東京平和運動センター58-2

TKOPEACENEWS

　2面　NO.58　06.2発行

特別寄稿　沖縄からたたかいの報告（１）

森本副議長

　東京平和運動センター副議長の森本一雄（前事務局長）さんは、今年の７月から夫人とともに沖縄での辺野古の新基地反対闘争に参加しています。報告が届きましたので、今月号と来月号の２回にわたって掲載します。
なお、同文は部落解放東京都連合会機関紙「解放新聞」にも掲載されています。

　沖縄・辺野古海域での米軍新基地をストップさせるため、闘いに参加しませんか！

■お坊さんが逮捕される
　沖縄警察署で抗議行動が終わり、この原稿を書いています。７月から沖縄に来て新基地建設反対闘争に参加して早や４ヶ月になろうとしています。今の私の心境は仲間が逮捕されたり、新基地建設の日米合意などにより「怒り心頭」というところです。
　米軍基地の辺野古海域への建設阻止闘争に一緒に参加していた日本山妙法寺の木津（キズ）上人が不当にも沖縄署の暴力によって逮捕されたからです。木津上人は日米軍事同盟の強化をもたらす辺野古海域での新基地建設反対を訴える英文のビラを作成し、嘉手納基地ゲート前で米兵に配布しているところを逮捕されました。宗教者への弾圧は今後の辺野古沿岸域で建設に反対し抵抗する「者」は何人であれ実力で弾圧するという小泉政権の危険な面をあらわにした現象であると思われます。ブラ配布に対して公務執行妨害罪をデッチ上げ逮捕し、裁判所も10日間の拘留延長を決定し、警察署と裁判所が一体となった弾圧となっています。
　逮捕以降沖縄署に対して労組、平和、環境、市民団体が連日抗議をしています。警察署前路上であっても「道路交通法違反だ！」、警察に抵抗するものは「公務執行妨害」で逮捕すると。私も警察官が前に出てくると血が騒いでいるところです。

■日米による新基地建設のねらいについて
　皆さんもすでにマスコミなどの報道で普天間基地の移設先として辺野古崎沿岸域建設が最終決定されたとご理解されていると思います。現地で身をはって阻止闘争に参加している私にとしては今回の日米合意は基地からの負担軽減どころか県民、市民の生活をまったく無視しこれからも犠牲を強要する「基地機能化」そのものであり何十年かいや半永久的に米軍が沖縄にいすわり続ける重大な決定であるといえます。

■大変無謀な計画
　日米の（２十２）で発表になった辺野古沿岸域での計画は一口に言って無謀な計画であるともいえます。それは建設されようとしている地域住民の「生命」をまったく考慮していない米軍の植民地支配の継続そのものといえます。住民はこの地域で海からの幸、山からの幸で生活し、あの沖縄戦の時であってもこうした「幸」によって生き延びてきました。それにこの決定だけで沖縄県民はもとより辺野古地域など「やんばる」に人々には事前になんら相談すること無しに決定しています。この地域の人々は「これはあまりにもひどすぎる。この60年前米軍による銃剣とブルドーザーで土地を奪われたことの再現ではないか」と言っています。それも今回は日本政府が加担しているのです。このうっぷんが腹の底にたまりっぱなしになっています。これはいずれ爆発すると思います。
　決定された新基地は米軍キャンプ・シュワブ（沖縄における基地の名称はあの沖縄戦で日本人を最も多く殺した兵士の名前がつけられています）基地内に建設されほんの一部が海にでるものであって、環境破壊は決して無いと政府は宣伝しています。これはまったくの「ウソ」です。陸上のキャンプ・シュワブ内は建設用地の１／10すぎずほとんどが海上埋め立てによることになります。この計画により国の特別天然記念物｢ジュゴン｣（沖縄県の絶滅危惧―Ａ類）に致命的な打撃をあたえることになります。この決定はかつての新基地建設に賛成してきた辺野古地域の人々や漁民も「漁場が死滅する」として猛反対しています。
　もし建設を許してしまうならば米海兵隊の戦力は数倍にはね上がることになります。墜落したCH53Dヘリの機能の数倍の能力を持つ「オスプレイ」や「FA18ホーネット」をはじめ、すべての戦闘機の離発着が可能になるばかりでなく大浦湾側を埋め立てることによって強襲揚陸艦など大型の軍艦が接岸できる機能となります。このように機動的に作戦が可能になるばかりでなく生物化学兵器、核爆弾もあるといわれる弾薬庫もそなえています。この弾薬庫から今もイラク、アフガンで使用されている劣化ウラン弾など人道に反する兵器や爆弾が積み出され何万人の人々を殺戮しています。新設される基地はこのように非常に危険な場所に建設されようとしています。もしこの弾薬庫に戦闘機でも墜落しようものなら辺野古地域の町村民はもとより西海岸の６万名護市民も壊滅的な犠牲を強いられることは誰でも予想できます。
　日本の政府と防衛庁は米国側との交渉の場でシュワブ基地内の陸上に建設したいと案を当初は出しましたが、米国側から「明日、兵隊はイラクに出撃するかもしれない。そのために重要な演習地だ」この人殺しの訓練を１日たりとも休むことや一部であれ閉鎖はできないのだと恫喝されて米軍の主張する「沿岸案」をのみこまされています。このように、もし沿岸案の建設が実現することになれば米海兵隊にとっては世界中で一番機能が整った基地になることは間違いありません。しかも約１兆円の私たちの税金で造ってあげるのですから。

■日米両政府のこの決定はそこに生活している市民を忘れている
　1996年日米両政府はＳＡＣＯ合意により辺野古海域に新基地建設を合意しました。このときの合意は沖縄県民の80％を越える反対の声とオジィオバァを中心に９年間2,639日の座り込みの闘いを570日の実力阻止行動によって建設を断念させました。この10年間の沖縄県民と環境保護、ジュゴン保護、自然保護団体などはまさに世界的な闘いに発展させました。今や辺野古の闘いはこのような闘いになっていることを日米政府は考えない計画であるといえます。
　今回の建設計画にはこれまで闘ってきた勢力だけでなく今のところ稲嶺県知事はじめ地元名護市・岸本市長、辺野古やんばる地域全区と名護漁協関係者も「反対」を鮮明にしています。そして地元の住民だけでなく、米軍基地機能を住民の比較的少ない場所として沖縄北部に集中するという「案」に金武町、萱野座村など北部の市町村長は防衛庁幹部の説明の際には断固反対と明言しています。新基地建設や基地の北部集約に対して萱野座村のように「反対決議」が今後続くものと思います。
　まして知事の権限である「公有水面権」を取り上げて米軍新基地建設のための「特別措置法」を制定してまで強行するならば沖縄では暴動がおきるのではないかと言われています。小泉政権は米国のイラク侵略に加担するなど世界の指導者のなかでもっともブッシュに追随しています。だからこの特措法導入をするのではないかと不満と不安と怒りが混じった沖縄に人々の感情がこの辺野古テント村でともに闘っているとひしひしと伝わってきます。

■沖縄県民は闘っています
　10月30日の県民大会はすでに皆さんも新聞テレビなどでご承知であろうと思います。沖縄と本土との間には反基地の感情は大きな温度差があるといわれます。本土のマスコミでは本当の声が伝わっていないかと思います。で、少し詳しく報告します。当日は冷たい雨が降りしきる寒い日にもかかわらず5,000人以上が日曜日の夕刻に結集し、沖縄県内でもっとも賑わう国際どおりでデモ行進をしました。昨日まで辺野古テント村に行くときは顔、腕には日焼け止めクリームを塗り、サングラス、帽子が手放せなかったりが突然秋を通り越して冬がきたというような天気でしたが、沖縄県民は元気です。辺野古への新基地建設は絶対身をはって実力阻止してみせるというすごいパワーを私は感じました。集会での各団体の決意表明を聞きながら私はこの闘争は最後まで付き合わなければならないと決意したほどです。
　この計画は06年１月通常国会での特措法の上程、建設にかかわる予算案の決定をまって辺野古では動きが活発になることは必至です。いよいよ実力阻止闘争が陸上でも海上でも始まることになります。この闘いはこれまでの海上阻止行動のときの弾圧から比較にならないことが予想されています。逮捕者は続出するでしょう。
　海上での闘いのため死人も多数出ると、これまで闘ってきた猛者共がテント村で話をしています。今から私も興奮しています。もちろんテント村に座り込みに参加しているあらゆる団体の猛者共も私と同じように不安を持ちながら次の実力阻止闘争に参加するといきましています。

　テント村にはこれまで世界各地から反基地を闘う人や、自然保護団体などと日本全国からも４万人以上が辺野古に足を運び、これからも共に闘うことを表明して、物心両面の応援をしています。もちろん何度もいいますが、沖縄県民の80％以上が「反対」であることが大きな支えとなっています。これまでの現行案はこうした人々の闘いでつぶしてきました。このことは大きな成果として高い評価ができます。だからこれからの闘いにも絶対に勝つのだと腹に力が入ります。

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