止」を削除し新たに「高校および義務教育段階での教
科書のあり方を検討する」と明記する方針を固める。右派
議員が要望していた「『従軍慰安婦』の記述の削除・訂正
や教科書検定の正常化」は見送り
◆東京・九段北の靖国会館で「教科書の訂正を求める緊急
国民集会」(「昭和史研究所」などが主催)が開かれ約
300人が参加、集会後国会周辺や霞が関をデモ
◆自衛隊OBで組織する「日本郷友連盟」が、この日まで
に中学校教科書の「従軍慰安婦」記述の削除を求める要請
文を奥田文相に提出(「3光作戦」や「南京事件の誇大な
犠牲者数」の削除も求める)
27日 同日から『産経』紙上でシリーズ「教科書が歪めた歴史」
が始まり、10月10日まで14回続く。筆者は自由主義史観研
究会会員(第1回=「従軍慰安婦・虚偽の記述が独り歩き」
筆者・藤岡信勝東大教授、最終回=「大正期の政治・共産
党の『理想』一方的に」筆者・赤野達哉大阪市立中央高校
教諭)
29日 自民党はこの日までに「靖国神社への公式参拝の実現」を
総選挙の公約に盛り込む方針を固める
30日 自民党が靖国神社参拝問題で総選挙の公約案に明記してい
た「公式参拝の実現」に関する文言を「実現を期す」に修
正
10月 2日 参院自民党が政策審議会に教科書検定問題を議論する「教
育問題に関するプロジェクトチーム」(座長・井上裕元文
相)を設置
3日 櫻井よし子(ジャーナリスト)が横浜市教育委員会の教育
課題研修会で講演(教職員約200人が参加)
発言の一部=「日本はロシアを恐れるあまり、朝鮮半島に
行き中国に行った。でも朝鮮半島ではフランスがインドシ
ナを支配したような、イギリスがインドを支配したような
やり方ではなかった。日本人としては朝鮮半島の人を日本
人並みに引き上げようとしたということもある」「あの慰
安婦というのは数からみれば確かに朝鮮の人も多かったが、
1番多く慰安婦として働いたのは、 日本人の女性なんです
よ。東北の貧しい農村の娘さんが親に売られていったのが、
あの時代の価値観だった。それがいいとか悪いとかは、ま
あなんて人権無視でしょうとか、今になってみれば何でも
言えますよ。あの時代はいわゆる売春宿というものがあっ
て、これは世間にも認められていた。今振り返って悪いと
言ってもそれはしょうがないね、ということを教えるのが
教育だろうと思う」
(以上は講演から。以下は聴衆との質疑応答から)「今の
日本の歴史教育というのは、これでもかこれでもかと苦し
めながら日本を悪く書いている」 「とどのつまり、 当時
の慰安婦問題というのは、それなりのビジネスとしてやっ
ていたと言える」
16日 橋本首相は当初、同日を「いとこの戦死公報が届いた記念
の日」として靖国神社参拝を希望していたが、見送る(同
年7月末の「総理としての」靖国参拝に中国が激しく抗議
したため、在任中の参拝はしないと先に表明していた)
18日 自民党の 「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」
(小淵恵三会長、 209人)と、新進党の「靖国神社参拝議
員連盟」(渡部恒三会長、71人)の国会議員が、同日朝、
秋季例大祭中の靖国神社にそろって参拝した。参拝したの
は、 参院議員8人(自民6、新進2)と、前代議士と参院議
員の秘書ら代理38人。閣僚の参拝はなし
27日 【衆議院選挙】
11月 4日 『産経』が中国の歴史教科書を非難するシリーズ「中国の
教科書が教える歴史」を開始(4日から10日まで連日7回)
7日 【第2次橋本内閣発足】新文相・小杉隆(旧渡辺派、東京5
区)
13日 参院自民党の「教育問題に関するプロジェクトチーム」が、
現行の教科書検定制度を見直すため、文部省から検定の経
緯を聴取することを決める
22日 同日付『産経』のインタビュー「新閣僚に聞く」で小杉隆
文相が「従軍慰安婦」の記述が掲載される中学校教科書に
ついて「専門家が議論した上で記述することになったと認
識しており、これを一方的に削除するのは問題と思う。慎
重な審議を経た結論は尊重しなければならない」とのべる
28日 自民党外交調査会と外交部会の合同会議が党本部で開かれ、
海外から元首など要人が来日した際、靖国神社に参拝して
もらうことを早期に実現させるべきとの考えで1致
12月 2日 藤岡信勝東大教授(自由主義史観研究会代表)、西尾幹二
(評論家)、 阿川佐和子(エッセイスト)ら9人が呼びか
けた「新しい教科書をつくる会」が発足。記者会見で現行
教科書を「日本の近現代史全体を犯罪の歴史と断罪して筆
を進めている」と批判し、次世代に自信をもって伝えられ
る歴史教科書の作成、提供をめざすほか、文相に「従軍慰
安婦」記述の削除勧告を要求するなどの活動をおこなうと
発表
〔呼びかけ人〕藤岡信勝(東大教授・自由主義史観研究会
代表)、西尾幹二(評論家)、阿 川佐和子(エッセイ
スト)、小林よしのり(漫画家)、坂本多加雄(学習院大
教授)、高 橋史朗(明星大教授)、林真理子(作家)、
深田祐介(作家)、山本夏彦(評論家)
◆この日までに、「かながわ人権フォーラム」(会長・弓
削達前フェリス女学院学長)が、横浜市教育委員会に対し、
10月3日の櫻井発言を「国際問題にかかわる重大な事柄」
と批判し、反対の立場の学者による講演を要請
3日 新進党の「正しい歴史・議連」が総会を開き、教科書問題
に関する対外的な声明を臨時国会中に発表する、政府・与
党の歴史認識の姿勢を正す、正しい歴史認識を伝えるよう
文部省に働きかけるなどの方針を決める
◆米国司法省が73一部隊など第2次世界大戦中の戦争犯罪
に関係した日本の元軍人16人を米国入国禁止処分にするこ
とを決める
5日 この日、兵庫県播磨町教育委員会が8日午後に予定されてい
た櫻井よし子の講演会を中止すると櫻井側に伝えてきたこ
とが判明
11日 参院予算委員会で自民党の板垣正議員(「明るい日本・議
連」事務局長、日本遺族会・顧問)に中学校教科書の「従
軍慰安婦」記述などについての見解を求められた小杉文相
は、「専門家による教科用図書検定調査審議会の検定に基
づいたものであり、妥当と考える。客観的事情に変化がな
い限り、教科書発行者に対する訂正申請の勧告はおこなう
考えがない」とのべる
19日 岡山県議会の自民党県議団が単独で、右派団体連合「岡山
県教科書是正協議会」が提出した陳情「今後採択される中
学校教科書から『従軍慰安婦』並びに『3光作戦』等の記
述の削除を求める意見書提出について」の趣旨採択を強行
〔陳情を提出した県教科書是正協議会(江見祐道会長)の
構成団体=県叙勲者の会、 県PTA役員有志、不2歌道会
県支部、岡山国民文化懇談会、県傷痍軍人会、日本世論の
会県支部、県郷友軍恩連盟、県ハルビン会、内外ニュース
岡山懇談会、生長の家有志、県憲友会、県工華会、11クラ
ブ、直毘塾、平和日本を守る県民会議、県教育振興会、県
護國神社、平成ビジョンの会、県海交会、祖国日本の会、
県遺族連盟、神道政治連盟、美作地区教育振興会、笠井山
大仏護立会、県英霊にこたえる会、モラロジー岡山東部支
部、県甲飛会、県隊友会有志、県神社庁、県参陵会、県ビ
ルマ会、県金鵄会、津山防衛協会、岡山子供を守る会〕
◆横浜弁護士会が創設した「人権賞」の第1回授賞団体に
選ばれた、在日外国人労働者の人権問題に取り組んでいる
「カラバオの会」(渡辺英俊代表)が、 10月3日に問題発
言をおこなったジャーナリスト櫻井よし子が選考委員に入
っていることを理由に受賞を辞退
20日 自民党の「明るい日本・議連」が党本部で教育問題に関す
る小委員会を開き、「学校教育用図書検定基準」にある、
中国、 韓国などに配慮することを明記した「近隣諸国条
項」に問題があるという認識で1致。 政府や党執行部に同
条項の削除を働きかける方針を決める
◆新進党の「正しい歴史・議連」が国会内で記者会見をお
こない、中学校教科書の「従軍慰安婦」などの記述の訂正
を求める声明を発表
22日 同日付『産経』の社説(「主張」)「何が悪い桜井さんの
『認識』」
23日 自民党総務会で森喜朗総務会長は、「従軍慰安婦」の記述
や「近隣諸国条項」に対する批判について、「近隣諸国条
項は、 当時政府・与党が1致して決めたことであり、頭越
しの決定ではない。現実問題としては教科書の印刷は始ま
っており、止めることはできない。検定基準にのっとって
いる限りは、執筆者の考えが優先される」とのべる
26日 右派団体「昭和史研究所」の会員らが文部省に小杉文相を
訪ね、「従軍慰安婦」記述の削除を要請。同文相は「検定
は基準に沿っておこなわれている。(昭和史研究所とは)
認識の違いがあり、削除・訂正を教科書会社に求める考え
はない」とのべる
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(c)井上 澄夫